美香は疲れきった顔で差出人不明の紙片に目を落とす。  
 
『秋山先生はこの炎天下の中で児童に走りこみをさせているらしいですが、  
昨今何人もの人々が熱中症で倒れる事件が報道される中、  
そんなことをして児童に何かあったときに責任は取れるのでしょうか?  
もっと指導者らしく社会で起きていることを勉強してください』  
 
またか、と内心ため息を吐く。  
 
ちゃんと水分はとるように指導はしているし、  
生徒たちが倒れないよう木陰の多いコースを選んでいる。  
 
前の日に徹夜をしたりして体力が落ちていない限り、  
あの距離走っただけなら倒れることはないだろうに。  
『勉強してほしい』のはこっちの言い分だ。  
 
去年まで勤めていた田舎の学校ではけしてこんな怪文書が届くことはなかったのに、  
この学校に着任してからというのものはこんなことばかりだ。  
 
距離をとる生徒、わずかな事に揚げ足を取る保護者、金のためと割り切って仕事をする同僚達。  
 
今のクラスを受け持ってからというもの日に日に  
教師という仕事を続ける熱意と自信がなくなっていた。  
 
「秋山先生、コーヒーはいかがですか?」  
美香は慌てて紙片をもみくちゃにして手の中に隠し、笑顔を作って振り返る。  
彼女の背後には同僚の中で一番年齢が美香に近い高木が立っていた。  
 
「ありがとうございます、高木先生……。  
先生は、サッカー部の指導ですか?」  
「ええ、午後から5時間ほど。あいつらこの暑い中元気なもんですよ。  
しかし、3時ぐらいに雹が振ってきたときは驚きましね。  
生徒達に怪我がなくて何よりでしたが。  
全くあいつらときたらこっちの気も知らずはしゃぎまくって  
避難させるのに苦労しましたよ」  
 
日に焼けた顔を緩ませながら高木は快活に笑った。  
「お疲れ様でしたね、こっちもあの時3号棟で窓が割れて大変でしたよ。  
……でも、楽しそうでいいですね」  
「秋山先生こそ、今日は水泳部の活動があったでしょう?」  
 
美香は笑顔を作ろうとするが、歪んだ表情しかできない。  
彼女は嘘を吐くのが上手いほうではないのだ。  
「私の場合は……生徒と、その、上手くいってないですから。部活も、クラスも」  
高木は年齢が近いだけではなく、この学校の教師の中でも一番  
生徒のことを考え、生徒にも慕われている教師だと美香は思っていたので、  
他の同僚には話せないようなことも自然と口にできた。  
 
「まあ、先生のクラスは特に塾通いの子が多いですからね。牧原みたいな」  
『牧原』という単語を聞いただけで美香の体は少し硬直する。  
「彼女は……特に、私に対して壁を作っていますから」  
牧原沙耶香はクラスの女子グループの中心人物だ。  
彼女が美香に対して心を開いてくれないと、他の女子も美香とは距離をとって接してくる。  
 
そんな人物が美香が監督をする水泳部の部長でもあるのだからたまったものではない。  
授業の時間も部活の時間も美香の心が安らぐことはなかった。  
 
「でも牧原も、近頃雰囲気が変わってきてませんか?  
さっきもにこやかに挨拶してきたから、びっくりしましたよ。  
俺はてっきり秋山先生と仲良くなってあいつも変わったのかな、  
なんて思ってたんですけどね」  
「確かに前より明るくなったんですけど……  
でも、私には思い当たる節はないんです」  
 
夏休みに入ってからだろうか、牧原に笑顔が多くなったのは。  
しかし美香には、それだけでは彼女が自分に親しくなったと等号で結べない。  
それに、笑顔は威嚇に使われることもあるのだ。  
精神的にまいっている彼女には、教え子の笑顔すらも恐怖の対象に見えてしまう。  
 
そして、高木が職員室を出てたっぷり10分近くたってから  
ようやく美香は高木の発言にあるおかしな点に気づく。  
(高木先生、『さっき』牧原さんに会ったの?)  
水泳部の活動は午前中だというのに、  
なぜ彼女は西日が差すこの時間まで学校にいたのか?  
 
