保健室には村西先生はいなかった。つーか保健室に来るのなんて健康診断以来だ。
なんかカーテンに仕切られた向こう側から笑い声が聞こえる。そこを開ける。
ベッドに座って来栖が見たことない女の子とおしゃべりしていた。
二人が同時に俺を向く。ちょっとたじろいだ。
「お前遅ぇよ、何してんだよ?
「いや、いきなり授業抜けて来いったってタイミングとかあるじゃん!
上手くやってきたけどさ…
「まあいーよ。
「ハジメちゃんさ、このヒト誰?
女の子が先に俺が今聞こうと思っていたことを来栖に尋ねた。
「こいつ加藤。俺の数少ない友達。めっちゃ頭いいんだ!
で、加藤。こっちの子は沢尻舞ちゃん。俺と同じサボリ仲間な。
もうマジ意気投合中。もはや内心深くサトり合う仲?みたいな?
舞ちゃんは、来栖のセリフを大げさな表現のネタとして笑ってたけど、
むしろサトり合ってるのは俺と来栖だった。つまり舞ちゃんはとっくに
来栖の「術中」で、「サトラセ」られてるってことを、来栖は俺に伝えたのだ。
来栖は親指を立てて「その通り」と合図を送ってきた。
舞ちゃんは、白鳥まゆよりはもっと活発な雰囲気の女の子だった。
来栖の術によってか知らないが、スカートは短いし、ひどくってわけじゃないが
どちらかというとギャルっぽい雰囲気だった。顔立ちが整ってて
すらっと背が高い。ちょっと我が強そうだが、明るくて花があるタイプだ。
…ていうか、結構タイプだ。
来栖!文句言って悪かった。こういうハッピーなサプライズは必要です!
来栖さまさま!!さて、こいつは今日は何をしでかすんだ…
「でさあ、加藤。舞のやつ、なんか最近体調悪いんだってさ。
「そー!なんか最近ダルくてさー、授業出てらんなくて先生に診てもらおうかって思ったら、
なんかいなくて。
「あ、そうなんだー、大変だね。野菜とか食べてる?
「食べてるつもりなんだけどな〜
無難な会話が進む。有無を言わさずやることやらせる、ってのも来栖にはできないわけじゃ
ないらしいのに、来栖はどうも、こういうお膳立てやら一応の建前に非常にこだわる。
条件という奴なのか、来栖の趣味なのか…よくは知らない。
「…でさぁ、舞。加藤さ、頭いいって言ったじゃん?こいつ医学部志望なんだよ。
だからさ、こいつに診てもらえば体調よくなるかもしんないよ?
「あ、それで呼んだんだ?ハジメちゃん優しいね。
来栖は建前にはこだわるが、大抵結局こんな風にかなり苦しくなる。
だけども、「サトラセ」られてる奴は、どうもそういうことに鈍くなってしまうらしい。
それは、白鳥さんにまんまと俺の前でパンティを脱がせ。飛び跳ねさせたときも同じだった。
ヤベ、思い出したら勃起した。
ともかく、いかに色々なことがおかしいと思ってても、来栖の芝居にのらなきゃならない。
「おう、俺が診てやるよ。
「よろしく、加藤せんせっ!
上目遣い…いいじゃないですか。ええ。
俺はいつの間にか立ち歩いて戻ってきた来栖に促されるまま、舞ちゃんの隣に座った。
ひざ先が触れあう。で…診るって…
「おら、加藤。これがなきゃしょーがねえだろ。
来栖が差し出したのは、口の中を見るための鏡のようになった道具だった。
うわ、何気にお前本格的だな…つーか変に凝るよなこういうこと。
こいつ絶対ガキの頃お医者さんごっことかしてたよ。(つーか今もか?)
でも俺が、「あーん」と促したとおりに、舞ちゃんがぷるんとしたピンクの唇を縦に開くのは、
なかなかグッとくるものがある。そこに震えながらも、やさしく鏡を突っ込む。これはフリだ…
あんまつっこんでしまうのもアレかなと思って俺は多分口のかなり浅いところを適当に動かし、
鏡を抜いた。
「うーん…
俺が何か気を利かせてコメントでも差し挟もうかとしたのを、来栖が制した。
「次、触診だな。舞、脱げ。
「えー?やっぱ脱がなきゃダメ?
舞ちゃんは両手で胸を覆い隠した。何故かそのとき初めて気が付いたが、舞ちゃん、
結構巨乳だ…
「ダメに決まってんだろ。医者の前で恥ずかしがるの変だろ?
「ハジメちゃんがみてるじゃん!
「俺はいいじゃん。
「ん〜……
え、待って。来栖それどういうこと?
