ある山深い僻地に、  
『けだもの姫』  
なる少女が存在する・・・と、巷ではまことしやかに語られていた。その少女  
は魔物を駆り、野を蹴って空を舞うと言われ、世上においてはある種の伝説  
となっている。もっとも、その姿を見たものに言わせれば、少女は幼く、また  
まれに見る美しさを持っているとの事。それ故、山の麓ではけだもの姫を崇め、  
恐れてもいた。  
 
僻地に興された小さなお社。それが、けだもの姫こと小夜子の住まいである。  
「サンザ、飯にしよう。直れ」  
小夜子が山男のサンザと差し向かい、夕餉の支度などをしていた。見れば小夜子  
はまだ十歳かそこらという幼さで、手にした膳を運ぶ姿が危なっかしい。  
「姫さま、手前が持ちます」  
サンザは、小夜子の持つ膳を取ろうと手を差し伸べる。全身毛むくじゃらで、目だけ  
が異様な輝きを放っているのは、山男ゆえか。だが、彼の者は魔物という立場に  
あっても、小夜子を敬っていた。  
「いただきます」  
膳が並べられると、少女と山男が神妙に手を合わせ、箸をつける。そして、共に  
今夜の糧にありつけた事を、感謝していた。  
 
小夜子の住む社は、打ち捨てられた村に残された寂れ物。だから、  
障子は破れ、瓦が葺いてあるはずの屋根からも、雨漏りがする。  
しかし、小夜子は別段気にも留めない様子で、飄々と暮らしていた。  
「姫さま」  
「なんじゃ」  
サンザが沢庵をぽりぽりとやりながら、小夜子に問いかける。姫さま、 
という言葉から察して、この二人が主従の関係にある事は、容易に  
読み取れた。もっとも、この荒れ社に住まう小夜子にとっては、姫など  
という呼び名は、くすぐったいだけなのだが。  
「麓の村から、お囃子が聞こえますね」  
「だからどうした」  
「山の魔物たちが、騒いでいます」  
「祭りに行きたいのか?まったく、しょうがないやつらじゃな」  
サンザに言われると、小夜子が顔をしかめた。山の麓にある村で、五穀  
豊穣の祭りが行われているのは、小夜子も知っている。ただ、その賑わ  
いに、魔物たちが誘われている事が、気に入らないのだ。  
「姫さま。この山に住まう王として、魔物たちにお慈悲を」  
サンザがお茶を啜りつつ、乞う。この山男は、小夜子へお願い事をする  
時には、決まって遠まわしな表現をする。若年ながら聡明な小夜子は、  
その意を素早く読み取り、  
「考えておく」  
とだけ答えた。  
 
小夜子は、魔物の父と人間の母を持つ異形である。その生まれから、  
人間界からは忌み嫌われこそしたが、魔物界においては敬意を以って  
受け入れられ、今やこの山の王の座にある身だ。御年十歳。幼くはあった  
が、八百万(やおよろず)の魔物を統べる、異界の姫ぎみなのである。  
「ごちそうさま。出かけてくるぞ」  
小夜子が夕餉を済まし、外へ出ようとした。蝋燭の火に照らされた御姿が  
麗しい。  
「いずれへ?」  
「あやつらの所じゃ」  
サンザが問うと、小夜子は山の方角を指差した。そこは、魔物たちが住む  
魔界を指す。  
「祭りに行く事を、お許しになるので?」  
「逆じゃ!誡めに行く!」  
小夜子の顔に、呆れ顔が浮かんでいた。まがりなりにも、物の怪の類が  
祭囃子に心惹かれるとは何事ぞ!と、でも言うつもりなのか、握り締めた  
拳にも力が入っている。すると、サンザは頭を掻き掻き、  
「姫さまのけち」  
ぼそりと呟いた。  
 
