(・・・・・・うわ・・・・・・)  
ゴクリと生唾を飲み込み、全身汗だくなのも忘れて、夏美はドアの隙間からそれを  
覗き見ていた。  
 
八月下旬、夏休みもあと僅か。  
半年後に高校受験を控えている夏美は、つい先程まで友達と一緒に図書館で勉強  
をしていた。  
午後三時。  
本来ならそこで切り上げてその友達と遊びに行こうということになっていたのだが、  
急に用事ができてしまったとかで、やむなく予定よりもだいぶ早く帰ることになってし  
まった。  
夏ももうすぐ終わろうというのに、外はとにかく暑かった。  
お風呂に入りたいと思いながら、家の階段を半分程上ったところで、夏美はふと奇妙  
な声を聞いた。  
『・・・ぁ、・・・・・・、・・・ぁん・・・。 ・・・、・・・』  
なにやら泣いているような、女の人の声だった。  
不審に思った夏美は足音を忍ばせて階段を上りきり、声のする方へ向かう。  
そこは、ちょうど四つ年上の兄の部屋だった。  
夏美の兄は大学生で、彼も先週から夏休みに入っていた。  
少しドライな性格だが、わりと面倒見がよく顔も良い(と、夏美は思っている)ので、夏  
美は兄を慕っていた。  
その兄の部屋から、その声は聞こえていた。  
なんとなく後ろめたい気持ちもありながら、夏見はそっとドアを少しだけ開けた。  
「!!!!!」  
そこには、当然ながら兄と、もう一人知らない女性がいた。  
ただし、両方とも裸で。  
ベッドの上に、兄が女性に被さる形で乗っていた。  
兄は女性の身体を撫で回していた。  
女性はそれに反応してモゾモゾと動いていた。  
やっている最中も、兄と女性は時折何かを話し、互いに笑い、行為を再開する。  
「・・・・・・・・・」  
一体、何をしているのか分からなかった。  
夏美は15歳という年齢にも関わらず、そういう知識には疎かった。  
頭の中が一瞬で真っ白になり、その状態のまま固まってしまった。  
結果的に、その行為を見入ることになってしまった。  
そうして、現在に至る。  
 
(・・・・・・わ・・・、すご・・・・・・)  
再び生唾を飲む。  
薄く開けたドアのほぼ直線上にベッドがありドア側の壁に足がくる配置のため、ちょうど  
斜めから見る形になり、兄のソコと女性のソコとが丸見えだった。  
兄が女性の足をM字型に開かせ、股間部に顔を埋める。  
「あっ、やだぁ・・・」  
女性が抗議の声をあげる。しかし、嫌そうな感じは全く無い。むしろ甘えるような声だ。  
(えっ、そんなとこを・・・。うわあ・・・)  
兄は女性の声に構わず、そのピンク色の秘所を舐め始めた。  
「んん・・・、っはぁ・・・」  
女性の身体がぴくり、ぴくりと震える。  
 
「かわいいよ、美穂・・・」  
「ん、・・・やだぁ」  
どうやら女性の名前は「美穂」というらしい。  
恥ずかしそうにするもまんざらでもないようだ。  
「美穂はここが好きなんだよな」  
「――んああぁっ! やだそこ、っあん!」  
美穂さんの反応が大きくなった。  
よくよく見ると、どうやら兄はその部分の上の方にある突起のようなものを集中して  
舐めているようだ。  
(・・・うわあ。すごい・・・)  
初めて見るその行為は、とてつもなく強烈だった。  
頬が上気する。  
なんとなく見てはいけないと分かっている。  
頭では分かってはいるが、しかし、全くその行為から目が離せなかった。  
「ああん! あっ、む、剥いちゃ、ぅあうんっ!!」  
(うわぁ・・・、あれ、ああなるんだ・・・)  
どうやらその突起は皮を被っているらしく、兄はそれを両の親指で剥いてしまい、舐  
めるのを続行した。  
「ああうっ! んあああぁ! うあん!」  
ビクビクと先程よりも美穂さんの身体が激しく震える。  
「すげーな・・・、やっぱここそんなにいいんだ」  
「はぁ、はぁ、裕貴君・・・」  
美穂さんは兄の名前を呼んだ。  
すごく色っぽい声だった。  
「裕貴君、もう・・・」  
とろんとした目で兄を見ていた。  
何かを求めているようだった。  
「んー・・・、・・・駄目」  
しかし、兄は優しげな口調で、それを却下した。  
「いつも通り、一回イッてからな」  
言うと兄は、剥きっぱなしの突起を再び舐めだした。  
「ああっ! あ、あ、ああ! ゆ、裕貴、くんっ、うああ!」  
美穂さんは布団をぎゅっと握り締め、頭を激しく振った。  
「ああ! うあ! んく、あああっ!!!!」  
(・・・うわっ!?)  
そして、大きくビクン、ビクンと仰け反った後、力が抜けたようにベッドに倒れこんで  
しまった。  
(すご・・・。 今のが、「いって」ってやつ・・・?)  
あたしは、半ば放心状態でそれを見ていた。  
吐く息は熱っぽく、心臓は早鐘を打つようで、耳元でその音がはっきりと聞こえる。  
下半身を中心として、何か、切ないような疼きがじんわりと広がっている。  
と、そこでようやく自分の身体の異変に気付いた。  
(えっ、やだ・・・、下着、湿ってる・・・?)  
汗で濡れたとは思えない。  
まさか漏らしたかと思い、恐る恐る、その部分に触れてみる。  
「・・・ふあっ」  
途端、そこから不思議な感覚が走り思わず声を漏らす。  
下着はしっとりと湿っていて、触れた指先を見てみると尿とは明らかに違う液体でて  
らてらと光っていた。  
(なに・・・、これ・・・)  
 
