いたい。
あたまが、いたい。
あたまだけじゃない、からだが、いたい。
「いてて・・・・・・・あれ?」
目を開けて、周りを見渡す。
「――――何も、ない・・・?」
一面、見渡す限り荒野と言うに相応しい土くれだらけの地面と周りにそびえたつ山。
「あれ〜?変だなぁ・・・えっとー、さっき自分の家に帰って・・・」
ご飯作ろうとしてガス台の前に立って・・・ひねったら・・・・
「爆発、したんだ・・・・・・じゃぁ・・・ココは天国?」
天国にしちゃ殺風景すぎる。じゃあ、ココは地獄?悪い事したっけなぁ。
しょんぼりしながら、とりあえず立ち上がる。
体の節々は痛いけれど、歩けるから大丈夫なんだろう。
『もっしもーし♪』
急に背後から声をかけられてびっくりした。
振り返ると、そこには声の若さとは裏腹に妙齢の綺麗なおねーさんが立っていた。
「あなた、ヒトでしょ?怪我してるのね、ウチにおいでよ♪」
「ぇ?ヒト?って・・・?」
くすくすと笑いながら自分の手をグイグイと引く彼女。
なにか違和感を感じながらそのまま着いて行くしかないようで、引かれたまんま歩いて行く。
周りは相変わらず山と荒地だけ。
目の前を行く綺麗なおねーさんは艶やかな毛並みの尻尾を振りながら鼻歌なんか歌ってご機嫌で歩く。
ん・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・しっぽ?
背中を厭な汗が流れるのを感じながら目線を上にやると、認めたくないけど”ネコ耳”がたふたふっと揺れていた。
えーと。
「尻尾も耳も動くなんて、随分手の込んだコスプレですねーおねーさん」
「えー?こすぷれってなぁにー?ネコならついてて当然よぉ〜♪」
怪我のせい以外の理由で頭痛くなってきた気がする。
おねーさんが歩きながら簡単に説明してくれた。
ココは、ネコの国という所で、自分達の国で言うなれば”ネコ耳人間”てのが普通の住民で自分みたいな
人間は”ヒト”と呼ばれる存在で、希少価値が高いそうだ。
おねーさんの名前は『火蓮』と言うそうで、山の麓の小さい村の村長さんの娘らしい。
「で、キミはなんて名前なの〜?」
「あ、自分は悠希って言います」
そうなんだ、とおねーさ・・・火蓮さんは笑う。
笑うと八重歯?犬歯?がちょっと覗いて可愛いかも。
「あたし、メスのヒトは初めて見たからびっくりしちゃってね〜♪オスのヒトは割とよく見かけるんだけどね
奴隷売りとかが売りに来るのもほとんどオスだから。体力なくてメスは死んじゃうんだってー」
奴隷とかって・・・さっくりと酷い事言った気がしますが火蓮さん。
「あ、だいじょぶよぉ、あたしは悠希を奴隷にさせる気なんて絶対ないからねっ!」
顔色が変わったのを気付いたのか、火蓮さんが慌てて手を振る。
必死に違うからね、大丈夫だからね、と言うのをみて自分も安心する。
そんな事を言っている間に、目の前に急に集落が見えてきた。ココが火蓮さんの村なのかな。
火蓮さんが、村に入る前に自分のスカーフを頭にかぶせてくれた。ネコじゃないってバレないようにかな?
村に手を引かれたまま入ると、周りをアッと言う間に子供に囲まれた。ネコ、だから子ネコになるのかな。
みんな顔は確かに人間なんだけど・・・みんな”ネコ耳”も”尻尾”もついてる。ちょっとこゎい。
『火蓮さまー、それ誰〜?誰〜?』
「はいはい、この方は火蓮の大事な方だからみんな来ちゃダ〜メ〜、火蓮おこるよー」
『ハーイ』『えー、残念〜』『あとで火蓮さま遊んでよー?』
文句垂れながら子供達があっさりと引き下がらると、周りと違って一際大きな家に連れて行ってくれた。
家に入ると、火蓮さんによく似た綺麗な人・・・ネコが玄関に待ち構えていた。
「火蓮、おかえりなさい。それは・・・ネコじゃないわね?ヒトね?メスを拾うなんて珍しいじゃないの。」
「お母様、これは火蓮が見付けたんですから火蓮のモノです。奴隷になんてしませんわ」
玄関先で口喧嘩なんか始めないで欲しいなぁ・・・火種が自分とは言え、見ててやだなー。
あー・・・怪我のせいか頭がフラフラすr・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目を開けると、玄関じゃなかった。
どうも今日はあちこち移動しまくってる気がするぞ、自分。
ぼーっとしながら視線を動かす。結構広いお部屋だな、ベージュ基本にしたシックな感じの壁紙だし、
調度品もココから見える分には趣味がよさそう。背中がフワフワするのは、お布団の上だからかな?
