7月の下旬、夏の盛りの昼下がり。  
 今日は高校の終業式で、こんな早い時間に帰宅となった。  
 カバンの中にはヤギにでも食べさせてしまいたくなるような通知表が入っている。  
 電車を降りて、刺すような日差しの中、駐輪場へ向かう。  
 「や! あんたも今帰り?」  
 あまりの暑さにだらだら歩いていた俺の背中を、誰かがポンと叩いてきた。  
 振り返った先には、こちらも学校帰りか制服姿のアユミが立っていた。  
 「あ、なんだアユミか…」  
 「なんだってなによ、失礼ね! それより後ろ乗っけて!」  
 アユミは俺より先に、俺の自転車を見つけると荷台を叩きながら笑顔を向けてきた。  
 「やだよ、家までほとんど上り坂じゃんか。 自分の自転車乗れよ」  
 「今日遅刻しそうだったから、お父さんに車で送ってもらったんだ。  
  いいでしょ? ジュースおごるからさ!」  
 「しょうがねーな、平らなとこだけだぞ」  
 相変わらず強引だけど、コーラの缶を渡され渋々承諾する。  
   
 しばらくアユミを荷台に乗せて自転車を走らせるが、すぐに上り坂。  
 お互いに降りて、自転車を挟んで並んで歩いて上る。  
 アユミからおごってもらったコーラをグイッと飲み干しながら彼女にチラッと目をやる。  
 どうして女子の夏服は、こんなに目のやり場に困るつくりなんだろう。  
   
 「ん、あたしの顔になんかついてる?」  
 自分の分のコーラの缶を持ったまま、アユミが俺の方を向いた。  
 「は? べつに何もついてないけど。 な、なんで?」  
 「そっか、何か見られてる気がしたけど、自意識過剰だったかな…」  
   
 やばい―――  
 言われてみれば、駅からここまでアユミがとった行動が全て脳裏に焼きついている。  
 屈んで自動販売機から缶を取り出す姿、人差し指で髪をかき上げる姿。  
 どんな些細なしぐさも見落とさないくらい、俺の視線が彼女に行っていたんだろうか。  
   
 「ほらぁ、やっぱり見てるじゃん。 なーに? また何かイタズラしたんでしょ!?」  
 そう言いながらアユミは髪を触ったり、  
 背中に何か張られてるんじゃないかという感じで背後を気にしている。  
 「ち、ちげーよ。 …そのコーラくれ、またここからおまえ運ばなきゃいけないんだから」  
 「へんなの、そんなに喉が渇いてたんだ?  
  じゃ、もう一口だけ飲んだらあとあげるわよ」  
 アユミがコーラの缶をそっと俺の方に差し出す。  
 俺は奪い取るように缶を受け取ると一気に飲み干し、また自転車のサドルに腰掛けた。  
 でも喉は渇いていなかったし、むしろ炭酸で腹いっぱいになっていた。  
 とっさに、誤魔化すために口から出た言葉。  
 ここに至るまでの自分の気持ちの変化が説明できない。  
 
 「早く乗れよ! 置いてくぞ!」  
 「もー、そんなに急かさなくてもいいでしょ!?」  
 自転車の荷台が一瞬重くなったかと思うと、アユミの腕が俺の腰をギュッと抱え込む。  
 額から汗が流れ落ちるけど、暑いかどうかさえわからないくらい無心で自転車をこぐ。  
 今までなんとも思わなかった、いや鬱陶しいとさえ感じていた彼女の行動が  
 今では俺の思考を止めてしまうほどになっているなんて―――  
 
 
   