もう一度触れてみようと、スカートの中に手を差し込み、  
「――あああああっ!」  
美穂さんの大声にはっとなって、再び部屋の中を見た。  
「――!!!!!」  
あまりに衝撃的な画に、あたしは目を見開いた。  
兄の股間部に生えていた棒のような物が、美穂さんのソコに突き刺さっていた。  
兄はそのまま腰を前後に動かし、美穂さんはそれに合わせて声を上げていた。  
「――ッ!」  
目の前の光景に耐え切れず、あたしは一目散に隣の自分の部屋へと逃げ込んだ。  
後ろ手にドアを閉め、そのまま糸が切れたようにずるずると床に座り込む。  
壁一枚隔てた兄の部屋からは、相変わらず美穂さんの声が響いている。  
「・・・なにやってるのよ、お兄ちゃん・・・」  
思わず呟く。  
未だ、頬は熱く赤くなっているのが分かる。  
心臓はマラソンをした後のようにドクドクと激しく脈打っている。  
身体の火照りは、夏の暑さのせいではないのだろう。  
先程触れたその部分も、一向に治まる気がしなかった。  
「・・・・・・・・・」  
先程の兄たちの行為を思い返す。  
裸で寝て、身体を触り、股間を舐め、そして―――  
無意識のうちに、スカートの中に手が伸びる。  
熱く湿ったそこに、指で触れる。  
「ん・・・」  
甘い刺激にぴくっと首を竦める。  
そのまま指を這わせると、ビリビリと痺れるような感覚が背筋を走った。  
「ん・・・。っぁぁ・・・」  
兄たちが行為に夢中になっている中、あたしもまた、自室で初めて感じる快感に  
段々と溺れていった。  
 
