“あの日”から一ヶ月くらいが経ったある朝。
中間テストも終わって、特に何もすることがない休日。
何か暇を潰せるようなことでも探すために街をぶらつこうかと家を出た時、アユミと出くわした。
互いに同じ町内に住んでいるので、玄関先でバッタリなんてことは珍しくない。
だが、“あの日”以来、俺がアユミを避けていたのか、
彼女が俺を避けているのか、もしくはただの偶然か
アユミと俺が顔をあわせることは一度もなかった。
「あ……、えっと、ひ、久しぶりだね…」
意外にもアユミが先に、少し驚いたような、
どことなく躊躇っているような顔で声を掛けてきた。
「あ、ああ…、久しぶり、元気だった…?」
俺もいきなりのことに驚いて、ありきたりな返事が口から出た。
まだ6月だというのに、日差しと湿気で日中は結構な暑さ。
アユミはそんな中、涼しげな白のノースリーブのシャツを着ている。
「ど、どっか出かけるの…?」
ちょっとおどおどしながらも、アユミのほうから話しかけてくる。
ひょっとしたら一方的に俺が彼女を避けていただけなのかもしれない。
「まあね…、あてはないけど、暇だからそのへんでもぶらつこうかと……」
「………独りで?」
「そ、そうだよ。 なんか文句でもあんのかよ?」
「じゃあ……、あ、あたしが付き合ってあげよっか?」
「な、なんでだよ!? アユミはアユミの用があるんじゃないのかよ?」
「ま、まあべつにいいじゃん! それに独りだと淋しい男だと思われるぞっ!」
まあでも、断る理由もないので、アユミについて来てもらうことにした。
なんか“いつものアユミの態度”で拍子抜けするような感じだけど、
これはこれでいつもの二人の関係でもあったから。
「か、感謝しなさいよ。 あんたみたいなパッとしない男に
あたしが一日付き合ってあげるんだから…」
隣を歩くアユミに不意に言われた。
なんか腹立たしいけど、俺もそんな気はしてる。
俺なんて良くも悪くも特徴のない、普通の高校生にしか見えない。
けどアユミは、容姿や、服のセンスなんかがいいから目立ってしまうだろう。
それを自分で言ってしまうのがちょっと玉に傷だけど。
しばらくは色々な店を回ったり、ファミレスで昼食をとったり
二人集まっても、特に目的もなく街をぶらついていた。
幸か不幸か、一月も会ってなかったおかげで互いに話題が途切れることはなかった。
それにアユミは結構買い物をして、いつのまにか俺は荷物持ちにさせられていた。
また、男の俺にはいるのかいらないのかよくわからない物を買い
笑顔で買い物袋を差し出す姿を見ると
案外最初からこのために付いて来たんではないかと思ってしまう。
「ちょっと歩き疲れたねー。 どっかで休憩しよっか?」
「ああ…」
両手の袋を軽く持ち上げ、俺の方が疲れてるってことをアピールする。
「で、どこいく? 今度はあんた決めて」
「あそこのマックでも入って…」
「何でよー、さっきお昼食べたばっかじゃん! パス!」
「なら、あっちのパチンコ屋でも…」
「ぜったい嫌よ! そういうとこはあんた一人の時に行ってよー。
だいいちあたしたち未成年でしょ!」
「…だよね。じゃあさ、とりあえず公園のベンチで休憩でも…」
「え〜、エアコン効いてるとこ行こうよー」
「じゃ、ゲーセンでも行く…?」
「う〜ん…、もうちょっとなんかいいとこないの?」
「じゃあ、どこがいいんだよ! だいたいなんで俺ばっか…」
「『俺ばっか』じゃなくて、男ならそれくらい考えなさいよ!
