「ソレ。」  
灰野が指をさす。その方向は私・・・・・の胸元。  
「・・・・あっ!」  
制服の乱れは整えたつもりだったのだけど、私の胸の谷間がブラごと、思いっきり見えていた。もしかしなくても、白河に見られていた。  
「挑発的な女とでも思われたんじゃないの?」  
冷たく灰野が言う。誰の所為だと思ってんのよ・・。  
恥ずかしい・・・。だから白河は、そそくさと戻って行ったんだ。  
何と思われたか分かんない。具合が悪くて胸元あけてたって思ってくれたら良いけど、  
あまりにも全開すぎて無理がありそう。  
だいたい白河なら、灰野じゃないけど「胸みえてんぞー誘ってんのか?」って、冗談の一  
つや二つ言いそうなのに・・・。逃げるように行かなくても良いじゃない。  
「葵ってホント淫乱だね。男に見られて感じて、しかも露出狂?」  
あんまりだ。  
「あんたの所為じゃない!私が思い通りにならないからって・・。  
最低なことして、こんな・・・・っうっくっ・・」  
昨日から泣いてばかりだ。  
「あん・・たに・・なんか・・服従なんて・・しない・・。  
っ・・あたしの・・心は・・思い通りにでき・・ないっ」  
灰野が私のことを本当に好きでいてくれたら。  
モノとしてじゃなく、自分になびかないからではなく、純粋に好きになっていてくれたら。  
「・・別にいい。体だけ思い通りになれば。」  
「・・・!!!」  
分かってた事だけど、面と向かってそう言われると辛かった。  
「葵・・続きしよ。またイカせてあげる・・」  
「・・やぁっ」  
「黙って・・。外に聞こえちゃうよ」  
ゆっくりと床に押し倒されて灰野からキスされた。  
「んっ・・」  
そのまま大きく胸を揉まれる。  
「毎日胸揉んでたら大きくなるかな。俺、大きいのが好きなんだよね。  
俺の周りにいる女の子達って、胸の大きい子多いでしょ。」  
揉みながら指先で乳首を弾いてきた。  
「あっ!」  
「胸小さいとやっぱ感じやすいのかな。うん、勉強になる。」  
心のどこかで期待でもしてたのだろうか。私は灰野にとって特別な存在だと。  
 
 
結局、私はやっぱり、大勢の女の中の一人・・。  
「ココにもキスしてあげるね」  
灰野が私のパンツを剥ぎ取ろうとしてきたけど、抵抗はできなかった。  
外にバレるからって理由もあったけど、ショックで抵抗できなかったというのが一番。  
「うわぁ・・すっごい濡れてるね」  
「・・・・」  
両足を手で固定されて、そのままクリに舌を絡めてきた。  
転がすように、まるで舌そのものが一つの生き物みたいに、執拗にクリを苛めてくる。  
でも両足の間に顔をうずめている灰野は、まるでじゃれてきた子猫(もしくは子犬)みた  
いだ。チロチロと動く赤い舌も、ミルクを舐めてるみたい。  
 
「ん・・はぁ・・・」  
「葵・・きもちい・・?」  
ふうっとクリに息を吹きかけてきて、今度はちゅっとクリを吸ってきた。  
「はぁんんっ」  
「葵・・・」  
酷いことばかりするくせに、たまに切ないような声を出さないで欲しい。  
「んっ・・・・」  
ぴちゃぴちゃとわざと音をたてて舌をクリに押し当て、ゆっくりと舌全体や  
舌先で弄ばれた。  
「んっ・・・あ・・・んっはっあっっああっ」  
嫌なのに体は正直になってしまう。  
「イクの・・?葵」  
「はぁっ・・やぁっ・・ダメっ・・はぁうんんん!!!!」  
突然、灰野がクリを甘く噛んできて、私はあっけなくイッてしまった。  
ピクピクと痙攣する私の体を満足そうに見下ろしていた灰野は、  
覆いかぶさるようにして、私の顔を覗いてきた。  
 
「葵、泣いてばっかり。そんなにきもちよかった?」  
面白そうに言う灰野の目を見て、  
「・・ん・・きもち・・よかった・・」  
まさか私がそう言うとは思っていなかっただろう灰野は目を丸くさせた。  
「あおい・・・?」  
「きもち・・よかった・・。好きな・・人に・・してもらったんだから・・・。  
相手に・・・好かれてなかったとしても・・それでも・・きもちいい・・」  
 
本当に本当に泣いてばかり。  
「好きだから・・体は・・・拒めない・・・」  
 
三ヶ月前、大失恋をした私。  
その恋に気付いた時には遅すぎて、それでも心は諦めきれなくて。  
言ってしまった好きという気持ち。  
私は灰野に屈したことになるのだろうか。  
灰野を好きになったことは奴隷になったということなのだろうか。  
 
