小さな光が、ちらちらと揺れていた。
今宵は祭りだ、人々は収穫の感謝を奉じて踊っていた。
禊の最初の夜にあたるクライマックスに一斉に歓声はおきたが、日の変わると共に急に静かになった。
皮切りのようにシュカは禊の主役、神教徒としての最大の見せ場と、唾液を飲み込んだ。
禊、一般的に言われるものと似て非なるこの国の儀式は、滝に打たれるとか冷水を浴びるといった、
わかりやすく激しい痛みではない。
どちらかといえば緩やかな戒めと言われていた。
先ほどとは打って変わり、音楽は人々を滑らかに、官能染みた恍惚の状態に酔わせていく。
いつの間にか、松明の照らし、夜の中、その場は一種俗世と切り離した雰囲気となる。
砂一つ動かさないよう人々は小声になり、勢いを得て澄んだ空気が覆うように満ちていく。
穏やかな中で、ごおん、と鐘が鳴ったのを皮切りに、シュカの長い禊は始まった。
神器の美しく荘厳な音楽を奏でる中、たいまつの灯のなかで、一週間にわたる儀式は始まり、最初から最後まで、静かに続けられる。
彼女は白い聖なる衣を翻し、人々の前に静かに歩み出た。
拘束こそされなかったが、人々の目、囲われた祭祀の場、槍と衛兵。
なによりプライドが、彼女をここから歩き出さないよう監視している。
緩やかな戒め・・・緩やかな試練。
それが何より辛いと言われる所以は、世の俗欲、いわば煩悩や欲望を断ち切れない一瞬を、誰も止めてくれないこと、の一つに尽きる。
最初は、前日の朝から引き続いた絶食から始まる。
一つ目、人として与えられた食欲。
一日を過ぎ、二日を過ぎ、三日目の夜過ぎになり、腹をすかせた目の前に、いかにも肉汁の滴るような匂い、にんにくを香ばしくいためた香り、パンの焼ける香りが、その生贄を襲う。あたりの人々はその饗応を思うさまむさぼっている。
誰も自分を止めるものはいない、拘束さえされていない。
その上誘うような声や、差し出されたりする誘惑。
誰もがいいよいいよ、食べてしまいなよ、こんなにおいしいものを、食べないのだなんて?
空腹に耐えかねて齧り付けば、焼身の刑が待っている。
神に倣う、とたばかった罪。
だがシュカは、冷静な表情でこの苦難を抜けた。
食べなければ、悲惨な目に会うこともない、
解っていて抑えられなかった先人を軽蔑すらした。
最初の試練、と言われるだけあって、
大抵の者は、この試練は乗り越えるだけの者でもある。
二つ目、睡眠欲。
食欲を思う存分満たしたあと、そのまま行われる試練は、シュカの一番の懸念だった。
二日二晩、とろり、とした瞬間を突かれ、眠ることは許されない。
が、三日目から急にほって置かれる、眠りたいなら眠れ、と言わんばかりに。
あたりは心地よさそうなシュラフに個々に包まれ、惰眠をむさぼる。
この時は衛兵すらつかない。誰も見ていないだろう、と睡魔は囁く。
だが、実はありとあらゆる隙間から見られていて、ことり、と首を落とそうものなら
瞬間に胸をえぐられる。死なぬ程度に。
気を失いたくても失えない程度にえぐり続けられる。死ぬまで、異教の神の受ける処罰。
忍耐をたばかった罪。
静かに、何もかも日常ながら刻々と行われていくのがこの禊であり、
年に一度、聖職者が儀式に望むことになるのも恒例のこと、むしろこの国では、
聖職者はそれに耐えうるべき者として尊敬されていた、だからこその信仰だと。
これに選ばれるべきは次なる王、教王の直接のしもべとして君臨できた。
魔女裁判がはやっていたこの頃に、魔女と紙一重とされるのが敬虔なる神教徒であり、
また神教徒が、魔女と異をあきらかにする証拠としてこの儀式に望むものが多かったのは、事実である。
二つ目の試練の最後、3日目になる。
シュカは座ったまま、閉じそうなまぶたを爪で何度か傷つけては、眠らぬように必死に耐えていた。
今彼女のまぶたは傷だらけで、唇は乾き、視点の定まらぬまま渇いた喉を何度も唾を飲み込み潤すので精一杯だった。あともう少し、あともう少し・・・何万回そう自分に言い聞かせたことだろう。
限界が近付いてきていた。
もう手段を選んでる場合ではない。
腰に指された短剣を見る。
