あ、と思ったときには遅かった。  
ユリーナの足首に巻きついた蔓は、そのまま植物だとは思えない力で彼女を中空に釣り上げた。  
慌てて腰のショートソードを引き抜いて、蔓を断ち切ろうとしたのだが、不安定な逆さづり状態では、ろくに狙いも定まらない。  
中途半端に切り裂いた蔓から、ぬるぬるした汁が出てきて、ユリーナはショートソードを取り落としてしまった。  
「ああっ」  
この森に生えている、珍しい植物をいくつか採取して、すぐに戻る予定だったから、他に武器は持っていない。  
愕然としているユリーナの横から、さらに蔓が伸びてきて、ウェストの辺りに巻きついてきた。  
そのおかげで、逆さづり状態からは脱却できたのだが、安心からは程遠い…むしろ、がっちり捕獲されてしまっているので、状況は悪化している。  
「くそっ、放せ!」  
吊り上げられて焦ったが、それほど高い位置に持ち上げられたわけではなかったから、ユリーナは力任せに蔓を引っ張った。  
このまま落ちたとしても、下は柔らかい草地だ。足を捻るくらいはするかもしれないが、得体の知れない植物に捕まったままよりはマシである。  
しかし蔓のほうも、せっかくの獲物をむざむざ逃がす気はないとみえて、蔓はびくともしない。  
見たこともない植物だが、こうやって生き物を捕獲するからには、捕虫植物の一種だろう。どこかに消化液の貯まった袋でもあって、そこに放り込まれて溶かされるのか。  
戦慄するユリーナの足首に、新たな一本が擦り寄ってきた。  
ヘビのような動きで、くるぶし、ふくらはぎと這い上がり、  
「ちょっと!?や…!?」  
太ももの奥まで到達した。  
足の間で、得体の知れない蔓が蠢いているだけでも相当な不快感があるのに、蔓は恐るべき器用さで、ズボンを引き摺り下ろした。  
「やだあああああ!」  
自由に動かせる右足をめちゃくちゃに振り回して、蔓を蹴り落とそうとしたのだが、別の蔓があっさりと足を押さえてしまった。  
下着の上を、蔓が這いまわる。何かを探すように、デリケートな部分を丹念に這いまわる。  
蔓の分泌液が染みこんできたのか、下着の色が濃くなってきた。ぺったりと局部に張り付いて、守るべき部分を浮き上がらせてしまっている。  
ユリーナにはその様子が見えないが、自分の身体である。湿った布の感触に、羞恥で顔が火照り始めた。  
蔓が目的の場所を見つけたようだ。  
「ぃあ!」  
蔓のざらざらした先端が、下着越しにクリトリスをこすり始めた。  
下着越しでも痛い。  
逃げようと懸命に腰を振るが、がっちり抱え込まれているので、逃げられない。  
恐怖と羞恥と嫌悪感で、我慢しきれずに嗚咽を漏らしたとき、蔓は不意に動きを止めた。  
だが、それを不審に思うまもなく、ひりひりするクリトリスに、新たな刺激が走った。  
「ひゃぅ!」  
先ほどの蔓の10分の1ほどの細さの蔓が数本、下着の中に潜り込んできたのだ。  
勃ちあがったというより、腫れあがったクリトリスに絡みつく。  
ぬるぬるした先端がクリトリスにこすり付けられ、ユリーナは痛みとは違う感覚を覚え始めた。  
何かが身体の奥からこみ上げてきそうな…  
 
びしゅぅっ  
 
突然、クリトリスに絡み付いていた蔓の先端が、白濁した分泌液を噴出した。  
 
こすり上げられ、熱を持ったクリトリスに、その分泌液は、一瞬だけ快い清涼感を与えたが、ユリーナはすぐに新しい悲鳴を上げた。  
「ぁ…あ、痒ッ…!」  
痒い。  
ものすごく痒い。  
分泌液はクリトリスの周辺にも飛び散り、太ももにも流れたが、その全てに、耐え難い痒みを与えてきた。  
痛みより、痒みのほうが耐え難い。  
ユリーナは必死に腰を振った。  
さっきまでは蔓から逃げるために振っていたが、今は逆に、蔓にクリトリスをこすりつけるために振っているのだ。  
情けなさやいたたまれなさが、理性に呼びかけるが、身体の動きは止まらない。  
こすりつけた瞬間は痒みが収まるが、離してしまえば痒みは倍になって襲い掛かる。  
しかし蔓は、ユリーナの痒みが収まりきるまで、大人しくこすられ続けていてはくれなかった。  
足の間に挟まっていた蔓が、あっさりと離れていく。  
痛痒感に、ユリーナは悲鳴をあげた。  
また、形状の違う先端を持つ蔓が、クリトリスに忍び寄る。  
今度のは小さな口のようなものがついている。  
それは痒みで敏感になったクリトリスをからかうように、わざとクリトリスを外して周囲を突きまわるものだから、ユリーナは涙をこぼして懸命にもがく。  
 
ちゅるんっ  
 
小さな口が、クリトリスに吸い付いた。  
「はぁぁぁぁぁっ!」  
きゅうきゅう吸われて、ユリーナは歓喜の声を上げた。  
自分の力で、不自由な体勢でクリトリスをこすりつけるより、よっぽど痒みが収まったのだ。  
そのうち、痒みと、それが収まる刺激が快楽に変わり始めた。  
「ああっ…ぅん…はぁん!!」  
ユリーナはただひたすらに喘いだ。  
クリトリスと同様の熱に犯されて、理性はすっかり消えてしまった。  
獲物が暴れなくなったのを見計らって、形状の違う蔓が次々にクリトリスを責め始めた。  
イボ状の突起を持つ先端にこね回され、繊毛のびっしり生えた先端に揉まれ、ぬめりを持つ二股の先端にしごかれ、蠕動する先端に張り付かれ、何度絶頂に押し上げられたのか。  
ぽたぽたと滴る愛液を、袋状になった葉が受け止めて、養分にしていることにも気づかず、ユリーナは遂に意識を手放した。  
 
ユリーナが気づいたのは、翌朝だった。  
あの蔓はどこにも見当たらない。  
少し離れた場所にズボンが落ちているのに気づいて、慌てて取りに行こうとした瞬間、下着にこすれたクリトリスがかっと熱くなった。  
「ひっ!…(;゚д゚)ァ.... !」  
あの、白濁した分泌液がこびりついていたのだ。  
恥も外聞もなく、慌てて下着を脱ぎ払ったものの、痒みにうずきだしたクリトリスは収まらない。  
指で慰めようと、軽く触れてみたが、一晩かけて散々いじられてきたそこは、すっかり腫れて過敏になっている。  
「あんっ!」  
ぴりっとした痛みがクリトリスに走る。  
触れば痛いし、触らなければ痒くてたまらない。  
きゅっと足を閉じて、押さえつけることで痒みを収めようとしたが、たいした効果は見られない。  
「ど、どうしたらいいのぉ…!」  
途方に暮れたユリーナの、押し殺した悲鳴は、誰にも届かずに森の中に消えた。  
 

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