「あ、悠希おきた、良かったぁぁぁぁっ!」
火蓮さんの嬉しそうな声が聞こえたと思ったら視界に火蓮さんの顔がドアップで入って来た。
それから、自分の怪我に気付かないで母親と喧嘩を始めた事を謝るやら、怪我の手当てはしたから安心しろとか、ご飯は食べれそうかとか、そのまま布団に横になっていていいんだから気にしないでいいんだとかまくし立てた。
「それとね、悠希」
ハイハイ、次は何でしょうか火蓮さん。
「悠希はあたし付のヒト召使いになるって事でお母様と折り合いどうにかついたから、売られなくて済むよ」
「売られないのは嬉しいんだけど・・・召使いって何するんですか?」
「んー・・・あたし付のだから別に特にないけど、一応建前上としてはあたしの身の回りの世話とかかなぁ?」
じゃあ、火蓮さまって呼ばないといけないんですか?と聞くと、「ヤダ!」と一言で却下された。
どうも、自分と上下関係という形にしたくないらしい。”お友達”がいいそうだ。
ふーん、と、取りあえず納得してホッペをぽりぽりと引っ掻いた。
それを見て火蓮さんが身を乗り出してくる。止まるかと思ったら、そのまんま布団の上まで身を乗り出してきて・・・
ぺろっ、とホッペを舐められた。見た目は人間みたいでも、やっぱり猫舌らしい。ちょっとザラザラしててくすぐったい。
「血がまた出てるよ、悠希」
言いながらぺろっぺろっとホッペを火蓮さんが舐める。
「くすぐったいですよぅ火蓮さんっ」
クスクスと笑いながら押しのけようとするけど、体の節々がまだ痛くて力入らない。
「あー、首にも血がついてるー、気付かなかったぁぁ」
え。首に”も”って・・・首も舐める気か火蓮さん!
一瞬どうやって避けるか考えたのが悪かったか、首にザラッという感触。
痛くはないんだけど、何だか変な感じがする。
くすぐったい、とも痒い、とも違う。何かもそもそする感覚。
火蓮さんは、治療のつもりなのか、こっちではそれが普通なのかぺろぺろと傷をなめてくる。
ヤバい。何かヤバい。首から背中に向かってなんだかムズムズしてきちゃった。
相手が男の人だったらまだ分かるんだけど、相手は綺麗なおねーさんだぞ自分!
「火蓮さん〜もう大丈夫ですから止めて下さいよ〜」
「そお?ちゃんとお薬塗った方がいいかな、あたしいっつもこうやって傷治してるんだけどなー」
火蓮さんが体を離してくれたお陰でムズムズ感はきえてくれた。
「悠希、顔真っ赤だよ?熱出ちゃったのかな、今お薬お母様にもらってくるね」
その後は、自分で包帯を交換しようとしてくれたのに自分が包帯にじゃれついて意味がない火蓮さんとか
食べさせようとしてくれたのはいいんだけど布団の上に見事にこぼしてしょぼくれる火蓮さんとか。
見た目は20そこそこの綺麗なおねーさんなのに、こう・・・やる事が見事にドジ踏むというか何と言うか。
「火蓮さんて(子供らしい所とか)可愛いですね」
そう呟いたら、急に火蓮さんの顔が真っ赤になった。
「そっそっそっそんな事ないわよっ!」
そんな事あるんですが。女の自分から見てもそんな素で照れまくられるトコとか可愛いと思っちゃいます。
「いや、自分から見て可愛いと思うから可愛いでいいんです。」
「もっ、もう寝た方がいいよねっ!朝また起こしにきたげるねっ」
真っ赤なまんま火蓮さんが部屋を出て行く。
出る時にランプを消してくれた。
真っ暗になった部屋の中で、バタバタとした今日一日を振り返る。
高校から帰って、お腹すいたからご飯作ろうとして。ちょっとガス臭いとは思ったけどまさか爆発しちゃうなんて。
ましてやこんな・・・ネコの国なんかに来ちゃうなんて、凄い経験だよね。ネコの国に来たアリスみたい。
色々考えてる間に眠りについた。
それから2,3日はベッドから離れられない生活を過ごしたから、なにも変わった事は特に無かった。