この聖剣は、試練に耐えられないときに自害するためのものだ、この儀式を放棄し、魔性と自己を認めず、罪として認めない最後の意思として、自害が許される。
ゆえに聖剣を取ることは、この儀式に臨んだ者の、神教徒として生を終える唯一の手段だった。
シュカはふわふわとして力の入らない左手でその柄を捉えると、ゆっくりと両手に持ちかえた。
関節が痛んできしむような感覚のまま、握る。
ほんの少しでも気を緩めた瞬間、前のめりに倒れそうだ、その中で、震える手で胸の前に両手を置き、
刃先をあごに向けた。ほんの少しでもあごが落ちたときには容赦なく刺さる位置に置き、つばを飲み込む
松明の炎がぼんやりといくつもに揺れて見え、これは夢なのか現実なのか、と自問し、首もとの無事に現実だと知る、がもうそれさえも夢なのでは、と思え、シュカは聖剣にぐっと力を入れてみる。
幼いころの記憶が何度もよぎって、現状を嘲笑する。
シュカはため息ともつかぬ声を飲み込んではいたものの、辛い、とそればかりを思った。
もう、いいんじゃないのか・・・?このまま一気に喉元を割いてしまえば、楽になれる・・・
ちらりとよぎった考えの中で、いやいや、それでは思う壺だ・・・。思い直して顔を心持上げては、
悶絶するがごとくにシュカはあえいだ。
でも、眠りたい・・・顔をゆがめて、今にも閉じそうなまぶたを押しやったとき、
乾いた眼の端で、ルカの全くの平常のまま、シュカを見守っている姿を捉えた。
シュカはかっと充血しきった真っ赤な眼を見開いた。
思い通りには行かないわよ。
凄絶な表情でルカを睨みつけ、口の端をゆがめる。
シュカは思い出した。
物心ついたときから、祈りなさい、さすれば救われる、と言われ続けてきたことを。
シュカは言われたとおり祈ってきた。
儀式に彼女の選ばれたことを教王が告げたとき、あたりはいっせいに息を呑んだ。
こんな新米者、つい最近聖職者として地位を与えられた者であるのに、と言う不満をシュカは肌で感じた。
が、シュカは気がついていた、「ババを引いた」と思った、誰がための当て馬だ、とも。
多分、次なる教王の徒、ルカを選出すべきため。
大抵の人間は、三欲の中、どこかで屈する。
シュカは、ただ単に耐えうるまで耐える聖職者、として評価されたに過ぎない。
次する者は、前のものが耐えた試練からを受け持つからだ。
それとて栄誉といえないこともない。が、人望のないルカのためである、シュカは唇を噛んだ。
もともとこの伝統は、その試練を受ける姿に耐えかねたものが次々と代理を名乗り上げたことから始まる。
それほどの人望があるものなら、と犠牲に犠牲を重ねた初代の逸話による。
シュカは根性があることでは有名だった。
上手くいけば、シュカの耐えた試練、最後の追い込みの中倒れて、ルカに交代し、
ルカは大した苦労なく教王のしもべになる。
全ての試練にはシュカは耐えられないと思われるが、もとより最初からルカには耐えられない。
もしシュカが途中そう、最初の試練で倒れたときの代理も決まっている。
上手いこと、苦痛に耐えたその地位を、ルカは手にする。
信じてきた、なのに最後がこれだとは、報われないことこの上ない。
裏で糸引く者がいる、が、金と関係が物言う世界ではそんなことは当たり前のことだ。
そんな解りきった八百長に、このシュカさまが甘んじると思うか?彼女は是と言った、「ありがたき光栄」と言って見せた。
どんなにしてでも、そのとき、耐えると決めた。
どんなことがあろうとも、ルカがみすみす私の苦難を糧にするなど許せない。
あんなやつ、何ほどの根性すらないのだ。
大方、金でも握らせ、教王になる算段を捻っただけ、神教徒としての資格すらない。
怖くて周りは黙っているだけだ、シュカは、ルカだけは認めないと心に決めている。
この信念こそが彼女を一所懸命にさせた、挙句この儀式に選ばせ、苦役を強いられる理由ともなった。
ルカにとって邪魔な存在であるシュカを、合理的に踏み台にした挙句抹消し、ルカはその地位にのし上がる。シュカの存分な尽力、犠牲の上、という美談とともに。
逆に利用してやる、とシュカは思ったのだ。