あの日、灰野に告白をしてから、彼と話をすることは無くなった。  
「好きだから・・もう私に構わないで欲しい」  
そう言ったのは私。  
それを聞いた灰野の顔は見なかったけど、心なしか震えているように見えた。  
好きという気持ちを逆手にとられて、関係を強要してくるかもしれない。  
写真をばら撒かれるかもしれない。  
そう思ったのも事実だけど、結局灰野は何もしてこなかった。  
今は遠くから偶然に、灰野の姿を見つけるだけ。  
取り巻きの黒川達も私を睨みはするけど、それだけだった。  
 
教室で黒川と言い合いしたことも、灰野のクラスに乗り込んだことも、  
最初は噂されてたけど、今は誰も言わない。  
普通の日常。  
三ヶ月前と変わったことは、明るい性格に戻った自分。  
同じ学校にいるのに、まるで最初からいなかったように、私の前から消えてしまった灰野。  
変わらないのは今でも灰野を好きな私。  
 
「・・うっ・・」  
廊下を歩いていたら角で女の子が泣いていた。  
一年らしくて、小さくて可愛い女の子だった。隣りには友達らしき子がいて、  
女の子を慰めていた。二人とも私の存在には気付いてない。  
「一生懸命、告白したんだもん、偉いよ・・」  
女の子は失恋したらしい。灰野の事を思い出して胸が痛くなった。  
通り過ぎようとした瞬間、  
「灰野くんっ・・、好きな人いるって・・・その人がうらやましいよぉおっ」  
女の子が泣く姿は痛々しかったけれど、灰野という名前が出て心臓が止まりそうだった。  
灰野・・・好きな子ができたんだ・・・。  
「いつも灰野くんと一緒にいた先輩たちも・・好きな人がいるからって・・  
断ったんだって・・っ・・。わた・・し・・その人になりたいよぉ・・」  
 
きっと黒川達のことだ。  
真剣に好きな相手ができたんだ、灰野。  
・・・泣くな・・・私・・・。  
三ヶ月前も悲しかったけど、涙は出なかった。  
好きな人がいるってだけで・・・こんなにもショックだなんて・・。  
『わた・・し・・その人になりたいよぉ・・』  
あの女の子と同じ、私もその子になりたかった。  
まだ好きでいる以上、私にとって灰野の存在は果てしなく大きかった。  
 
泣かない・・泣かない・・・。  
やっとの思いで自分の教室に入ろうとしたけど、突然誰かに手首を掴まれた。  
「渡瀬さん、ちょっといい?」  
それは三年の鮎川だった。  
 
そのまま、のこのこと校舎の裏までついていく私もアレだけど、  
いきなり黒川達が現れるなんてことは無いと思ったので心配はしなかった。  
「・・・一発、殴らせてくれない?」  
いきなりの鮎川の言葉に私は唖然とした。  
「・・・は?何・・言ってんの・・?」  
鮎川の顔は何だかやつれていた。  
「殴らせろって言ったのよ!良いでしょ、結局あんたはユウと付き合うことができたんだ  
から!」  
すごい顔で睨んできた。言っていることが分からない。  
「あの・・・本当に何言ってるのか、分からないんですけど・・」  
「白々しい!私・・・あんたと黒川達がベッドで遊んでる時にユウに聞いたのよ!  
何であんたにこだわるのかって・・!普段のユウは一人の女に対して、  
こだわりなんて見せないのに・・・」  
それは違う。灰野は自分になびかなかった私が珍しかったにすぎないんだ。  
「ユウは答えなかったけど、急に不機嫌になって・・。  
あんなユウ、見たことなかった・・・」  
鮎川は泣いていた。灰野のことが本当に好きだったのだろうか。  
「・・もうユウは、好きな人意外とは寝ないって・・拒んで・・。あんたがユウを取った  
んでしょ!?ユウを・・返して・・二番目でも・・良いから・・・」  
本当に好きだったんだ。  
振られても、そばにいたいと思うくらい。  
「気持ちは・・・分かる。けど、二番目でも良いなんて、そんなのダメだよ。  
自分を、傷つけるだけだと思う。私は・・・好きな人には、自分だけを見て欲しい」  
三ヶ月前、体を繋げるだけの関係なら望めたのかもしれない。  
でも、好きな人と心が通わないなんて悲しすぎる。  
灰野も、今は好きな人がいる。  
それを祝福しなければ。きっと、時間が私を癒してくれるはず・・。  
「私も、灰野が好き。でも、だからこそ体だけの関係なんて嫌だよ。  
灰野に好きな人がいるのは、正直つらいけど。」  
そう言って笑った私を、鮎川がじっと見てきた。  
「なっ、何?」  
「・・・何でも。馬鹿な子だと思っただけ」  
そう言うとさっさと去っていった。  
納得してくれたのかは分からないけど、言葉に刺々しいものは無かった。  
 
