それは突然だった。  
俺の名前は田中修二。母に捨てられたっていうまぁちょっとした過去を持つ高校二年生だ。  
そしてその日以来女性に対して嫌悪感を抱くようになってしまった。まぁ、妹はそれほどでもないけどな。  
今日は思えば不運だった。学食でも買えたのは牛乳のみという惨事。そして、極めつけは、  
「おい、聞いてるのか、田中修二」  
俺の部屋で露出度の高い悪魔のコスプレをした、金髪のロングヘアーの見知らぬ少女がさっきから訳の分からぬことを言い、俺を混乱させているってことだ。  
「えーと・・・キミ誰?」  
「私は悪魔。大悪魔のカレンだ。此度はお前に超能力を授けに来たのだ」  
頭おかしいんじゃない? という言葉をギリギリで呑み込んだ。相手は子供だ。何かしらのことがあったかもしれない。とりあえず、話を合わせてみよう。  
「んーと、どうして俺なのかな?」  
「お前―――いや、正しくはお前と妹が母に捨てられた過去を持つからだ」  
「ッ――、どうしてそれを!?」  
「悪魔に知らぬものはない」  
と、そんな時俺の部屋の扉が開いた。  
「兄さん、何騒いでるの?」  
セミロングの黒髪が揺れ、Gパンと胸元が少し空いたアンクTシャツという軽装で妹―――みさきが疑問詞を浮かべた。  
現れた瞬間、修二は硬直。この状況をいったいどう説明しようと冷や汗を流す。  
「大丈夫だ。お前以外の人間は私を見ることが出来ん。それよりもちょうど良い、コレで超能力を試してみるが良い」  
色々と言いたいことはあったが、みさきの態度から、本当に見えていないようなのでとりあえず安堵し、言うとおりにしてみる。  
「超能力に必要なのは念じることだ。と、いうか念じる以外必要は無い」  
そう言われ、何となくみさきを見つめる。  
最近かなり魅力的になったみさき。控えめな性格通り、身体は細く、胸も控えめながら貧乳じゃないくらいにはある。  
(まぁ・・・・・・どうせだし、な)  
服が透けろ、と試しに念じてみる。  
「うわっ!?」  
(す、透けた! マジで透けてるっ!!)  
白色のブラとパンツがはっきりと目に映る。下着を着けた胸は呼吸にあわせてかすかに上下する。  
(じゃ、・・・・じゃあ・・)  
今度は、下着を透かそうと念じる。  
(うわ・・・・・)  
おもわず股間が熱くなる。胸の桜色の突起に、股間にかすかにある黒。  
「兄さん? どうしたの?」  
叫んだ俺を訝しんで、みさきは近づいてくる。その度に、小さな胸がかすかに揺れる。  
「い、いや何でもないんだ! 俺のことはいいから晩飯早く作ってくれないか?」  
「・・・・・・・そう? じゃあ、作ってくる」  
疑惑の目で見つめていたが、それほど気に留めることでもないか、とみさきは踵を返す。  
「どうだ、修二。本当だろう?」  
扉が閉まった後、満足げにそうカレンは言った。  
「お前にはこれから私の力の源―――つまりは女性の羞恥心を掻き集めてもらう。つまりは破廉恥な悪戯を超能力ですればいい」  
「・・・ああ、分かった」  
こんな願いなら喜んで引き受けよう。これからのことを思い浮かべるだけで笑顔が止まらない。  
「ただし、天使には気をつけてくれ」  
「天使?」  
「ああ。天使は我々悪魔がこういう能力を人間に与えることを取り締まる役職のことだ。まぁ、今で言う警察だな。普段は人間の姿をしている」  
しかし、とカレンは前置きして。  
「天使の羞恥心は美味なのだ・・・・。もう、言葉では言い表せぬほどにな・・・」  
恍惚の表情でそう呟いた。数秒後、表情を正し、  
「天使が近くにいるとき、お前の第六感が反応するはずだ。まぁ誰か特定は出来んがな」  
「分かった。つまりは天使も恥辱で染めればいいんだろ?」  
カレンのぽかん、とした表情を無視して修二は笑みを浮かべた。  
(明日から、楽しい日々が送れそうだ)  
修二は明日を思い、カレンに超能力についてを詳しく聞き始めた。  
 
