俺はどこにでもありふれている、証券会社のサラリーマン。今日もいつもの時間に出勤し、机の仕事用PCの  
 電源を入れる。  
「おはよう、島田君」  
「おはようございます、藤見沢課長」  
 俺の上司は女課長だ。最近の女性では珍しい、黒髪のロングヘアー。胸もそこそこの  
 サイズがあり、いわゆるナイスバディってやつだ。  
「昨日の件、あれからどうなったの?」  
「…釜沢商事の件なら、残業して俺が片づけておきました」  
「そう…そういえば貴方、今月の残業が規定時間超過しそうだったわよ。大丈夫?」  
「俺の身体の事なら心配しないでください。今が踏ん張りどころだから」  
「貴方だけの身体じゃないのよ…無茶しないで」  
 課長が音もなく俺に擦り寄ってきていた。後ろから手を回し、顔を俺に近づける…彼女の  
 吐息が俺の頬に触れる。  
「…そういうことはせめて、アフター5にしてください」  
「そうして欲しいなら、今日は残業禁止」  
「それは上司としての命令ですか?それとも…」  
「両方よ。じゃ、いつもの所で待ってるから」  
 藤見沢課長と目があった。人間が持ち得ない筈の長い耳、爬虫類独特の長い舌がちろりと  
 覗いたのが俺の視界に入る。  
「…わかりました」  
 課長は踵…いや、長く伸びた下半身を返してクネらせ、自席に戻っていった。タイトスカートの  
 下は二本の足ではなく、緑色の肌を持った蛇の身体だ。  
「あらあら、朝からお熱い事で…」  
「からかわないでください、雪美さん。あと、冷房温度を勝手に18度まで下げるのはやめてください」  
「だぁってねぇ、室温が20度超えた日にはやる気出ないのよぉ」  
「暑いのは皆同じですよ」  
「ふーん、島田君って暑がりじゃなかったっけ…あたしが冷やしてあげよっか?」  
 隣席で氷菓子をかじっていた雪美がおもむろに立ち上がり、さっき課長がやったのと同じ体勢で  
 俺に寄りかかってきた。雪女である彼女の身体はひんやりしていて心地よい。  
「…課長が見てるから止めてください」  
「へー、島田君は冷え性蛇女の肩なんかもっちゃうんだ」  
 髪を茶色に染め、ショートカットでパーマをかけている雪美は、昔話に出てくるような雪女のイメージ  
 からは程遠い。しかし、彼女が本気を出せば、人間の俺を凍死かそれに近い状態にするのは  
 たやすい事だ。何故そうしないかといえば…  
「大体雪…むぐぐ」  
「んっ…」  
 文句を言おうとした俺の口は、雪美の冷たい唇で塞がれた。  
「…!!!」  
 課長席の方から、何かをへし折る音が聞こえた。いつもの展開だから慣れているとはいえ、こうなると  
 今日一日は仕事にならない…だから俺の残業時間は増える一方なのだ。そこんところを判って貰えると  
 俺も助かるのだが…。  
 