今日は騒がしい日みたいで、放課後、下駄箱で白河に声をかけられた。  
白河はあの時のことを変に思ってるのは確実だけど、それについては何も言わない。  
気を使わせてるのかもしれない。一人で胸ひろげて何してたのかと思われるのはとても  
恥ずかしかったけど、白河は人に話すようなタイプじゃないし、私もそしらぬ振りをしよ  
うと思ったのだけど。  
「でもさぁ、あん時はマジでびっくりした」  
「んぁあ?」  
思わず変な声が出てしまった。  
あん時っていったら・・・絶対にアレじゃない。  
「彼氏さん、すっごい睨んできてさー、俺どうしようかと思ったし。  
渡瀬も場所選べよー。目撃者が俺だけだったから良かったものの、  
普通なら、絶対噂になんぞ。まぁ、あの強気の彼氏さんなら噂も蹴散らしそうだけどな」  
「へ・・・?」  
白河に言いたいことは沢山あるけど、何から言えばいいのか分からない。  
「白河、あの・・・彼氏さんって・・・睨んでたって・・?」  
「うへぇ?もしかしてお前知らなかったの?あいたー」  
白河が手のひらを顔にあてて言った。  
「いやぁ、近づいたときにさあ、彼氏さんの顔が見えて。  
俺の事、物凄い睨んできたの。なんか『俺の女に近づくな』って言ってるみたいだった。  
なんだっけ、一年の灰野雄太郎だろ?あいつって見かけによらず激しい性格してるよな、  
絶対」  
頭に血が上ってきた。恥ずかしすぎる。  
本当は、うやむやにして立ち去りたかったけど、訂正しなきゃ。  
 
「・・・灰野は彼氏じゃないよ」  
「へ?嘘だろ?あ、もしかして内緒で付き合ってんの?  
あー、灰野ってちっこいけど女にモテそうだしなー。色々大変だなお前も。」  
人の話を聞いてよ。  
「だから、付き合ってないってば・・」  
「またまたー、俺は別に誰にも言わないから!」  
あんなところ見たからっていうのは分かってるけど、私の嫌な思い出をこれ以上えぐらな  
いで欲しい。  
「つかさー、教室近いから灰野とたまにすれ違うんだけどさ、あいついっつも俺を睨んで  
くんの。この前とかさ、俺ら廊下で少し世間話したじゃん。灰野に見られててさー、お前  
は気付かなかったけど、俺は灰野に喰われるかと思ったぜ。」  
え・・?  
「彼氏さんに言っとけよー。私はアナタだけが好きなのよぉー。  
嫉妬しなくても白河くんには可愛い彼女がいるから、彼とは何でもないのよぉーって」  
冗談みたいに言ってたけど、  
「俺が言ったって言うなよ?勘違いされて灰野を敵に回したくないから。あいつの容姿と  
性格はマジ正反対っぽいからなー」って念を押されるように言われてしまった。  
そんなこと、あるはずはない。  
立ち去る白河に背を向けて靴を履いて外に出た。  
あ・・雨が降ってきた。  
傘を取りにいこうと振り返ると、灰野が立っていた。  
一瞬目が合ったけれど、灰野はすぐに地面をみつめ、きゅっと唇をかんで行ってしまった。  
三ヶ月ぶりに目が合った。  
物凄く切ない気持ちになったのだけれど、何故か灰野の方が、切なくて苦しい表情にみえ  
てしまった。  
鮎川といい白河といい・・・灰野といい・・。  
私は勘違いしてしまいそうになる。  
灰野が好きな相手はこの私だと。  
降り出した雨の冷たさが、私を現実に引き戻した。  
 
 
何日かすぎて、私は頻繁に誰かの視線を感じるようになった。  
それが誰なのかは分からない。  
心のどこかでは灰野であってほしいと思う自分がいるみたいで、鮎川にあんなこと言って  
おきながら未練たらたらの自分に苦笑いした。  
次の日、食べすぎか風邪か、具合が悪くて保健室で休ませてもらってた。  
先生も急用があるとかで保健室には私だけだった。  
静かな保健室で休んでいると、ガラッと扉が開いた。  
「先生、足打ったみたいで・・」  
先生はいないよって言おうとしたのだけど、聞き覚えのある声に驚いた。  
「葵・・」  
そこにいたのは元カレの祐司。  
灰野のことを考えてた分、幸か不幸か、祐司のことは思い出すこともあまりなかった。  
祐司も驚いたみたいで、何となく気まずい雰囲気。  
「あ、祐司、足大丈夫?先生今いないみたいで・・。もう少ししたら帰ってくると思うけ  
ど、休んでる?」  
なるべく普通に言えた気がする。  
 