 
更衣室の鍵を握り締め、美香は足早にプールへと急ぐ。  
職員室に二つあったはずの更衣室の鍵は、一つしかなかった。  
雹が降ってきて美香が職員室を離れた時間帯に、  
何者かの手によって奪い去られたのは明白だった。  
更衣室は密室だ。そこで何かが行われていても、周りからはわからない。  
美香自身も、高校生の時部室で喫煙やふしだらな事をしている同級生の噂は聞いたことがあった。  
 
いや、教え子自身が悪事を働いているならまだいいが、 
もしも不審者が無力な少女を密室に連れこんだとしたら。  
自分の想像に思わず美香は体を震わせる。  
逢魔が時の怪しい陽光が、不吉な予感を生み出させる。  
 
プール脇のコンクリート製の小屋の前で、美香は深呼吸をする。  
小屋の中が、目的の更衣室だ。  
(落ち着いて……まだ、牧原さんが中にいるって決まったわけじゃないんだから……)  
更衣室のノブに鍵をあけドアを開こうとするが、  
ドアはまるでセメダインで固められたかのようにピクリとも動かなかった。  
 
更衣室のドアノブに手をかけたままうろたえる美香の耳に、怪しげな声が届いた。  
 
「「……ちゃ…ち…んこ………ろ…」」  
 
子供なのか、大人なのか。  
男性なのか、女性なのか。  
一人なのか、複数なのか。  
年齢も、性別も、人数すら判断がつかない声が、美香を迎えた。  
 
「……あなたは……誰……?」  
生徒ではない。  
教師でもない。  
保護者でもないだろう。  
それよりもそもそもこの声は。  
人間なのか?  
 
「「「白…ちゃ…ち…んこ……たろ…」」」  
 
もう一度声が聞こえた。  
さっきよりも大きな声量で。  
 
その時、美香の頭の中には、小学生のころ聞いた怪談が浮かんできた。  
 
『ねえ、赤いちゃんちゃんこって知ってる?』  
 
体が震える。  
粘ついた汗が全身から吹き出る。  
今更衣室の外には人影一つ見当たらない。  
そして更衣室の中からは得体の知れない声が聞こえる。  
うら若い女性なら、すぐにでもこの場を離れるべきだろう。  
しかし美香には、逃げ出せない理由がある。  
 
「中に……牧原さんは……女の子は……いるの……?」  
それは聖職者としての義務。  
教え子がいるかどうかを確認しないうちは、  
この場を離れるわけにはいかない。  
 
「「「「白…ちゃんち…んこ着…たろ…」」」」  
 
『誰も人気のないトイレでね、「赤いちゃんちゃんこ着せたろか」って聞かれるの』  
 
声の主は質問に答えない。  
だが次の瞬間、答えてもらう必要はなくなった。  
「せん………………せい………………なんで………………?」  
牧原の声が、更衣室の中から聞こえてきたのだ。  
息も絶え絶えな少女の声が、正体不明の声と同じ場所から。  
 
次の瞬間、美香の中の何かが弾けた。  
恐怖で竦んでいた体が動き出し、ドアをどんどんと叩いて大声を上げる。  
「牧原さん!?いるの、返事して!!」  
美香の叫びに、教え子は答えない。  
変わりに聞き飽きたあの声が、質問を返す。  
 
「「「「「白…ちゃんちゃんこ着…たろか」」」」」  
 
『でもね、絶対に「着る」って答えちゃいけないだよ』  
 
「うるさいっ!!ここを開けなさいっ!牧原さんをどうしたの!?  
警察を呼ぶわよ!!」  
右手でドアを叩き続けながら、左手で携帯を出そうとしたその瞬間、  
何かが彼女の手の甲を掠めて携帯を取り上げる。  
 
はっとしてそれを目で追おうとするが、  
それはまるで燕のような素早さで小屋の屋根の上に消えた。  
呆然として思わず声と体を止める美香。  
しかし、教え子のことを思い出し、気力を振り絞って  
動かないドアノブをガチャガチャと捻り続ける。  
 
「早く開けなさいっ」  
 
「「「「「「白いちゃんちゃんこ着せたろか」」」」」」  
 
『「着る」って答えたらね、首を千切られて流れ出る血が体を伝って』  
 
まるでその声は自分の背後から聞こえるかのように大きくて、  
思わず美香は全身に鳥肌を立てる。  
しかし美香は恐怖を振り払うかのように金切り声を上げる。  
 
「ちゃんちゃんこでも何でも着てやるわよ、だからさっさと」  
 
次の瞬間、突然ドアが内側に開く。  
と、美香の体が何かに掴まれ、刹那の速度で内側に引きずり込まれる。  
びちゃりという音ともに、美香の体が更衣室の上で豪快に転ぶ。  
 
『体を伝う血で、赤いちゃんちゃんを着ているみたいになるんだよ』  
 
しかし少しも痛くない。  
血のようにどろどろした液体。そしてその下にある生暖かい柔らな肉の感触。  
そして、顔を上げた美香がそこに見たものは――――  
 
 
空中に浮かぶ、牧原沙耶香の生首。  
 
 
生首と目が合った瞬間、美香の精神は極限の恐怖に爆ぜ、意識を失った。  
 
 
 