火蓮さん曰く”落ちてきた”せいでついた傷が軽く塞がったと言うので、やっと起きる許可も出て一安心。
「あのね火蓮さん、お風呂入りたいんですけどお風呂まだダメですか?」
「あっ、そうだね、汗でベトベトだよねー。今メイドに言って沸かしてもらってくるから待っててね」
10分位待ってると、火蓮さんがタオルを抱えて嬉しそうに戻ってきた。
「あたしも一緒に入ったげるから一緒いこ♪」
「えぇぇぇ!一緒って、そんな恥ずかしいから!いいですってば火蓮さんっ!」
「自分の召使いが病み上がりというか病み中なのに1人でお風呂入れてのぼせてお風呂で溺死なんてしたら
あたしどうしたらいいか分からないもん、一緒に入ってちゃんと見てるからね」
――そっか。自分、火蓮さんの”ヒト召使い”なんだっけ。
仕方無いので諦めて一緒にお風呂へ。
お風呂はすごかった。
とりあえず広い。そして、大理石みたいな石を全面に使ってて、すごいキレイ。湯船も何種類かあった。
腕をあげると、ちょっと痛いので背中を火蓮さんに流してもらう。
「髪邪魔だよねー、あげちゃうね♪」
自分のセミロングの髪は、確かにそのままじゃ洗うのには邪魔だよなー・・・先に上げとけば良かった。
背後でくるくるっと髪をまとめてくれて、まとめてからタオルで頭に押さえてくれた感触がする。
ずっと布団に横になっていたせいで風を感じることの無かったうなじに、温かい湯気が通る。気持ちいーな。
火蓮さんがタオルを泡立てて背中を洗い出してくれる。やわらかいタオルと泡が何だかとってもくすぐったい。
背中からわき腹にタオルが滑ると、思わずクスクス笑い声が出ちゃう。火蓮さんもそれを見て笑ってくれる。
背中を流すと、火蓮さんが「こっち向いてね」と言うので向き直った。
向き直ると、火蓮さんがニコニコしながら今度は前も洗おうとするので、慌てて断ろうとしたけど。
「あたしは悠希のご主人様でしょ?ご主人様の言うことに逆らっちゃうの?」
と、にっこり微笑まれながら言われてしまって。仕方なくそのまんま洗われる事になっちゃった。
まずは腕を軽くごしごし。次は・・・・・・と、火蓮さんの視線が自分の胸で止まった。
つられて自分で自分の胸を見る。で、思わず火蓮さんの胸と見比べてしまう。・・・・・・火蓮さんの胸おおきい、何カップだろ?
自分の胸はAカップしかなくってちっさいな。ちょっと恥ずかしいような悔しいような。
同じように胸を見比べてた火蓮さんが、急に胸を”ふにっ”とさわってきてびっくり。
「やだっ、いきなりさわんないで下さいよ火蓮さんっ」
「んー、悠希の胸あたしより小さいけどやぁらかいねー、ふにふにしてクッションみたいー」
ふにふに、ふにふに。感触が気に入ったのか、火蓮さんが胸を揉み始める。
手つきが別に厭らしいワケじゃないので、この前首をなめられた時みたいなあんな感覚はしなかったけど、
何だか妙な気分になっちゃいそうだったので反撃してしまおう。
「そんな事言って、火蓮さんの胸だっておっきくってふかふかしてていいじゃないですかー」
「え〜、そんな事ないもんっ!悠希の方が胸やぁらかいもんっ!」
むにゅ。むにゅむにゅ。
手を伸ばして掴むと、見た目以上に火蓮さんの胸は柔らかくって、適度な弾力を持った感覚で。
言うなればビーズクッションのような、意外と気持ちいい感触で。
「やー、悠希の手つきなんかやーらしーぃっ」
「火蓮さんこそっ!何かエロっちぃ手つきでさわんないでくださいよおおッ」
気付いたら、キャーキャー騒ぎながらお互いの胸を揉みあってる、なんてゆー、はたから見ると変な状態になっていた。
先に我に返ったのは自分の方で、ハッとして火蓮さんの顔を見ると、何か・・・少し息が上がってる?