 
 結局その日は一日中、藤見沢課長と雪美の闘いに挟まれながら何とか仕事をこなした。もっとも、定時の一時間前に  
 部長の雷が落ちて、二人とも落ち着いた訳なのだが…実際、部長は雷神様なので、本当に起こらせると洒落にならない  
 事態に陥るのを判っているからこそ、なのだが。  
「…何を一人でぶつぶつ言ってるのかしら?」  
「か、課長」  
「プライベートでその呼び方、いつになったら直るのよ」  
「すまない、小百合…」  
「そうそう、それでOK。じゃ、いきましょうか」  
 藤見沢課長…もとい、小百合が強引に腕を組んできた。紺色に飛白が入った地味な浴衣だが、それでも  
 彼女の美貌が阻害されることはない。  
「お、おい…小百合」  
「どうしたの?」  
 胸を俺の腕に押し付けてくる小百合。この感触は間違いない…こいつは。  
「お前、その、下着…」  
「あら、浴衣の下には何も着けないのが習わしってものよ?」  
「まさか」  
「ふふ、下の方はどうかしらね?」  
「知らねぇよ、そんなの」  
 なんとなくバツの悪くなった俺は、小百合の腕をほどいて足早に歩き出した。  
「あ、ちょっと、島田君! もう!!」  
 身体をくねらせて俺の後を追ってくる小百合。上半身は人間とほとんど変わりない容姿だが、下半身は紛れもなく  
 蛇そのものだ。普段から性器が露出してない部分を隠すも何もあったもんじゃない。  
「島田君ってば! からかって悪かったから…」  
 ずるずるという、身体を引きずる音が止んだ。ふと振り返ってみると、俺から数メートル後ろで小百合がたたずんでいた。  
「小百合…?」  
「だって最近、島田君と…全然こうやって話す機会もなくて…」  
「…」  
「今年最後の夏祭りだから、折角頑張って仕事も終わらせて…おめかしもして…楽しみに…してた…のに」  
 小百合は唇を噛みしめて俯き、肩を震わせていた。  
「小百合」  
「ぐすっ…ごめんなさ…えぐっ…」  
 閉じた瞼から涙が溢れ、頬を伝わって浴衣に落ちた。涙で染められた黒い斑点がどんどん数を増していく。  
 
「…わかった、わかったから泣かないでくれ」  
 俺は小百合に近づき、そっと彼女の身体を抱き寄せた。  
「こんな事でへそを曲げた俺が悪かった…俺もちょっといらだち過ぎてた」  
「島田君…」  
 潤んだ金色の瞳でじっと俺を見つめる小百合…駄目だ、そんな目で俺をみつめないでくれ…その表情は  
 はっきりいって反則なんだよ…くそっ!  
「あたし…んっ!」  
 何かを言いかけた彼女の唇を貪るようにして、俺は接吻を交わした。ディープにならないようすぐ離そうとしたが、  
 小百合の方がそれを許してくれない。細くて長い、繊細な舌が俺の口蓋を割って入ってきた。  
「…っ!」  
 大きな胸を俺の体躯に押し付けてくる小百合。彼女の着ている浴衣と、俺の着ているTシャツを通しても、その  
 先端が固くなっているのが判る…きっと下の方も俺を受け入れる準備が整いつつあるのだろう。だが、ここで  
 やっちまったら夏祭りどころじゃなくなる。  
「ぷはっ…!」  
「んむっ…島田君…」  
「気持ちは判るけど…とりあえずそれは、祭りの終わりまで取っとこう」  
「…ごめんなさい」  
 俺はそのまま無言で、彼女の手を取って歩き出した。彼女もしょんぼりと下を向いたまま、何も言ってこない。  
 夏祭りの喧騒が聞こえ始めた所で、俺は歩を止めた。  
「島田君?」  
「小百合、お前って確かリンゴ飴が好きだったよな」  
「うん…」  
 幼い頃の小百合は、夏祭りに行くと必ずといって良いほどリンゴ飴を買っていた。あまりにも買い過ぎて、親父さんに  
 尻尾で巻かれて泣いてた事もあったっけな…そんな彼女も今じゃ、俺より先に就職して出世コースだ。でも、中身は  
 全然変わっちゃいない。  
「今日、お前の好きなだけリンゴ飴買ってやるからさ、ほら…その…機嫌、なおしてくれよな」  
「…リンゴ飴だけじゃやだ」  
「言うと思ったよ…じゃ、後であそこに行こう」  
「ほんと?」  
「嘘は言わないよ…俺もご無沙汰だったしなって、おい!そんなに引っ張るなって!」  
 …こんなところも全然変わってない。彼女に引きずられるようにして、俺達は夏祭りの喧騒に飲み込まれていった。  
 