「分かりました〜、はい。せんせ、お願いします。
舞ちゃんはそう言うと、Tシャツのボタンに、本当に手をかけた。
てゆうかせんせ、って…
乳房の形に添うようにシャツが流されるように開く。
白い色の隙間に肌色の面積が増えていく。ミントグリーンのブラにつつまれた、
柔らかそうな乳房と、おなか。白鳥まゆよりは、ちょっとムチっとした肉付き。
え、俺は、どーすりゃいいの?
「加藤オラ、いつも通り触診だろ?手で。遠慮してねーでいつも通りやれよ。
うお、やっぱ触るのか!?聴診器ねえもんなぁ!?つーかいつもやってねえよ!!初めて初めて!!
さっきは鏡持ってきたのに、聴診器ないってどーいうことだよ!?
「舞、お前おっぱいデカ過ぎて加藤ひいちゃってんじゃん。
「えー、そーいうのやめてってばぁ! そんなことないよね、加藤くん?
またとんでもねえキラーパスが飛んでくる。サトラセってのはマジで怖ぇ。
てか今来栖、おっぱいって言ったぞ、おっぱいって!
「いや、胸は大きいけど…ひいてはいないです、うん」
我ながらちょっと情けないフォローでもなんでもない感じのセリフになってしまった。
来栖から「ヘタレ野郎」といわれたような気がした。そんな顔だった。俺もサトラセられてんのか?
俺は、意を決した。
右手をゆっくりと前に出し、彼女の、左胸に、そっと添えた。手の腹は硬い感触。ブラ。
指先は、男のそれにない柔らかさ。舞ちゃんは、恥ずかしそうというか、ちょっとくすぐったそうにしている。
よかった…来栖の術中にあると分かっていても、非難の視線を向けられるのが、とにかく怖かったのだ。
俺は彼女の顔から嫌悪感のなさを見て取ると、ため息をつき、触診らしく、当てる場所を変えていった。
右胸や、おへその辺りに、掌を当てた。ちょっとだけ強く押すと、彼女の鼓動が確認できた。
あまり他人の鼓動を聞く機会というのはない気がする。案外、自分と同じような感じではあった。
だがそんなことより、今俺は女の子の体に触れているのだ。女の子の生肌。
しかも、普通の男子が普通触ることのできないような場所を!学校で!!
「加藤くん、どう?
声に弾かれるように顔を上げる。舞ちゃんと目が合う。同じ目線の高さ。俺は一瞬、演技を忘れた。
「いや、あ…ちょっとすぐには…
「変な病気とかじゃないよね?
「うん…多分…
そこで来栖がまた、心底楽しそうに、投げやりな感じで言い放ったのだ。
「舞、やっぱブラしてっと分かんないって。脱がなきゃ、全部。
「えー!?そうなの!!?
「そりゃそーだろ、加藤はさっき遠慮してたんだぜ?
「え、加藤くん、脱がなきゃわからない?
また舞ちゃんがこっちを見てくる。今度はさっきよりちょっと焦ってる顔だ。
「あ、うん…脱いだほうがちゃんとわかるのは…間違いないかな
「ほらな。
「そっかぁ…そうだよね〜…
舞ちゃんは両手を後ろに回した。え、本当に回した?回した。
動きが止まり、手が前に戻っていく。緩み、落ちるミントのブラジャー。
そして現れる…舞ちゃんの…ピンク色の乳首。
俺は激しく勃起した。
でかい…ブラをとってもデカい!そして、キレイだ。こんなに…キレイなもんなのか!
普通の女の子のそれはもうちょっと…ある程度幻滅するもんかと覚悟してたんだけども…
生の裸ってのは、そーいう予想をぶっ飛ばすほど、こんなにも興奮するものか!!
俺は…自分が思ったよりはずっと直ぐに、彼女を揉んだ。
舞ちゃんの巨乳の感触を、掌いっぱいで味わう。手の腹に突き立つ乳首を転がす。
手をずらす。中指の先で乳首に触れる。乳房を、形が変わりそうなくらい、揉む。揉む。
「ゃん…!
「うぁ!ごめん…なんか
「加藤くん、それ絶対わざと揉んでるでしょー!!
「いや、ちげーし!!
「本当〜?加藤くん絶対エロ目的だ、絶対!
「いや、こうしないとわかんないから…
「みんなにこうやって楽しんでるんだ?やらしぃ…
俺の右手に彼女が手を添えた。無理やり引き剥がそうってわけではないらしい。
脚をぶらぶらさせて、なんだか喜んでいる。これは…楽しい!!
俺はたまらず、左手も彼女の体に伸ばした。
が、掴んだのは来栖の手だった。
「村西が来る。舞、服着ろ。
「え、マジ!?
舞ちゃんはいそいそとブラジャーを付け直す。来栖はさっきの鏡を机の上に戻す。
「加藤、俺先行くから。お前は隣のベッドで寝てろ。
「あ、わかった
「じゃーお前ら、また連絡すっから。またな。
「わかった!
「ハジメちゃんまたね〜!
来栖はまた、俺にやらせるだけやらせると、さっさと帰ってしまった。