<<another silver moon in>>
この兎達が住んでいる国には、天窓が付けられている建物が非常に多い。
それは太陽の光をではなく、この国において神聖視されている月の光を取り入れるため。
それは教会から一般住宅、さらにはここ、魔法騎士団の室内訓練場にまで……。
「あふっ……、あっ、あっ……………………あんんっッッ!!」
一羽の兎が、夜空に浮かぶ2つの月を仰いだ。
彼女は“先ほどまで”騎士だった。
膝立ちになり、天窓越しに差し込む光を浴びるその姿は、
さながら戦いに疲れ打ちひしがれた身体を、その身に当たる雨で癒す勇者といったところか。
しかし今の彼女は騎士ではない。
「くッ、……ま、また、またイっ…………っあああああッッッ!!!!」
手足をびくびくと痙攣させて今日何度目かの絶頂を迎える。
口の端からだらしなく涎を垂らし、恍惚とした表情のその姿はまかり間違っても騎士などではない。
身体の下にオスの兎を組み敷き、その剛直に向かって一心に腰を振るその姿は、ただのメスの兎でしかない。
「はぁっ、はぁっ、ああっ………。クソッ。これで何回目だよ」
室内なのに吐息が白い。夜だから気温がさらに下がる。
夜間使われていない筈のこの大部屋に、暖房など点いているはずが無かった。
気候的にこの国では、情事の際には着衣のまま行うことが多い。
それでも服の上から肌に刺すような寒さを感じる。
しかしその刺激さえ、今の彼女には快楽に繋がる刺激となる。
兎特有の貪欲なる性欲が、彼女を更に高ぶらせていく。
彼女は少しだけ息を整え、また腰を上下させ始めた。
未だ硬度を失っていないソレが出入りするたびに、彼女の下の口からは愛液が溢れ、上の口からは嬌声が上がり、
一度堕ちきった階段を再び頂上に向かい駆け上がっていく。
「あはっ、んぁっ……つ、次ぎイッたら、4回目か?」
雌が雄に問いかける。
「ん゛〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!」
しかし答えは返ってこず、くぐもった声だけが辺りに響く。
悲鳴にも近いその声は、雄の兎から発せられたものだ。
その口には猿轡が咬まされている。
それだけではない。
目隠しをされ、後ろに合わされた手には囚人用の手枷を付けられ、
身体的・精神的に拘束された上で、彼は彼女に、ただ為すがままに快楽を貪られていた。
「おまえも、早くイけよ?」
彼女はそう言いながら、彼の乳首を人差し指で引っ掻いた。
更なる刺激の到来に、彼の身体が跳ねた。
背中が弓なりに反り返り、彼女はその激しい動きに絶えかね、今日4回目の絶頂を迎える。
しかし彼女が今までに4回達しているのに対し、彼はただの一度も達することが出来ていない。
彼はどうしても最後の一線を越えることが出来ないその原因は、彼の竿の根元に食い込んでいる金属製の輪にあった。
輪が彼の竿を締め付け、尿道を外側から塞いでいる。
いくら射精しようとしても物理的に出来ない、その激痛が彼の頭を締め付けている。
無論これらの小道具は、全て彼女によって取り付けられたものだ。
「ぁあんッ。あっ、くッッ!! あッ……おまえ最高だよ。何時までも傍に置いておきたい位だ」
道具として。
彼女は彼から快楽を搾り出すかのごとく、絶妙の締め付けを持ってその行為を続ける。
名器にも等しい彼女の膣内の攻めに、彼は完全に捉えられ、それ以外は何も考えられなくなっていく。
彼が壊れるのも時間の問題か。
「あふッ。あんッ、あんッ、あんッ」
リズミカルに腰を打ち付けていく。
打ち込むときには力強く、引き抜くときには吸い上げるように。
更なる高みへ行く術を、彼女は本能的に知っている。
ふと、彼の胸元に目線を落とした。
騎士団の制服に「NE>212 ……」と刺繍が入っている。
団員番号と共に刻まれている名前は憶える気がしない。
どうせ一晩だけの付き合いだ。
彼女はこの騎士団一の実力の持ち主であり、そしてこの兎の国の姫君でもあった。
彼女はその実力、権力を元に、時々、訓練中に動きの良かった者と訓練後に打ち合う事がある。
その後“特別訓練”と称して、このように交わるのだ。
暴君として名高い彼女であるが、それでも彼女から剣の稽古をつけられる事は名誉なことであり、
彼女と交わることもまた名誉なことであった。
しかし姫という立場上、一介の騎士との間に子をもうける事には問題があるため、
今彼に取り付けられている輪のような処置は必要不可欠だった。
「いや、壊しちまったら……んッ……一晩だけじゃ済まなくなるじゃねえか」