 最後のリンゴ飴を食べ尽くした小百合が、俺の肩に身体を預けている。祭りの喧騒から少し  
 離れた、神社の寂れた境内の裏で俺達は互いの想いを語り合っていた。  
「まさか、吉山先生まで再婚してたなんてねぇ」  
「ああ…あれは全くの予想外だった」  
 夏祭りで俺は懐かしい面々と再会する事ができた。一つ目小僧の健三と、のっぺらぼうの  
 由香がいつのまにか結婚してたのには驚いた(子供まで生まれてた)し、他の友達も彼女や  
 彼氏をしっかり作ってよろしくやっていた。  
「ねぇ、島田君…学生時代のあだ名で呼んでもいいかな」  
「別に構わない」  
「じゃ…ゆっちゃん、聞いていいかな」  
 島田勇一、それが俺の本名だ。「勇一ちゃん」が訛って「ゆーいっちゃん」、最後には面倒  
 くさいからという理由で『ゆっちゃん』になったのがあだ名の由来だった。就職した今では、  
 こんな名前で呼んでくれる奴は誰もいなくなっていたので、懐かしいというか照れ臭い感じがする。  
「なんだよ」  
「ゆっちゃん…雪美ちゃんの事、どう思ってるの?」  
 俺は口に含んでいた最後のサイダーを吹きそうになった。周りに誰もいないとはいえ、雰囲気が  
 ちょっとアレだ。何より、今日の昼間の出来事が尾を引いてるらしい。  
「げふっげふぅ…いきなりな質問だな…」  
「だって…雪美ちゃんって美人だし…あたしと違って、人間と同じ格好してるし」  
「小百合、お前…」  
 第二次世界大戦が終わった直後、物の怪が人間社会へ公に姿を現してから既に50年以上が経過して  
 いた。それにも関わらず、世間では物の怪達に対する偏見が未だ根強いのが現実だ。そんな  
 風当たりにも負けず、彼女は自分の力で課長の地位までのし上がり、人間も含めて周囲から信頼を  
 得ている。勝ち気で男勝り…それが今の小百合の評判だった。  
「ゆっちゃん、約束してくれたよね…あたしと結婚してくれるって」  
「…ああ、忘れちゃいねぇよ」  
 高校の卒業式が終わった後、今居るここと同じ場所で交した約束。俺は彼女に相応しい男となるべく、  
 奮闘してきたつもりだ。  
「でも…」  
 小百合が俺から離れ、自分の耳に手を添える。  
「あたしの身体、雪美ちゃんとは違う…いくら頑張っても、これだけはどうしようもなかった」  
「…」  
 彼女の唇の隙間から、先が割れた細長い舌がちろちろとのぞいている。父親が蛇男、母親が人間で  
 ある彼女は、両親の身体的特徴をそれぞれ受け継いでいるのだ。  
 