アユミを家まで送り届けて帰宅すると、  
 俺は煮え切らないような気持ちのまま、ベットにゴロンと横になった。  
 「いつからだったかな……」  
 昨日今日じゃないけど、それほど昔からでもない、彼女を特別な存在と意識し始めたのは。  
 天井を見つめたまま、エアコンの効いた涼しい部屋で独り物思いにふける。  
 少なくともこの前あいつをこのベットに押し倒してイタズラした時は、何の罪悪感もなかった。  
 だからあの時はまだ、アユミはその辺を歩いてる他の女と変わらなかったてことなんだろう。  
 いや…、よく考えたら、幼馴染でいとこという微妙な関係と  
 俺とアユミじゃつり合わないという勝手な思い込みで、自分の気持ちを無視していただけなのかも。  
 それなら、むしろ彼女に嫌われた方が気持ちが楽だとさえ思っていた。  
 だけど今は、弱みを握って獲た関係だったとしても彼女を手放したくない。  
 でもどうせアユミにとって俺は、数ある選択肢の内の一つに過ぎないのだろう。  
 そう思うと、俺だけが一方的にあいつに夢中になるなんて馬鹿げてる。  
 それなら面と向かって嫌いと言われた方が、何倍も潔く諦めがつく。  
 「あ、結局ここに行き着くのか……」  
 
 「ねえ、なにボーっと考え事してるの?」  
 変化のない天井だけ映していた俺の視界に、突然アユミの顔が飛び込んできた。  
 俺は飛びのいて壁に背中をぶつけるほど驚いてしまった。  
 噂をすればなんとやら、というがあまりにもタイミングが良すぎる。  
 「ア、アユミ!? なんでここに居るんだよ!?」  
 「なぁにそれ、お昼食べたら遊びにいくって言ったじゃん。  
  やっぱりあたしの話なんて半分も聞いてないんだから…」  
 「だ、だからって勝手に入ってくんなよ!」  
 「え、玄関のベル何回も鳴らしたのに…?  
  またあたしの事無視して勝手にどっか行っちゃたのかと思ったよ……」  
 “また”ってどういう意味だろう。 そんなに無視してないはずだけど…。  
 最近冷たくしてたから、そのことだろうか。  
 「やっぱ涼しいね、エアコンの効いたとこは。  
  おじさんもおばさんも仕事? お昼はなんか食べたの?」  
 それよりなんでこいつはこの部屋に入ってくることに抵抗がないんだ…?  
 俺がアユミの立場だったらとっくに俺との縁を切ってるのに。  
 「お腹減ってないの? なんか作ろっか?」  
 「え、おまえ料理できんの?   
  昔ままごとで泥だんご無理矢理食わされて以来アユミって家事音痴って印象が…」  
 「し、失礼ね! そんな10年以上も前のことまだ覚えてるわけ!?  
  そこまで言うんならみてなさいよ、絶対おいしいって言わせてあげるから!」  
 アユミはそう言い残して、部屋を出ていった。  
 
 またベットに倒れこんで、天井を見つめる。  
 「なに考えてたんだっけ…」  
 さっきまではベルが鳴るのもわからないくらい集中していたはずなのに  
 一度とぎられた妄想モードは容易に再開することはできなかった。  
 しばらくは何も考えずにベットに横になって天井だけ見ていた。  
 
 「お待たせ!」  
 ドアが開いてエプロン姿でお盆を持ったアユミが入ってくる。  
 「冷やし中華だよ! さ、召し上がれ」  
 アユミがテーブルの上に冷やし中華の入った皿と、麦茶の注がれたコップを並べた。  
 「おばさんの勝手に借りちゃった」  
 アユミがエプロンを掴んでみせる。  
 俺は無視して箸を持つと一口摘む。  
 「あ、それなりにうまい…。でもこれ市販のやつだろ? 誰が作っても味変わらないじゃん…」  
 「そ、それが作ってくれた人に対する態度なわけ!?  
  この卵焼きときゅうりとトマトはあたしが作ったんだからね!  
  それにこの絶妙なゆで加減、素人にはできない芸当よ!」  
 「ゆで時間なんて袋に書いてあるじゃん。  
  それに卵はともかく、きゅうりとトマトなんて切るだけだろ…」  
 「なによバカ!! あんたって人の好意を無にする天才ね!」  
 そのままアユミも向かいに座り頬杖をついて、俺の食べる姿を静かに見ている。  
 俺は黙って一口、また一口と口に運び、いつの間にかきれいさっぱり皿を空にしていた。  
   