山の夜は闇が深い。しかし、小夜子は特に明かりも持たず、山道をすたすた  
と歩いていく。彼女自身異形ゆえに、夜目が利くようだ。  
 
「あっ、姫さまだ」  
「わーい、姫がきたぞう。みんな、出て来いよ」  
ざわめく闇の中から、魑魅魍魎の類が現れ、小夜子を出迎える。やはり  
異界の姫、魔物たちから敬愛されているようだ。  
「揃ってるか?」  
万を越える魔物を前にしても、小夜子は何ひとつ怯えてはいなかった。  
それどころか、王の貫禄と威厳を見せ、人々が恐れる魔物を物の見事に  
統べている。そして、何の前置きもなく、こう言った。  
「祭りに行っちゃ、ダメ!以上!」  
その途端、ええ!という無念の叫びが、魔物たちから漏れた。ある者は  
地団駄を踏み、狐狸の類は大げさに哭いてみせる。その様は、まるで  
学級会で騒ぐ悪戯坊主の如し。  
「貴様ら、それでも魔物か!魔物としての誇りを持たぬか、ばか者め!」  
魔物たちのブーイングは、まだ続いていた。だが、小夜子とて負けては  
いない。  
「騒ぐな!貴様たち、我を誰かと思うか!恐れ多くも、異界の王、小夜子  
であるぞ!」  
ぴしゃり──と小夜子が言い放つと、魔物たちが静まった。見れば、小夜子  
の髪が逆立ち、恐ろしいまでの怒気が表れている。その姿はまさに異形の  
それで、居並ぶ魔物たちを震え上がらせるには、十分過ぎるほどの迫力だった。  
 
「は〜い・・・」  
小夜子の気迫に押され、魔物たちは次々と姿を消していく。口にする  
者こそいなかったが、誰もが不満を抱えている顔であった。  
「やれやれ・・・」  
山が再び闇に包まれると、小夜子は怒気を収め、人心地つく。異界の  
王も楽ではない──そう思いながら。しかし・・・  
「帰る・・・か・・つうッ!」  
帰途に着こうとした瞬間、小夜子は己の体の異変に気づき、その場へ  
蹲る。そして、魔物と人間の間に生まれた事を呪い、毒づき始めた。  
「う、疼く・・・体が・・・くそッ・・・魔物の血が・・・騒ぐッ!」  
がたがたと体を震わせ、小夜子は夜空を見上げた。彼女の中に流れる  
魔物の血──それが、先ほど怒気を見せた事で、奮い立っているのだ。  
「ああ・・・アソコが・・痺れるゥッ・・・」  
巫女服の袴を掻き分け、女を指でさぐるとはしたない蜜が溢れている事に  
気づく。まだ、性毛すら生えていない恥丘がぱっくりと割れ、淫らに色づい  
た女肉が顔をのぞかせ、泣いているのだ。  
「ゆ、指が・・・」  
勝手に──その言葉を押しとどめ、小夜子は自らの女を慰め始める。  
幼いながらもしっとりと濡れそぼったそこは、何かを求めるように口を開け、  
切ない疼きを癒して欲しいと叫ぶのであった。  
 
小夜子は、適当な木の幹に股間を擦りつけ、まるで畜生の如く腰を  
振りつけていた。幹から出た小ぶりな枝を女へあてがい、淫ら極まる  
自慰に酔い、しくしくと涙を零している。  
「あッ・・・ああッ!」  
枝の感触が滑らかな事を幸いに、小夜子は無垢な体を快楽に任せ  
た。枝が男根を模し、疼く女を慰めてくれる事が、至福にも思える。  
「何で・・・こんな事を・・アウッ・・・」  
猛々しい魔界の血が、か弱い人間の身を併せ持つ自分を責めるのは、  
本能の部分で感じていた小夜子。しかし、時を経るにつれ、どんどん  
淫蕩になっていく事が、少女の身には恐ろしくて仕方がなかった。  
「アソコがじんじんするよう・・・誰か、助けて・・」  
幼さゆえ、小夜子は女を満たす男根の存在を知らない。しかも、異界の  
王という立場もあって、この情欲を発散させる術を誰かに尋ねる事も  
出来ないのだ。と、その時──  
「あれ?姫さま・・・」  
闇を裂き、のっそりと山男のサンザが現れた。彼は、主が魔物たちを  
ちゃんと言い聞かせられるかが心配で、ここへ馳せ参じたらしい。  
 