「それに…見て」  
 小百合は帯を解き、浴衣をそろりと脱ぎ捨てた。上半身は人間女性のものだが、下腹部から下は  
 蛇の胴体そのもになっている。人間の女性性器に相当するものは、外見上目立つものもない。  
「あたし、やっぱり…ゆっちゃんのお嫁さんになる資格なんて…ない…」  
「な、何いってんだよ! そりゃ会社であれだけいちゃついてたら、他の連中に色々言われるのも  
 仕方ないけど…俺、そんな事気にしてないしさ」  
「だって、あたし蛇女で…どうやっても雪女みたいな身体には…」  
「小百合!!」  
 会社での勝ち気な女課長の姿はどこにも見られなかった。小学生の時に『へびおんな』といじめられて  
 いた、泣き虫の小百合がそこにいる。今にも消え去りそうで、はかなく見えた彼女の身体を俺は思わず  
 抱きしめていた。  
「ゆ、ゆっちゃ…?」  
「お前が蛇女だろうが何だろうが関係ねぇ…ましてやお前が上司だからって躊躇するのも、もうやめだ」  
「ゆっちゃん…」  
「小百合…」  
 俺達はそっと唇を重ね合わせた。互いの舌が触れあい、口蓋をまさぐりあいながら深みへ落ちていく。  
「んッ…!」  
 指先をつぅと小百合の下腹部に走らせ、性器が隠されている裂溝を探る。  
「…っ…ふ」  
 指先で少し強引に裂溝を開帳すると、満たされていた愛液がとろりとあふれ出るのが判った。指先を  
 突っ込んでかきまぜてやると、くちゅりっという淫らな音が響き渡った。祭りの喧騒もいつのまにか  
 止み、暗闇には人間と半妖が取り残されるだけになっている。  
「っ! ぁあん!  
 快楽に思わず身体を奮わせ、唇を解いて身体を反らせる小百合。後ろに倒れそうになる彼女を抱き寄せて  
 支えてやる。  
「っとっと」  
「ご、ごめんなさい」  
 頬を赤らめ、俺を見つめる小百合。そう、あの日の夜もこんな顔で俺を見つめていたんだっけ。  
「…あそこに行こうか」  
「うん…」  
 俺は彼女を抱え、境内の裏に祀ってあるお地蔵様の裏へと回った。  
「ここ、全然変わってないね」  
「そうだな…あの時のまんまだ」  
 大きな2枚岩の下に、人が二人通れるぐらいの穴が空いている。俺と小百合は視線を合わせた後、何かに  
 導かれるようにその穴へと入っていった。  
 
 穴の長さは3mぐらいだろうか。一旦下に潜った後、1m程上ると小さな部屋に突きあたる  
 ような構造になっている。  
「わぁ…」  
 小百合が思わず声を上げた。外の闇夜からは想像できないぐらい、部屋の中は明るい。  
 天井一面にびっしりと生えている苔、地面を覆い尽くす草が発する幻想的な光が、俺達を  
 歓迎するように包み込んでいた。  
「…こんなに明るかったっけ?」  
「確かに、前に来た時はもっと暗かったような気もするけど」  
 ぱさっと乾いた音をたて、小百合が光草のベッドに寝転がった。  
「ふふふ…」  
「どうしたんだ?」  
「いや、あのときってさ…ゆっちゃん、あたしより背が小さかったじゃない?」  
 下半身が蛇の彼女にとって、背丈というのが正しいかは判らないが…確かに小百合が立って  
 いるのと比べるとあの時の俺は身長が低かった…っていうか、俺は高校を卒業するまで、  
 背の順に整列すると後ろから数えた方が早かったのは事実だ。  
「…悪かったな」  
 俺がぶすっとした顔でそっぽを向くと、上半身を起こした小百合がしなだれかかってくる。  
「でも、今は…ゆっちゃんの方が大きくなったじゃない」  
「…そうだな」  
「あたしね、さっきゆっちゃんに抱いてもらったでしょ…あれ、すごく嬉しかった」  
「小百合…」  
「高校卒業してさ、すぐ今の会社に入って…最初は上司に怒られてばっかりで…」  
 俺は小百合の肩に手を回し、ゆっくりと地面へ寝転がった。視界の真っ正面に、彼女の  
 妖艶な表情が光で照らされている。  
「寮の部屋で泣いてたの…でも、ゆっちゃんの写真を見て、明日も頑張ろうって思えた」  
 やっぱり泣き虫なのも変わってないんだな…会社じゃ鬼女上司って有名だけど、あれって  
 虚勢っぽいところもあったし。  
「で、あたしが課長に昇進して、新入社員を部下につけるからって言われて…会ってみたら  
 驚いたわ。まさかゆっちゃんが同じとこに来るなんて思ってもみなかったから」  
「びっくりしたのはこっちだぜ…すんごい女課長がいるからって、びくびくしてたらお前  
 だったからなぁ」  
 