 「まったく…、素直じゃないのね。  
  おいしいならおいしいって言えばいいのに」  
 アユミが満足そうな笑みを浮かべて立ち上がる。  
 皿を再びお盆に乗せると台所へ行ってしまったみたいだ。  
   
 また部屋で独りになった。  
 俺は気だるく立ち上がるとクローゼットから旅行カバンを取りだし  
 着替えやらをまとめて確認を始めた。  
 やがてアユミが戻ってきた。  
 「ん、なにやってるの?」  
 「ああ、明後日から部活の遠征だからその準備…」  
 「そっか、がんばってね……」  
 その一言で俺はつい手を止めてアユミの方を振り向く。  
 ちょっと前までさんざんサッカーやってることを批判してたくせに意外だ。  
   
 ―――このままじゃこっちの調子が狂ってくる。  
   
 俺は棚の上で埃をかぶったデジカメを取り出しアユミに詰め寄った。  
 「何が言いたいんだよ!? 気になってんのはこれか!?  
  だったら今目の前で消してやるよ!!」  
 デジカメを突き出し“例の画像”が入ったメモリーを全て消去して見せた。  
 「…これで自由だな。 満足か?」  
 アユミの顔から笑みが消え無表情で俺を見つめ返してくる。  
 「なにそれ…、そんなものであたしを繋ぎ止めてると思ってたの……?」  
 また思い付きでの行動、カッとなっての行動、思考が働かない。  
 「好きでもない人の部屋に、春休み毎日遊びに行けると思う?  
  好きでもない…、いつ出てくるかもわからない人を  
  偶然を装うためだけに家の前で待ち続けることなんてできると思う?  
  好きでもない人を、炎天下の中、一緒に帰るためだけに待つことなんてできると思う?」  
 アユミが、何を言っているのかわからない……。  
 「ずっとずっと、昔から一番好きだったから……、  
  いつか振り向いてもらえると思って努力したけど、あたしには無理みたい……」  
 アユミの頬を一粒の涙が伝って落ちた。  
 これは俺に向けられた言葉なんだろうか…。  
 「これ以上何をやってもウザがられるだけみたい……。  
  あたしたち、幼馴染じゃなったら、いとこ同士とかじゃなかったら……、  
  もっと仲良くなれたのかな…」  
 アユミが踵を返しドアのノブに手を掛けた。  
 「さよなら……」  
 
 ドアが開きかけ、アユミがいなくなってしまう。  
 ダメだ!!  
 今、このまま彼女を行かせてしまったら、もう本当に、永久に会えなくなる気がする。  
 俺は金縛りにあったように固まった体を必死に動かし、  
 ドアとアユミの間に割って入り、彼女の行く手を遮った。  
 「……アユミ」  
 アユミは動きを止め無言でこちらを見ている。  
 その両目からは薄っすらとだが確実に涙の筋がうかがえる。  
 「ごめん……。 本当にごめん…」  
 何やってたんだろう俺は…。  
 昔から何をやるにも何処へ行くにもいつもアユミから誘ってきてくれたのに。  
 俺は、俺と彼女じゃつり合わないんじゃないかとか、  
 親にばれたら色々突っ込まれて面倒なことになるとか、  
 そんなくだらない理由で自分の正直な気持ちをずっと押し殺し続けてきた。  
 最近アユミの態度が、少しだけだけど、突然変わった。  
 それは俺が『見下されてるような気がする』と言ったから彼女が意識したんだろう。  
 今日だって、先に駅に着いたアユミが駐輪場で俺の自転車を見つけ  
 いつ来るかもわからない俺を隠れて待っていてくれたんだ。  
 こんなやつますます俺にはもったいない。  
 でももうそんなこと関係ない。  
 アユミを悲しませちゃいけない………。  
 
