「よし!では帰還するぞ!」  
 
メッツァーが部下を引き連れ、基地に凱旋しようとしたその時。怒声が響き渡る  
 
「待ちなさい!!メッツァー!」  
 
「ん?やっと現れたか・・・・スイートパッション」  
 
メッツァーが気だるそうに向けた視線の先には、黒き衣装を身に纏いし第3の戦士、  
宮守麻由希ことスイートパッションがその身に不釣り合いな獲物を構えながら睨み付けてくる  
 
「どうやら別働隊の方に向かったのはお前だった様だな」  
 
「そんなことはどうでも良いわ!こっちでも魔力のぶつかり合った後が感じられるのに・・・りり・スイートリップはどうしたの!!!」  
 
メッツァーの気怠そうな態度に業を煮やしたパッションが吠える  
 
「スイートリップか?リップならここに居るが?」  
 
メッツァーは視線で促すが、そこには食虫植物の化け物が佇んでいるばかり。それを見てパッションは口元を片手で抑えつつどんどん青ざめていく  
 
「まさか・・・」  
 
それを見て勝ち誇った表情のメッツァーは微笑を称えながら答える  
 
「ふふ・・お前の想像とは違うが、特別に見せてやろう」  
 
ネペンシスに指示した途端、ネペンシスの身体は透過していき、中の様子が鮮明に見えるようになる  
 
「!!!」  
 
パッションはそれを見た途端、獲物である片手剣を落とし、両手で口を塞いだまま  
固まってしまう。なぜなら、化け物の体内には、白い粘液に漬けられた自分の尊敬する  
先輩でもあるスイートリップが捕らえられて居たからである。しかも、相当酷い  
仕打ちを受けたのか、ぴくりとも動かない  
 
「凛々子先輩!!!凛々子先輩!!!」  
 
パッションはスイートリップと呼ぶ事すら忘れ、叫ぶ。しかし、意識を失ったリップは一  
向に起きる気配はない。  
 
「ふふ・・安心しろ・・・殺してはいない」  
 
「ふざけるな!!!今すぐ凛々子先輩を離せ!!!」  
 
パッションの怒声が閑散とした公園に響き渡る。これを見てメッツァーも態度を変える  
 
「ふっ、解放しろ?だと・・・お前は自分の立場を考えているのか?いまやスイート  
リップは我が手中にあり、どうとでも出来る。そこまで考えているのか?」  
 
メッツァーは嘲笑する。それに気が付いたパッションはハッとし、冷静さを取り戻す。  
 
「ふふ、どうやら理解出来たみたいだな。今はスイートリップは人質みたいなものだ。  
それでも反抗するのか?」  
 
メッツァーは嘲笑を浮かべたままパッションに言い放つ。  
 
「くっ・・・」  
 
「ふふ、今すぐお前をどうこうする気は無い。また俺がお前の前に姿を現すまで、存分に  
悔いるが良い。自分の力の無さをな・・・ふふふ・・・」  
 
と、いつの間にかメッツァーの元へと戻ったココノが告げる  
 
「メッツァー様、帰還魔法の準備が整いました」  
 
「ここのちゃん・・・」  
 
一瞬、明るさとあきらめが入り交じった表情で副官ココノを見据えるパッション。  
そう、ココノとパッションは少なからず因縁がある。パッションが通常の学園生活して  
いる時、通っていた学校の同級生であり、友人でもあったココノ、その友人が敵と  
分かった時は、少なからず動揺と衝撃があった様だ。そして、今でも・・・  
 
「ごきげんよう、スイートパッション。今日は貴女と戦えなくて残念だったわ。  
またいつか、貴女の前に現れますわ。その時まで、お楽しみはお預けですわね」  
 
ココノは屈託の無い笑みで言葉を返す。それがパッションの心を深く抉る事を  
知っていながら・・・  
 
「フフ、感動の再会の様だが、幾分、我々には時間が無いので、これで下がらせて貰うよ。  
麗しきスイートパッション・・・また会う日までご機嫌よう  
・・・フフフ・・・ハーッハッハッハッハッハ・・・・」  
 
ヴォン・・・何かが高速回転するような音を残しながら、メッツァー達は消失していく。  
先輩で憧れでもあったスイートリップを引き連れて・・・  
 
「くぅ・・・凛々子先輩・・・私が・・・私達がきっと救い出して見せます・・・  
それまで・・・それまで耐えていて下さい・・・」  
 
パッションは両手で地を叩き、その場に踞りながら涙を流す。その咽びは、誰の耳に  
聞こえる事も無く、夜の帳に消えていくのであった。  
 
 
 

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