「ああ、サンザ・・・見ないでくれ」  
木の枝に尻を擦りつけ、腰を振る姿が惨めな事は、小夜子にも理解  
出来ている。だが、そのあさましい行為がやめられないのだ。まして、  
魔物を統べる王たる自分が、畜生のような格好でいる事は、狂ってし  
まいそうなほど、恥ずかしい。そんな逡巡が、小夜子を惑わせていた。  
「物狂いですか。姫さま、こちらへ」  
事情を察したサンザが小夜子を抱える。魔物の血が、少女の人間の  
部分を侵し、狂わせている事がこの山男にはすぐ分かった。  
「い、いやじゃ・・・もっと、こうしていたい・・」  
尻を丸出しにしたまま、サンザに抱えられた小夜子は目を蕩けさせ、  
恥ずべき行為を続けたいと願う。しかし、ここでそんな事をすれば、他の  
魔物に見られないとも限らない。だから、サンザは走った。  
「姫さま、少々のご辛抱を」  
あふん、と甘く鼻を鳴らす小夜子を見て、異形の業深さを思うサンザ。  
そして、山間をムササビの如く駆け、向かった先は小さな泉であった。  
 
「姫さま、体の火照りはここで癒しなされ」  
泉のふちに小夜子を立たせ、サンザが退がった。小夜子はまだ、夢遊病  
者のようにふらつき、自らの女へ指を突きこもうとしている。  
 
ピイッ──とサンザが指笛を噴くと、泉の水面が泡立った。そして、泡の  
中から何やらイゾギンチャクさながらの姿を持つ、魔界の植物が現れる。  
「グ・・・ゴゴ・・・」  
魔界の植物は知性を持ち得ないらしく、唸り声しか上げていない。だが、  
おぞましきはその風体。太さの異なった何百本という触手で天を突き、泉  
の淵に立っている少女を見やり、ゆっくりと体を揺らす、その姿である。  
「あ・・・こ、これ・・は・・なに・・・?」  
半目になり、今だ股間を弄る小夜子へ、魔界の植物が覆い被さっていく。  
うねる触手が体を持ち上げた時、小夜子は少しだけ驚きを見せたが、疼く  
女に気を取られているためか、逃げようとはしなかった。  
「肉食ではありませんので、ご安心を」  
イソギンチャクに酷似した魔界の植物が、頂点にある口と思しき部分へ、  
小夜子を跨らせた時、サンザは泉のほとりへ陣取る。  
(忍びないが)  
触手が小夜子の足を取り、口の部分が女へと吸い付いていた。魔界の植物  
は肉食でこそないが、動物の分泌液を好み、激しく吸うという習性をサンザは  
熟知している。それが、今の小夜子にとって、何を意味するのか──  
 
「ああーッ・・・・・」  
がくん、と小夜子の体が弾む。しかも、目を剥いて唇を震わせ、顔面蒼白  
という様相を見せている。  
「始まったか」  
サンザは、泉のほとりを動こうとはしなかった。小夜子が、魔界の植物に  
襲われているというのに。  
「あーッ!あーッ!」  
哀れにも、小夜子は両足を触手によって水平に近い状態まで広げられ、  
女の部分へ別の触手を迎えていた。細く、妖しいぬめりを持った責め具が、  
少女の女をこじ開け、悲鳴を上げさせていたのである。  
「姫さま・・・」  
サンザが見てるうちに、小夜子の体はすっかりと触手に覆われ、今や完全な  
囚われ人と化していた。まだ膨らみを持たぬ乳房を這う触手は、母乳を授ける  
乳腺を求めるように乳首へと絡みつき、容赦なく絞り上げる。  
「キャーッ・・・」  
驚嘆の連続。小夜子は乳首を締め上げられ、泣き叫ぶ。何と言っても、人間の  
年齢で言えばまだ十歳なのだ。しかし、魔界の植物に少女を慮る気配は無い。  
彼の者が最も好む分泌液──それが滴る場所を全て蹂躙し、甘露を味わい  
尽くすまでは、決して小夜子は解放されないであろう。  
 