 「ごめんだけじゃ、わからないよ……。 どういう意味……?」  
 頭の中が真っ白になってこれ以上言葉を選ぶ余裕がない。  
 「ごめん……。 なんて言っていいかわからないから…」  
 アユミが泣いてる姿なんて、俺の記憶にはない。  
 もともとそう簡単に弱い部分を見せない娘だっただけにすごく悪いことをしてしまった感じがする。  
 「うまく伝わらないかもしれないけど……」  
 アユミはこっちが根負けして目を逸らしたくなるくらい真直ぐに見つめ返してくる。  
 「泣かしてごめん……。悲しませてごめん……。  
  たぶん…、じゃなくて絶対、俺もアユミと同じ気持ち…、ずっと昔から。  
  でも俺、変な意地張りすぎてた……。 ごめん」  
 かつてないくらい鼓動が高鳴っている。  
 裏腹にアユミは相変わらず黙ったまま。  
 「俺もアユミが好きだったから、嫌われるのが怖くて……。  
  本当の自分を見せて嫌われるくらいな、最初から嫌われるような態度とった方がマシだと…」  
 とにかくなにかしゃべらなければと思った。  
 静かなままだと気が狂いそうだった。  
 
   
 アユミがかすかに微笑んで、指で目元を拭っている。  
 「…おかしいよね。 何年もお互いの気持ちに気づかなかったなんて…。  
  あたしたち、思ったより気持ち伝えるの下手クソだね……」  
 あまり真直ぐに見つめ返してくるアユミから、つい目を逸らしてしまう。  
 「だな…。 俺もう変なことに意地張るのやめるから、  
  ……だからさ、泣くなよ。 いつもみたいに笑ってさ。  
  泣いてる顔も悪くないけど、アユミは笑ってる顔の方が似合うからさ…」  
 「バカ、誰が泣かしたと思ってんのよ…」  
 突然アユミが俺の胸に顔を埋めてきた。  
 両手で、俺の制服のワイシャツをギュッと掴んでいる。  
 心臓が張り裂けるくらい高鳴って、きっとアユミにも聞こえてるはず。  
 
 
 また俺はベットに横になって視界は天井を映している。  
 今度は隣に、アユミが同じ格好で寝そべっている。  
 足を投げ出して上体だけベットに預けると、ちょうど二人分のスペース。  
 「…でもさ、なんで俺だったの?   
  俺なんて、自分で言うのも何だけどいいとこなんてあんまりないし、その…」  
 「知ってる。 あんたのことなんか全部知ってるよ…。 全部知ってるうえで、全部好き…。  
  いいとこないなんて言っちゃだめだよ。 あたしには嫌いなとこなんて見つけらんない…」  
 「だけどさ、俺程度のやつだとそのうち愛想つかされるんじゃないかって…」  
 「そんなことあるわけないよ。   
  そんなに簡単に、嫌いになれるなんて……、あるわけないじゃん…」  
 「で、でもさ、俺には…」  
 だけどそこで俺の唇にアユミの人差し指が添えられ話が遮られた。  
 「………?」  
 「もう、その話禁止! あたしも同じこと不安に思ってるんだから…。  
  それより、あたしが部屋に入ってきたとき何考えてたの?」  
 「ん……、アユミのことかな……」  
 「え……?」  
 「…俺もアユミのこと、全部知ってるし全部好き、かな…って。  
  たぶん…、じゃなくてずっと変わらないと思う。 これからもずっと…」  
 「なにそれ〜、真似しないでよ〜。 恥ずかしいなぁ…」  
 天井からアユミに目を移すと、目を閉じて笑みを浮かべている。  
 「なに笑ってんだよ。 そんな変なこと言ったか?」  
 顔から火が出るような事を言ったのは事実だけど、それはアユミも同じ。  
 「ううん、長年の想いが報われたのかなって…」  
 長年っていったいどれくらいだろうか?   
 話を聞く限りアユミは、俺が意識し始めるよりずっと前からなんだろうな…。  
 「そっか……。 ごめんな、アユミ」  
 「ん、あたしもう謝られるようなこと何もされてないよ?」  
 「いっぱいしてるよ俺は。 ホントごめ…」  
 その瞬間、俺の唇にアユミの唇がそっと重ねられら言葉がかき消された。  
 「……もうごめんも禁止。 あんたらしくないよ、そんなの」  
 スッと唇を離したアユミを見ると、少し頬を赤らめ優しく微笑んでいる。  
 きっと俺もさほど変わらない顔をしていたに違いない。  
   
