2−D。  
昼休み。  
 
 
「おい、来栖!いたかよ、らしい奴は?  
「あー、いたよ。  
「マジ?誰だれだれ!?  
「あいつ。  
 
来栖は弁当を食いながら談笑してる女子の一群を指した。  
 
「どれ?青木?  
「ちげー。  
「白鳥?  
「そー。  
 
俺は来栖の胸を軽くたたいた。  
 
「マジでか?  
「マジ。結構相性いいよ。いつやんの?  
「今日しかねーだろ!!  
「お前マジ早漏だな。ひくわー  
 
簡単に話す。  
俺は加藤雅司。普通の高校生。  
来栖一は俺の友達。霊感強い。超能力使えんのはこいつ。  
 
「可愛くて、来栖と相性が合う」ターゲットに選ばれた白鳥真由は、  
D組でも抜群のキレイ所。顔小さいし脚キレイ。胸も見たとこ結構ある。  
性格も明るいし、言うことなし。つーかむしろ最高。上玉。  
 
「あーいう女のほうが相性いいこと多いんだ、俺。  
 
「来栖お前本当最高だな!  
 
来栖は俺の感想を完全に先読みして口に出した。いつものことだ。  
こいつは頭もいいし話が早くていつも助かる。  
 
「そりゃどーも。  
 
テレパシーって本当便利だな。たまにマジで怖いけど。  
 
「どうぞー、って言ってもなんにもないんだけどね  
 
白鳥さんはドアを開けて中に俺ら二人を通しながら笑う。はにかむ顔も可愛い。  
 
「結構広いんだな、弦楽部の部室!  
「ごめんねまゆちゃん。今日部活休みなのにね。  
 
来栖はあっという間に下の名前で呼んでる。なんというか差を見せ付けられる思いだ。  
それとも超能力使えるってんで、自信があるのかもしれない。  
 
「うん、別にいいよー。  
「あ、あの姿見とか見ながら練習したりするの?  
「んー?うん、姿勢を見たりするときに使ったりするよー  
 
来栖の横について白鳥さんが姿見のところまで来る。俺はさりげなく入り口の鍵を閉めて、  
その後ろを追う。  
 
「鏡見てみ?  
 
来栖に促されるまま白鳥さんは顔を鏡に向ける。  
 
「まゆちゃんてさー、やっぱめっちゃカワイイよなぁー  
「はは、ありがとう!なんか来栖くんそういうの上手いよねー  
「正直に言う主義だから。ところでさ  
 
来栖が笑ってる白鳥さんの肩に手を乗せた。今からだ!  
多分今二人は、鏡越しに目が合ってる。  
 
「まゆちゃん、  
 もーちょっとスカート短いほうが似合うよ。絶対。  
「え〜?何ソレー?セクハラ?  
「いや、マジでさ。ほら  
 
来栖は白鳥さんの後ろに立って、すこしかがんだかと思うと、彼女のスカートの脇の辺りをつまみ、  
持ち上げた。彼女の、隠れていた白いももが、のぞいた。  
 
「ちょっ…  
「ほら、めっちゃこっちのほうがいいよ、絶対。  
 
彼女が何か言うのを制してやや大げさに、声をかぶせた。  
 
「持っててあげるからさ、腰んとこたくしてみ?  
 
白鳥さんは、ちょっと間を取ってから、来栖に言われるがまま、シャツとスカートの間に手を差し込み、  
スカートの上を巻き込み始めた。いや、つーかその丈のままたくしていいのか!?どー見てもソレ…  
相当ギリギリだって!かなり短いって!来栖自重しろよ!!ただでさえ白鳥さん普段膝丈(お嬢様丈)なのに…  
 
「ほら、どーよ?  
「えぇー?絶対変だよー!てゆーか恥ずかしいーこれー!  
 
じゃあやるなよ!と俺は、軽く噴出してしまった。  
 
「まゆちゃん太ももとか白くてキレーだしさ…見せたほうがいいって。若ぇうちにさ。  
「えー…でも…加藤くんどう?  
 
いきなり俺にふる!?そこで!?  
 
「え、あ、  
 
来栖がなんというか、不機嫌さと呆れた感じの混ざった視線で俺を見た。  
「ここまで来て腰ひかせてんじゃねぇぞ童貞」…という顔。いや、分かってる、分かってますって!  
 
「いや、もう絶対そっちのほうが最高カワイイでしょ!!夏だしさ、アリだよアリ!  
「んー……ま、気分転換か。そーだよね、なんかアリな気がする!  
 
それを聞いた来栖は悪戯っぽく笑った。  
 
来栖の能力。流行り言葉に乗っけて「サトリ(テレパシー)」と「サトラセ」とか本人は呼んでいるんだけども、  
要するに、来栖は波長の合う相手に、言うことを聞かせることができる。  
色々な制限や条件があるらしいのだが、俺も全部は知らないし、ここではその説明は割愛する。  
 
 
打ち合わせの段階で、どこまでできるか聞くと、来栖は俺に「生パンツ見せてやるくらいだな」とだけ言った。  
てことは…この後どーすんだ?  
 