ほらぁ、その頭は空っぽじゃないでしょー?」
そう言いながらアユミが背伸びして俺の頭をポンポン叩いてくる。
だけどこれ以上考えたからってアユミの要望に副うような答えが出てくるわけない。
でもまあ、ここまでアユミの言いなりになってやったんだし
いい加減買い物も飽きてきた頃だったし
ここからアユミには俺の“遊び”に付き合ってもらおうか――――
「じゃあさ、ホテル行こうぜ……」
俺は周りに聞こえないような声でアユミの耳元で呟いた。
「…え? な、なに言ってんの……!?」
驚いたアユミが困惑した顔で小声で聞き返してくる。
俺はすかさずポケットから携帯を取り出して、携帯用に加工して保存したと言って
一月前の、あのアユミの写真を開いて見せた。
今まで笑顔だったアユミの表情が一瞬にして凍りつく。
「これ、なにか覚えてるよな…」
そう言ってアユミを見ると隠れるように視線を落としうつむいている。
「ホテル代は奢ってやるからさ…」
しばらく無言でホテル街を歩いて、俺は適当なホテルの前で振り返った。
俺もこんなところを歩くのは初めてだったので周囲を必要以上にキョロキョロした。
周りから見れば挙動不審に映っただろうがアユミは黙って俺に付いて来ていた。
この前あの画像を、住所氏名付きでネット上に流すとか言ったのが効いたのかもしれない。
実際さっき見せた画像はアユミじゃなくて、単に興味本位で取ったエロ画像だった。
携帯の小さな画面で遠めにチラッと見せただけで動揺しているところを見ると
アユミにとってあの日の出来事はかなり深く心に刻まれているのだろう。
2時間休憩の料金で部屋に入ると、アユミはベットに静かに腰を下ろした。
俺も荷物を置いて、部屋の中を見回してみた。
浴室が透けて見えたり、無駄に大きい鏡が置いてあったり
机の引き出しの中にはバイブやローターなんかが置いてあったり、
AVとかカラオケセットとかちょっとした対戦ゲームとかまであった。
初めて来た俺には、家捜ししてるだけで2時間が過ごせそうな感じだった。
一方のアユミは相変わらずうつむいてジッとしていた。
俺も辺りを見回しながらアユミの前まで来ると、立ち止まって彼女を見下ろす。
「……い、いいよ。 自分で脱げるから………」
まだ何も言ってないのに、彼女の方からゆっくりとシャツとズボンを脱いで下着姿になった。
だけどさすがにここから先は脱ぐのを戸惑っているようだった。
「あ、あのさ、ちゃ、ちゃんとゴム着けてやってね……」
「大丈夫だって、本番までする気ないし…」
「……そ、そっか…、それってさ……」
「どっちにしろお前に選択権はないよ。 とりあえず下だけ脱ぎな」
「…………」
俺はアユミに背を向け机の引き出しからローターを取り出した。
スイッチを入れると手の中で単調に、不気味に振動する。
それを手に持って振り返るとアユミはパンツを脱いで恥ずかしそうにしている。
もう彼女は完全に俺の言いなりになるおもちゃになってしまった。
まだアユミはベットに腰掛け、両手で恥ずかしそうにももの辺りを隠している。
「立って」
俺はその彼女の目の前まで来ると、冷淡に一言だけ言い放った。
アユミが黙って立ち上がる。
「足開いて。 あと手が邪魔…」
俺がそれだけ言うと、アユミは静かに両足を肩幅くらいまで開き
両手をゆっくりと胸の辺りまで持っていった。
俺はアユミの前に屈むと、手の平にローションをたっぷりと垂らし
アユミの露わになった淫核にそっと塗りつけた。
「ぁぁっ……、んんっ……」
アユミの口から湿っぽい吐息混じりの声が漏れる。
まだ愛撫らしい愛撫はしていないが、アユミの足はかすかに震えている。
「アユミってさ、結構敏感でしょ? すげぇ感じやすいっていうか…」
俺には本やビデオとかで得た知識くらいしかないけど、
それでも彼女は俺の知る限りかなり感じやすい気がしていた。
「し、知らないわよ! わ、悪いの…!?」
照れ隠しか、アユミは屈んでいる俺の頭に手をやり髪をクシャと掴んでくる。
「べつに…、むしろ俺としてはそっちの方が面白いから好きだけどね」
「ど、どういうことよ、面白いって!!」
さらに髪を引っ張る手に力を入れられてる。
俺はかまわず手の中で揺れ動くローターをアユミの淫核にあてがった。
「っっん…、あっ! あああぁっっ!!」
数十秒ほど淫核にローターを当てているとアユミは
しりもちをつくように後ろのベットに腰を落としてしまった。
「…ダウンするの早すぎだって」
「だ、だってぇ……」
「なら、ゲームしようぜ」
「え、ゲーム…?」
アユミがキョトンとした瞳で見返してくる。
「そう、今みたいにやってさ、アユミは両足の裏以外を床に着いたら負け。