「あ、ああ。たいしたことないから。・・・そうだな、休んでようかな。」  
そこらへんにあった椅子に祐司が腰掛ける。  
やっぱり、気まずい。  
何か言おうとする前に、祐司が口をひらいた。  
「葵ってさ、今付き合ってる奴いるの?」  
「え?いないよ。失恋したばっかりだしね」  
思わず言ってしまって、祐司が申し訳なさそうな顔をした。  
私は灰野に失恋したことを言っているつもりでいたけど、祐司が自分の事を言っていると  
思うのは当たり前で。私の馬鹿。  
「あのさ、俺とやり直さない?」  
「え・・」  
祐司が私を真剣な目で見つめてきた。  
「ずっと、葵のこと、気になっててさ。・・・別れようって言ったのも本気じゃないんだ」  
・・灰野に強要されたんだよね。  
「また付き合えたらって、思ってて。ずっとお前を見てたんだ」  
感じる視線は灰野じゃなかったんだ。良いように解釈しようとしてた自分が恥ずかしい。  
祐司の気持ちは嬉しいけど、はいという返事はできない。  
「ごめん・・祐司。私・・好きな人がいて。だからやり直すことはできないの」  
祐司の表情が曇った。  
「それって灰野か・・・?知ってるのか、俺と葵を別れさせた奴は灰野なんだぞ?」  
肯定はしなかったけど、嘘もつけなかった。  
「知ってる・・灰野に聞いた」  
「じゃあ、何でだよ!!灰野にそそのかされてるのか!?言っとくが、お前は絶対遊ばれ  
てるぞ!?俺に、別れろって言ってきた時も、お前のことは本気じゃないって言ってた!  
欲しいなら、後で返してやるって!!お前は暇つぶしだって・・!!」  
「・・言いそうだね、灰野・・」  
谷底に突き落とされた気分だった。  
「!! おまえ、何であんな奴のこと・・・!」  
「・・全部、灰野に仕組まれた事だって分かってる。酷い奴だって分かってる。  
でも、灰野が私を励ましてくれたのは本当に嬉しかったの!嘘だと分かっても、嫌いにな  
れなかった・・・!」  
酷い男を好きになる女の子の気持ちってこういう気持ちなんだろうか。  
いや、灰野は今、一人だけを見ている。きっと今までの灰野はいないはず。  
やっぱり、それが自分だったらどんなに良かったかと思ってしまうけど。  
「おまえ、おかしいよ。そんな男を好きになるなんて・・。」  
祐司の様子がおかしい。  
私を見下すような目。灰野にもそんな目で見られたけど、祐司の方が何倍も恐ろしい。  
突然、祐司が手を掴んできて、そのままベッドに放り投げられた。  
「いたっ・・・」  
祐司は私を睨んだままだった。  
「俺が、よりを戻してやるって言ってやってんだろうが!!」  
バシッ!!  
「っ・・」  
そのまま、頬を叩かれた。  
「灰野の汚れのついた奴に、わざわざ優しくしてやろうとしてやってんのに、  
何拒んでんだよ・・!!」  
・・・祐司は優等生タイプの人間だ。後輩も面倒見も良い。  
ただ、『可哀想な人間に優しくしている自分に酔う』タイプの人間で。  
付き合っている時は、あまり感じることはなかったのだけど。  
「ちょっ・・やめてっ・・んっ・・・」  
祐司が乱暴にキスをしてきた。強引に舌を絡めてきて、気持ち悪くて吐きそうだ。  
 
「んだよ、感じてるくせに・・!」  
舌を首筋に這わせてきて、そのままスカートの中に手を入れてこようとした。  
助けて・・・!灰野っ!灰野っ!!  
「灰野ぉおっ!!!!」  
 
扉が開く音がしたかと思うと、覆いかぶさっていたはずの祐司の姿が、見えなくなってい  
た。  
かわりに見えたのは、顔を真っ赤にさせて怒り狂った灰野の姿だった。  
後ろから祐司を引き離したらしくて、ベッドの下に祐司が倒れていた。  
「・・・・はい・・の・・?」  
「・・・・・」  
灰野は何も言わずに私を見ている。  
「ちが・・、こいつが俺を誘ってきて・・・」  
祐司の言い訳に、怒りがこみ上げてきた。違うと言わなきゃいけないんだけど、うまく喋  
れない。だって灰野の怒り狂った表情は、続いたままだったから。  
「は・・いの、ちがう・・」  
「ちがわねぇ!!ずっと俺を誘って――――」  
ドゴッ!!  
その瞬間、祐司が灰野に殴り飛ばされてた。  
どこにそんな力があるのだろう、殴り飛ばされた祐司は怯えた目で灰野を見上げていた。  
「うせろ」  
灰野が果てしなく低い声で言うと、祐司はそそくさと保健室を出て行った。  
 