心持ち、顔も赤くなってる気がする。自分も、多少息が上がってるかな?
ちょっとだけ、背中らへんがムズムズするかも。女の子に胸さわられてこんなんなっちゃうなんて、自分って変?
そのままだと、ホントに体が変になりそうだったから、手を先に離して湯船につかる事にした。
「あ、火蓮もお風呂入る〜」
離されて我に返ったらしい火蓮さんが後を追っかけて湯船に入ってくる。
入ってくる時、見ようと思ったんじゃないんだけど、見えちゃった。
火蓮さんの髪は、金髪一色じゃなくって、少し赤みがあるおかげで薄っぺらい色味じゃない。
その・・・↓の毛も・・・同じような色だったのが、入る時に見えちゃった。やっぱり髪と同じ色なんだなー、って、思った。
「悠希、顔真っ赤だよ?もしかしてもうのぼせちゃった?上がる?」
心配して、顔を覗き込んでくる火蓮さん。火蓮さんの顔もほんのり赤くなってて、色っぽい。
男がこんな顔の火蓮さん見たらきっと一目惚れしちゃうぞ。
「火蓮さんこそ、顔赤いですよ?一緒に上がりましょっか」
言うと、火蓮さんもそだね、と言ってすぐに湯船を上がった。
体を拭く時に、また火蓮さんが胸をむにゅむにゅ揉んできたけど。他は特になにもされず。
火蓮さんがセピア色の裾がふんわり広がるワンピース、自分が銀色の同じ型のワンピースを着て、お風呂場を出た。
お風呂を出る前に、こんな形の服着ないもんだからくるくる回って裾広がるのを喜んでたら火蓮さんに笑われてしまった。
「お風呂入ってノド乾いちゃったなー、悠希もなにかのむ?」
「あ、はい、できれば水かなんか頂きたいです」
ちょっと部屋で待っててね、と言い置いて火蓮さんが走って行く。
火蓮さん付の”召使い”になったんだから自分が行かなきゃいけないんじゃ?
とか思ったけど、家の中ちゃんと覚えるまでは当分”召使い”のお勤め出来ないだろーな。
「おっまたっせー!」
無意味に元気良く火蓮さんが部屋に突っ込んできた。
手には中くらいの瓶と、グラスが2個。
瓶の中には、見た感じ飲むヨーグルトがも少しドロっとした感じの白い液体。パックするに程よい固さと言えばいいかな。
そんな固くて飲めるのかな?とちょっと不安になったりならなかったり。
「火蓮さん、それ何て飲み物?」
「あー、悠希こっちで生まれたんじゃないから知らないのね。コレは”アフアの実”を絞ったジュースだよ♪
滋養強壮剤としてよく飲まれるんだよー。ちょっとクセがある匂いだけど、味はいいしホント効くから飲んでね?治り早くなるよ」
要するにこっちの世界でのユン●ルとかそんな感じなんだろう。見た目がヨーグルトで怪しいけど。
「じゃ、いれてください」
うん♪と機嫌よく火蓮さんがグラスにアフアジュースを注いでくれる。
コポコポ、と音を立ててグラスの中に注がれていくジュース。
部屋の中に何か独特な香りが漂う。どっかでかいだような変な匂い。お兄ちゃんの部屋みたいな香り?何だろ?
「火蓮さん、コレ臭いですね。飲むのはちょっとと言うかかなりキツイんじゃないんですか?」
グラスを持ったまんま、火蓮さんの様子を見ると、火蓮さんは普通に変な顔もせずに飲んでいた。慣れ、なんだろ。慣れ。
仕方無いから自分もグラスを持って、顔に近付けて、グィっと・・・・・・・
「ぶはっ!」
ふきだしてしまった。
臭いに体が耐えられなかったらしい。
そのままケホケホと咳込んで、目を上げると、火蓮さんの顔にジュースがかかってしまってた。
「あぁぁぁぁ、火蓮さんごめんなさいっ!」
焦ってタオルを探す、あった、拭こうとして手を伸ばす。逆に手を掴まれて火蓮さんに引き寄せられた。
「火蓮さん、ジャレてる場合じゃないですって!拭かないとベタベタになっちゃいますって!」
火蓮さん無言。相当怒ってるみたい。
「あ、あの火蓮さ」
鼻をつままれた。驚いて口をぱかっと開けちゃった。
一瞬、何があったのか分からなかった。
口の中に、ドロっとした甘い液体が流れ込んできて、やっと口移しでジュース飲まされたんだって気付いた。
(ん?口の中?口移し?・・・・・・あ、コレってファーストキスに入るの?)
