「な・お・み・ちゃ〜ん!」
がちゃりと姉貴が俺の部屋のドアを開けた。
机に向かった俺に姉貴が絡みついてくる。
そして、俺の首にぶらさがるようにして、俺の膝にもたれかかる。
「姉ちゃん、勉強の邪魔。」
俺は首をぶんぶんと揺さぶる。
しっかりと俺に絡みついた姉貴は俺の膝から動かない。
「なおみちゃん、冷た〜い。」
どこからそんな声が出るのかと思うほど甘ったるい声。
そして、姉貴の指先がつつーっと俺の唇をなぞる。
姉貴の吐息からはアルコールの匂いがした。
「げっ、姉ちゃん、酒飲んでるのかよ!」
なるほど、姉貴らしくない行動の全てはこれで説明がつく。
つくのはいいが、この酒乱の姉貴をどうしたものか。
「なおみも一緒に飲も〜。」
どこからビール瓶を取り出したのか。
姉貴はいつのまにか手にビール瓶を持っていた。
「俺、まだ未成年なんだけど。」
「細かいこと気にしないの。」
姉貴はそう言ってビール瓶の中身を口に含んだ。
そのまま、俺に顔を近づけてくる。
「ちょ・・・!?」
姉貴から逃げようとしたはずみで、椅子が後ろに倒れこむ。
身体にのしかかる姉貴の重み。
胸に広がる生暖かい感触。
姉貴が口に含んだビールを俺の胸に吹いていた。
「私って、そんなに魅力ないかな〜?」
妙に艶っぽい表情で姉貴が俺を見つめる。
俺は思わず、姉貴から視線をそらす。
こんな表情で見つめられると妙に気恥ずかしくなる。
「なおみってば、かわいい〜。」
俺の唇に姉貴の唇が重なる。
子供のキスというやつではない、大人なキス。
姉貴はうっとりと俺の胸にもたれかかると幸せそうに目を閉じた。
5秒もしないうちに、姉貴の口から寝息が聞こえてくる。
俺はなんとか立ちあがると、寝ている姉貴を俺のベッドに寝かせた。
ビールの染みついた服を替えて一階に降りる。
そして、電気の消えたリビングのソファーに寝転がった。
まったく、酔っ払いってやつは何を考えてんだか。
真っ暗な部屋の中、俺はなぜかビールの匂いをかいだ気がした。