「あたし、もっと頑張らなきゃって思った。あなたに迷惑掛けるの、嫌だったから…でも」  
 小百合の表情が曇った。瞳が閉じぎみになり、長い耳も垂れ下がったように見える。  
「雪美ちゃんが来てから…ゆっちゃん、どんどんあたしから離れていくように感じちゃって…  
 あたしがどれだけ頑張っても、雪美ちゃんには追いつけない」  
 確かにそうだ。雪美は俺より少し遅れて課に入ってきたが、彼女の能力には目を見張るものが  
 ある。ふざけているように見えても、押えるべき点はしっかり押えているし、肝心な時には  
 沈着冷静になる。それに比べると、小百合は感情を抑え切れない時が時折あるし、そのせいで  
 ミスを犯す事も度々だ。だが、彼女にはその欠点が問題にならない程の”信頼”という、何事にも  
 変えがたい武器を持っている筈だ。  
「小百合、お前には仲間がいるじゃないか…それだけじゃない、雷恩寺部長も座敷童係長も…  
 お前の事を信頼してるから、あれだけ仕事を持ってきてくれてるんだ」  
「でも…でも…ゆっちゃんは、あたしを見てくれなくなった」  
「…」  
「最近は仕事が終わったらすぐに帰っちゃうあなたを見て、あたし…寂しくてたまらなかった」  
「小百合…」  
「この前も雪美ちゃんと一緒に帰って…その次の日、二人して休んでたし」  
 あれはちょっとした事情があったんだ…確かに小百合に訳を話せなかったのは悪かったけど…  
「もうあたしの事、上司としてしか見てくれなくなったと思って…あたし…あたし…んんっ!?」  
 たまらなくなった俺は、小百合の唇を強引に奪った。ぱたぱたと尾をばたつかせていたが、  
 彼女の心を溶かすように接吻を深く交わしていく内、小百合の全身から力が抜けていくのが判った。  
「…っ…ふはぁ…ゆっちゃん…」  
「勘違いするなよ…俺は今でも…お前の事を大事に思ってる」  
「え?」  
「…これからそれを証明してやる」  
「ちょ、ゆっちゃん、待っ…んぁあっ!?」  
 餅のように柔らかい小百合の乳房にかぶりついた。舌先で先端の小豆をころがし、手の平でもう  
 片一方の柔丘をゆっくり、優しく揉みしだいていく。  
「ゆっちゃ…あんっ……んくっ…駄目ぇ」  
 固く尖っていく乳房の頂きを舌で舐めずる度、小百合の身体がびくんっと震えた。足下では  
 彼女の下半身がぐね、ぐねと蠢いている。俺は乳首を甘噛みし、少し上に引っぱり上げてから  
 ぱっと離してやった。  
「ん…ぁああっ!!」  
 ぷるんと弾け、自重で一瞬ひしゃげてから元に戻る小百合の乳房。  
 
