『メイド』という職業が認知されだしてからどれほど経ったであろうか。  
 確か初めはオタクがマスコミから良くも悪くも取り上げられてからだったか、  
あの時はメイド喫茶なんて店も立っていた、懐かしい話だ。  
 しかしオタク文化から水商売というイメージチェンジというのは  
本場の家政婦さん達に顔が立たんだろう。  
 性的サービスを行う家政婦、まさに理想のメイドだ、思ってはいても  
実行しようと誰が思うであろう。  
 いや確かに失敗の恐れもあった、メイド文化に興味を示す層と風俗などに行く層が  
同じという可能性は意外と低い、まさに二次元と三次元の壁というべきか。  
 資料を調べると面白いことにメイドを最初に始めだしたのは所謂家出少女達だったという。  
 援交して金を稼ぐだけではなく住む場所も確保できる、しかし段々と  
組織化されメイドが登録制に変わってからはもっぱら『家事のみ』のコースが  
主流だったみたいだが、携帯一つでメイド登録、メイド萌えな私にはある意味複雑な時代と言える。  
 
 始まってみればやはり童貞率が右肩上がりの世情だ、オタクと比喩された  
者達の注文は爆発的だったという、しかしこれも時代の流れか一番の顧客は  
2・30代のサラリーマンだったという話だ、もちろん既婚者を含めてである。  
 後に浮気メイドと話題になったりもした、家庭以外に部屋を借り、そこに  
メイドを住まわせる、何がタチ悪いかというとこれらは金銭でのみ繋がれた関係ということ、  
言ってみれば夫が風俗に行った、デリヘルを呼んだと変わらない、不倫のように  
泥沼化することはないが、金さえあれば同じことは起きうるという点である。  
 だが、メイド側の早急な対応に難を逃れたのは実はあまり知られていない、  
簡単な話メイドを派遣するに辺り少しばかり条件を加えただけ。  
 しかし色々な問題が起きようとも『金と寝床が欲しい女』と『女が欲しい男』がいる限り  
まだまだ廃れることはなさそうである。  
 
―――  
―  
 
「・・・ふぅ」  
 慣れないことなどしないのが一番、そう思っても旧友に頼まれたからには  
無下には断れなかった。  
 出版社に勤めている友から頼まれたのはメイドについて、というテーマでの文章。  
 
 悲しいかな、自分の技量では過去の資料に対する感想だけで手一杯だ。  
「おーい」  
「は〜い、どうしました?」  
「できたー」  
 私にもメイドがいた、それだけではそんな依頼は来ないだろう、だが。  
「ちょっと否定的な意見すぎない?」  
「いや、だって世間的にもそうだし」  
「でもー」  
 目の前でむくれているのは私のメイドだった人だ。  
「それにお前はもうメイドじゃないだろ?」  
「・・・・そうね!お嫁さんだもんね」  
 私はメイドと結婚した初めての例だという、小さな記事だが雑誌に特集されるそうだ。  
 7年間彼女を雇い続けた結果は無償の愛だった、という訳だ。  
 

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