 俺はわざと大きな音を立てて立ち上がった。  
 「あれ、どうしたの?」  
 背後からアユミが心配そうな声をかけてくる。  
 「ああ、制服のままだったから着替えようと思っただけ」  
 ベットを背にしてクローゼットを開こうとすると、アユミも立ち上がり近づいてきた。  
 「じゃ、着替えさせてあげよっか?」  
 「なっ、何言ってんだよ、いいよ! それくらい自分でできるって…」  
 「ま、いいからいいから」  
 かまわずアユミがクローゼットを覗き込む。  
 「これなんてどう? 今日のあたしとお揃い…」  
 アユミは黒いTシャツとジーパンを取り出して見せる。  
 「あ、ああ、じゃあそれでいいや」  
 「じゃ、これで決まりね!」  
 そう言いながら、彼女が俺のワイシャツのボタンに手をかける。  
 「い、いいって。 自分で脱げるから!」  
 「ほら、動いちゃだめ…」  
 ワイシャツのボタンが全部外され、ゆっくりと脱がされる。  
 服を誰かに脱がされるってこんなに緊張するものなのか……。  
 思わずアユミのTシャツを掴んでしまう。  
 「きゃ…、ちょ、ちょっと…」  
 アユミがそれに驚いてよろけてしまう。  
 思いのほか力が入りすぎてしまったみたいだった。  
 
 「あ、わ、わりぃ…」  
 「もう、そんなに焦らなくてもいいでしょ!? 逃げたりしないからさ…」  
 そう言って、アユミがゆっくり両方の手をこちらに差し出してくる。  
 「いいよ……。 でも今日は脱がせてくれると嬉しいな…」  
 「あ、ああ…」  
 力を込めて服を引っ張りすぎたせいで勘違いされたのかもしれない。  
 そこまでするつもりはなかったけど、というかアユミにとってトラウマになってると思ってた。  
 そう思いつつもアユミのTシャツの襟元を掴みそっと持ち上げる。  
 「……俺が言うのもなんだけど、正直こういうの嫌がってると思ってた」  
 「嫌だよ…。 他の人にされたらね………」  
 アユミはあからさまな照れ笑いを浮かべて答えた。  
 「あ、ハハ…、さっきからすごいこと言ってるね、あたし……」  
 ブラのホックを外すため彼女の背後へ回した手の中でまだ恥ずかしそうに笑っている。  
 「……違うよ。 もうちょい横に引っ張って…。 ほら………」  
 少し手間取ってる俺を見かねて彼女も背中に手を伸ばしてきた。  
 「こんななってるんだ、これって…」  
 「興味津々だねぇ、それあげよっか?」  
 「い、いらねーよ! 俺がもらってなんに使うんだよ!?」  
 「冗談だってば、赤くなっちゃって! おばさんに見つかったら変態だと思われるよ?」  
 「あ、コノヤロ…」  
 アユミの肩を軽く押すと、彼女は両腕で胸を隠しながら大げさにベットにダイブする。  
   
 俺はベットに横たわるアユミに近寄りズボンのベルトを外して、ゆっくりと脱がせる。  
 そのまま下着も脱がせるが、怖いくらいなんの抵抗もない。  
 「無抵抗って、なんか意外…」  
 「な、なに? 男の人って、邪魔された方がよかったりするの……?」  
 「え、べつにそんなことないけど…」  
 「そ、そりゃ恥ずかしいけどさ。 この前よりも明るいし……。  
  でも、なんだかそんなに怖い感じしないから……」  
 俺はそっと両手をアユミの太ももに添えて、彼女の足を開く。  
 「ず、ずるいよ…。 あんたも下脱ごうよ……」  
 そう言われ自分のベルトに手を当てるが、つい手を止めてしまう。  
 「どうしたの? ……あ、脱がせてほしいの?」  
 手の止まった俺を見て、アユミが悪戯な笑顔を向けてくる。  
 「違う。 俺は禁欲、明後日から男ばっかで集団生活すんのに  
  ここでこんないいこと覚えちゃったら、一週間も耐えらんないって」  
 怖いのが半分と、自制が効いたのが半分、本当はただ勇気が足りなかっただけなんだろうけど。  
 好きな人の前だと、全てをさらけ出せるアユミの健気さに心の奥で感服していた。  
 けどアユミは俺のこんな意味のわからない言い訳に、苦笑いで頷いていた。  
 