「お前、胸…随分大きくなったんだな…ぐぇっ!」  
「もう、馬鹿馬鹿! 恥ずかしいよぅ!」  
 小百合は俺の顔を抱きかかえて胸に埋め、更に尻尾で俺の胴体を巻いて締めつけてきた。  
 呼吸どころか身動きさえ出来なくなった俺は、手をばたつかせてギブアップのサインを送る。  
 こうでもしないとこんな状態で病院送りになったとあっちゃぁ、一生の恥になっちまう。  
「ぶはっ!! 馬鹿野郎…俺を絞め殺す気か?」  
「う…ご、ごめんなさい…」  
 涙目で俺を見つめる小百合。だからその表情で見つめられると、何をされても許しちまうんだって!  
「…全く、その癖はいい加減直してくれないとなぁ…一緒に住むようになったら命が幾つあっても足らないぜ」  
「え? ゆっちゃん…それって…」  
 縛めから解放された俺は、そのまま彼女の腹へ舌先を送った。  
「んぁっ! あぁん!」  
 へその周りを舐めながら、乳房を両手で揉みしだいてやる。この攻めに彼女は滅法弱かった。  
「んくぅ…あん…ひぃ! そ、そこは…」  
「…剥くぞ」  
 俺は一言呟いた後、一旦顔を上げて彼女の下腹部へ視線を移した。ヘビと同じ下腹部を指で  
 ゆっくりなぞっていくと、少しだけ鱗の捲れ具合が違う箇所がある。そこへ指を突っ込み、  
 ポケットを裏返すような感じで中身を露出させてやる。  
「んんん〜っ!」  
「だ、大丈夫か?」  
 そこには人間と変わらない女性器がひくひくと、俺を挑発するように蠢いていた。溜まっていた  
 愛液がどろりと溢れ出し、苔が発する光を受けてテラテラと輝いている。  
「ん…その…久しぶりだから…」  
「自分では…してなかったのか?」  
「だって…指を突っ込むのは…そこまでやらなくても出来るし…」  
 顔を真っ赤にして答える小百合。そう言いながらも彼女の両手は、己の胸をゆっくりと揉み  
 しだいていた。俺は彼女の蜜壺に視線を戻し、一番敏感であろう部分を覆っている鞘へ指を  
 添える。  
「あぁっ!」  
 快楽に全身を震わせ、喘ぐ小百合。それにも構わず、俺は鞘の中に隠されている雌しべを  
 ゆっくりとしごき出していく。  
「あんっ…んんっ…んぁ! ああぁんっ!  
 彼女が身体を大きく反らした瞬間、紅色の雌しべが完全にその姿を現した。すかさず俺は花弁に  
 かぶりつき、無防備な雌しべを舌先で縦横無尽に玩んでやった。  
「ひっ! ぁくぅ!! ふぁ…んん〜〜ぁっ!!」  
 じゅる、ちゅぷっと淫らな音が洞穴の中にこだまする。俺は彼女の身体の動きに合わせ、舌先の  
 動きを更に激しくしてやった。  
「ぁう! い…いっちゃう……ん……あぁん…あんっあんんっあっ…んぁあああああ!!!!!」  
 一瞬大きく喘いだ後、彼女の身体から一気に力が抜けていった。  
 
 どうしよう…身体に力が入らない。あたしは震える腕を何とか上げて、ゆっちゃんの方に  
 差し出した。  
「…大丈夫か、震えてるぞ」  
 ゆっちゃんがあたしの掌を優しく握ってくれた。ただそれだけなのに、すごく嬉しい…  
 だいぶ前に手をつないだときと比べて、男らしい角張った骨格。でも、柔らかさはそのまんまだ。  
「小百合?」  
「ごめん…力が…はいらな…」  
「この先、やめとくか?」  
 あたしはゆっちゃんの言葉にはっとなった。ここで止められたら、この先いつできるか  
 わかったもんじゃない。  
「…め…ない…で」  
 だめ、声まで震えちゃってる。  
「え…?」  
「やめな…いで…」  
 今晩、ゆっちゃんと一つになれない。そう思うだけで涙が溢れてきた。  
「小百合…いいのか」  
「ん…ゆっちゃんのだったら…あたし…平…気…だか…ら」  
 無理やり笑顔を作り、ゆっちゃんに誘いをかけてみる。  
「あたし…ゆっちゃんと…一つに…なりたい」  
「…」  
「ん…」  
 ゆっちゃんは黙ったまま、唇を私のおっぱいに重ねてきた。舌先でさっきしてくれた  
 みたいに乳首を転がし始めた瞬間、あたしの頭が快感に包まれる。  
「あん…んっ…はぁ…んぁ」  
 どこから出してるかわからないような声が勝手に出る。まるで他人が出しているような気が  
 するのに、気持ちよくなっているのは間違いなく自分だ。不思議な感覚で脳がふわふわと  
 浮いてるような気がしたと思ったら、ゆっちゃんがゆっくりと顔を上げた。  
「そろそろ挿れるぞ」  
 
