『うっ……ぐす……私、メリーさん。今、90階にいるの』  
涙声で、また電話がかかってきた。  
何があっても、一階ごとの報告は欠かすことができないらしい。  
難儀なことだ。  
「もしもし、こちらヒューマン。今屋上のヘリポートにいる。  
 ヘリは発進準備中だ。あと5分ほどで飛び立つ」  
途端、メリーさんは電話口で金切り声を上げた。  
『えぇ―――っ!?ちょ、ちょっと待ちなさいよ!  
 ヘリって何よヘリって!何なの、あたしの立場はどうなるのよ!』  
「妖怪の立場なぞ知らん。あ、掃除はして帰れよ」  
痛いところを突かれ、メリーさんはますますヒートアップする。  
『うっ、うるさいわね!ちゃんとハンカチで拭いたわよ!  
 それよりダメよ、ヘリなんて使ったらダメ!  
 それ反則!ズルよズル!やり直し!』  
「仕様がないな。じゃあ、エレベーターで1階に降りるから、  
 君はまた階段で下まで降りてきなさい」  
『そ、そこで待っててくれるの!?』  
「いや、君が2階ぐらいまで来たら、またエレベーターで屋上に上る」  
『それで私が屋上に着いたら?』  
「また降りる」  
『馬鹿にしないでよ馬鹿に!何の意味があるのよ!  
 人間なんかのくせに、人間なんかのくせに……!』  
「その人間なんかに恥ずかしいおもらしの音を聞かれたのは誰だ」  
『う、ううっ……!』  
メリーさんは返す言葉に詰まり、とうとう電話の向こうで泣き出してしまった。  
 
「仕方ないな」  
私はパイロットに発進中止を指示し、ビルの管理室に電話をかける。  
「私だ。90階フロアの非常階段通用口と、  
 9001のエントランスをオープンにしてくれ。  
 それから、そこにタオルと女物の着替えを持ってこさせるように」  
なにせこのビルは私のものだ。何だってできる。  
9001はちょうど今空き部屋になっている部屋で、  
電気や水道は通してあるけれど人は誰もいない。  
それだけ済ませてから、私はエレベーターで90階へと向かう。  
 
『ぐ、ぐすっ……わたし、メリーさん。いま、91階に……』  
「もしもし、こちらヒューマン。9001号室にいる。  
 90階の非常通用口を開けさせた。  
 通用口からフロアに入って右手に入り口がある」  
『ほ、ほんとに!?ホントに90階にいるの!?』  
「本当だ」  
 
『わっ、わたしメリーさん。今90階の踊り場にいるの。  
 あ、あなた本当にそこにいるんでしょうね!?  
 ウソじゃないでしょうね!?』  
まだ不安そうな声で、メリーさんが尋ねてくる。  
ウソは言ってない。私は、本当に9001号室にいる。  
 
『わたし、メリーさん。今9001号室の前にいるの』  
「わたし、ヒューマン。9001号室入って直進、  
 突き当たり右手のドアの向こうの部屋にいるの。でもね」  
メリーさんの口真似をしながら、私は教えてやる。  
「突き当たりの左側のほうのドアを入ると、バスルームがあるの。  
 暖かいシャワーが出るし、着替えとタオルもちゃんと用意してあるの」  
『え、ええっ!?』  
「好きに使っていいの」  
ガチャリ。  
 
これは罠であり、賭けだ。  
メリーさんがこれに乗ってこなければ、  
相手は危険な妖怪、さすがに危ないかもしれない。しかし。  
 
『わ、わたしメリーさん。いまバスルームにいるの。  
 すぐそっちに行くから、ちょっと待ってて欲しいの』  
獲物は、罠にかかった。私はほくそ笑み、すかさず行動に移る。  
 
「わたし、ヒューマン。今、」  
 
 
 
「あなたの後ろにいるの」  
 
 
 
ケータイ片手に素っ裸で無防備にシャワーを浴びていたメリーさんを、  
私は後ろからがっしりと抱きすくめる。  
もちろん私も服は脱いできた。バスルームなんだから、当然だろう。  
 
「き、きゃ――――――――――――っ?!!!  
 なに、何なの、いや、チカン――――!」  
「誰がチカンだ」  
「あんたよ、あんたに決まってんでしょーっ!  
 いや、やめて、さわんないでよーっ!」  
触るさ。触るとも。触らいでか。  
少女並みの背丈しかないメリーさんのすべすべの肌の感触を楽しみながら、  
私は両手で彼女の裸身をまさぐっていく。  
「いや、やめ、くすぐったい、ダメ、やめて、もう離してよぉ!」  
離しません。  
「不法侵入者の悪い妖怪め。この人間様が成敗してくれる」  
この部屋は完全防音、この建物は私のビル。  
泣かれても騒がれても平気だ。え、立場が逆になってるって?気にするな。  
 