「う・・・あ・・ああ・・・あ・・あ・」  
小夜子が逆さ釣りにされ、女を責められていた。触手は分泌液を吸うために、  
小さな吸盤をいくつも供えている。それを使って、魔界の植物は少女の女を  
穿っていた。その間、小夜子はうめきを漏らすだけで、大した抗いは見せて  
いない。もっとも、抗った所で数え切れない触手に戒められていては、自由に  
なる事は不可能だった。  
「お・・・お尻の・・穴・・が・・ひいッ・・・やめ・・て」  
触手が小夜子の肛門内へ侵入した。そこは、最も臭いが強い場所ゆえに、  
触手の容赦ない責めを一身に背負う事となる。  
「ひ・・・ぎいッ!うわあッ!うああッ!」  
釣り上げられた海老のように、小夜子が仰け反った。仰け反り、足をばたつか  
せては正気と狂気の狭間を行き交っている。その様はまさに悶絶という表現が  
相応しく、哀れな異形の業をまざまざと見せ付けていた。  
 
「姫さま、おかわいそうに」  
サンザが微動だにせず、一部始終を見守っている。主である小夜子が魔界の  
植物に犯される様は何とも忌まわしく、また、淫らでもあった。しかし、こうしなけ  
れば、小夜子の業は癒されないのである。魔物と人の間に生まれた、危うい  
バランスの結晶、小夜子に課せられた、悲しい性は・・・  
 
泉に静寂が戻っていた。魔界の植物はすでに姿を消し、そこには  
犯され抜かれた小夜子が、仰向けにぷかりと浮かんでいるだけ。  
「姫さま」  
サンザが小夜子に近寄ると、彼女自身の性臭と触手が零した粘液  
の臭みが鼻を抜けていった。そして、幼い少女の恥穴から漏らされた、  
様々な異臭も。  
「良かった。物狂いはおさまったようだ」  
小夜子が人心地ついているのを見て、サンザは安堵する。植物に嬲  
られはしたが、魔の血がもたらす淫靡な疼きは影を潜めていた。  
「・・・サンザ・・・迷惑をかけたな」  
泉に浮かんでいる小夜子にも、正気が戻っている。だが、全身に至る  
触手の感触は、今だ生々しく残っており、身動きが取れそうにない。  
小夜子は震える手をサンザへ差し出し、済まなそうに目を細めた。  
すると・・・  
「いいのです。これが、私の使命と心得、姫さまと共に業を背負って  
参ります」  
山男のサンザは出された手をしっかりと握り、小夜子の体を抱いた。  
「帰りましょう、姫さま」  
「うん」  
ふっさりと柔らかな山男の体毛を素肌に感じたとき、小夜子はふと、  
揺りかごにでも揺られているような気持ちとなる。そして、魔界の闇  
が案外温かな事に気づきながら、軽い睡魔に襲われ、眠りについた  
のであった。  
 
 
翌朝、魔界では緊急の通達が行われた。その内容は、以下の如く。  
 
『麓の祭りに参加する事を許可する  但し、すべからく人間の姿に  
化けていく事。  草々 小夜子』  
 
それを聞いた魔物たちが、飛び上がって喜んだ事は言うまでも  
無い。元々、魔物とは人間の因果が生んだ物。だから、祭りが好  
きでも致し方ないと、小夜子は譲ったのである。そして、お社では・・・  
 
「サンザ、飯にしよう」  
「はい、姫さま」  
と、いつもながらの朝餉の風景があった。勿論、小夜子とサンザの  
差し向かいで。  
「飯をよそってやる。椀を寄越せ」  
「申し訳ありません、姫さま」  
小夜子がおひつから飯をよそい、サンザがうやうやしく受け取る。そ  
んなほのぼのとした光景は、いつまでも変わらないようだ。最後に、  
巷では今日もこんな噂話が飛んでいる事を追記し、おしまい。  
 
『山奥に、けだもの姫なる少女がいて、魔物を統べているそうな』  
 

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