 
 
 
「先生、起きてよ」  
目の前に広がるのは、牧原沙耶香の生首が  
どこからか伸びてきた男性性器を小さな口で啄ばむ姿。  
 
そのあまりに非常識な光景に、美香の脳はそれを現実と認識しなかった。  
「ほら先生、いつまでもボーっとしない」  
 
そこでようやく美香の頭は、人並みに回転し始める。  
と同時にまた気絶しようとするが、教え子がそれを許さなかった。  
「あ、ほら先生、何また気を失いかけてるの?しっかりしてください」  
 
沙耶香に支えられ、といっても彼女の体格では大人一人を支えるのが無理で  
教え子が教師に押し倒された瞬間、  
ようやく美香は少女の体が首の下についていることに気づいた。  
しかしそれは、薄暗い闇の中ではコンクリートの白い壁と同化するほど  
真っ白な液体が満遍なく付着していたのだ。  
故に、液体のかかっていない首から上だけが宙に浮いているように見えていたのだった。  
 
「……牧原さん…………これは…………」  
 
教え子を押し倒して気づいた。  
彼女とじかに胸や腰の皮膚と皮膚が触れ合っている。  
自分も、彼女も何一つ身に着けていない。  
羞恥で頭に血が上り、急速に意識がはっきりとしてくる。  
 
「な、ま、牧原さん、これは!」  
 
なぜあなたが更衣室にいるの?  
なぜ二人とも裸なの?  
更衣室の床一面満たしているこの白い液体は何?  
その下に敷き詰められたどくどくと脈打つ細長い管は?  
そして今私達の周りをとり囲んで鎌首をもたげているこの卑猥な形の肉塊は?  
 
聞きたいことがありすぎて、美香は口をパクパクするだけで何も言葉を発せられない。  
 
しかし聡明な生徒は、彼女の言葉にならない問いに対して独り言のように答える。  
小学生とは思えない妖艶な笑みを口元にたたえながら。  
 
「最初にこの子達に会ったのは、夏休みの初めです」  
 
肉塊が、美香の両腕にまきつき、彼女の体を少女から引き離す。  
 
「忘れ物を取りに来て、あの問いに答えたんです」  
 
あの問いとはつまり、「白いちゃんちゃんこ着せたろか」であろう。  
 
「私、今家庭が最悪で。お父さんとお母さんは離婚しようとしてて、  
そのせいで精神的に不安定で。1学期は先生にも当たっちゃって、  
悪かったと思ってるよ。だから、その時も赤いちゃんちゃんこみたいに  
殺されてもいいかななんて思って「着てやる」って答えちゃって」  
 
どう見ても先端が男性性器にしか見えないそれが、  
何十本も群れを成して美香の体の上を這い回る。  
腰や首筋、足首や肩甲骨の上など肌と神経の間の肉が少なく、  
直接神経を刺激しやすい場所ばかりを、  
まるで蛇が獲物を締め上げるかのような  
ねちこっさで這いまわれると、いいようのない  
感覚が皮膚の下に溜まり始める。  
 
押し倒された時髪に付着した白い液体を指で拭き取りながら、  
目の前で少しずつ上気する女教師の肌を見て沙耶香はにっこりと笑う。  
 
その笑みに込められたいいいしれぬ色気に、  
美香はこの怪しげな肉塊が彼女に何をしてきたのか大体の見当がついた。  
そしてそれは、今から彼女がされることでもあるのだろう。  
 
「おねがい……牧原さん、これやめさせて、ひぃっ」  
 
肌の上を摺っていた肉塊たちが、少しずつ移動を始める。  
腰を責めていたものは下降を。  
首筋を責めていたものは口の辺りへ。  
足首を責めていたものは上昇を。  
肩甲骨を責めていたものは前方へ回り込む。  
一斉に始まる、粘膜への肉棒大移動。  
 
「私に止めることはできないの。先生が言ったんでしょ?  
ちゃんちゃんこを着るって」  
 
気がつけば、目の前の少女の回りも肉棒が蠢き始めている。  
無垢さと淫らさが不思議に入り混じったその光景に目を奪われているうちに、  
美香の両手首と両足首に細長い陰茎が巻きつき、  
体を無理矢理開かせる。  
 
