「どうしたんですか? 先生」  
「なっ…何でもありません」  
 
京介が素知らぬ顔で声を掛けると、松本もいつも通りの毅然とした声で返事を返す。  
 
「ええと……どこが分からないんだったかしら?」  
「はい、ここなんですけどー」  
 
(ふふ、上手くいった……)  
 
京介は教科書を見ている振りをしながら、視覚を蛇紐のものへと切り替える。  
 
(………………これが……)  
 
生まれて初めて目にする女性の下着の向こう側。  
そこは黒々とした陰毛がびっしりと茂っていた。  
 
(松本先生のここ、随分毛深いな……)  
 
蛇紐の頭を動かして周囲を見回すと、下腹部の辺りから腿の付根辺りまでが縮れた毛で覆われていた。  
下着をちょっとずらせば直ぐにでも陰毛がはみ出してしまいそうである。  
 
(手入れとかしてないのかな? やっぱり性格がキツイから男が寄りつかないのか……)  
 
おせっかいな心配をしながら京介は蛇紐を更に奥へと這い進ませる。  
下着の中の恥毛の茂みは汗で蒸れ、その強烈な熱気と湿り気は、あの沖縄の熱帯雨林を連想させた。  
少し蛇紐を進ませると……何やら陰毛で覆われた出っ張りに先端が触れた。  
 
「…ふぁっ!」  
 
その瞬間、松本の身体がビクン、と震えた。  
 
 
(……これってひょっとしてクリトリスってやつ?)  
「ぁふっ……で、ですから、この正弦関数は辺BCを辺CAで割れば出てくるので……」  
(ちょっと突付いてみるか)  
「それでこの…んっ! せ、正接関数はぅぁっ! 正接関数÷よ、よっ…よ、余弦関数で……」  
 
包皮からはみ出た突起の先端を蛇紐の頭でツンツンと突付く度に、  
三角関数の定義を淡々と説く低い声の中に甲高い甘えた嬌声が入り混じる。  
 
(ひょっとして先生感じてんのかな…?)  
 
京介は視覚を自分の眼に戻し、すぐ横に立っている松本の顔を覗き見る。  
眉間に皺を寄せた厳しい表情はいつも通りだが、白い頬はピンク色に染まり、  
額には汗の粒が幾つか浮いて見える。   
 
「もっ、求められるわけです。それでその……」  
 
息に乱れが出てきた松本。  
彼女の下着の中に入り込んだ蛇は更に奥へと潜入を続けていく。  
 
蛇紐がクリトリスがあった位置から僅かに下へ進むと、  
陰毛のない、ピンク色の肉が剥き出しになっている谷間に突き当たった。  
 
(これが松本先生の……)  
 
割れ目からは赤く色づいた花びらが僅かにはみ出していた。  
そこから蛇紐の先端をぐいぐいと押し付け、頭を割れ目の奥へねじ込ませる。  
 
「その逆数になるのがよ…おふっ! 余割関数で……んっ! んふぅ…ふっ…」  
 
割れ目の奥のピンク色の肉ひだはヌメヌメとした粘液で潤っていて、  
蛇紐が身をよじる度にヒクヒクと動き、同時に松本の説明があえぎ声で止まった。  
 
くぱぁ、と蛇紐は口を開いて大きく息を吸い込み、  
口の中にある嗅覚細胞に、松本の股間にこもった蒸れた空気を送り込んだ。  
……汗臭いのにどこか甘ったるいような独特の匂いが京介の嗅覚をくすぐる。  
初めて嗅いだ生々しい女の匂いは強烈に股間を刺激した。  
 
「こっ…これは1÷正弦関数で求められるわけです……。分かりましたか?」  
 
だが、それより何よりこの取り澄ました顔の女教師の股間に  
あんなイヤらしいものが付いているという事実。  
そのギャップが一番、京介の官能を揺さぶった。  
 
「……はい、先生。よく分かりました」  
「そ、そう……それじゃあ私はこれで……」  
「あの、先生。余割関数については分かったんですけど  
 ここの正割関数と単位円内のXとの関係についても教えて欲しいんですが」  
「…………………あ、ああ……それはね……」  
 