 また閉じかけたアユミの股を開き、露わになった淫核にそっと口づけした。  
 「ぁんんっ……」  
 アユミは両手でシーツを握り締めている。  
 この前ホテルで俺のTシャツを握ったように、シーツ剥ぎ取らんばかりに。  
 俺は舌で、アユミの割れ目から淫核にかけてをゆっくり舐め上げた。  
 「ああああんっっっ!!!! んん……」  
 アユミがとっさに両手で自分の口を覆って声を抑える。  
 「い、今なにしたの……?」  
 「なにって、舐めただけだけど。 アユミ、声でかくない?」  
 「う、うそぉ…? わ、わかんない……」  
 「よっぽど……、効いたんじゃないの?」  
   
 今度は、太ももからゆっくりと舐める。  
 「ぁ…、く、くすぐったい…」  
 同性から見ても、うっとりするんではないかと思うくらいキレイな足。  
 その足をなぞるように、ゆっくりとまた彼女の淫核に近寄る。  
 「だ、だめ…、っっん! …な、舐めるようなとこじゃないよぉ……」  
 またアユミがシーツをギュッと握っている。  
 それが目に入り、そっと自分の左手を近づける。  
 一瞬触れ合ってしまったかと思うと、彼女が強く握り返してきた。  
   
 俺の家に来る前にシャワーでも浴びてきたのだろう。  
 かすかに石鹸の香りがする。  
 再び、唇でアユミの淫核を軽く噛む。  
 「ああんっっ!!!」  
 アユミの右手が、少し痛いくらいに左手を握り返してくる。  
 そのまま舌での愛撫を続けた。  
 「あっ! だ、だめぇ…、あっ、あああぅんんっっっ!!!」  
 アユミの体が大きく波打つ。  
 と同時に彼女の握り返す力が緩み、俺の手が自由になった。  
 そっと振りほどいて、手を見るとくっきりと爪あとがついている。  
 「ア、アユミ、痛いんだけど…」  
 俺の声に気づいたのか、アユミが目だけこちらに向けてきた。  
 「風呂入ったとき沁みそうだぞ、これ…」  
 「ハァハァ……、え…、そ、それあたしがやっちゃったの…?」  
 左手をちらつかせて見せる。  
 「他に誰がいるんだよ」  
 「あ、ご、ごめ…っ! あんっ!! や、やめっ…」  
 アユミが言いきる前にまた、右手を彼女の淫核に伸ばした。  
 「罰として、お仕置き」  
 
 もう彼女の癖はつかんでいた。  
 親指と人差し指で挟む様に摘むと転がすように弄ぶ。  
 「ぁんんんっっ!! だ、だ…め…。 …んっっ!!」  
 いつの間にかアユミは、枕をグッと両手で抱え込んでいる。  
 指の動きに合わせ、アユミの体は反応するが、  
 顔は枕に隠れていてここからでは伺えない。  
 「…アユミ?」  
 俺は右手を休めないまま、彼女の顔を覗き込んで見た。  
 「あ…、コ、コラ。 枕噛むなよ!」  
 アユミから枕をゆっくり取り上げて、手の届かないところへ放り投げた。  
 アユミはそれを目だけで追って再びこちらに視線を戻した。  
 「ハァハァ…、だ、だって、こ、声でちゃうから……」  
 鼻の頭やおでこが少し汗ばんでて妙に色っぽく感じる。  
 「べつにいいだろ…? 今家には俺たちしか居ないんだし」  
 「と、隣の家に、きこえちゃうかもしれないよ……?」  
 そのアユミの顔が、とても冗談を言ってるようには見えなくて、思わず吹き出してしまった。  
 「おまえ、どんな心配してんだよっ!」  
 「だって、声大きいって…、っぅん! い、言うからっ!、ふあぁうぅんっっ!!」  
 アユミの言い訳を聞きながらも、また彼女の淫核を軽く二度三度摘む。  
 この素人目線でみても、予想通りの反応が好きだった。  
 「もー、イタズラしないでちゃんと聞いてよぉ…」  
 「聞いてる聞いてる」  
 耳まで赤くして恥ずかしそうにするアユミを見て、またつい口元が緩んでしまう。  
 「わ、笑わないでってばぁ…」  
 「はいはい」  
   