「え…」  
 ゆっちゃんの張りつめたおちんちん…いや、そんな可愛い例えは似合わない。例えるなら、  
 天に向いてそそり立った肉棒とでも言うのだろうか? いや、そんな安っぽい話はどうでもいい。  
「ちょ、まだ心の準備が…」  
 数年前に初めてした時は、挿れてからすぐにイってしまったので、私は快感を感じる所まで  
 いかなかったのだ(その時は先っちょしか入ってなかったような気がする…)  
 そんな恥ずかしい事を思い出してる間に、ゆっちゃんは肉棒を私のアソコに押し当ててきた。  
「待って…あ…んんっ!」  
 あの時のように一気に来るとおもいきや、ゆっちゃんは先っちょを押し当てたまま、割れ目に  
 沿って上下に動かし始めた。あたしのあそこが彼を求めてひくつく度に、鈍い快感が波打ち  
 ながら押し寄せてくる。  
「んぁ…そんな…あっ…あぁん!」  
 一番敏感な所に先っちょを押し当てては下がるを繰り返し、中々入れてくれない。我慢しきれなく  
 なったあたしは、いつのまにか自分でおっぱいを揉み始めていた。  
「ん…お願い…ぁあ…早くぅ…んん」  
 乳首を摘み、こねくりまわす。しかし、下腹部から伝わってくる快楽とは質が違うのだ。  
「ねぇ…ゆっちゃ…あっ!? ん゛んっ!!」  
 下腹部の様子をみようと頭を上げた瞬間、突然私はゆっちゃんに貫かれた。  
「クッ…!」  
 ゆっちゃんの低い呻き声が響いた。彼のモノを飲み込んだアソコは、歓喜に打ち震えるように  
 びくん、びくんとあたしの意志と関係なく痙攣している。  
「ぁ…」  
 ゆっちゃんがあたしをじっと見つめていた。かーっと顔に血が上ってくるのがわかる。  
「ゆっちゃん…あたし…あたし…」  
「動くぞ」  
「うん……ぁ…んっ…あん……あぁんっ…」  
 ゆっくりと、優しく彼が腰を動かし始めた。それと同時に、固くなった彼があたしの子宮を  
 突き上げ、待ち望んでいた快楽が背中を伝わり、首筋を伝わり…あたしの脳髄を感電させる  
 かのようだ。  
 
「ん…くふぅ…んっ…あん…ふぅ…」  
 ゆっちゃんがキスの雨をあたしに降らせてくる。軽く接吻を交し、舌を一瞬差し入れたかと  
 思うとすぐに離れていく。捕まえられそうで捕まえられないもどかしさに、あたしの身体を  
 流れている蛇族の血が目覚めた。  
「くぅ…うぉ?」  
「もう…絶対離さない…」  
 腰の動きは邪魔しないよう、彼の下肢に尻尾を巻き付ける。身体に力は入らないが、彼に突き  
 上げられた瞬間だけ少し力が入るのだ。  
「俺も…うぅ…お前が…好きだ」  
「ゆ…っちゃ…あたしも…んんンっ!」  
 彼の動きが激しさを増した。あそこの一番敏感な部分に、彼のものがごりごりと擦り付けられる。  
「あっ…んぁ…あんっ…あぁあん…んんっ!」  
「ぐ…ぁ…くぅ…」  
 頭の中がまるで光苔に包まれてきたかのように、ぼわーっとしてきた。ゆっちゃんの事以外、  
 考えることが出来ない…それでもいい、あたしは今、世界で一番大好きな彼と一つになっているから。  
「く…だめだ…そろそろ…」  
 ゆっちゃんは腰の動きを止め、あたしから離れようとした。彼はゴムを付けていないし、あたしも  
 ピルを飲んでいない。  
「嫌…っ! 離れないで…」  
 あたしは最後の力を振り絞り、彼の腰に尻尾をまきつけて引き寄せた。がくんと彼の身体が落ち、  
 あたしのアソコから抜けかかっていた肉棒が再び奥まで突き刺さる。  
「んあ゛っ…く…出して…中に…」  
「い、いいのか…くぅ!」  
「欲しいの…あたしは…あなたの…」  
「…!」  
「お願い…んンっ…」  
「う…うぉおおお!!!」  
 彼の瞳の奥が赤く燃え上がったのを、確かにあたしは見た。ゆっちゃんは咆え上がり、今まで以上に  
 激しく腰を動かしてあたしを快感の渦に引き込んでいく。  
「ぅう…ぐぅ…ぬぉああああ!」  
「ぁんっ…んぁ…あん…んんんっ!!」  
 ざわざわと周囲の光が波打ったかと思うと、音も無く真っ白な閃光があたし達を包む。  
「うぐ…ぐっ…くぅ…くぁああああああああぁぁぁ!!!」  
「あん…あぁ…あんっあん…ん゛ん゛ぁああああああああああああっ!!!」  
 閃光が消え去った新月の夜に二匹の獣の咆哮が響き渡り、あたし達は快楽が通り過ぎた後の闇へと  
 沈んでいった。  
 