 
松本を足止めして、下着の中の蛇紐は更に下へと進む。  
たっぷりと肉の詰まった大きな尻の感触を楽しみながら蛇紐を這い回させると、  
お目当ての、ピンク色の蕾の前へ辿り着いた。  
 
 
「えー……まず、ここのXというのは余弦関数になるわけで……」  
 
蛇紐の先端から細長い舌を出して、目の前の肛門をペロっと舐め上げる。  
 
「だからこれを二乗する…んむっ! …んん…二乗すると……」  
 
こちらの穴は特に味も匂いなかった。汚れも見当たらないし、清潔にしているようである。  
肛門の皺一本一本に沿って、平たい舌をチロチロと這わせると、身悶えるようにヒクヒク収縮する。  
 
「…………とっ……と、いうふうになるわけで……んぁっ……ここのYが…ぁぁっ…」  
 
京介は蛇紐の先端を肛門にぐいぐいと押し当てて、舌を肛門内部へと潜り込ませた。  
皺のある入り口と違って、内側はヌルついた粘膜の舌触りだ。  
 
「せ、正弦関数にんぃぃいいっ……なるからぁっ! あ、あぅっ……」  
「………………………………………………」  
 
 
京介は視覚を自分に戻し、数十人の生徒がいる教室内で肛門を舐め回されながら  
懸命に授業を続けようとする女教師の顔をじっくりと間近で視姦した。  
眉間に皺を寄せた険しい表情は、一見すると普段の生徒を威圧する顔と同じように見えるが、  
その瞳は涙で潤み、頬は湯気が立ち上りそうなほど真っ赤に上気し、所々に玉のような汗が付着している。  
二十代後半の女が快感と羞恥に身悶える表情は実に色っぽく、今すぐにでも押し倒して  
その半開きの赤い唇にディープキスをしたいという衝動に駆られるほどだ。  
勿論、流石にそんなことは出来ないが。  
 
 
「だ、だ、だから……1÷Xが正割関数の値になる……わけです」  
「ええ、とてもよく分かりました」  
 
京介は蛇紐の動きを止め、上目遣いで傍らの松本にニッコリと微笑む。  
 
「先生って僕が質問するとちゃんと理解できるようになるまで親身になって教えてくれますよね。  
 僕、先生のそういうところ、凄く尊敬してます」  
「え……」  
 
京介が敬愛の意を伝えると、松本は頬に手を当ててモジモジと身をよじった。  
先程までの、快感に震えていたときとは又違った恥じらい方だ。  
 
「そ、そう……どうもありがとう……」  
 
松本は生徒に対してひたすら厳しく当たるばかりで、そのため教え子からの人気は殆どない。  
こんな風に生徒から誉められたことは、ひょっとしたら初めてなのかもしれない。  
嬉しいんだけど、どうリアクションしていいか分からないといった印象を受ける。  
 
(いやぁ、松本先生がこんな可愛い顔するなんてなあ)  
 
「それじゃあ私はこれで……」  
「あの、先生」  
「なっ…何?」  
「すいません、問26と問27もよく分からないんで教えて欲しいんですが」  
「…………………………………ぅ………」  
 
股間の蛇が再び律動を開始した。  
 
 
「だ、だっ…んあっ……だからこのユークリッド空間R2における…………んんんっ!」  
 
松本は途切れ途切れになりながらも必死で説明を続ける。  
 
「単位円 x2 + y2 = 1 上で……えふぁっ! あ、あぁぁあっ……あんっ、ん……」  
 
現在、蛇紐は陰唇の方へと戻っていた。  
先端は、いつの間にかすっかり勃起したクリトリスを突付きながら舌でくすぐるように舐めまわし、  
胴体は割れ目にそって押し当てられ、ぐにぐにとその細長いからだを擦り付けていた。  
愛液が溢れるたびに蛇紐の動きは激しさを増していく。  
 
