中山家。相変わらず姉貴の襲来に怯える日々であります。
そして、聞きなれた爆音が聞こえてきました。逃げたいです。でも逃げられません。
「たっだ…」
「…お帰り、お姉ちゃん」
こういうときは、とっとと迎えに行きます。部屋が荒らされる前に。…すでに悟りの境地に至っております。
「さすがアキヒト。姉ちゃんの事、よくわかってるね」
「というか、フジツボ突っ込んだEK-9なんて、この辺りじゃお姉ちゃんぐらいしか乗ってないだろ」
「まぁ…そうかもね」
「チェッカーフラッグのバイナル貼り付けようとか言ってたしな。
ファインチューニング程度なのに、外装も攻撃的だよね…」
「うぅ…」
「まぁいいや。海や沙耶もいないみたいだけど、どうしたのよ?この車も久々に見たし」
「えーっと…アキヒトにちょっとお願いが…」
「珍しく歯切れ悪いね。どうしたの?」
「うーんとね…あの車、大分古いじゃん?」
「とうとう売るのか?」
「いや、そうじゃなくてさ…しばらく乗ってないし、いろんな所にガタが出てきて…。」
「用件はもうわかった。報酬は?」
「うーん、っと。これでいいかな?」
ん?と思っていると、車をゴソゴソ…。まさか酒か。酒なのか。ターキーなのか。
お姉ちゃんが振り向くと、問答無用でキスされた。口の中には苦味と芳醇な香り
「!!?むぐ…?むー!ふなふぇー!」
「ん…と」
「いきなし何すんだバカー!」
「いや…アキヒトが好きなお酒…。ほとんど飲んじゃったから…これで勘弁…」
「…お姉ちゃん、素面なのか?本当に素面なのか?」
「今酔っぱらった。それじゃよろしくね。姉ちゃんの車の…」
「「保守作業」」
溜息しか出なかった。