「ぅん…、っぁ…」  
(なに、これ…。へん、な…かんじ…)  
下から上へ、上から下へ、下着越しにゆっくりとそこをなぞる。  
そのたびに肩がピクリ、ピクリと震え、喉の奥から甘ったるい声が漏れる。  
「んん…、…はぁ…ぁ…」  
『――ああっ、ああん! ゆう、きぃっ!』  
兄の部屋から聞こえてくる、美穂さんの声。  
それが更にあたしの身体を熱くさせる。  
(お兄ちゃんたち…、…はだかになって…、ベッドで…)  
指を止め、ふらふらと立ち上がる。  
頭が風邪を引いた時のようにぼぉっとしていた。  
ゆっくりとベッドまで歩き、Tシャツの裾に手を掛けると、それを脱ぎ捨てる。  
次いでスカート、ブラを取り、パンツも靴下も脱ぎ去って完全に裸になった。  
ベッドに仰向けに寝転ぶ。  
サラサラした感触が素肌に心地良い。  
(最初は…、どうしてたっけ…)  
ぼんやりと、順を追って思い出す。  
初め見たとき、確か兄は、美穂さんの胸を触っていた。  
(あたし、あんなに無いけど…、いいのかな…?)  
小さめな膨らみの一つに手を持っていき、試しに軽く撫でてみる。  
「ふぅ、ん…」  
むずむずとした感覚が、撫でた部分を中心に広がる。  
今度は、両方を揉むように触ってみる。  
「はあぁ…、んん…」  
(あ…きもち、…いい……)  
胸があっても無くても同じようになるのだと知った。  
手が中央にある突起に触れると、チクリと針で刺されたような感覚が走る。  
「んあっ」  
(あ…、乳首、固くなってる…)  
ぴんと尖ったそれを、しこりを解すように指先でころころと転がしてみる。  
「あっ、ぁぅ、ん、んぁぁ」  
先端から溶けていくような感覚に、身体中が細かく震える。  
下半身が段々と疼きを増し、無意識に太腿を擦り合わせているのに気付く。  
(あ…、つぎ、は…)  
膝を立てて、左右に足を開く。  
(舐めたりは…、できない、よね…)  
当たり前の事ながら少し残念に思い、仕方なく先程と同じように指で触れる。  
ぴちゃりと、小さな水音がした。  
そのまま上下になぞる。  
「うんっ」  
胸よりも幾分強い刺激が走る。  
反射で顎が仰け反り、開いた足がゆらゆらと揺れる。  
「あっ、は、ぁん、っあぅ、―――ひんっ!」  
突然、電流を流されたような刺激が走り、身体全体がびくりと震えた。  
(な、なに…?)  
もう一度、ゆっくりと下から指を這わせると、頂上の突起に触れた瞬間、再度  
同じような感覚が走った。  
(あ…、ここって…)  
おそらくそれは、さっき見ていた行為の中で、美穂さんが最も感じていた部分だ。  
今度はそっと触れてみる。  
「んんっ!」  
ぷくっと膨れたそこは、それだけでも強い快感をもたらした。  
乳首と同じように転がしてみる。  
「うあっ! あっ、あっ、ああっ!」  
(ここ、すごい…)  
ビクビクと腰が跳ね、背筋が反る。  
あたしは憑かれたようにそこを刺激し続けた。  
「ああ! はああ! んうう! ああ!」  
次第に兄が美穂さんにしていた行為が自分のそれと重なる。  
 
頭の中で、兄が自分のそれを舐めまわす。  
「やあっ! あっ! だめっ、お兄、ちゃんっ! うあ!」  
やがて兄は、あたしのそれの皮を剥いて再び舐めだす。  
あたしも現実で、同じようにそれを剥き上げて弄くる。  
「いあ! ああ! あ! う、ああ!」  
あまりにも強すぎる、痛みにも似た刺激。  
幾度も幾度も、走り抜ける快感に身体が跳ねる。  
段々と、何かが上ってくるような感覚があった。  
「ああ! うああ! も、もう、っぁあ! あっ! ――っああああ!!!」  
段々と緊張していった身体は、瞬間、海老反りになり大きく反射をおこした。  
「―――ッ、―――! ぁ―――!」  
快感が波打ち、身体がビクン、ビクンと跳ねる。  
やがて力が抜け、あたしは美穂さんと同じようにベッドに倒れた。  
「――っはあ、はあ、はあ、はあ…」  
呼吸が荒い。  
閉め切った部屋が暑く、あたしは帰ってきたときより汗だくになっていた。  
前髪は額にぺったりと張り付き、全身が倦怠感に包まれていた。  
「…はぁ、…はぁ…」  
初めて感じた「イく」という感覚。  
頭の中が真っ白で何も考えられず、あたしはただ、ぼーっと天井を見ていた。  
 
