ひどい雨だった。雨戸が震えるがたがたという音で、隣に座る者の言葉さえ、身を寄せなくては聞こえないほどだった。  
灯心をぎりぎりまで短くした、ほの暗い行灯の光の中に、一組の布団と、一組の男女の姿が浮かび上がる。  
誰にも知られてはいけない二人だった。  
商家の娘である女は、明日からさる旗本の側室に迎えられる。  
女は生娘であった。  
清い身体のままで献上されるのである。  
清くなかったと知れたら、恐らくその場で、女は斬り捨てられるだろう。  
それは男も望まないことだったので、女の中に入ろうとは考えていない。  
襦袢の上から、女の足の間をゆるゆると撫でる。  
わずかな灯りでも、女の首筋が染まるのが分かった。  
じきに指先が、わずかなふくらみを捉えた。  
爪の先で弾くと、女は柳眉を顰めて、小さく  
「ぃ…」  
と声を漏らした。  
刺激が強すぎたらしい。宥めるように、指先で軽く押さえて震わせてみる。  
指と襦袢の下で、陰核はより大きくなったように思える。  
襦袢の上から、指の間に挟むようにしてこねると、押し殺した、すすり泣くような声が耳朶に届く。  
男の手を挟み込んだ太ももと腰がうねる。  
襦袢がしっとりとしてきた。  
 
襦袢を引きずるようにずらされたので、それが陰核をこすったようだ。  
「く…ぅ…」  
切なさに身を捩じらせて、女はすがりつくように敷き布を握り締めた。  
わずかに腰を浮かせたためか、乏しい灯りを映して、あらわになった蜜壷がぬらりと光る。  
男はぬかるみに浅く指をくぐらせ、蜜を陰核にまぶしつけた。  
てらてらと己の蜜をまとい、ぷっくりとした陰核は、男の指の間をすべって逃げようとする。  
ぷりゅり、ぷりゅり。  
ネコがネズミをいたぶるように、男はわざと陰核を挟んでは逃がすことを繰り返した。  
「…んん…ぅ…」  
雨と風の音が、2人の秘事を隠しているとはいえ、同じ屋根の下には両親もいるし、使用人もいる。  
誰かが様子を見に来るのを恐れて、女は必死に嬌声をかみ殺した。  
けれど、膨れて敏感になった陰核に与えられる甘美な刺激は、経験のない女にとっては拷問にも近い快楽を与えてくる。  
快楽から逃れようと膝を閉じても、男の指は止まらず、くぐもった快楽はかえって女を煽るようだ。  
耐えられなくて膝をゆるめると、男はすかさず女の膝裏に手を当てて、ぐっと押し開く。  
さすがに女は、あッ、と高く声を上げた。  
足の間に男が顔を寄せたのだ。  
生暖かい吐息が陰核にかかり、羞恥と快楽に腰が砕けそうになる。  
ひたり。  
柔らかな肉が陰核を覆った。  
それが舌であると知るより先に、女は反射的に足を閉じようとして、柔らかな太ももに男の顔を挟み込んだ。  
まさか締め付けるわけもなく、かといって足を開いたままでいるのも耐えられない。  
中途半端にゆるんだ足の間で、男の舌はゆるゆると陰核を愛撫しはじめた。  
犬のように舐め上げられるのは、鋭角的すぎて、女にはつらかった。  
舌先で押しつぶすようにこねくられるほうが、快楽を受け入れやすくて、それと知った男は舌を尖らせては陰核をつつきまわした。  
何度か舌先が蜜壷に触れて、その度に女の奥はうずいたけれど、男は決してその先には進まなかった。  
いっそ一線を越えてしまいたいのに。  
舌先はたくみに女を追い上げ、追い詰める。  
──がたがた、と雨戸が揺れる。  
行灯の火が、ふつりと消えた。  
それと同時に女は気をやり、男の名を呟くと、そのまま滑り落ちるように意識を失った。  
男は、いまだ戦慄く女の腰から名残惜しそうに離れた。  
 
幕  
 

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