その狡猾さに舌を巻きながらも、それら全てぶち壊してやる、と言った強固な意志にすがり、シュカは、
この試練を乗り切ったのである。
そして、最後の試練の場になる。
今や二欲を制したシュカは、半日ほどの睡眠と充分な食事を与えられると、いきなり風呂に入れられた。
全身を泡だらけにされつつ、磨かれ、今までの灰色染みた聖衣ではなく、絹の真珠のようなものを着せられると、儀式の間に戻された。
いつの間に用意されたのか、広場には一段上がった、松明に照らされる円形の場があった。
眼を凝らしたものの、特に不安を感じる仕掛けもないようだ・・・
シュカはほっとするのとともに、少し拍子抜けしたが、顔には出さずしずしずと歩く。
「そんな簡単に済むはずもない」と疑念もおき、彼女は眼を凝らした。
そこは広く、そこここに柔らかそうな毛布が置いてある。
よく見ると、それらはゆるゆると動いているのであり、腕や足と思しきものが絡み合っていた。
聞いてはいたものの、改めてシュカは、こればかりは「バカみたいだ」と思うほど一番簡単な試練としか思えなかった。
三つ目、性欲。
彼女自身、何度かの経験はあったものの、欲して止まないほど男性を求めたことなどない。
むしろ、そんなことがあるはずもない、と思っている。
だから彼女は余裕の微笑とともに舞台の中央にでると、悠々と腰を下ろした。
しゅるり、と音がして、踊り子の格好をした女が現れ、シュカの前に立った。
官能的な腰つきにシュカは、「なるほど」と、劣情を刺激するための踊り子も大変だな、と思う。
次に出てきた濃厚な男女の絡み合いも、逃げる女を捕まえて犯す実演も、それぞれ、
シュカには「ご苦労」としか見えなかった。儀式とはいえ、登場する彼らに、これは強制なんだろうか?それとも志願制なのだろうか?と変に冷静な視点ですらいた。
退屈にあくびを堪える。
もう、夜が明けてくる。完全に辺りが陽に照らされた頃、この長かった儀式は終わる。
一番鳥が鳴く、端で爪を噛んで苛立ちを隠せないルカを見やり、シュカは思いを新たにした。
ここまで来たら、勝ったも同然。
今後は、私があなたを裁くことになる。
当然の報い、心から嘲笑してやりたいが、それは神教徒としてあるまじき行為かと思う、
余裕からの自戒だ。
シュカは笑いを堪えるためにも、満足したように天を仰いだ。
消え行く星を眺めてから一度目を閉じ、再び開いた時である。
明け夜空を覆うような影が、シュカの視界一杯をふさぎ、それは上空から一瞬にしてシュカの全身を覆った。
小さくシュカは悲鳴をあげるや、腰の短剣に手をやる、とっさに悪魔の襲撃かと思ったのだ。
「ぐっ・・・」息をつまらせたシュカは身を這い出そうとして、この異形のものが人型をとっていることに気づく。
手のような真っ黒いものに手首を捕まれ、膝のようなものが、シュカの両膝を割っている。
逃げようともがきながら、シュカはめまぐるしく考える。
悪魔だとしか思えないが、儀式の最中だ、教皇その他、浄化できるはずの者は侍っているのに手を出してこない、慌てた声すらしない。
いくらなんでも悪魔の出現となれば、この儀式だって中断されるはずだ。
とすると、これは試練の一つだ。
手を伸ばしてくる異形の者を睨みつけ、シュカは身を起こそうと地に後ろに両肘をついた、そのとき後ろから両脇に腕が伸びてきたかと思うと彼女を持ち上げ、羽交い絞めにした。シュカの目の前にも人型はいる。
シュカは思わず呟く。
「2人?!」
後ろの人型に脇から上半身を抑えられた格好で立ちもがいているうちに、
ふと、シュカは「傷つけられることはないのだ」と思い至った。
そうだ、これは性欲の試練であるはずだから、気をやりさえしなければ、何の支障もないはずだ。そう思うと慌てた自分がおかしくもなる。
やれるものなら、とシュカは思い、きつく膝を閉じた。
その途端前の人型が目の端でほのかに笑ったように見えて、シュカは睨むように顔を上げ、その顔を見、
目を疑った。
「ルカ・・・!?」
そんなはずがない、今、端に彼はいて苛立っているはず。
横目に走らせると、彼は確かにそこにいる。
どういうこと?