――コンコンッ  
 
(…え?)  
不意にノックの音がした。  
「入るぜ、夏美?」  
声に目をやると、すでにドアは開けられ、兄と美穂さんが入ってきていた。  
二人とも下着姿だった。  
……って。  
「えっ、――あ、わっ! きゃあっ!」  
自分が裸だったことを思い出し、慌てて身を起こして胸とあそこを隠す。  
「ふふふ。かーわいいっ」  
「…ぅぅ」  
恥ずかしさで顔を伏せる。  
美穂さんはベッドに近寄り、あたしの隣に座った。  
背はあたしよりも高かった。  
「私、原田美穂っていうの。美穂って呼んでいいよ。よろしくね、夏美ちゃん」  
「えっ? …ええと、その…、はぁ…」  
微笑みかけられ、事態に付いて行けてないあたしは生返事を返した。  
「あはは。あ、あと、あたし、一応あなたのお兄さんの彼女ね」  
「はぁ…」  
「…すげーついでっぽいな、おい」  
言いながら兄もあたしの隣に座った。  
「ふふ、そんなことないよー。…夏美ちゃん、すっごい汗だよ、大丈夫?」  
「えっ、あ、あの…」  
「おーい。んな話しに来たんじゃないだろ?」  
「あはは、そうだね。ゴメンゴメン」  
呆れたような兄に対し、美穂さんはあくまで朗らかだった。  
「さて、本題だ、夏美。お前、さっき覗いてたろ?」  
「!!」  
バレていた。  
「え、あの…、それは…」  
「…人のそういう行為を覗き見るとは感心せんぞ、おい?」  
「う……、その……」  
「あ、別に謝らなくてもいいよ。ねぇ?」  
「…えっ?」  
美穂さんに疑問の顔を向けた。  
すると兄も、「まあな」と言った。  
意味が分からず、二人を交互に見やる。  
 
「ふふふ。要するにね」  
美穂さんはす、とドアを指さして、  
「さっき私たちも覗いてたんだよ、夏美ちゃんのオナニー」  
サーッと血の気が引き、次いで、それが逆流する。  
「まぁ、途中からだったんだけどね。でも、夏美ちゃんも途中からだったんだから、  
これでおあいこだね」  
明るくウインクしながら言われた。  
(そんな…、あんなの見られたって、恥ずかしすぎる…)  
確かに、あたしの方が初めに覗いたのだから、それは因果応報というやつなのか  
もしれない。  
けれど、それでも、自分の痴態を見られたという事実にあたしは泣きそうになった。  
「あはは、可愛いなぁ」  
あたしの気持ちとは裏腹に、美穂さんは楽しそうに笑う。  
「私たちの見て、興奮しちゃったんだ?」  
「っ!! そ、そんなこと…」  
「ないわけないよねー。だって、ほら」  
「あっ…」  
美穂さんはあたしの、胸を隠している方の手を取って、ベッドの方へ持っていく。  
触れさせられたそこは、じっとりと湿っていた。  
「夏美ちゃんが興奮してオナニーしちゃったから、こんなに濡れてるよ?」  
「っ・・・そ、それは…」  
目を逸らして口ごもる。  
それは明々白々、れっきとした事実だった。  
「こっちもな」  
「やっ…」  
今度は兄にあそこを隠していた手をどかされ、指で濡れそぼったそこを拭うように  
なぞられる。  
「ひぅっ」  
イってからまだ間もないそこへの刺激に、身体は敏感に反応する。  
液体に濡れた指が眼前に現れた。  
「こんなに濡らしてるんだ、違うつっても説得力ねーぞ?」  
指を開いたり閉じたりすると、それはねっとりと糸を引いた。  
「ふふふ。やーらしんだー」  
「ぅ…、…やぁぁ…」  
あまりの恥ずかしさに、とうとう涙が零れてしまった。  
「…あっと」  
「あらら、泣いちゃった。ゴメンゴメン、冗談だよ夏美ちゃん。女の子なら誰だって  
そうだから、気にしないで、ね?」  
「………」  
兄にさらさらと頭を撫でられ、美穂さんに涙を拭われる。  
それでもあたしはしばらく鼻をすすっていた。  
「……うん」  
あたしが落ち着いたのを見計らって、美穂さんは頷いてすくっと立ち上がった。  
「さて! それじゃあ仲直りの印に、ここはおねいさんたちが一つ、夏美ちゃんにご  
奉仕しちゃおうかな♪」  
「…ふえ?」  
思わずきょとんとしてしまった。  
「…つーか、はじめっからそういう話だったろ」  
兄がそう言うと、美穂さんは「まあね」とにっこりと笑い、  
「三人で一緒に、お風呂に入ろう! ね!」  
 
 
兄と美穂さんに有無を言う暇も与えられず、あたしはお風呂場まで連れて行かれた。  
最初は兄たちが二人で入るつもりだったらしく、すでにお風呂は沸かしてあった。  
「はい。夏美ちゃん、座って」  
少しふらつきながら、言われるままに風呂椅子に座る。  
あたしはまだ、絶頂後の倦怠感を引きずっていた。  
兄はあたしの後ろに、美穂さんは正面に来る。  
 