考えがそこまで行って、やっと腕をバタバタとさせる事ができて、火蓮さんが離してくれた。
「おいしいでしょ?匂いはかなりダメ系かもしれないけど。口の中に入れば匂い気にならないでしょ?」
「ぅ、ぃゃ、そうですけど。口移しってひどいですよー。」
「だってそーしなきゃ悠希飲めなかったでしょー?あたしも最初こうやってお母様に飲ませてもらったのよー」
母娘でキスして口移しでジュースを飲ませてるのを想像して、顔が赤くなる。
赤くなって照れてたら、グィっと引っ張られて、口をまた塞がれた。火蓮さんの唇やわらかいな、と不覚にも思ってしまったり。
ごくん。
一口飲むと、口を離されて、火蓮さんが新しく口に含んでまた移される。
ごくん。
また、口移しで飲まされる。
コレは、キスじゃないんだ、って思えばいいんじゃない。実際、ホントに効くみたいだし。体がぽかぽかしてきた。
ごくん、ごくん。あ、火蓮さん口の横に垂れてる。
ペロン。
思わず自分の舌で火蓮さんの口の横の雫を舐めとっていた。
キョトン、とした顔で自分を見る火蓮さん。同じように、自分の行動にビックリしている自分。
それから、ニッコリ笑って、火蓮さんは何事もなかったかのように次の一口を飲ませてくれた。
ごくん。
そして、口を離す時に、今度は自分の唇の横をペロっと軽く舐めて離れた。
ペロッてされた瞬間、ドキってした。
全部飲み終わる頃には、体がぽかぽかしてて、ワンピースは薄手なのに脱ぎたい位ホント暑かった。
「あ、髪の毛食べてるよ」
と、火蓮さんがきれいな手を伸ばして髪を耳にかけてくれた。耳に手が触れた瞬間
「ん」
変な声が出てしまった。今、声出したの自分?だよねぇ?
「悠希、どしたの?今どっか痛かった?」
心配して、火蓮さんが手をホッペに当ててくれるんだけど、その手自体がもう何かダメ。
さわられた所から熱が走ってっちゃう感じ。ダメ、さわんないで、って思うんだけど、もっとさわっててって思うのもある感じ。
「かれんさんーなんかへんー」
「悠希?悠希?あれ?アフアジュースってヒトには効き過ぎちゃうのかな?どうしよ、大丈夫?」
火蓮さんがオロオロして、腕をさすったりホッペをさすったりしてくれるんだけど、さわる度に自分が変な声を出すから
余計に心配をかけちゃってるみたい。自分だってこんな声止めたいよ!
心配そうに火蓮さんが覗き込む。
視界がぼんやりして、自分の胸が苦しい。風邪ひいたようなのとは違う息苦しさ。
「かぇんさん、なんかぼーっとするのぉ〜、くるひいしあついのお」
呂律も回らない位、ボーっとする。それよりも暑い、すごい熱い。
「今、なにか治せる薬ないか見てくるから少しだけガマンして待てる?待っててね?」
早口でそれだけ言うと、火蓮さんは部屋から走り出してってしまった。
1人で部屋に取り残されて。椅子に腰掛けてるのもダルいので、ベッドに上がって横になる。
横になれば少しは楽になるだろうって思ったんだけど、あんまり変わんなかった。
「あついよー」
ワンピースの前ボタンをプチプチっと胸のあたりまで開けて、パタパタと手で風を送る。・・・こんなんじゃ足りない。
前を全開にして、羽織ってるだけのような状態にしてみるけど、それでも暑い。
どうせ部屋の中なんだし、と思ってワンピースを脱いで床に投げ落として、ゴロン、と横になる。
素肌が空気に晒されて、少しだけ気分がよくなった。
「胸がくるしいー」
胸をさすろうと、手を伸ばして。手が、自分の胸にふれた瞬間。
「んっ!」
また、あの変な声が出た。手は、胸に置いたまま。置いた手から電気が走ってるかのように、じんじんする。
(なに?コレ・・・?なんか、へん。すごい、じぶん、へんになってる?)
