私は毎朝電車で痴漢に遭う。
7時37分発、前から3両目、真ん中の扉。
窓のほうを向いて、扉脇の手すりにつかまる。
ここから5駅、約13分、扉は開かない。
その痴漢の顔を見たことはない。
けれど多分、私に痴漢しているのはずっと同じ人だ。
その人は一貫して私の一部分にしか触れない。
背後からそっと制服のスカートを掬うようにして前に回される手は、
下着の上からでも正確に私のクリトリスを捉えた。
初めてその痴漢に遭ったとき、私は恐怖と共に言い知れぬ快感を覚えた。
誰に気付かれるとも知れない、公衆の面前での愛撫に、
私は自分でも気付いていなかった自分の嗜好に気付かされた。
触れる手の主が何処の誰とも知れないことへの畏怖、
周囲の人に気付かれるかもしれないという羞恥、
そしてクリトリスへおくられる的確な愛撫。
3つがない交ぜになって、私は今まで感じたことのない圧倒的な快感を感じていた。
最初は下着の上からなぞるように動くだけだった手が、
日を追うごとに大胆になっていった。
ぷくりと立ち上がったソコを指の腹押しつぶすようになり、
摘んだり、爪の先でブルブルと小刻みに振動をおくられることもあった。
その手はクリトリスしか触らない。
そのことも私が痴漢から逃げようとしなかった一つの要因だと思う。
扉が開くまでの約13分、私は毎朝与えられる快感に酔った。
次第に下着の上からの愛撫では物足りなくなっていった。
その手は下着の中までは決して入ってこなかった。
私は下着を買った。
前面が総レースで荒い網目の隙間から、その下が透けて見える。
思い切って陰毛もすべて剃った。
手とクリトリスの間の障害をできるだけ排除したかった。
初めてその下着をつけて行った日。
いつものように背後から回された手がソコへ触れたとき、
その手は一瞬の間ピタリと動きを止めた。
背後でクッと低く笑う気配を感じた。
網目の隙間から覗く肌が、初めて直接その手に触れられた。
私は堪えきれず、小さくため息をついた。
ぬるぬると愛液が染み出て、下着とその手を汚した。
私はそれですら満足できなくなっていった。
今度は下着に細工をした。
下着のクリトリスが当たる部分だけを、切り取った。
その手はその日も、背後からゆっくりと迫ってきた。
剥き出しのクリトリスに触れられ、その剥き身の体温に私は戦慄した。
私は触れられる前から、期待でそこを熱く濡らしていた。
その手は止まることなく、ぬるぬると私のクリトリスに円を描くように愛撫をくれた。
覆いかぶさる包皮を剥いてトントンと軽くノックするかのように刺激され、
私は衆人環視の中、声も出さずに絶頂を迎えた。
私は毎朝痴漢に会う。
7時37分発、前から3両目、真ん中の扉。
窓のほうを向いて、扉脇の手すりにつかまる。
ここから5駅、約13分、扉は開かない。