まさか、私の幻影なのか?
ごちゃごちゃとした思考のなか、目を戻したが、脇を抑えられているため不自由な両手と、自由な両足を存分に使い、人型の伸ばす触手を避け、彼を見た。
彼は意地悪く舌なめずりをしていた。
目を戻すと、目の前の人型も、暗闇のなかで確かに舌なめずりをしていた。もう一度すばやく横目をやったとき、ルカとその人型は同じようにやはり爪を噛んでいてその流れのように、
目のあったシュカに、ゆっくりと、握った指と立てたその親指を、下へ向け、唇を鈍く光らせて吐く。
「堕ちろ」
にやりと笑う。
雷に打たれたようにシュカは悟った、
影、だ。
こいつはルカの影だ、誰かに摂りついているのだろう。
ということは、あたりにこの影は見えていない、ことになる。
見えるのは肉体のみ、けれどこの肉体はいまや心無き実体、ルカである。
聖職者の操る影は、通常の聖職者には見えない。
見えるのは、当人と相手と、そして悪魔のみだ。
操られている当人でさえ記憶に残らない、実に巧妙で他人の姿を借りた巧妙な呪い。
すなわち、ルカは聖職者として悪魔に魂を売ったことになる。
なぜ。
一度魂を売れば、悪魔との契約は永遠に続くと聞く。
両足のあいだにいた人型は、隙間を埋めるようににじり寄って来、後ろの人型に力が入る。
いまは何かを考えている場合ではない、と打ち消してから、
シュカは意外な落とし穴に、あっと気がついて青ざめる。
私がこいつに傷付けられない、ということは、
私も、こいつを傷つけることはできない、ということだ。
前にいる異形の者、ルカに他ならない=に対して身構えたシュカのうなじを、
柔らかく執拗に後ろの人型が舐める。
舌はとろりと後ろから耳朶にいき、含むように吸った。
ぞわっと鳥肌が立ったシュカは身を仰け反らせ、もがいた。
松明の灯に照らされたシュカの衣はとろりと反射し、彼女の肌理細やかな肌を艶かしく、光らせる。
二人に迫られたシュカは辺りからは、見え隠れしていた。
灯に透かされた赤い髪が、その度に何度も跳ねた。
この儀式一番の見所とばかり集まった観客は、喉を鳴らし、
空に伸ばされた素足とか、嫌がって背けた表情とか、相手の肩を抑えた指が滑って行き場を無くすのを、
興奮を持って見守っていた。
「・・・汚い真似、ばかり!!」
次々伸びてくる4本の腕を避けつつ、シュカは毒づいた。
「あんたに人望がない理由がよくわかるわ!!」
足も含めて8本の陵辱は、確かにシュカの体力を奪っていく。
もう日が昇る、もう少しだ、と彼女は思い、人型を絶え間なく蹴り、なぎ払う。
ルカの顔がそこにあるのを、シュカは憎き相手とばかり改めて思い睨んだために怯んだ、一瞬の隙に、シュカの柔らかな唇に、舌が絡んだ。
呼吸を止められ、無我夢中で相手の動きも水に振り回した手、足を捕まえられる。
いやあっとシュカが叫ぼうとしたときには、膣の隙間に何かが入り込み、うねうねと動く。
細い何かだ、
シュカはそれがたいして大きくはなく、違和感程度のものだと気を奮い立たせ、
「この・・・!」と身を捩じらせ、唇を避けようとする。
それが奥にたどり着き、指のような触感を持って彼女の内膜を擦ったとき、
シュカは、初めて思わず声をあげた
「うあああっ・・・」隙間ない内膜の中で、尖ったものが内壁をいじりつくす。
「いやっ・・・!!!」
体中を這い回るような悪寒がシュカを襲う、シュカは身震いしながら、
強引に首を振り、その冷たい唇の触感から逃れた。
だが、体の奥底に入った物はそのまま、依然自由に暴れまわっている。
やがてそれが指ほどの太さになり、内側を擦るようになで上げたとき、シュカは悲鳴をあげそうになり、あともう少しあともう少しだ、日が昇ってくる・・・と自分に言い聞かせた。
早く、早く、と日が昇るよう彼女は祈る。