 あたし達は光に包まれ、そのまま眠ってしまったようだ。小鳥のさえずりで目を覚ました後、  
 いそいそと浴衣を着直して何食わぬ顔で帰宅した。とはいえ、乱れた髪と着衣から、お母さんには  
 一発でばれてしまったんだけど…お母さんは怒る事もなく、あたしを見てただ一言 ”おめでとう”  
 と言ってくれた。あたしは少し顔をひきつらせながらも笑みを浮かべて、うなずいてみせた。  
 
 そして短い休日を挟んで、あたしはいつもどおり出社した。制服を着込み、自分の席に座る。  
「おはようございます、課長」  
「おはよう、ゆ…じゃなくて、島田君」  
 先週までと変わらない挨拶から、また忙しい一週間が始まるのだ。となると、次に来るのは…  
「ふぁ〜…島田君、おはよ」  
「雪美さん、おはようございます」  
 あの女、朝っぱらからいきなりちょっかい出しやがった! くんにゃりとゆっちゃんにしな  
 だれ掛かり、ゆっちゃんを誘惑している…よくもまぁ飽きずに全く。  
「朝からいきなり勘弁してください」  
「だってぇ、最近よく眠れないのよぉ…これというのも、島田君とあそこにいる蛇女のせいだわ」  
 ゆっちゃんの身体にもたれ掛かるだけでなく、手を後ろから回して密着する。それにしても  
 いつもに比べてくっつきすぎじゃない!? 思わず手に力が入り、先週新調したばかりの  
 キーボードがみしりと音を立てた。と、次の瞬間。  
「ぁ…あ?」  
 下腹部の辺りがほんわかと暖かくなった。それはほんの一瞬だったが、私は聞いた…いや、  
 確実に感じたのだ…あたしとは違うもう一つの魂が、あたしに優しく微笑んだ事を。  
「…なんだか面白くないわね…やめやめ」  
「雪美さん?」  
「課長が張り合ってくれないと、やる気も半減だわ…今日のところは、あの女に譲ってあげる」  
 わざと私に聞こえるように言っているのだろう。彼女はゆっちゃんから離れ、自席に(といっても  
 島田君の隣だけど)どっかりと腰を落とした。  
 先週までは、自分で自分を追いつめてばかりだったような気がする。ゆっちゃんが近くにいても  
 孤独を感じていたあたし。でも、今は違う…ゆっちゃんと新しく授かった命が、あたしを励まして  
 くれるのだ。なんとなく心に余裕が出来たように思った私は、ふとゆっちゃんを見た。  
「…」  
 少しの間あたしを見つめ、すぐにPCの画面へ目を移す。でも、彼の視線はこう言っていた。  
 ”俺に任せろ”と。  
 あたしはお腹に手をあて、他人に見られないようゆっくりと擦った。  
 
 『ありがと…あたしの可愛い娘…生まれてきたら、ゆっちゃんと一緒にお祭りへいこうね』  
 
 
(終わり)  
 

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