そっと、その手を動かすと、また喉の奥から「ん!んっ!」って声が出てくる。
その不思議な感覚は、別に厭な感覚じゃない。厭って感覚じゃないから、ついつい手が動いちゃう。
5分位もそうやってたら、微妙に気持ちがイイ?って感じになってきた。
手から電気が走ってくのが、体中、ううん、体の中心に集まって行く感じがしてくる。
キュッと胸をつかむと、その”電気”がもっとおおきくなって体に染み込む。
もう、その行動が気持ち良くて止める事ができない。
どうしよう、自分ホントにおかしくなってきちゃったのかも。火蓮さん、どうしよう・・・・
半分泣きそうになりながら、でも自分の手が与える快感に悠希は逆らえずにただ、ただひたすら手を動かしつづける。
ベッドのシーツにはいつの間にか少し染みができ始めていた。
― その頃、火蓮は ―
「お嬢様、それは薄めず飲ませなさったんでしょー?そらマズいですよ」
「マズいって、どういう事?悠希の体が変になっちゃうの?病気なっちゃう?」
火蓮は、屋敷の厨房で昔からいる使用人に話を聞いていた。
「あたしらネコには原液のまんま飲んだ方が効果が期待できますけどね、ヒトにはアレはキツ過ぎるんですよ。
だから、ヒトに与える時は少し水か他の飲み物とか食べ物で薄めて与えなきゃいけないんですよ?」
「だって、さっき何も言わずにくれたじゃないの!」
「お嬢様、あのメスのヒトが飲むなんて一言も言わなかったから知らなかったんですよー」
困り顔の使用人を見て、火蓮は考え込む。
「じゃー・・・どうしたらあのコは治るの?」
そんなの簡単ですよ、と使用人は笑う。
「今の状態は要するに”発情”してる状態ですからね、それを発散させれば簡単におさまっちゃいますよ。
誰かオスのヒト探してあてがえば一発ですよ?探してきます?やんなかったら一週間はあのまんまですけどね」
「オスなんかあてがわなくて結構よ!あのコはあたしの、火蓮のモノなんだから!他の誰にもさわらせないのっ!」
まくし立てて、火蓮は厨房を飛び出した。
部屋に帰りながら考える。
(オスをあてがわないって事は、発情を抑えられないって事。抑えられないって事は、一週間くらい
あの苦しそうな悠希見なきゃいけないって事。そんなの、あたしも悠希も耐えられないよ・・・)
と、ソコで1つのことに気付いて立ち止まる。
「あたしが・・・オスの代わりに・・・・・なれる?としたら?」
確かに、挿れるモノは無いけど、さわってあげる事はできる。
さっきの悠希の状態見た限りだと、さわるだけで凄い反応してたみたいだから、それで収まるかもしれない。
「だったら、頑張ってあたしが治してあげなきゃ!あたしのせいだもんっ!」
口に出して自分の意志を再確認すると、火蓮は部屋に向かって走り出した。
部屋に戻った火蓮が最初に感じたのは、甘い、なんとも言えない香りが漂っている事であった。
(?なんのにおいだろ?アフアジュースってこんな匂いしないしなー。なんだろ?)
ドアをぱたんと閉め、誰も入って来ないように鍵をかける。ふぅ、と軽く息をついた時、か細い声が聞こえた。
「ぅぅ、ゃだぁ・・・どうしよ・・・んっ・・・はぁっ・・・・」
甘い、か細い声の主はベッドの上で、まだ両手を胸にやり、胸をもみしだきながら泣いていた。
「ゆ・悠希!?」
慌てて駆け寄ってその手を掴んでおろす。
焦点の定まらない目で、悠希が火蓮を見る。
「あぁ、かれんさん・・・ダメなの、らめなの、おっぱい触るとへんなの、とまんないの」
涙をポロポロ零しながら悠希は訴える。
理由もわからず、ただ体だけが発情している状態。唯一頼れる自分もいなくて、辛かっただろう。苦しかっただろう。
きゅん、と胸が切なくなって、ギュッと悠希を抱きしめる。
「あたしが、火蓮が治したげる。だから、何してもビックリしないで、体ラクにしててね?恐い事ないからね?」
「ふぁい、かぇんさん」
一応持っている僅かな知識を頼りに、とりあえず口付けをする。
ちゅ・・・ちゅ・・・・と、優しくついばむように口付けを与える。
唇を離すと、ウットリした目で悠希が見返してくる。そんな顔を見て、また火蓮の胸がきゅん、となった。
(どうしよ、悠希すっっっごい可愛い!)