「あっ……!」  
小ぶりな胸を後ろから揉みしだき、桜色の乳首に刺激を与えてやると、  
メリーさんの声にわずかに甘いものが混じり始める。  
 
「やっ、いや、やめて、お願いー……」  
だんだん抵抗が弱まっていくメリーさん。  
メリーさんの恐ろしさは、その神出鬼没さにある。  
おびき出して自分の土俵に上げてしまいさえすれば、  
どうってことはないのだ。いくら身体をよじって暴れようとしても、  
人間の大人の男のこの私のほうが、単純な腕力では勝っているのだから。  
 
「いや、んっ……んーっ……!」  
強引に唇を奪って舌を割り込ませ、逃げようとする彼女の舌を思う様に弄る。  
私はボディーソープを取り、彼女の股間に手を這わせた。  
「どーれ、おもらしちゃんは綺麗にしてあげないとねー」  
「やっ、最初に自分で洗ったってば!いい、しなくていいっ!」  
そんなことは問題ではない。私がこの手で洗う、ということが大切なのだ。  
たっぷり泡をふくませ、私は毛の薄い彼女の陰部を上下にこすり立ててやる。  
「あっ……やぁ……だめぇ……!」  
もう抵抗だか哀願だか分からない感じになってきたメリーさんの声を聞きながら、  
私はじっくりと手を動かし続ける。やがてその指先に、  
泡でもお湯でもないものがしっとりと絡み始めた。  
「おやー?おかしいな、綺麗にならないなー。またおもらしかな?」  
「ち、ちがうっ……そんなんじゃ……!」  
「どれ、確かめてみよう」  
浴室用の椅子の上に座らせて足を開かせる。  
私はその前にかがみ込み、メリーさんの秘所に舌を這わせていく。  
「あっ、ダメ、ダメ……!それダメぇっ!」  
「やっぱりまだちょっと匂うな。さすがはおもらしちゃん」  
「えっ、嫌、そんな……」  
メリーさん、また涙声になっている。  
もちろん、小水の匂いなんて、嘘だけど。もうしっかり洗ってあるんだし。  
少女の香り漂うそこを、私はじっくりと、丹念に、愛撫し続ける。  
「恥ずかしい音を聞かれて……恥ずかしいところの匂いを嗅がれて……  
 それでこんなに濡れてるなんて、メリーさんはエッチな子だなぁ」  
「―――っ!」  
ガクガクと膝を震わせ、既に返事もできないメリーさん。  
私は彼女を抱え上げ、向かい合わせになるように膝の上に座らせた。  
「あっ……やぁ……!」  
その体勢のままじわじわと、彼女の中に自分のものを沈めていく。  
腰をひきつけて密着させると、窮屈なそこにどうにか私の全てが収まる。  
「あぅっ……やだ、いた、痛いよぉ……!」  
彼女の腰を浮かせてみると、ちゃんと出血のあとがあった。  
あるんだな。処女膜。妖怪にも。  
「言わなくていいの?」  
「な・・・…何を……っ」  
息も絶え絶えと言った感じに、メリーさんがうめく。  
「『あたしメリーさん。今あなたの上にいるの』とか」  
「ばっ、バカ……っ!この変態っ……!そんな余裕、ある訳……、あっ……!」  
お約束だと思ったのに。でもまあ、いいなら、いいや。  
私は下からメリーさんを突き上げ、思うさまにその中の感触を楽しむ。  
「あっ……!あっ、やぁ……っ!」  
小柄な彼女が、私の上で弾む。声も、身体も。  
「あ、あ、あっ……あ―――っ……!」  
悲鳴のようなその声を引き金に、私は彼女の仲に白い欲望を叩きつけていた。  
 
「おっ、終わり……?もう服着て帰っていい……?」  
「ダメ。まだ。ほら、この通り」  
私はすぐに元気を取り戻したそれを彼女に示してやった。  
「いやっ……いやー、誰か、誰か助けてぇぇぇ」  
 
 
ほんの6発ほど気持ちよく放ったところで、  
私はぼちぼちこの不埒な侵入者を解放してやることにした。  
途中で2回ほど私に失神させられていたメリーさんは、  
魂が抜けたかのようにふらふらで、もう私の命を狙うどころの有様ではなかった。  
 
 
 
そして数ヵ月後。  
 
『あ、あたし……メリーさん。い、今、一階のロビーにいるの』  
「あ、そう」  
『あ、そうじゃないわよっ……!  
 お願い、オートロック開けてよ!  
 そっちからじゃないと、エレベーター使えないじゃないっ……!』  
「たまには歩いてきたら?君、メリーさんなんだし」  
『い、嫌……きょ、今日だけは許してよっ……!』  
「ということは、ちゃんと私の言う通りにしてきたか」  
『そうよっ……ちゃんと入れてきたわよ、あれっ……!  
 だから、お願い、エレベーター使わせてぇっ……!』  
「ダメ。でもまあアレだ、さすがに147階はあんまりだし、  
 今日は45階の4512号室を使うことにしよう。ちゃんと階段で来いよ。  
 一階ごとに、バイブの具合がどうなってるかちゃんと報告してね」  
『こ、この鬼畜っ……!』  
「言う通りにしないと」  
『し、しないと……?』  
「こないだみたいにおねだりしても、抱いてやらんぞ」  
『〜〜〜っ!覚えてなさいよ〜っ!』  
 
 
ちゃんちゃん  
 

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