『天井裏から、愛を込めて。』
閑話 「妖怪 天井下がり」
今朝も寝起き早々、その状態だった。
「んっ……ん……」
俺の家で暮らしている妖怪の少女が、今目を覚ましたばかりの俺のペニスを口に咥え、
一心不乱に舌を絡ませている。寝起きの寝フェラ。
彼女がウチにきて以来、俺が家にいるときには、ほぼ毎朝の恒例行事だ。
(ふぁぁ……。それにしても、上手くなったな。さがりの奴)
彼女は妖怪、天井下がり。破れ天井に住み着いて、
その家の住人を驚かせたり悪戯を仕掛けたりするだけの、害のない妖怪だ。
さがりという名前は、とある山奥の廃寺で彼女と出会ったとき、俺が付けてやった。
(おおお……)
さがりは舌先を小刻みに震わせて、裏筋の一番敏感な部分を刺激する。
しかしこちらが際どいところまで高まってくると、
まるでそれを読み取ったかのように、すっと刺激を変えてくる。
緩やかな動きで、優しく全体に舌を絡ませるような愛撫。
そしてまた、こちらが物足りなさを感じ始めるタイミングに合わせて、
感度の高い鈴口を攻め始める。
すぐには終わらせない。しかし、刺激を途切れさせることもない。
断続的に男の性感を高めていく、巧妙な焦らしのテクニックだ。
(まあ、コツを教えてやったのはこの俺だが)
それにしても、わずか数ヶ月の間にこの上達。やっぱり天性の何かがあるんだろう。
寝ている相手に対する「悪戯」は、妖怪天井下がりの種族特性ともいえる行動なわけだし。
「ケーイチ……きょうもこのまま、するの?」
このままする、というのは、つまりこのままお口で抜いてもらうという意味。
俺が狸寝入りを続けて彼女の愛撫に身を任せるのはいつものことだから、
黙っていればそれが肯定のサインになる。
フェラチオからの口内射精には、セックスとはまた違う、たまらない快感があるものだ。
征服感と充足感がない交ぜの。何度させても、飽きることがない。
「いいよ……してあげる」
さがりは俺のペニスを大きく咥え、吸い立てる。
締め付けるような唇の感触と鈴口を刺激する舌先の動きに、俺は急速に高まっていく。
さがりも、もう焦らそうとはしない。立て続けに、強い刺激が、来る。
俺は射精感に身を委ね、そのまま気持ちよく、さがりの口の中に精を放った。
「んっ……ん……」
射精が完全に終わるまで、口を離そうとはしない。恍惚の表情を浮かべて、
さがりは出されたものを飲み込んでいく。
普通の女の子にとってはかなり辛い行為のはずなので、
それは無理にやらなくてもいいと、言ってはあるんだが。
こちらが寝ている時、つまり天井下がりとしての本領を発揮しているときの彼女は
何しろ大変に積極的なので、こういうことも嬉々としてやってくれるのだ。
だいたい、寝フェラなどという行為にしたところで、
別に何も俺が御主人様気取りでやらせているわけではないぞ。
初対面の時からずっと、向こうが自発的にやっているのだ。
というか、止めても聞いてくれない。
眠っている相手に悪戯を仕掛けるのは彼女にとって本能にも等しい行為だから、
やめさせようがないのだ。
試しに居間のソファで寝てみたこともあったが、
所詮一つ屋根の下なので結果は変わらなかった。
どうしてもというなら、彼女を置いて余所に住むしかないだろう。
そしてもちろん、俺にはそんなつもりは毛頭ない。
「おはよう、さがり」
「あっ、おはよ。ケーイチ」
俺が体を起こして声をかけると、
さがりは急にもじもじとして、シーツで体を隠してしまう。
さっきまで一糸まとわぬ姿で積極的にご奉仕に励んでいたというのに。
こちらがはっきりと「起きました」という態度を示すと、
天井下がりの積極性は、たちまち消えうせてしまうのだ。
そうなってからの彼女は、どちらかといえば臆病な性格で、
人並み以上の恥ずかしがりやである。
今さら、見られたくらいで照れることもないだろうに。
「どうしたー?隠れるなよー」
そう言いながら俺も一緒にシーツの中に潜り込み、暖かく柔らかな彼女の体に手を回す。
「ひゃん」
片手で陰裂に触れると、さっきまでこちらからは何もしていなかったというのに、
そこは熱く潤っていた。
「さーがーりー。してる最中、何を期待してたんだ?一人でこんなにして」
「にゃあ……やぁん」
右手の中指をそこに差し込み、ほぐすように掻き分けてやる。
あまり前戯に時間をかけない時の、下準備。朝っぱらからするときには、
じっくりと愛し合う長い夜の時間とは、また違ったやり方があるものだ。
濡れているときでも、多少は慣らしてやったほうがいい。
そうでないと、相手が処女でなくても痛みを感じさせてしまうことがある。
それに、指先に感じられる襞の感触というのは、性感とは別の意味で、いいものだ。
窮屈に絡みつく狭い秘洞の中の、複雑な凹凸を俺は指でこすり上げていく。
はっきりと中の構造が分かる。指先で性器を犯し、
その全てを自分の知識に変えていく、征服感。
この体のこの感触を知っているのは、この世界で俺だけなのだ。
そしてその淡い満足感は、早くこの中にペニスを入れてこすり立てたいという衝動を促していく。
「あ、んっ……ひゃぅん……ケーイチ……するの?さっき、したばっかりだよ?」
その通りだが、これからすることと、さっきしたことは違うのだ。だから、いい。
「する。ほら、もうこんなだ」
俺は、再び屹立したペニスをさがりの体にぐいと押し当ててやる。
「わぁ……ケーイチ、またげんき」
「そうさせているのは、お前だ。はい、下向いてー」
俺はさがりにうつ伏せの姿勢を取らせ、膝で立たせて、後ろから陰裂にペニスを当てた。
「あっ……ふぁ……」
そしてそのまま、腰を進めて侵入していく。暖かく潤ったそこは、待ち焦がれたかのように俺を迎え入れる。
「あん、あんっ、やぁ……ケーイチぃ……」
さがりの甘い声が、心地よく俺の頭の芯を痺れさせていく。
避妊具は、付けていない。たとえ0.01ミリの壁であっても、
それははっきりと何かを阻害してしまうものだ。
直に触れ合う粘膜と粘膜の感触は、たまらない刺激を与えてくれる。物理的にも、感情の面でも。
「やっ、だめ……ケーイチ、ケーイチぃっ……!」
さがりの中の奥の部分、一番深いところで、俺は欲望を解き放った。
コツン、コツンと、俺の精がさがりの最奥を叩く。
相手は人間の女の子ではないんだから、別に構わないだろうという気持ちが半分。
……万一のことがあっても、こいつになら俺の子を産ませるのも悪くないか、という気持ちが半分。
「はぁ……ふぅ」
ぱたりと枕の上に倒れ込むさがりに身を寄せて、俺はほっぺたにキスをしてやる。
「えへへっ……」
俺の体に頭を預けて、さがりは幸せそうにまどろむ。