ちゅ、ちゅ、と触れ合うだけのキス。幼いキスだけど、2人の距離を近付けるには充分なキス。
そっと、晒されたままの胸に手をやる。触れただけで一瞬体がビクッとするものの、抗う事もない。
優しく胸に当てた手を上下させて擦ってみる。
「ンッ・・・ぁ・・・・」
口から甘い声が漏れ出すのを確認すると、その手に力を少しいれて胸を揉んでみる。
「ゃんっ!んんーっ!」
おおきい声を出すので、驚いて手を離すと、潤んだ目で火蓮を見る悠希。
「へーき、だいじょぶです、なんか、体がビリビリきちゃうんです」
それだけを切れ切れに言うと、辛いだろうにニッコリと微笑む。
ホッとして軽くまた口付けると、胸に当てた手を動かす。
なんとなく胸の頂にある桜色の蕾をキュっとつまんでみる。
「あぁぁぁぁぁ!」
さっきよりも大きい声と一緒に、背を仰け反らせる。
今度はそっと摘むと、幾分小さい声で、それでも体を反らせる程反応する。
「なんか、なんか、お腹とかせなかのしたとか、へんなんです、むずむずしちゃうんです、変になってませんか?」
涙目で悠希が体の異常を訴える。
言われて、目線を下にやると・・・・・・
脱がすと、もう一度ソコを確認する。
あまり濃くない毛並みの向こうに見える秘所から、不思議な香りのソレ、が流れ出している様子。
そっと、悠希が痛くないように指でソコをなぞる。
「ぁん」
声が出るのにも、もう慣れた。大きい声が出たとしても、それは痛いとか厭だからじゃないって分かったから、気にしない。
手に、その何か分からないモノがまとわりつく。
ぱくっと口に含むと、形容しがたい不思議な味がした。
「んー?何だろ、コレ?」
美味しい、とは言えないけど不味い、と言う味でもない。
もう一度、鼻を近付けてクンクン、と匂いを嗅ぐと、ペロっと舐めた。
「ひゃぅっ!やっなっなにしっ」
ペロペロ、と舐めると悠希の抗議の声が止まる。声が出ないように耐えている様子。
面白くて、ペロペロと舐め続けると、どんどん後からあとからソレが溢れ出してきた。
じゅるっと音を立てて悠希の蜜を舐め取る。
目線を上げると、真っ赤になって目をつぶり、口をかたく噤んで耐えている悠希が見えた。
ちゅっと口付けて、ついでにちょっとだけ口に悠希の蜜を含ませる。
「んー・・・・へんなあじ・・・」
「ソレが悠希の味だよ」
そうなんですか、と潤んだ目で言う悠希を見ながら、火蓮は自分自身も体が熱くなってきているのを感じ出していた。
ちゅ、と口付けて、悠希の蜜を手に取る。取るそばから蜜は溢れ出して、シーツは大洪水。
指がふれるに体が反応する場所を探して、体中を火蓮の指が走って行く。
胸全体をさわるより、その頂のものを摘んだ方が反応する。
腹の方をさわるより、腰をさわったほうが良く反応する。
背中をさわった時なぞ、軽く背中に爪を立てられて服の上からなのにすごく痛かった。
クィっと服を引っ張られる。目を合わせると、もう一度軽く服を引っ張る。
「?」
「服・・・くすぐったい」
あぁ、と納得。さっさと服を脱ぎ捨てると、悠希が一瞬顔を赤く染めた。
「なんで真っ赤になるの?さっきお風呂入ったじゃなーい」
「おっきぃ、から、くらべるとはずかし、いんです、」
息が切れるせいで細切れに言葉を紡ぐと、悠希は目線を火蓮の胸にやる。
「そお?さわっていーよ、悠希ばっかさわられてると余計はずかしーでしょ?」
言いながら手を添えて、胸に手を当てさせてやる。
遠慮がちに悠希がふにふに、と手を動かす。と。
「にゃぁんっ!」
思いもよらなかった刺激が体に走って火蓮も叫んでいた。
ジュースのせいで勢いが止まってない悠希はそれを見て嬉しそうに手を強めて動かす。
