夜空に星はひとつも見えなかった。  
目をつぶっているのか、開けているのかも忘れてしまうほど、  
辺りは、ひたすら暗闇につつまれている。  
久しぶりに登った寮の屋上は、相変わらず殺風景で愛想がない。  
そのぶん、遠くに輝く夜景はいっそうゴージャスに見える。  
「上原?」  
あまりの突然さに驚いて、肩が自分でも不自然なくらいに震えた。  
振り返ると、加納君だった。  
「なんだよ、お前。寮にいるんなら、送別会に顔くらい出せよ。」  
ごめん、と心の中でつぶやいて、私は視線をまた夜景に戻す。  
「明日午前10時の便なんだ。なんなら、空港まで見送りにきてくれたっていいんだぜ。お前からまだ餞別もらってないし」  
真っ暗な中でも、私は彼のいつものいたずらっぽい笑顔を鮮明にイメージできた。  
でも、あと数週間もすれば、彼の笑顔を思い出すのも困難になるのだろう。  
夜景が涙でうまく見えない。私は、うつむいて目を閉じた。  
その瞬間、何かが私の下着の中にはいってきた。  
「っあ」  
声が冷たい空気の中ではじけた。  
「ん、っあん」  
彼の胸に顔をうずめながら、わたしは、彼の指の動きに身をゆだねる。  
彼の心臓の動きが早くなる。その指の動きは、速くなったり、遅くなったりを  
繰り返す。  
「あ、あ、いや」  
彼は、指の動きをとめた。  
私は呼吸をとめる。クリトリスは、私の体の一部であることをやめて、勝手に求めている。  
「いやなの?」  
彼の静かな声。私は  
 
うっすら目を開ける。  
暗闇の中で私達の視線がぶつかった。  
私の唾液で湿った彼のシャツ。ほんの少しだけそこから顔を離して、  
冷たい風が体を、そして心をクール・ダウンしてくれるのを待った。  
「ダメ。」  
私はそう言って、彼の胸の辺りを円を描くように指でなぞる。  
クリトリスは、まだじれったそうに痺れている。  
「いやなの、って聞いたんだぜ、俺。」  
彼の人差し指が、私の下唇をスーッとさすった。  
私の唇は壊れた自動ドアみたいにぎこちなく開く。  
すると、その中に彼の指がゆっくりと侵入する。  
待ち受けていたようにして、私の舌が彼の長い指に絡みつく。  
くちゅ、ちゅば、くちゅ。  
「っはぁ」  
目を閉じながら、私はクリトリスが、熱くうずくのを感じた。  
ちゅび、くちゅ、くちゅ。  
「ん、あん」  
入れたり、抜いたりされる彼の長い指に、私は口をすぼめて吸いついた。  
シュボ、チュボ、シュボ。  
「っん、っん、っんあ」  
クリトリスが、狂ったようにジンジンしている。  
私は、我慢できなくなって、自分の指を下着に入れようと、  
 
「加納、そこにいるか?」  
階段の下から、声が響く。  
「ああ」  
「何してんだよ、主役がいないんじゃ、送別会も盛り上がんねーよ。」  
「わり、タバコ吸ってた。」  
「早く降りてこいよ、みんな待ってっから。」  
「ああ」  
 
寮長が行ってしまうと、  
彼は、私の口から指を抜いて、ほんの少しだけニコッとした。  
目だけは、笑っていないみたいだ。  
「たまには、メールしろよ」  
カン、カン、カン、と音を立てて、彼は階段を下りていった。  
登ってくる時は足音消したな、あいつ。  
 
 
相変わらず、空には星も雲も見えない。  
私は一人たたずむ。  
行き場をなくしたクリトリスは、もう殆どその熱を失っていた。  
 
Fin  
 

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