んで、アユミが負けたらさっきの画像、チェーンメールにして回すから」
「い、いや! お、お願いだからやめてよ!」
「嫌なら勝てばいいじゃん」
「じゃ、じゃあ、どうすればあたしの勝ちなの!?」
「俺が飽きるまで耐えられたらアユミの勝ちでいいよ。
もし勝ったら帰りにアイスでも奢ってやるから」
「な、なによぉそれ……」
まあ誰が考えても公平なゲームではないが俺は彼女に勝たせる気はない。
だけど今のアユミの状況では、これでも俺に従わざるを得ない。
「ほら、早く立てよ。 不戦敗でもいいんだぜ……」
この一言で観念したのかアユミがゆっくりと立ち上がる。
必要以上にローションを付けたせいかアユミの太ももを伝って水滴が流れ落ちる。
「じゃ、スタートね…」
俺はローターのスイッチを切り、手での愛撫を始めた。
「…っっっんんんんぅ! あぅぁぁああああぁぁぁっっ……!!」
単調に動くローターより直接手で触れた方が細部まで攻められる。
ローションで湿った手を滑らせて、皮に包まれたアユミの淫核を裸にしていく。
「ああぁぁぁっっ!! だ、だめだめぇ! あああぁぁぃっ…!」
アユミの息遣いが徐々に荒くなってきているのがわかる。
わざと手の動きを大きくし、クチュクチュ音を立てた。
おそらくアユミにも聞こえているだろう。
「あぁぁぅぅ…、ちょ、ちょっとストップっ…、だ、だめ、たえらんないよぉ……」
アユミが、目の前で屈んでいる俺の肩に手をついて、まるでタップするように叩いてくる。
「なんだよストップって…? まだまだやめる気ないからな」
「んんんっっっいぃ…! あっ…、だ、だめっ、な、なんか力ぬ、ぬけちゃ…うぅ…」
肩に置かれるアユミの手が徐々に大人しくなり、その代りに体重がかかってくる。
俺は手の動きをさらに早めると肩に置かれたアユミの手が
しがみつくように俺のシャツを握り締めてくる。
「ああぁぁっ……ダメッ! あぁんんぅっっっっ!!!」
突然アユミの足がガクンと崩れ
目の前で膝を突いている俺にもたれかかるように倒れこんできた。
「ハァハァ…、あ、ご、ごめん……」
今アユミは吐息が肌で感じられるくらいまで近づいていた。
突然倒れかかってきたことを謝罪しているのだろうが一応ゲームのルールを意識してか
体が床につかないように手だけはしっかりと俺のシャツを掴んでいた。
そんなことで謝らなくてもいいけど、ゲームを意識しているしたたかさに腹が立ってしまった。
一瞬止めていた手をまた動かして、アユミの淫核を刺激した。
「あぁっ! ちょっ、ちょっと、す、すぐはだめだってぇ! あああぁぁぁっっ…!!」
「まだゲームは続いてるだろ?」
今度はいきなり手を少し早めに動かす。
さっきイッたばっかりのアユミは少しでも刺激を和らげようとしてか
俺に必要以上にしがみつき、足を閉じようとしてきた。
「おい、アユミ。 それ反則だって…」
「ぁんんっっ…、お、おねがいぃ…」
「アユミ、反則負けにしてもいいんだぜ…」
「い、いやぁ…、ああぁっっ!! だ、だめっ、も、もうだめぇぇぇっ!!」
アユミがさらに、両腕で締め付けるようにしがみついてくる。
もう膝が崩れて、完全に足の裏だけなんとか床についているという感じで
掴みかかってきて顔を俺の右肩に深く沈めている。
「ぅんんっっ!! ぁんんんぁっっ………!」
肩に顔を埋めたアユミが、必死に声を抑えているのか一層顔を強く押し付けてくる。
俺の着ているTシャツが引きちぎれるんじゃないかと思うほど
今のアユミは力を込めてきて離そうとしない。
肩に埋めたアユミの髪からほのかにシャンプーの爽やかな香りと汗の混ざった匂いがする。
緊張か快感か、今のアユミは外を歩いていた時より汗ばんでいる。
「アユミ、痛いって。 自分で立てよ、ルールだぞ…」
「ぁぁんんっ! ち、ちがうの…、い、今だけだか…らぁっ! あああぁっっ!!」
「何が今だけなんだよ?」
「あぁぁ…、だ、だめ…、ぁぁぅんん……、あああぁぅっっっ!!」
アユミの体が一瞬ビクンとそった後、小刻みに痙攣している。
体を密着させている俺にもそれが少なからず伝わってくる。
アユミの、俺のシャツを握る力が徐々に緩んでいく感覚がわかる。
「アユミ…?」
放っておくとずり落ちて床に倒れこんでしまいそうな彼女の体をつい左手で支えてしまった。
「ハァハァ…、あ…、え…?」
アユミは今自分がどういう状態なのかもよくわからないといった様子で力なくしがみついている。
ふと俺も、淫核への愛撫がいつの間にか止まっていることに気がついた。
「手離していいの?」
「ハァハァ、え? …え?」
俺は、まだよくわかっていないという感じのアユミの淫核を軽く摘み上げてみた。