 今度もアユミのことは話半分で、人差し指で淫核をそっと撫でた。  
 「くうんっ!! んんっ……!」  
 アユミがまた両手で口を押さえている。  
 「…いいじゃん、べつに。 そんなに気にしなくてもさ」  
 「ホントに…、おじさんもおばさんも居ないよね……?」  
 アユミは口元にあった両手を、シーツに伸ばしさっきより強めに握っている。  
 アユミの顔を見るとすがるような、潤んだ瞳を向けてきた。  
 以前もここで見た表情と同じ。  
 あれは苦痛から逃れたくて、助けを求める目ではなく  
 こういうときにしか見れない、アユミのちょっとした一面だったみたいだ。  
   
   
   
 しばらく俺は腕で枕を作り、横で寝ているアユミだけ見ていた。  
 シーツを剥ぎ取って、それを抱え込んでそっと目を瞑っている。  
 ふと部屋の中を見回すと、脱ぎっぱなしのワイシャツやさっき投げた枕やらが目に付いた。  
 片付けでも、と思って立ち上がろうとしたとき、ズボンの後ろのポケットを引っ張られた。  
 「…待ってよ、もうちょっと一緒にいようよ。 雰囲気だけでもさ……」  
 「う、うん」  
 アユミに促されて、また彼女の隣にゆっくり横になる。  
 「ごめん、意外と俺って無神経だったかもな……」  
 「ほら、もうそんなに自分を悪く言わないの」  
 なんだかさっぱりアユミの上から目線も気にならなくなってきた。  
 
 「また、ベットぐしゃぐしゃにしてくれちゃったな…」  
 「あ、あたしが洗っとこっか…?」  
 アユミがシーツから手を離して、目を逸らす。  
 「いいよ、おふくろにやらせるから…」  
 「え? まずいんじゃないかな…。 なんて言い訳するの?」  
 「言い訳なんかしないよ、アユミがやったって言うだけ」  
 「な、なによそれぇ…、誰がこんなにさせたと思ってんのよぉ……」  
 アユミがまたシーツを掴んで、頬を赤くしている。  
 「恥ずかしがるなよ。 冗談だって…」  
 何年かぶりに、二人で心の底から笑った気がする。  
 
 時計を見るとまもなく6時になるところ。  
 「やべ! アユミ、どっか出かけようぜ!」  
 「え、いきなりどうしたの!?」  
 「もうすぐどっちか帰ってくんだよ。 親に通知表見られたくないから…」  
 「もー、諦めたら? いつかバレるんだし」  
 「いいから、早く行こうぜ!」  
 アユミはTシャツに腕を通しながら、また笑みを浮かべていた。  
 「俺…、また変なこと言った?」  
 「ううん、初めてそっちから誘ってくれたから、ちょっと嬉しくてね…」  
 何回か俺から誘ったことも、無いことも無いはずだけど…。  
 でも積極的に誘うような展開は、これが初めてかもしれない。  
   
 外に出ると急いで自転車に乗った。  
 荷台が一瞬重くなったかと思うと、アユミの腕が俺の腰を力強く抱え込む。  
 そのまま、あてはないけどとにかく必死で自転車をこいだ。  
 「ねえ、坂道だよ。 降りよっか?」  
 「バカ言うなって。 落ちないようにしっかり掴まってろよ!」  
 「え………?」  
 「返事は!?」  
   
 
 「うん! わかった―――――」  
 

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