―――沈黙。  
灰野と目が合った。怒りの表情は消えていたけど、今度は泣きそうな表情。  
さっきまでの灰野とは全然違う。  
お礼を言わなきゃと思ったけど、すぐに視線を逸らした灰野は、そのまま無言で保健室を  
出て行こうとした。  
なんで・・何か言ってよ・・。  
「ちょっ、待ってよ灰野!!」  
思わず灰野に駆け寄り前に回りこむ。  
「・・・・泣いてる・・の?」  
灰野は目に涙をいっぱい溜めていて、その大きい目から今にも涙がこぼれそうだった。  
「灰野・・?」  
言ったとたん、灰野の目から涙が溢れ出した。肩を震わせながら泣くのを必死に我慢しよ  
うとしてるのだけど、全く効果は無いみたいだ。  
 
「取り合えず・・座ってよ・・灰野。何か・・喋ろうよ・・。  
私・・・構わないで欲しいっていったけど・・何にも言われないのは・・嫌だよ」  
灰野の様子を伺っていると、ボソリと喋りだした。  
「俺・・・あおいと・・葵先輩と・・喋る資格・・無い・・から」  
「資格・・?」  
私が首を傾げると、またボソリと喋りだした。灰野じゃないみたいだ。  
「先輩に・・酷いことして・・。俺・・さっきの奴と・・変わらないから・・」  
私にしたことを後悔してるのだろうか。  
そんな灰野の変化に、心が温かくなった気がした。  
ああ、好きな人ができたということは灰野にとって確実にプラスになっているんだろう。  
灰野に好かれてる人は幸せ者だ。  
本当は後押しなんてしたくない。でも、灰野と普通に話ができるようになりたい。  
少し辛いけど、灰野の恋を応援しよう。  
「資格なんてないよ。灰野、私知ってるよ。灰野が一人の人を好きになったって。  
一途になったって。・・・私は、そんな灰野のこと凄いと思うよ。私に申し訳なさを感じな  
いで。私、灰野と普通に話したい。」  
「先輩・・」  
私ってお人よしだな・・。それにすぐ後悔する。でも、言わなきゃ、私も前進しなきゃ。  
「ほら、気になるなら何とかっていう駅前の高級ケーキ屋のチーズケーキ、一週間奢るっ  
てどう!?」  
もっとマシなこと言ってよ私の口・・。しかも声大きすぎだし・・。  
ほとんど勢いだけで喋ってる。  
「灰野の好きな人も紹介してよ!三人でケーキ食べるのも良いかもねー。灰野の好きな人  
ってこの学校?それとも以外と年上の大学生とか?あれ、まさか中学生?とにかくケーキ  
屋だったらほんと・・あのほんと駅前のがいち・・ばんだよ。・・・絶対。  
あそこって・・テレビでも紹介されたんだよね・・ほら・・あの・・苺のショートとかも・・  
ほら・・お・・いし・・そうだし・・っ・・ぜった・・い・・気に入・・るし・・」  
泣くな・・私・・。馬鹿馬鹿馬鹿!  
「だか・・ら・・私が・・灰野のこと・・好きだってこと・・忘れて・・」  
馬鹿葵!!好きじゃなくなったって、他に好きな人ができたって・・彼氏ができたって・・  
なんで言わないのよ!これじゃ未練がましい女じゃない・・。  
思ったら即行動の私の悪いクセ。後先考えないで・・。  
結局、その場から去ることしか思いつかなくて。馬鹿みたいに立ち去ろうとしたけど、さ  
っきとは逆で今度は私が灰野に引き止められた。  
「あおい・・せんぱい・・駅前のケーキ屋・・毎日・・行こう・・。」  
「灰野っ・・・」  
「あ・・おいの・・好きなケーキたべて・・映画とか、遊園地とか・・行きたい」  
灰野の優しい言葉にまた涙が出てきた。  
「ん・・・灰野の好きな人も、一緒に・・灰野・・?」  
灰野が私を抱きしめてきた。  
灰野の方が背は小さいのだけど、不思議と包み込まれるような感覚で。  
でも、なんで私抱きしめられてるの・・?  
「二人で・・行こう。だって・・俺が好きなのは・・葵・・・。  
葵だけだから・・・。」  
「・・・・え?」  
「葵のことを世界で一番・・愛してる」  
その後は、二人一緒に大泣きしてしまった。  
 