細い何かだったそれは、徐々に膨らんで弾痕の様相を呈す、星が消えて行き、白々とした空をシュカは待ち望む。
押し入れながら舐めつくすようなそれ、あちこちから伸びる粘着した液を滴らせる指に似た、異形のもの。
笑いを堪えられないように俯いて笑うようなルカ。
体の中を這い回る男根のようなもの、乳首にまとわりついた指が絶え間なく刺激を与えてくる。
背筋を緩和させるような、大きな波が襲ってきて、シュカはまた首を振る。
「いやぁっ、やめ、や、めてえ・・・」
ざらりとした感触が何度も膣を行き来する、とろりとした指のようなものが、ふくらみをいじった。
シュカは跳ねて、閉じようと膝に力をこめるが、力強い影に阻止される。
「いやあ、だめ、いやぁ・・・」
泣き声をあげて、快感はどうしようもなく押し上げられていく。
「いや、いやあ、いやぁ」
シュカの声は甘く、薄白んだ夜空に響く。
押さえられた腕も肩も、汗でとろりと光っていた。
早く、早く、と日が昇るよう彼女は祈る。
細い何かだったそれは、徐々に膨らんで弾痕の様相を呈す、星が消えて行き、白々とした空をシュカは待ち望む。
押し入れながら舐めつくすようなそれ、あちこちから伸びる粘着した液を滴らせる指に似た、異形のもの。
笑いを堪えられないように俯いて笑うようなルカ。
体の中を這い回る男根のようなもの、乳首にまとわりついた指が絶え間なく刺激を与えてくる。
背筋を緩和させるような、大きな波が襲ってきて、シュカはまた首を振る。
「いやぁっ、やめ、や、めてえ・・・」
ざらりとした感触が何度も膣を行き来する、とろりとした指のようなものが、ふくらみをいじった。
シュカは跳ねて、閉じようと膝に力をこめるが、力強い影に阻止される。
「いやあ、だめ、いやぁ・・・」
泣き声をあげて、快感はどうしようもなく押し上げられていく。
「いや、いやあ、いやぁ」
シュカの声は甘く、薄白んだ夜空に響く。
押さえられた腕も肩も、汗でとろりと光っていた。
膨らみをいじる指先と思しきものは、認めたくはないもののシュカの滴らせる水分でゆるゆると滑り、
体の中の男根と変わらぬものを締め付けて、より奥へと吸い上げるのはシュカのひだである。
細い腰をうならせて、シュカは抵抗を試みるつもりで、より深みへと嵌っていくのを意識しては、あえいで、悶えては、夢中で声を呑んで苦しげにする。
異形のものの膨らんだものが、突然激しく動いた。
「ぃやあっ、あ、あ!あ、あふっ、・・・・」
揺らされて乳房が上下する、動きはやまず、シュカの中で暴れまわった。
「だめ、だめ!だめぇ、あ、あ、あ」
堪えながら締め付けるのに自身が感じてしまう、声が跳ね、彼女は叫ぶ「いやあっ」
「おねがい、やめてぇぇぇ・・・」
シュカは小さく叫んでいた「いっちゃう、いや、いっちゃう!!」
ぶわ、と子宮の中に暖かいものを感じる。
同時にシュカは避ける術もなく呼吸を吸い上げられるような強烈なめまいを感じた。
「神のしもべ、ここに、新たなるしもべを迎える」
重々しい声が響いた。
夜が、明けたのだ。
シュカはその声を遠く聞いた。
夜明け、ぎりぎりの時間で、シュカは禊を終えていた。
荒い呼吸の中で、朝日に消え行く影を見た。
終わったのだ・・・
そのとき、急に周りで騒ぎが起こった、司祭やらが駆け込んでいく。
シュカはがくがくと震える膝を抱えて、霞がかった辺りを見ている。
「急に、苦しげに」
「のどをかきむしったんだ」
倒れた男の手は、親指を突き出した他の指は握ったままだった。
表情は満たされたとしか言いようのないほほえみを浮かべている。
ルカ、すでに今は亡き悪魔になったのだった。
最後の呪いは、これだったのかもしれない、とシュカは憎々しげに微笑む。
聖職者として生きていく中で、
この体をもてあまし、夢魔となったルカの訪れるのを、待ち続けてしまうだろう、自分を、思った。