 
「こっ、ここの……ああっ! …ここの点がね……あっ…あっあっあっ!!」  
 
何とか松本は生徒の疑問を払拭しようと、正体不明の悦楽に耐えて説明を続けていた。  
だが――――どうやらそれも限界らしい。  
 
「あっああぁああぁああっ!! あ、は、はぁぁぁっ……はっ、あふぅっ! ……はっ、はあ……」  
 
もう言語を発することは出来ず、松本は言葉にならない喘ぎを漏らすばかり。  
両手を京介の机に付いてガクガクと膝を震わせながら、松本は授業中の教室内で愛液を垂れ流していた。  
汗と涎が雫となって机に落ち、熱い吐息が目の前にある京介の頬をくすぐった。  
 
「……先生どうかしたの?」  
「何か具合悪そうだけど……」  
 
ここまでくると、近くにいる他の生徒たちも松本の異変に気づいたようだ。  
余所見をしているといつものように怒られるかもしれないので、チラチラと横目で様子を伺っている。  
 
「……どうしたんですか先生! 具合でも悪いんですか!?」  
 
京介はわざと教室内に響き渡るような声で松本に話しかけた。  
その声に反応して、遠くの席の生徒までもが松本の方へ顔を向ける。  
 
「な……は、はぁ……な、何でも……」  
 
もう会話もままならない様子の松本の耳元に、京介はそっと口を寄せ、  
 
 
「………………“みんな、見てますよ”」  
 
「――――――――――――っ!!」  
 
そう囁いた瞬間、快感に流されかけていた雌の顔が  
一瞬にして教師のそれへと変わる。  
 
「な―――何でもありません!」  
 
 
すくっと立ち上がり、教室内の全生徒に向けて告げる。  
 
「みんな練習問題に戻りな……」  
 
 
そう、松本が言いかけた瞬間、  
 
 
 『かぷっ』  
 
と、蛇紐がクリトリスに噛み付いた。  
 
 
 
「―――――ンはぁあああああああああああああぁあああっ!!」  
 
 
それがとどめとなった。  
松本は生徒みんなが自分の方に目を向けた瞬間に思いっきり声を上げて絶頂に達した。  
 
「あ………あ、ああ……あ…」  
 
松本は腰が抜けたように床にへたり込んで、ビクビクと身体を震わせている。  
 
 
(…………………………)  
 
ザワつく教室内でただ一人、京介だけは顔に笑みを浮かべて  
震える松本の痴態を眺めていた。  
 
 
 
「……なー、さっきの松本のアレって何だったんだ?」  
 
あれから後、  
授業終了のチャイムで意識を取り戻した松本は、挨拶もそこそこに  
真っ赤な顔で教室から逃げ出すように退室して行った。  
足元がおぼつかないようで、途中何度もスッ転びそうになっていたが。  
 
「さあ、急に腹でも痛くなったんじゃねえの?」  
「盲腸とか?」  
「あれだ、持病の癪ってやつだろ」  
「なんだそりゃ時代劇かよ」  
「あれ、藤原どこに行くんだ?」  
「……ああ、ちょっとトイレ」  
 
藤原と呼ばれた少年はゆっくりと席を立った。  
 
「早く帰ってきて黒板消しとかないとまた怒られるぞー」  
「ああ……分かってるよ」  
 
(…………心配しなくても、すぐに済ませられるさ……)  
 
 
 
――――松本が腰を抜かしてへたり込んだドサクサに紛れて回収した  
愛液に塗れてベトベトになったアクリル紐を握り締めて少年は便所へと向かった。  
 
女の肌。  
女の毛。  
女の肉。  
女の声  
女の匂い。  
 
全て脳裏に焼きついている。これならすぐにでもイケるだろう。  
 
(まったく……神様に感謝しなきゃな……  
 いや、白蛇様かな……)  
 
股間をはちきれそうなほどに勃起させながら、少年は笑っていた。  
 
蛇のような笑顔だった  
 

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