「じっとしててね」  
頭からシャワーを掛けられる。  
少しぬるめのお湯が全身を伝う。  
「よし。それじゃあ、始めますか」  
全身隈なくシャワーを掛け終えて、美穂さんは言った。  
「じゃ、私は下を洗うから、裕貴君は上お願いね」  
「おう。…美穂、シャンプー取って」  
「あ、うん。はい」  
「サンキュ」  
「あ、あの、…ちょっとむ」  
今更ながら抗議しようとしたが、美穂さんは一旦人差し指を自分の口にあてると、  
間を開けずにそれをあたしの口にもってきた。  
口が塞がれる。  
「…間接キス。あはは♪」  
至極、楽しそうだった。  
「ダーメ。仲直りのご奉仕だって言ったでしょ? それに実は、これは受験で何かと  
忙しい夏美ちゃんへの『慰労』も兼ねているんだよ?」  
「い、いえ、そんなのいいですから…」  
「夏美」  
後ろから、ぽんっと両肩を叩かれた。  
「遠慮すんなって。年長者の申し出は素直に受けるもんだぜ?」  
「いや、あの…、…でも」  
「気にしないの。…じゃ、裕貴君、始めましょ?」  
「ああ」  
言って二人は、あたしの脚を、腕を洗い始める。  
思っていたよりも、二人は丁寧に丁寧に洗う。美穂さんにいたっては足の指の間まで  
洗っている。  
他人の手にぬるぬると触れられる感触に、なんとなく不安になる。  
心なしか、普段よりも皮膚の感覚が敏感になっている気がした。  
腕を洗い終えた兄は、次に背中を洗い始める。  
美穂さんは、ふくらはぎに移る。  
「…………」  
「〜〜〜♪」  
二人とも黙々とあたしの身体を洗っている。  
兄は後ろにいるので分からないが、美穂さんは変わらず笑顔だった。  
お風呂場には、肌をぬるぬると擦られる音だけが響いている。  
「夏美ちゃん、脚細いね〜。ちゃんと食べてる?」  
「え…、はぁ…」  
不意に話し掛けられ、あたしは生返事を返した。  
そんなに細いのだろうか。あまり気にしないので分からないが。  
「すごいね〜、羨ましいな。なにかしてたりするのかな? 太腿も細いし」  
言いながら、内腿をすぅっと一撫でされた。  
「ひゃあっ!?」  
突然の感覚に、ビックリして声を上げた。  
「ふふふ。反応も可愛い」  
笑いながら、美穂さんはあたしの脚の間に割って入り、太腿に移る。  
「…っ、……」  
さっきまでとは異なり、洗うと言うより泡を薄く延ばしているだけというような微妙な手つ  
きに、ぞくぞくとした感覚が這い上がってくる。  
すると今度は、背中を洗い終えた兄があたしの胸に泡を延ばす。  
「ひゃっ、…ちょ、お、お兄ちゃんっ」  
「ん? どうした?」  
振り返ると、兄はとぼけたような顔をしている。  
そのまま、美穂さんと同じ手つきでさほど大きくもない膨らみを白く塗る。  
「…んん、ふぅぅ…ん…」  
焦らすかのように円を描く手が、時折先端の突起を撫でるとそこからむず痒い感じが広がる。  
段々と、一時は治まっていた身体の火照りがぶり返す。  
それに誘発されたかのように、突起が次第に固さを増していくのが分かった。  
 