 
葵の第一印象はあんまり良くなかった。  
いきなり俺にぶつかってきて、しかも俺の女を落とす視線にも全く動じないし。  
そんな葵に何となく興味が沸いて、しょっちゅう声をかけるようになった。  
退屈だし先輩ずらなこの女を、俺の下でアンアン泣かせたいと思った。  
取り合えず、葵と付き合ってる男を脅して別れさせた。  
お得意の、健気で可愛い瞳で心配している振りをした。  
葵は単純で、そんな俺にありがとう、ありがとうって言う。  
誘ってるつもりなんだけど・・・調子狂うっていうか何かムカついた。  
何となくソレを繰り返してて、いい加減イライラしてきた。  
イライラの理由が葵を好きだからなんて全く気付かなかった俺は、最後のアプローチをか  
けることにした。  
おちたら、そのままセックスフレンド。  
おちなかったら、力ずくでモノにする。  
結局、葵を俺の奴隷にすることにした。これでも女には優しかった自分が、こんなことを  
するなんて、よっぽど葵を嫌悪してるんだと思った。  
でも葵の体を見て、もの凄く興奮した。必死に隠したけど、そんな自分に驚いた。  
今までだったら、適当に滑り良くして適当に突っ込んで、こっちの快感が優先だったのに。  
そんな動揺を鮎川先輩に見抜かれて、俺はまたイライラした。  
眠ってしまった葵の体を一人で拭いた。この俺がそんなことしたのは初めてだった。  
 
 
葵に怒鳴られて内心動揺した。  
またイライラして、葵を困らせてやろうと同級生の白河とかいう奴に、葵を苛めるのを見  
せつけてやった。  
白河と目が合った時は、にっこり笑ってやろうと思ったのに、俺は白河を睨んでいた。  
イライラ解消の為にやった事なのに、結局解消されない。  
すぐに葵を苛めてやったけど、  
「好きだから・・もう私に構わないで欲しい」  
そう言われて俺は凍りついた。やっと葵への気持ちに気付いた。  
遅すぎたと思った。それからは誰とも寝る気はおこらなかった。  
本当は葵が好きなのだと本人にも言えなかった。  
葵に酷いことをしてしまった自分にそんなこと言う資格は無いと思った。  
後悔と葵を好きな気持ちがどんどん膨らんで苦しかった。葵と仲良さそうに話してる白河  
にも嫉妬した。  
葵と一緒にいたい・・・でも、そんな勝手なことは言えない。  
 
 
鮎川先輩に声をかけられた。  
葵が保健室で男に迫られてるって。  
急いで駆けつけると、葵の元カレが葵に圧し掛かってて、怒り狂った俺はそいつを引っ張  
り殴り追い出した。これでも体は結構鍛えてる。・・筋肉付きにくいけど。  
葵と話したくてしょうがなかったけど、俺にはそんな資格は無い。  
その場から立ち去ろうとしたけど・・・。  
その後は泣きっぱなしだった。葵に弱い男だと思われただろうか。  
嘘泣きなら沢山したことはあったけど、本当に泣いたのは何年ぶりだろうか。  
 
俺が葵の身長をぬいたら結婚しよう。  
 
 
「灰野ー!」  
私達が付き合い始めて一ヵ月が経った。通学路に灰野が立ってこちらを見てる。  
「葵先輩、おはようございます・・」  
「おはよー!・・あれ、灰野どうしたの?」  
「先輩・・ボクさっき、先輩に早く会いたいから、あっついスープ急いで飲んじゃって。  
舌を火傷しちゃって・・」  
「えー、大変じゃない!ちょっとみせて・・」  
灰野に下を出させた。可愛い口からのぞく可愛い舌の右側が少し赤くっなってる。  
「っ・・先輩・・ヒリヒリするよぉ・・」  
灰野は、彼氏兼・可愛い後輩に戻っていた・・・・・はずは全く無かった。  
「葵、舐めて」  
「はい?」  
「葵の所為で火傷したんだから、舐めてよ。ほら」  
ここで舐めろというの・・?幸いにも周りに人気はなくて、私は灰野の唇に自分の唇を重ねた。  
「んっ・・・はぁ」  
私から舌を絡めるまでもなく灰野の舌が絡んできた。  
一体どこでこんな濃厚なキスを覚えたのか。  
 