さっき、自分の胸でどうやったら気持ちいいか、充分過ぎる程理解はしているから、力加減もなれたもの。
「うにゃっ・にゃっ!にゃーーーっ」
悠希に跨ったまま、火蓮が背中を仰け反らせて初めての快感に悶えるばかり。
少し腰を持ち上げた途端、悠希が火蓮の秘所に手をのばしてつるり、と撫でた。
「にゃぁぁぁぁぁんっ」
反応を見ながら悠希は手を動かす。動かす途中で小さなしこりを見つけて、そこを何となくつまんでみた。
その途端、火蓮の中で何かが弾けるような感覚がして、火蓮は一瞬気を失った。
少しして、火蓮が目を開けると。心配そうに、でもまだ上気した顔の悠希が下から覗き込んでいた。
火蓮はイきやすい体質だったらしい。
「だ、だいじょーぶだよ」
「大丈夫ですか?ごめんなさい、自分が変な事したせいで」
「それより、今のでどうやったらいいかなんかわかっちゃった♪」
え?と首をかしげる悠希に笑いかけると、またそっと口付ける。
相変わらず蜜は大量に溢れている。さっき、自分がさわられて気が飛んでしまったのはこの辺をさわられた時。
しかも、”ナニか”をつままれた瞬間、自分の中で少しの痛みと、『気持ちいい』という感覚と『真っ白』な感覚が一緒に弾けた。
きっと、ソレをすれば悠希は治る。確信を持って必死に探そうと目をこらす火蓮。
秘所を見られる恥ずかしさに悠希が身をよじるたびに、淫らな水音が部屋の中に響き渡る。
ほっそりした指で襞をかき分けると、綺麗な色をした内壁が少し見え隠れする。
この中かな?と指をそっと入れようとすると「痛い痛い痛い痛い痛いっ!ダメ、そこやだダメ!」と、力一杯拒否された。
どうやら違ったらしい。その上に目線をやると、小さな突起が目についた。
さっき、自分が弾けたのはコレのせいだろう、と見当をつけてそっと舌で突っつく。
「ぁあっ!」
今までよりも激しく体が反応する。どうやら正解のよう。
舌で優しく、やさしくそれを転がしてみると、その度に体をよじって、悶える。悶えるたびに、蜜が更に溢れ出す。
転がしているうちに、皮に包まれてていた突起が頭を少し出してきた。
それ自身をまた舌でそっと突付いてみる。
「!!」
今度は、声にならない声をあげて体を強張らせる。でも、蜜はさっきよりも大量に溢れ出してきているから大丈夫なんだろう。
「んー・・・・悠希、痛い?ココやだ?」
顔をあげて聞いてみると、真っ赤になりながらふるふる、と首を横に振ってその質問に否定の意を表す。
軽く納得して、今度は執拗にそこを責めることに専念しだす。
「んっ!んっ!あぁぁ!やっ、あっ、へんっ!へんなのっ!だめぇぇぇっ!」
つつかれる度に、ダメ、ダメと言いながら、蜜を流して悦ぶ悠希。
段々とその声が甲高くなっていく。無意識にそれにあわせて舌の動きを火蓮は速めて行く。
そして、いきなり悠希の声が止まったかと思うと、両脚も、体全体も強張らせて悠希が達した。
火蓮は、達した事自体には気付かず、まだそこを責めていた。
一瞬の意識の空白から戻った悠希が連続でまた達する。でも、火蓮はまだ責め続ける。
”達する”と言う事、そしてその状態の後もされ続けるという事。何連続も、悠希は達し続けた。
何度目になるだろうか。あまり反応しなくなった事に気付いて、火蓮が顔をあげると。
少し疲れた顔をしているものの、気を失ったまま眠っている悠希がそこにいた。
しばらく様子を見てみるが、起きる気配は一向にない。
(・・・もしかして、”発散”できたって事かな?だとしたら、あたしは悠希のこと、助けてあげれたのかな?)
ふふっと笑みがこぼれる。そのまま、火蓮は悠希のそばに横たわって、自分も眠りについた。
窓の外は、いつの間にやら綺麗な満天の星空になっていた。