 
いつからだろう? 俺が、女性に対して歪んだ性癖を持ち始めたのは。  
俺は、社会科の授業を聞き流しつつ、そう考えた。  
俺の前から居なくなった母さん。それを思いだすだけで女性に嫌悪感を抱く。学校生活での友達でさえ、少なからず抱いてしまう。  
しかし、成長していくにつれそれも隠せるようになった。心の成長は理性を強くする。  
彼女も一度だけ出来た。幼馴染の、東山里佳。冷静で、理知的な瞳。そのくせ見過ごせない。みさきより少し短めの黒髪が印象的。性格が似ているみさきとも気が合う里佳と俺は、付き合っていた。  
里佳はあまり人に積極的に関わろうとしないヤツだった。そんなヤツとなぜ付き合ったのかは分からない。しかし、俺は初めて女性に惹かれた。  
「俺と、付き合ってくれない?」  
軽い言葉。屋上で二人きり。  
「私で、よければ」  
あまりにも呆気なかった。しかし、俺にとっては印象的だった。  
そして、付き合っていく内、肉体関係を持とうと思った。  
夜。里佳のベッドで俺は白いワンピースをゆっくり脱がせていった。羞恥心で、赤く染まった里佳の顔に、どうしようもなく欲情した。  
しかし、そこまでだった。  
俺は脱がせた後、どうしようもない恐怖心に駆られた。嫌だ、嫌だと言わんばかりに心が暗くなる。  
そして、結局俺は何も出来なかった。  
その後、里佳が俺を振った。  
「別れましょう。 ね? 修二」  
呆気ない言葉は、また印象的だった。  
そのことで俺は理解できた。俺は、女性に恐怖に近い嫌悪感を抱いており、そして、女性の羞恥で赤く染まった表情になにより興奮するのだと。  
 
 
授業終了のチャイムが鳴った。ぐ〜っと背伸びして一服。  
「何だ、何もしないのか?」  
その時カレンの声が聞こえたが無視。ゆっくりと周りを見渡して、人がいないか確認する。  
「カレン、お前、悪魔界とかなんたらにいるんじゃないのか?」  
「修二。お前が超能力者になった時点で私とお前は一心同体。お前が見る、聞くしたものは共感できるようになっている。そうしないと、女性の姿も見れんしな」  
なるほど、と言い修二は教室を見渡す。  
「カレン、俺は何もしてないわけじゃないさ。今は、そうだね、値踏みかな?」  
「誰を羞恥に染めるのか、か?」  
「ああ。どうせならかわいいヤツがいいだろ?」  
なるほど、と言うカレンに答えるように、修二は目線をある少女に向ける。  
桜井美月(さくらい みつき)。女子バレー部のホープの美月は気持ちの良い笑みを浮かべ、ポニーテールと大きな胸を揺らせて友達と談笑している。  
性格は気さくで、話しかけやすい性格。女子男子、はたまた先生からも人気が高い。  
「あれが、お前のメガネに留まった人間か?」  
「ああ。まぁ、桜井も、だな」  
そう言って修二は目線をもう一人の少女へ向ける。  
如月エリス(きさらぎ エリス)。日系よりのイギリス人と日本人のハーフ。如月コーポレーションの三女であり、プロポーションも抜群。態度が高飛車なのがたまに傷らしいが、それでも男子からの人気は絶大らしい。  
肩下までかかったブロンドの金髪はアイツのトレードマークといって良い。  
続けて修二は黒板を消している少女へと視線を送る。  
西条凛(さいじょう りん)。クラスの委員長にして生徒会書記。スラッと腰まで伸びた黒髪はゆらゆらと揺れる。  
性格は几帳面で真面目。曲がったことは許せないというまた堅物。  
だが、悪戯っぽい一面もあり、そのギャップに惹かれる男子も多く、女子からも人気が高いらしい。  
修二はそこで目線を机に戻した。だが、カレンは、ん?、と疑問詞を浮かべ、  
「アイツはいいのか? あの本を読んでいるヤツも中々美人だぞ?」  
本を読んでいる少女―――東山里佳のことだ。  
東山里佳(ひがしやま りか)。顔は美人だが、他人と積極的に関わろうとしない態度をとることが多く、友達はそういない。  
「アイツは・・・・・いいんだ。タイプじゃない」  
丁度、その時チャイムが鳴った。授業は保健。教育実習なので受け持つのは女子大生を卒業した先生だった。  
(消えろ)  
そう念じた瞬間。先生のブラが瞬時に消えた。  
薄いTシャツは胸の形を露にし、乳首の膨らみを見せてくれた。  
周囲を見渡すと男子が先生の胸を凝視していた。女子のほうはひそひそと何かを話している。  
「だから、タバコは自分に肺ガンを起こすだけでなく他人にも―――」  
そう言って、先生は男子の視線に気づき、目線を自分の胸へ。  
「きゃぁぁああ!!?」  
顔を羞恥で真っ赤に染め、慌てて胸を隠してそのまま走って教室を出ようとする。  
だが修二はそれを許さなかった。  
「ぁ」  
と、先生は態勢を崩した。そしてそのまま先生はジャージの裾を踏み、転倒。  
裾を踏んだことにより勢いよくズボンがずり落ち、下着が姿を見せた。  
(へぇ・・・あの先生黒なんだ・・・・)  
教室の生徒達に晒された黒のパンティ。男子の視線は釘付けになっている。  
先生は狼狽して、慌ててズボンを戻そうとするがなぜかズボンが床に張り付いたように動かない。  
上下に動く黒の下着を男子達はいやらしい視線で姦視する。  
(もう、いいかな)  
急にズボンが何事も無くなる。やっとの思い出先生はズボンを履き、そのまま教室を走り去った。  
(あらら・・・自分がノーブラだってことパニックで忘れてるなアレ)  
教室が大騒ぎになる中、修二は一人、廊下をノーブラで走る先生を思い浮かべ、ほくそ笑んだ。  
 