「あうぅぅっっ!!」
無理な体勢を強要させているせいか、以前よりもアユミは感じやすい気がする。
何度も彼女の体に触れているうちに、彼女の感じ方もだんだんわかってきた。
優しくしてやるより、結構荒っぽい方が好きらしい。
「ぅぁあっっ!! やぁ、だ、もぉっ、もうだぁめぇぇぇっっ!!」
俺はアユミの言葉にならない訴えを適当に聞き流し無心で右手だけ動かした。
だけど次第にアユミの体が完全に俺に支えられていなければ
今の体勢を維持できなくなってきている。
「アユミ。 手離していいの? 負けちゃうよ?」
でも彼女からの返事はない。
淫核への愛撫を止めて、落ち着いてみるとアユミは全体重を俺に預けぐったりしている。
そんな彼女をそっと抱きかかえた。
女の子って思ったより軽いんだな…。
そのまま静かにベットに横にしてあげる。
「寝るの早すぎだって…」
チラッと時計を見るとあと40分くらい残ってる。
「なんか半端に余っちゃったなぁ…」
手持ちぶたさでテレビの辺りを探ると、家庭用ゲーム機といくつかのソフトがあった。
そのうちの一つをケースから出して電源をつける。
「たぶんここに入ってエッチもしないでゲーム40分もやるの俺が初だろうなぁ…」
しかしゲームをはじめても10分ほどで電源を切ってしまう。
やってみたいと思ってたゲームのはずだけどやる気がでない。
「無理矢理起こしてもう一回戦やろっかな…」
とも思ったけど残りの時間は部屋の中を観察でもして暇を潰した。
突然内線電話が鳴り響いた。
でてみると残り時間が15分だから延長するか退室してくれとのこと。
「いきなりこんなの鳴らしたらムードぶち壊しじゃんか…」
退室すると一言言って切った後呟く。
でも入るときこのサービスを希望したのも、間抜けにも自分だった。
アユミを見るとまだ寝ている。
俺はバスルームから水鉄砲を持ってくるとベットの上で寝ている
アユミの淫核に2、3発撃ってみた。
「ふあぁぁっっ!!」
アユミが飛び起きる。
「な、なに…?」
「時間だって。 もう行くよ」
「あ、そ、そうなんだ? シャ、シャワー浴びるくらいの時間ってある…?」
「あと15分らしいから、急げよ」
「う、うん」
ベットに座ってバスルームを見るとアユミがシャワーを浴びてる姿が丸見えだった。
マジックミラーになってるようでアユミはこっちを向いて
洗った後の髪を整えたり、腰のラインに手を当てて気にしてるようだった。
しばらくしてアユミがバスルームから出てくる。
一応きっちりバスタオルを巻いていたけど、なんか逆に裸よりそそる。
「ごめんね、お待たせ」
「ああ、まだ髪乾かすくらいの時間はあるよ。
あとあんま気にすることないんじゃない? アユミ結構スタイルいいと思うよ」
「へ? え? な、なんのこと?」
突然の言葉にアユミは目を丸くして訊き返してくる。
「後ろ、見てみな。 悪いけど丸見えだったよ」
アユミが恐る恐る振り返る。
「う、うそ!? な、なんなのこれ!?」
あまり室内を見なかったアユミは本当に気づいていなかったようだ。
アユミは力なく座り込んでしまった。
シャワーシーン見られたのがそんなにショックだったんだろうか。
その直後セットしてあったタイマーが鳴り俺たちは追い出されるようにホテルを出た。
すでに薄暗くなった道を並んで歩くが、どちらも無言のまま。
さっさと独りで帰りたくなるような何とも言えない重い空気。
まだ家までは結構あるし、荷物持ちの俺は一応彼女の家まで付いていった方がいいのだろう。
そうなると、この静寂はよけいイライラする。
「あ、あのさ…、あたしってそんなに魅力無いの…かな……?」
「あ、ああ?」
一時間くらいは黙りっぱなしだったアユミが突然口を開いた。
おまけに俺にはその質問の意味がよくわからなかった。
「なんのことだよ?」
「い、いや、その…、あたしには女としての魅力が無いのかなぁ〜…って……」
バスルームで気にしてたのはこのことか…?
「そんなことないんじゃない? バスタオル巻いて出てきた時はちょっとドキッとした…」
「そ、そうなんだ…」
「なんでそんなこと訊くの?」
「え、えっとなんでもない、なんでもない! 忘れて! ハハハ………」
その後はまたアユミの家に着くまで終始無言だった。
両手の荷物を彼女に渡す。
「そういやさっきの画像さ…」
「…………」
これ以上言っていいのか迷う。
「うん…、あんたのこと信じてるから…」
そのままドアが閉まりアユミが見えなくなった。
なんかうまく丸め込まれた感じ…。
まあいいか。
「あの画像送った」とか嘘ついて、ショックで自殺でもされたら困るし。
それに多少気の強いままの方が、これからも弄びがいがあるし――――