「……だから…ごめんって……」  
「………」  
 私は怒ってる。うん、なぜかはっきりしないけど、私は怒ってる。弟に対して。  
「…ごめん……姉ちゃん………」  
「なんで……」  
「えっ……」  
「なんで書かないの?」  
「それは……」  
 自分はなんの事を言っているんだろう?あ、あれの事だ。あれ?あれってなんだっけ?…まぁ、いいや…  
「書いてない訳じゃ無いんだ……ただ、どうもうまくいかなくて……」  
「うまくいかない?」  
「うん……書いても書いても、どうも納得がいかなくて…」  
 何を書いてるんだろう?私は知らない、だけど、この私は知ってる?  
「納得がいかないものを晒せる訳無いし……」  
「………ねぇ」  
「……なに?…」  
「お姉ちゃんが、協力してあげよっか?」  
「協力?協力って、どうやって……」  
「こうやって……」  
 そういって、この私は彼に、弟の頭に両手を回し、キスをする。  
 そのキスは、どんどんと激しさを増す。  
 閉じられた唇を舌で割り、唾液を流し込み、吸い上げ、舌を絡ませる。  
「ちょ………なに…ん……を…」  
「少しだけでも…ぅん……気分んっ……を…すっき…り……させた方……良いっ……でしょ?……」  
 気付けば彼を押し倒していた。体が密着し、弟のモノも硬くなっているのが伝わってくる。  
 唇を離し、告げる。  
「ねぇ……しよ?…」  
 
 俺はただ、喉が渇いたから何か飲み物でも、と思って部屋から出てきただけだ。他意は無い。  
 そこでだ、居間と台所が繋がっているんだが、居間を経由して台所に行こうとしただけだ。これにも他意は無い。  
 居間には姉がソファーで寝ていた。家事の休憩を取ろうとしたのだろう。  
 休憩を取るのは悪いことじゃない。寝るのも別に構わない。  
 いや、もっと休んでてもらって構わない。いつも働いてもらっているのだ、休んでもらってしかるべきだろう。  
 だが、  
「……ぅん……そこ……い…いよぅ……」  
「もっと……もっと……そこ…きてぇ…」  
「……よ……すぎて……いっ……ちゃうよぉ………」  
 寝言……  
 多分居間で見るような、見ていいような夢じゃないよね?  
 俺の妄想ですか?思春期故の妄想ですか?  
 ……妄想だ、幻聴だ、あぁ何も聞こえない、聞こえませんとも。  
 静かに歩き、冷蔵庫の戸を開ける。  
「……あっ…もっと……やさしく…してぇ………」  
 ……何あったかな?牛乳…ペットボトルのお茶…炭酸水………たまには牛乳でも飲むか?……  
「……そんなに……わたしの……おっ…ぱい……おいしい?……」  
 …………お茶にしよう。蓋を取り、コップに茶を注ぐ。  
「……でちゃう……でちゃうよぅ………」  
 ………………一気飲み。出来る限り、素早く、静かにここを出よう。  
「なか……で…い…いから……君との…赤ち─  
 結局俺は家の中なのに、走って自室まで逃げることになった。  
 

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