 
昼休みが終わり、俺達は体育の授業のため体育館へ足を運んだ。  
(ふふ・・・)  
体育館で遊びまわるクラスメイトとは別に、修二は笑みを浮かべた。  
ついに、行動に出るのだ。  
狙いは桜井美月。計画も練ったし後は時期を待つだけだ。  
「よっし!」  
美月がシュートしたバスケットボールはまるで吸い込まれるようにゴールへと入り、美月は友達とハイタッチ。  
それに伴い大きな胸が大きく揺れる。  
ふと男子を見ると何人かは汗で透けた下着を堪能していた。  
(ふふふ・・・・・仕方ないなぁ・・・お前らにも見せてやるか・・・)  
修二は視線を美月へ集中。彼女は軽やかな動きでドリブル突破しそのまま流れるようにレイアップシュートに持っていく。  
(外れろ!)  
ジャンプする直前ブラのホックを外す。さらにジャンプすると同時に美月のブルマ引き降ろす。  
「え!?」  
美月はバランスを崩し、転倒。そして見事にノーブラ、パンツM字開脚の出来上がりだ。  
「きゃぁぁ!?」  
慌ててズボンを穿き、ブラを拾ってうずくまった。そしてはっと状況に気づいたクラスの女子達が桜井を囲み、男子の視線を遮る。まぁ、ヤツラの目にははっきりと映ったようだが。  
美月は顔を真っ赤にさせて体育館を後にした。  
(へぇ・・・・・あんなしおらしい表情も出来るんじゃん・・・)  
そう言い興奮した表情を浮かべた。  
「ふむ・・・・中々の美味だ」  
カレンが満足げに声を上げる。  
「そりゃ良かった。でも―――まだ終わらないぜ」  
修二は腰を不自然に曲げている男子達を見ながら、笑みを浮かべ、この後の展開に思いを馳せた。  
 
 
 
 
(あぁ・・・・もう最悪・・・・!)  
体育館の外の女子トイレでブラを付け直した美月は顔をまだ赤く染めながら悪態をついた。  
「もう、どうして急に外れたりなんか・・・・」  
小さく溜息をして、美月はトイレから出た。少し躊躇いはあったが、友達もいるし大丈夫だろうと考え体育館に戻る。  
と。  
美月はブルルッと身体を震わせ、ソワソワと動き、トイレへと戻っていく。  
 