彼の身体はその言葉に反応した。
明らかに言われた“壊す”という単語に恐怖を感じ、彼の身体が震え始める。
その反応を、彼女は一種の加虐感をもって悦に浸る。
にやりと不敵に笑った後、一度腰の動きを止め、彼女は思案し始めた。
「壊れたら……そうだな、真っ裸で俺の部屋のベッドに縛り付けて、毎夜毎夜楽しむとするか。
素材が良いから、飽きるなんて心配は無いしな」
がたがたと震えながら、彼は必至に首を横に振る。
拒絶の意味を暫し考えながら、彼女は更に追い討ちをかけた。
「安心しろ。おまえの恋人も城に招いて、一緒に調教してやるよ」
目隠しの、彼の目に当たる部分がじわりと濡れた。
「まあ、俺はそんな非道じゃないけどな」
ふっと笑って、彼女は彼から目隠しと猿轡、そして手枷を取っていく。
まだ少年とも言える整った顔が、月明かりに照らされた。
「ああ、いい顔が涙で台無しじゃねえか」
そういって身体を折り曲げ、口付けを交わす。
「んぐっ。セニアさまぁ。痛いです」
彼の目から涙が次から次へと溢れていく。
「ん、今度は一緒にイこう……な?」
セニアと呼ばれたその姫は、再び先ほどまでの激しい腰使いを取り戻す。
「あくッ!! ひあっ!! はぁぁぁん!!」
激しい水音、艶かしい吐息、煩いほどの嬌声が室内にこだまする。
彼は未だ崩壊寸前の脳で、必死にそれに耐えていた。
「イっ!! イクぞ!! 今度こそイクからな!!」
そして彼女は、彼に取り付けられている金属輪に爪を立てた。
次の瞬間、あれだけ食い込んでいた輪が、パキンと音を立てて2つに弾ける。
「あっ!! で、でる……ぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」
彼にとって、これが今日初めての絶頂。
つかえが取れ、貯めに貯められた大量の迸りが彼の中から放出される。
「こっ、こっちも………んああああああッッッッッ!!!!」
びくびくと竿が震えるのを膣内で感じながら、彼女は今日5回目の絶頂を迎えた。
しばらくの後、まだ彼のものは彼女の中に入っていた。
少年も姫も、余韻に浸りながら抱き合っている。
「妊娠した……かな?」
唐突に彼女が言った言葉に、先ほどとは違う意味で青くなる少年。
兎どうしの交尾では、膣内に出した場合の妊娠率は他の種族に比べ極端に高い。
しかし自分は姫である。彼とは位の違いが天地ほどもある。
姫という立場上、妊娠ということがどれだけの混乱を招くのか、
以前ほかの姫の騒動に付き合ったことのある経験から、よく知っていた。
「ご、ごめんなさい……ぐすっ…………すみません、セニア様ぁ……」
先ほどから泣いてばかりの彼が、必至に謝罪している。
「大丈夫だ。ゴムは破れてねぇよ」
にかっと笑い、初めて彼女は彼のそれを抜いていく。
その下から、コンドームに包まれたそれが、数時間ぶりに顔を出した。
アレだけの量を放出しながら、コンドームは破れてなどいなく、彼の全てを受け止めていた。
「さすが猫の国から取り寄せただけのことはあるな。質が良い」
彼女は彼に向き合い、改めて笑みを浮かべる。
「うわぁぁぁぁぁん!! セニア様ぁぁぁぁッ!!」
「ほら、男なら泣くな」
涙を流す少年を、彼女はその胸に抱きしめる。
そのまま、少年が泣き止むまで頭を擦ってやった。
彼女は騎士団内でもかなりの人気がある。
それは、乱雑な振る舞いの中に時折見せる、この優しさにあるのかもしれない。
本当に時折に、かもしれないが。
「……泣き疲れて寝ちまったか。まだまだガキだな」
ここまで疲れさせたのは自分か、と少し自嘲気味に笑った。
そのまま手を伸ばし、少年のものからゴムを外して口を縛る。
根元を締められていた時ほどではないものの、それはまだ十分な硬さを誇っていた。
ポケットから2つめのゴムを取り出して、彼に被せる。
「わりぃな。夜は意外と短いんで。イイ夢見ろよ」
彼が夢の世界に浸っているのにも構わず、再びその上に圧し掛かっていく。
「あんッ!! くそ。本当に持って返っちまうか……んんっ!!」
月明かりの下、彼女の声はまだまだ響いた。
この後すぐに彼は目が覚めるのだが、結局その後も彼女に押し切られる形で交わり続け、
結局解放されたのは日が昇った後、それも他の騎士が集まりだすほんの直前だった。
その影響か、彼は数日騎士団の仕事を休んだ。
なんでも、足腰が限界に達したらしい。
それに対し、彼女の方はなんともなかったとか。
鍛え方がそもそも違うらしかった。
<<another silver moon end>>