「ふぁぁ…、ん…ぁぁ、…っ」  
神経を溶かされるような感覚に、湿っぽい吐息が漏れる。  
太腿を撫でる手が、あたしの秘部に移る。  
「きゃっ、や! み、美穂さんっ!」  
「ん〜? 何かな、夏美ちゃん?」  
訊きながらも、しかし、手は休まずあたしのソコを撫でる。  
「んんっ、そ、そこは、いいです、からぁ」  
「ダメダメ。女の子はここが一番大事なんだよ。ちゃんと洗わなくっちゃ」  
「っあ、…だ、だから! そこは自分で、んうっ」  
「だから〜、私たちが洗ったげるんだって。…裕貴君、ちょっと手伝って」  
「あいよ」  
兄は一旦あたしの胸から手を離すと、そのままあたしを羽交い絞めにした。  
「やぁっ、いいって! お兄ちゃんもやめてったらっ!」  
「ほらほら、大人しくしろって」  
小さなあたしの身体は抵抗虚しく持ち上げられて、強引に立たされた。  
泡のついた手が股の間に侵入する。  
全体に泡を延ばし、それを擦り込むかのように滑らかに前後に動く。  
「んんっ、ふ、やぁあぁぁ…」  
頭や口では拒否していても、身体は確実にその行為を求めていた。  
あたしが抵抗を止めたことにより、上半身の手の動きも再開される。  
胸とあそこの三箇所を優しく同時に撫でまわされ、段々頭がぼぉっとしてくる。  
しかし、少しでも気を抜くと、がくりと膝が折れてしまいそうだった。  
「…うん、外はこんなもんかな。裕貴君、また夏美ちゃん、押さえといて」  
「分かった」  
風呂椅子に座らされ、後ろから胸に腕を回して抱きかかえられる。  
美穂さんがあたしの股の間に入ると、上体がやや後ろに倒れているため、腰を  
彼女に突き出す格好になる。  
美穂さんはあたしのあそこに指を添えると、くぱっと合わさっていた肉を開く。  
(やっ、そんなとこまで…?)  
「あは、夏美ちゃん、こっちもちっちゃくて可愛い」  
そこの上方にある敏感な突起を軽く突付かれる。  
「うあっ! ぁッ、っ…」  
びくりと身体が跳ねると、回された腕に乳首が擦られた。  
「わ、すっごい敏感。…ひょっとして、さっきのオナニー、初めてだったのかな?」  
「………」  
あたしは無言で頷いた。  
「ふうん、そっか〜。じゃあ、ここ洗ったことなんか無いでしょ?」  
ぬるぬると指の腹で撫でられる。  
「ああうっ!」  
「ふふ、気持ちいい? これ、クリトリスって言うんだよ。もう知ってると思うけど、  
女の子が一番感じちゃうとこなの」  
円を描きながら、軽く押し潰される。  
「はああっ!」  
ビクン、と身体が大きく跳ねた。  
「あらあら、軽くイっちゃったかな?」  
「はぁ…、はぁ…」  
呼吸が乱れている。  
あたしの股はだらんと力が抜け、完全に開かれていた。  
「ここ、すぐに汚れちゃうからね。だから、いつもちゃんときれいに洗っておいてあ  
げないと」  
美穂さんはそう言うと、クリトリスを優しく剥き上げ、軽く引っ張った。  
「んぅっ!」  
突起が根元までさらけ出される。  
まじまじとそれを見られ、羞恥が襲う。  
 
(やぁ…、はずかしい…)  
「…うん、やっぱり汚れが溜まっちゃってる。裕貴君、手伝える?」  
「ん、片手ならなんとか。何しとけばいい?」  
「皮が戻らないように、持っといて」  
「オッケ」  
包皮を支えていた指が兄のと交換される。  
「よし、じゃあ始めるね」  
開始を宣言すると、美穂さんはあたし自身の根元をクチュクチュと洗い始める。  
「んんんっ、んうぅ!」  
クリトリスからの刺激に身体が震え、それが細かなバイブレーションとなって乳  
首を襲う。  
あたしは歯を食いしばって、それらの快感に耐える。  
「ふうっ、っ! っ、く、んんぅ!」  
「………」  
不意に、指が離れ、間髪入れずに突起が弾かれる。  
「ひゃあん!!」  
ビクリと身体が仰け反った。  
「ふふふ、気持ち良いんでしょ、夏美ちゃん? 声、我慢しなくていいよ」  
指の動きが再開される。  
根元を洗い終えた指は、突起全体を滑らかに刺激し始める。  
揉むような強弱が与えられ、あたしは我慢しきれずに声を上げる。  
「ううっ、う、ああ! んんんんうぅ! っつああ!」  
自分でするよりもずっと強い快感が身体を駆け巡る。  
乳首からは弱い、クリトリスからは強い電流がそれぞれ流れる。  
無遠慮な、それでいて加減を知っている責め方に、先程自分でやったときのよう  
に再び何かが上ってくる感覚があった。  
「ああっ! や、だめ、だめっ! もうっ、ああああっ!」  
「ん、なに? 夏美ちゃん、イキそうなの?」  
訊きながら、美穂さんは動きを少しだけ早めた。  
「ふ、あ! はああ! やあ!」  
ブンブンと激しく頭を振る。  
髪についた雫や、額に噴き出た汗が飛び散る。  
「ああ! や、ダメッ! やめっ、あ! ああああ!!!!」  
くにくにとそこを弄くられながら、あたしは絶頂に達してしまった。  
身体が弓なりになって、ビクン、ビクンと波打つ。  
「あ――ッ、は――、っは、あ! いや! や、あああ!」  
しかし、イってしまったにも関わらず、美穂さんは止めてくれなかった。  
「みっ、美穂さ、あ! や! ま、待って、止めてぇ!」  
「ダメだって。まだ終わってないんだから…」  
言いながら、執拗にクリトリスを刺激し続ける。  
「あああっ! やあっ、だめ! やめて! …あっ」  
美穂さんの手を掴もうとすると、兄が胸に回していた方の腕であたしの両腕を上  
へと持ち上げてしまった。  
あたしは完全に抵抗できなくなった。  
「大人しくしときなって、夏美」  
「や! ああ! だめだめだめぇっ!! まっ、くあぁっ! はああああ!!!」  
イッたばかりのそこには強すぎる刺激に、一分と持たず、再び身体が反射を起こ  
した。  
「――っああ! やあああ! やめやめえぇ!!」  
しかし、やはり美穂さんは指を止めようとはしなかった。  
「あああ! はああっ! んうぅっ、ああああ!」  
ビクビクと身体の反射が治まらない。  
連続して絶頂に達して尚も続けられる刺激に、苦痛と快感が入り混じって訳が分か  
らなくなる。  
 