「や、ちょっと!!」  
 
「いつも鍵を借りていたら怪しまれるから、合鍵を作ってたんだけどなくしちゃって。  
ちょうど今日雹が降ってる間に取ってきちゃったんです」  
 
ぺろりと舌を出した沙耶香の口の上に肉棒が差し出される。  
彼女はくすくすと笑うと先生に見せ付けるように舌を這わせる。  
 
「駄目よ、こんな、ああ、駄目、駄目駄目だめぇっッ」  
 
唇が、乳首が、肛門が、大陰唇が。  
伸びてきたペニス触手に突付かれ、  
耐えられない感覚が教師の皮に隠れた雌を無理やり掘り起こす。  
 
乳首がそそり立つ。吐息が蒸れる。菊門が蠢動する。女性器が潤おう。  
 
「大丈夫だよ先生。子供の私でもどうしようもなく気持ちよくしてくれるぐらい、  
優しくて、激しくて、とってもとっても上手いんだよ。  
大人の、先生なら、私より、もっともっと気持ちよくなっちゃうかも、ね。  
あ……あぁん……」  
 
教師に嬲っているものより少しサイズの小さいものを  
前後から受け入れながら、沙耶香は湿りきったため息を吐いた。  
 
「ああ、駄目、牧原さんしちゃ駄目、子供はしちゃふむああああぁぁっ」  
 
粘膜の表面を擦っていた肉棒たちが、一斉に粘膜の中へ侵入する。  
口内には2本、肛内に1本、膣内に2本。  
まるで輪姦されているような恥辱と、人間相手では味わえない快楽に女教師の脳が解ける。  
 
「ふ、ふぁ、ふわぁぁぁ」  
 
「殺される……つもりでいた私を……出迎えたのは、  
家の、ことなんか、どうでもよくなるぐらいに気持ちのいい、  
それはそれはめちゃくちゃになるぐらいすてきな、セックスだったの。  
……だから、ねぇ。先生も、楽しん、じゃお?」  
 
背が反る。腰が回る。汗が飛び散る。  
膣内に2本刺さった陰茎は、巧みなコンビネーションで  
片方が突き刺せば片方が出る、を繰り返す。  
交互に抽出されるその快感は、男性経験の少ない美香を狂わせるのに十分だった。  
 
その上、恐ろしいことが起こった。  
両乳房と陰唇の上までさらに伸びてきた3本の触手の、ペニスなら尿道に当たる穴が  
ぱっかりと開き、硬く大きくなった乳房と淫核の上に覆いかぶさったのだ。  
 
「ひ、ひ、ひい、ひいいぃっいいああああああっ」  
 
生まれて始めて女性なのに味わう、乳首や陰核を尿道へ挿入する感覚。  
しかも一斉に3つの箇所を同時に、だ。  
 
「すご、せんせ、わたし、そんなのっ、できなぃ、ぁ、ぁあああ」  
 
口の端から、男根の隙間から善がり声が吐き出される。  
美香が上り詰めると同時に、貫くペニスが怪しく震える。  
 
その中を、尋常ならざる量の液体が通過するために起こるバイブレーション。  
 
「ひ、や、あ、あああああああああああっあっっっ」  
 
「せんせ、ぃ、いっ、しょに真っ白にっまっしろにぃぃっ」  
 
少女の真っ白という言葉が引き金だったかのように、  
二人の雌を犯していたペニスから一斉に白い液体が噴出した。  
 
「おああああああああああっっっっっああぁぁぁあっ」  
「ひやわあああああぁぁぁっっっ」  
 
噴出す精圧で、美香の口から、肛門から、陰唇から、乳首から、淫核から、  
挿入していたものや挿入されていたペニス達がペットボトルロケットのように一斉に飛び出す。  
そしてそれらが美香の全身を白く染め上げた瞬間、  
美香は最初の時とは正反対の感覚に心を支配され意識を失った。  
 
 
「先生、またいっしょにイきましょうね」  
「あの、牧原さん……もうあんなことは駄目……な、なにを……」  
いきなりスカートをめくって自らの秘部に触れる生徒に対して怒ろうとするが、  
彼女の濡れた指先見ると語尾が小さくなる。  
「そんなこといいながら先生、ちゃんちゃんこ着る気満々じゃないですか。  
下着越しにこんなになるなんて、先生って本とエッチですね。  
じゃ、私先に行って待ってますから」  
弾むような足取りで職員室を出て行く教え子を美香が呆然と見送っていると、  
入れ違いに高木が入ってきた。  
 
「秋山先生、やっぱり牧原とは仲良くなったみたいじゃないですか」  
美香は、小さな声で答える。  
「まあ……一応、なったんでしょうか」  
「なってますよ。それに心なしか秋山先生もすっきりした顔してますし」  
「なっ……!し、してません!」  
いきなり顔を真っ赤にして部屋を出て行った美香の後姿を見ながら、  
高木はぽかんとした顔で首をひねった。  
「俺、なんか変なこと言ったか?」  
 
 
終わり  

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