灰野は相変わらず学校では可愛い振りをしていた。しかも前より確実にたちが悪い。  
私と灰野が付き合いだしたことはすぐに広まって、何人もの女の子が泣いた。  
ついでに黒川たちの視線もビンビン感じてる。あんまり考えないようにしたけど。  
それよりも問題なのは灰野の態度だった。  
灰野の本性を知らないほとんどの生徒には、私達の関係が、可愛い灰野雄太郎と  
灰野をゲットした男女(おとこおんな)、渡瀬葵だと思われてる。  
私の性格が一年の頃のように男勝りで姉御肌(?)な性格に戻ったってのもある。  
でも一番の原因は、灰野の猫かぶりだ・・。  
「先輩、ボク先輩の為にクッキー焼いてきたんです」  
家政婦さんに作らせたでしょ・・。  
「先輩・・先に帰らないで・・。ボクのこと嫌いになったの?」  
好きだってみんなの前で言わせたいんでしょ!  
ついでに本性を知っている白河と話している所を見られてしまったら、  
物凄い勢いで睨んでくる。その度白河は泣いていた・・。  
一度、みんなの前で嘘泣きされた時には、一気に非難の目を浴びて、  
なくなく灰野のご機嫌取りをした。  
灰野に猫かぶるなと言えば良いのだけど、だからと言って本性を出して欲しくない。  
この前、灰野の家に泊まったときに、それを嫌というほど思い知らされていた。  
灰野が本性出してしまったら、あの独占欲の強さの所為で皆に迷惑かけることになる。  
第二・第三の白河みたいな罪の無いヤツが絶対出てくるはず・・。  
灰野も猫かぶりを楽しんでるようで、私はすっかり灰野のペースだ。  
 
「葵・・」  
放課後に後ろから馴染みの声に呼ばれた。にっこりとした灰野が立っていて、  
私は周りに誰もいないことに落胆した。灰野が本性をだすからだ。  
そのまま、空き教室に連れて行かれて、すぐに押し倒された。  
ご丁寧に布団代わりのマットみたいなのが敷かれてる。  
「ちょ・・学校では嫌だよ・・」  
「黙って・・・俺、葵が足りないんだから・・・ほら・・」  
そのまま私の手を股間に導いた。  
「・・・・。」  
この絶倫ヤロウ。灰野はその見た目に反して物凄く立派なモノを持ってる。  
白河あたりだと絶対、「詐欺だ・・」とか何とか言いそう。  
「あおいー」  
物凄く甘えた仕草。すりすりと顔を胸に摺り寄せてくる。  
この時ばかりは可愛くて、ヨシヨシと頭を撫でてやる。  
でも・・・。  
「今日さ、クラスの田中とかいう奴に家庭科で作った料理、味見させてただろ」  
声が・・恐いんですけど。つかどっからそんな情報・・・。  
「な、何よ・・ただの味見じゃない・・」  
声が上擦ってしまう。  
「俺以外の男に味見なんてさせるなって言っただろ、お仕置き決定。」  
この時ばかりは別れてやる!と思うのだけど、一度冗談で言った時に思い切り泣かれてし  
まった。本気で泣いていて、その子供っぽさが可愛くて、冗談だよって言っても中々泣き  
止まなかった。本当に別れない?と何回も聞かれたとき胸が痛んで、何度も別れないって  
言った。後から物凄く後悔したけど。  
泣き止んだ灰野に一日中抱かれて、私の一番弱い場所であるクリトリスを何度も責められ  
たから。クリにローターを押し当てて挿入を繰り返された時は、本当に死ぬかと思った。  
そんな事を一瞬のうちに考えていると、ブラウスのボタンをはずされ、ブラを上にずらさ  
れていた。  
「やっぱ毎日揉んでるからおっきくなったね、おっぱい」  
さらりと言われて、顔が赤くなっていくのを感じる。  
「葵ってさ、じかに乳首弄られるより、服越しのほうが感じてるよね絶対。」  
・ブラウス越しに弄られると、じかに触られるよりも感じてしまう。  
滑らかな生地の上から爪でカリカリと弄られるのに私は弱いみたいで。  
「あっ・・・あん・・・・」  
強弱をつけて弄りながら、パクっと乳首を口に含まれた。  
 