「夏美ちゃん、もう少しだから、がんばって?」  
「ふああ! ああらめっ! やめれぇっ! こわっ、こわれちゃう! しんぢゃうぅ!!」  
美穂さんの声は、最早聞こえていなかった。  
必死でもがき、呂律の回らなくなった口で泣き叫ぶ。  
すでにはちきれそうなくらいに充血した突起が、クリクリとこねくり回される。  
「やああぁ!! ああっ! や、はあ! ああ! ああっ!」  
やがて全身の緊張が最高に達したとき、クリトリスを摘む指に力がこもり、ぐりっとねじ  
り倒された。  
「あ゛あーーーー!!!!!」  
身体が、より一層大きく反り返って、跳ねる。  
「――あ゛ッ、――あッ、ぅぁっ、――はぁっ」  
それでもしばらく刺激は続いていたが、反射が治まり力が抜けたところで、ようやく美穂  
さんは指を離した。  
兄もあたしの腕を解放し、ぐったりとして荒い息をついているあたしを支えていた。  
「はあっはあっはあっはあっはあ、っ、ひくっ はあっ、はあっ…」  
呼吸が苦しい。  
喉がカラカラに渇き、頭はズキズキと痛む。  
あたしはぼろぼろと泣きながら、酸素を求めて喘いでいた。  
「はい、じゃあ、身体流すねー」  
サーーーっとシャワーを掛けられる。  
腕、胸、脚と、順に泡が流されてゆく。  
そして最後に、美穂さんはあたしのあそこへシャワーを当てた。  
「ふ、あああぁ…」  
もう一度柔肉を開き、突起を剥き上げると泡と流れ出た液体とを洗い流す。  
その間も、その緩い水圧だけで、身体がビクビクと痙攣した。  
「…はい、終わり。夏美ちゃん、お疲れ様〜」  
「はあ、はあ、はあ、はあ…」  
呼吸が中々整わない。  
全身に力が入らず、支えてもらわなければ座っていることさえままならなかった。  
「よっと…」  
兄はあたしを、いわゆる「お姫様だっこ」して、お風呂に入った。  
美穂さんもそれに続いた。  
体温と同じくらいのぬるま湯に身体が浸かる。  
「大丈夫か、夏美? …やりすぎだって、美穂」  
「ふふ、手伝ってたくせにぃ」  
「まあな…」  
美穂さんは笑って、兄の肩を小突いた。  
次第に、あたしの呼吸は落ち着いてきた。  
換わって、憔悴した身体を心地良い眠気が襲う。  
重くなった目蓋に抗えず、あたしは兄に抱かれたまま目を閉じた。  
「……あら、つか………かな?」  
「あん…け……ば、と………う」  
「そ…ね…。ふ……、……み、なつ……ゃん」  
僅かに、頬を撫でられる感触を感じた。  
楽しそうな二人の声をぼんやりと聞きながら、あたしは深く、死んだように眠りに落ちて  
いった。  
 
 

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