 
来栖はなんかテンション高くなった白鳥さんと楽しそうに何かくっちゃべってる。  
 
「ははは、あーでも、やっぱパンツ見えっかもねー。その丈だと。  
「うわ、またセクハラ!  
「焦んなって。見えなくする方法あるんだよ。  
 
 
え、なになに?俺のリアクションは白鳥さんのそれと全く一緒だった。  
 
 
「簡単だよ。  
 パンツ脱げばいーんだ。  
 
 
場が凍った。  
え、何言ってんの来栖?  
 
 
「そーだろ?  
 
来栖一人がいつもの調子だった。けど来栖はずっと彼女の体に触れて、目を合わせている。  
てことは、今来栖は、自信もって、押してるってことだ。  
 
「うん…まあ、それはそーだけど…  
 
…完全に白鳥さんは、来栖の術中だった。  
 
「夏だし、そっちのが涼しいって。マジで。  
 
来栖が白鳥さんから手を離した。キまったんだ。  
 
「…じゃー、思い切って脱いじゃおうかな、あたし。  
 
向こうを向いてて、と言われて正直に来栖は白鳥さんに背を向けていたが、  
俺は、一部始終を目に焼き付けていた。  
 
あの白鳥さんが…スカートの両脇をさらにたくし上げたかと思うと、スカートの下からピンクの紐状になった  
パンツが下ろされていった。片脚を上げて抜こうとするが、靴に引っかかってバランスを一時崩し、声が漏れる。  
さらに少し深くかがんで、丁寧に靴からパンツを抜こうとする。俺は学生服をまさぐってめがねを探したが、  
見つからなかった。コンタクトにしてない自分をあの日ほど責めたことがあったか。  
 
ようやく両方の足からパンツを抜くと、彼女はまた一息はいた。両手の中に、ピンクの布切れを握りこんだまま。  
 
「気分どーよ  
 
来栖がいつの間にか彼女に向き直っていた。相変わらずのニヤつき顔で。  
 
「もー、なんかスースーするよー!あたし絶対来栖くんに騙されてるんだけどー!?  
「そんなことねえって。でも今白鳥さん、ミニスカの下裸なんだよね。  
「ちょっともう、やめてよー!キモいんですけどそういうの!ていうかなんで苗字にさん付け!?  
「めくっていい?  
「絶対ダメ!!  
「頼むよー  
「本当ムリ!!  
「わかった…しょーがないよな。あきらめる…  
 
と来栖が大げさにしょげたと思ったら、来栖はぱっと手を伸ばし、白鳥さんの手の中から脱いだばかりの下着をひったくった。  
思わず体を傾けて来栖に手を伸ばす白鳥さん。スカートがさらに上に持ち上がった。目を見開いた。脚の付け根…  
もう少し!もう少しだったのにこれ!!  
 
 
そこで手をまっすぐ上に伸ばす来栖。身長差は10cm近くある。並の女が背伸びしても届くわけない。  
白鳥さんは焦っていた。テンションも高かった。それでも奪い取ろうと、ジャンプしたのだ。けど届かない。  
スカートはそれでもまくれあがる。白鳥さんの後ろにいる俺からは、ほとんど非現実的な、実にいい景色が、そこにあった。  
 
白鳥さんの…生尻……  
 
あの白鳥さんは間違いなくいま、ノーパンで来栖とじゃれ合っているのだ。  
 
「悪い、でもさ、いいこと教えたんだからさ、これちょっと借りてていい?2,3日で返すからさ。頼むわ。  
「あーもう…わかったわかった!貸すからー、もう…でもちゃんと返してね。  
 男の子知らないかも知らないけど、女の子の下着って結構高いんだから…  
「わかってるよ。無理言ってごめんね、ちゃんと埋め合わせするからさ。  
「なんか疲れちゃった…  
「じゃーかえろっか。飯でもおごる?  
「ううん、いい。お母さんが料理つくってるから。  
「そっか。じゃ、また今度ご飯でも食べに行こうよ。  
 
そこで俺たちは何事もなかったかのように解散したのだ。駅まで一緒に歩き、  
白鳥さんが改札を通るのを見送ると、来栖は俺に彼女のさっき脱いだ下着を俺の手に握らせた。  
 
「これ約束のやつ。次からメガネかけとくかコンタクトにしろ。  
「見せるって約束これのことかよ!! つーかやっぱテレパシー使ってたのかよ…抜け目ねーな。  
「サトリの方はほとんど全自動だよ。耳がいいのと一緒だ。いきなりだったからこれが限界。悪いけど…  
「十分だって!!え、つーか…  
「ああ。時間かければもっとすげーこともさせられる。  
「マジで!?  
「ま…洒落にならないやつはやらないけどね。  
 
 
来栖はそれだけ言うと、用事があるといって踵を返し、さっさとそこを去っていった。  
 

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