片方の乳首はそのまま指先で弄りながら、ぺろぺろともう片方を舐めてきた。  
灰野の揺れる金髪を丁寧に撫でてやる。可愛い・・・。  
腹黒なヤツだけど、私も灰野のことは本当に好きだから、愛情が溢れてくる。  
「っあっん!」  
でも、いつもすぐに灰野の髪の毛を思い切り掴んでしまう。  
灰野の胸を弄る行為が、責めに変わるからだ。  
舌を巧みに使ってねちっこく責めてきたり、わざと乳首に触れないで乳房を揉むばかりだ  
ったり・・。今日のはもっと最悪で。  
ヴィイ――――ン  
灰野がどこからか取り出したローターを乳首に押し当ててきた。  
角度を変えながら私が感じるポイントを探ってくる。一度見つけると、そのまま  
ねちっこく責めてきて、最後は私に「クリを触って・・」とか言わせようとする。  
そうはいかないと、私も体をくねらせて抵抗するのだけど。  
「んっ!・・っ」  
絶妙な角度でローターを押し当てられて、思わず声を出してしまった。  
「ココ・・イイの?」  
更に強く押し当てられると私の体はビクンと跳ねてしまった。  
「可愛い・・葵」  
そのまま口にちゅっとキスをされると、灰野が手にしているのは・・テープで。  
そのまま片方の乳首にローターを固定されてしまった。  
「あっ・・やっ・・灰野っ・・」  
絶えない快感におかしくなりそう。  
「葵・・嬉しいんだね、ココもホラ、すっごい濡れてる。俺って優しいなぁ、全然お仕置  
きになってない」  
そのままパンツを脱がされて。  
「やぁっ・・見ないでっ」  
「可愛い・・・ほら、本当に葵のクリちゃんってエッチだね。すっごい主張してるよ?  
私を苛めてって・・・。」  
「んっやぁっ・・」  
「クリちゃんはこんなに正直なのに、葵本人は素直じゃないなぁ。  
私のいやらしいクリをイカせて下さいって言える?葵」  
「ふぇ・・?」  
「言えるのなら・・イカせてあげるよ?」  
灰野のことだから絶対言わせるつもりだ。  
でも恥ずかしくて言えない・・・。そう思っている間も乳首責めは続いてる。  
そして、灰野の手に、乳首にはりついたローターと同じものが握られていた。  
あっ・・やっ・・灰・・やぁっ」  
ローターをわざと太ももやへその辺りに押し付けて、焦らし始めた。  
両足の間に来たと思ったら、また太ももへ戻る・・。振動がクリに微妙に伝わる。  
「ほら・・・葵、おねだりして」  
「やっ・・・」  
「しょうがないなぁ。コレでも嫌?」  
クリを避けていたローターが突然クリに押し当てられてきた。  
「あっああん!!」  
でも、案の定すぐに離れてしまって。  
「簡単にイッちゃ駄目」  
その後は強弱を変えながらのクリ責め地獄で・・・。  
小さい振動からいきなり強い振動に変えたり、イクと思った瞬間にローターを離されたり。  
あまりにイキたくて、無意識に思わず腰を浮かして離れていくローターを追おうとしたら、  
灰野にまた可愛いって笑われた。  
 
「あっんっっ・・灰・・野・・イカ・・せて・・」  
「葵・・そうじゃないだろ?」  
「私の・・やら・・し・・クリ・・かせて・・」  
ちゃんと言えなかったけど、灰野は納得してくれたみたいだ。  
「ん・・もう一つ、いつも言ってるだろ?言って・・・」  
私はイク瞬間に灰野にいつも言わされる言葉がある。言わせなくても、いつでも言ってあ  
げるのに。灰野は、きっと心のどこかで不安なのかもしれない。  
そんな不安なんて無用なんだけど・・。でも言ってって言う灰野は凄く健気で可愛くみえ  
る。  
灰野がローターを強にしてクリに押し当ててくると、その強い快感に、意識が飛びそうに  
なる。焦らすことはなく、胸と共に強い快感が続いてくる。  
「あおい・・言って・・」  
「んっ・・あっ・・雄・・太郎・・っ好きっ・・大好きっっあっああああああんっっ」  
瞬間に、私はあまりの快感にお漏らししてしまったと思った。  
でも、それは違うみたいで。  
「葵・・潮吹きしちゃったんだ・・・」  
「潮・・・んっやっ・・やだっ・・恥ずか・・しい・・」  
そんな私を灰野が強く抱きしめてくる。  
「葵・・・でもさ、ローターより、俺の舌とか指で潮吹きして欲しいなぁ」  
「はぁっ・・あん・・」  
何言ってんのよ、てか胸のローター早くはずしなさいよ。  
「それにほら、俺の息子もこんなんだし。」  
いつの間にか目の前に灰野のモノ。  
「もっ・・・今日・・や・・」  
必死に首を横に振るけど、灰野はお構いなしだ。  
白い肌に小さい顔に金髪の柔らかい髪に、足の間で主張しまくってるアレ・・・。  
そのまま覆いかぶさってくる。  
「葵先輩、ボクのこと一生大切にしてくださいね」  
 
やっぱりやっぱりやっぱりこいつは全く可愛くない!!  
 

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