(へぇ・・・カレンの言ったとおり、何でも出来るじゃないか)  
修二は木陰でトイレに駆け込む美月を見ていた。トイレの中に入っても透視で、中の様子は丸分かりだ。  
「え、どうして!?」  
なぜか、トイレが全て使用中になっている。コンコンとノックしても帰ってくるのは無言。  
美月は落ち着き無く内股で小刻みに動く。  
さらに激しくノックを繰りかえしてるが、無駄なんだよ、美月。  
小刻みはしだいに大きくなる。美月はついに我慢の限界を迎えたのか、トイレを出て、男子トイレに向かう。が、  
「せ・・・清掃中!?」  
悲壮な表情を浮かべる美月を、修二は笑みで見つめる。  
(男女トイレは使えない。しかし、尿意は激しくなる一方。だったら・・・・)  
美月はもうなりふり構っていられなくなったのか、修二とは反対側の木陰に入り込んだ。  
「木陰で、お漏らしするしかないよな」  
修二は、勝ち誇った笑みを浮かべた。美月は何度も周りを見渡し、恐る恐るといった感じで、しゃがみ込むと同時にブルマーとパンツを一緒に下へずらす。  
(おお・・・・!)  
薄く陰毛が生えており、それは恥丘を一層引き立てる。  
さらに修二は能力を発揮し、美月の思考を読む。  
(うう・・・・・早く出て・・・・早く出てよぉ・・・)  
弱弱しい声が耳に入った。普段のあいつとは想像も出来ないほどに羞恥に染められた声だった。  
どうやら外でお漏らしする、という恥辱的な行為のせいで、中々おしっこが出ないようだ。  
美月は気を落ち着かせ、深呼吸。  
(んっ・・・・・)  
ぷしゃぁぁぁ・・・・と音を立てて金色の水が噴出した。  
よほど我慢してたのか、それはゆっくりと長く続く。  
お漏らし中も美月は辺りを気にして、顔を真っ赤にして、ひたすら終わるのを静かに待っている。  
「ふむ・・・・・・良い味だ・・」  
カレンはうっとりとした声を上げた。  
おしっこが、ジョロロロ・・・・と最後の灯火を立てた途端、  
パシャッ、とカメラ音が鳴った。  
「え・・・」  
と言ったのは修二と美月の両方。そして両者の視線の先には、先ほど体育館で腰を抑えていたクラスメイト―――三郎だ。  
「ま、ま、まさかキミがそんな変態だったなんてねっ・・・」  
太った身体。汗臭い顔と黒ぶちメガネ。クラスでも人気が無い三郎は携帯電話の美月の放尿シーンを突きつけ、いやらしい笑みを浮かべている。  
「い、いやぁぁ! 返して、返しなさい!!」  
ブルマを上げ、つかみかかろうとする。しかし、  
「い、いいのかっ!? この写真をみんなにばらまくぞっ!?」  
上ずった声だが今の美月にはそれを感じる余裕も無い。まるで子犬のような目で、返して、と懇願する。  
「へ・・・へへへへ・・・・それなら俺のコイツをな、舐めろ」  
三郎はゆっくりと卑下た笑みを浮かべつつ、ズボンに手をかける。  
(・・・・・・なーんか気に入らないじゃん?)  
「今まで人には試そうとしなかったんだけどね・・・・・危ないし」  
冷ややかな笑みを浮かべて、修二は集中。  
(ぶっ飛べっ!!)  
念は完璧。しかし、三郎は何の影響も受けていなかった。  
「え・・・」  
馬鹿な。有り得ない。愕然とする修二にカレンが口を開く。  
「修二、勘違いするな。お前にこの力を渡したのは羞恥心のためだ。そんな私利私欲の力の使い方を私は認めん」  
「っ・・・・そういうこと、ね」  
「良いではないか? お前の正体はバレない。お前に何の害も無い。お前があやつを助ける理由がどこにある?」  
「・・・・・・・」  
確かに何も無い。だが、それは打算的に見てだ。  
「理由は、あるよ」  
修二は自分の息子を突き出す三郎を見てカレンを振り切るように一気に駆けた。  
(何でかな・・・・・・何で、母さんのこと思い出しちまうのかな?)  
単なる恐怖に染まる表情を見るとなぜか母さんを思い出した。気に入らない。その想いが修二を駆け巡る。反対側の茂みを突き破り、視界に三郎を確認。そのまま右拳を顔面に打ち付ける。  
「ごほぉぉ!?」  
ぶっ飛んだ。右拳に痛みが走るが無視。倒れた三郎を思い切り踏みつけ、  
「だせーっぽくね? こんなレイプみたいなことは、よ」  
冷然とした瞳で、恐怖に染まった三郎を射抜いた。  
 
 

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