「逃げようと思っても無駄なことはわかるブヒ?
まあタネはバラしてやっても、オマエにかけた催眠の内容を全部教えてやる義理はないブヒが……
そうブヒね。仮にここから抜け出せても、知らぬうちにここに戻ってきてしまったりするかも知れないブヒ。
あるいは、帰ろうと思うと帰るべき場所を忘れてしまうかもブヒっ。
万が一帰れたり、あるいは誰かが助けに来てくれたとしても、
自分の職場にもどった途端、自分で気付かぬうちに破壊工作を行うかもねぇブヒヒ!」
ボアルがニヤニヤと豚の口の端を歪めながら言う。
言葉尻だけをとらえれば、単なるブラフという可能性も無くは無い言い方ではあるが、
実際には今口に出された暗示のうち、最低でもどれか一つ……いや恐らくは全てのものが、
俺の深層意識には既に刷り込まれてしまっているのだろう。
特に、奴らにとって邪魔者である俺達を無力化しようとするなら、
最後に挙げられた「味方による破壊工作」は一番効果的なはずだ。
「……うちの医療スタッフには心療系の技能を持つ人も居るぞ」
相手に対抗しようというよりは、わずかな希望を自分に言い聞かせるように言ってみる、が。
「へぇ、ブフフッ! それは良かったブヒねぇ。
……逆催眠をかけられそうになった時に、相手に危害を加えるようにセットされた暗示とかが無いといいブヒね?
いや、そもそもここで何をされたのか言えるんだろうかねブヒ?
口に出せない程度ならまだ良いかも知れないブヒが……相手に伝えようとした時、何が起こるかわからないブヒねぇ!?
ブーヒッヒッヒ!!!」
「……ッ」
くそ……駄目か……
「しかし……このまま帰して、オマエらの中で混乱が広がるのを眺めるのもそれはそれで良いブヒが、
やはりつまらんブヒね」
ボアルはその豚の顔に浮かぶ笑みをさらに深くして口を開く。
「せっかく捕まえたのブヒ。じっくり十分に楽しんで、楽しませて……
『お仲間』にしてあげるブヒ。『身も心も』」
言って、ボアルは手袋の指をパチンと鳴らす。手袋の中には本物の指は入ってないのに、いい音が鳴った。
鳴らした次の瞬間、再びイヤホンから甲高い音が流れ出す。豚達の鳴き声の数々が。
聞かないように……せめて意識を向けないようにしなくては、と、今更ながらどうにか精神的に抵抗しようとする俺。
だが、数十秒もしないうちに異変が起こった。
「……ん、なっ、あ……」
体が……特に股間が、熱い。呼吸が荒くなる。
……俺は、俺の体は何故か、この状況で興奮しはじめていた。
一体、どうしてだ? 確かに視界の中には全裸のピンクが居る、しかしそれに雑念を抱けるような余裕なんてない。
……いや、待てよ? 余裕云々以前に、さっきからずっと裸体を晒しているピンクに対し、
驚きこそしたものの、俺は一度も不純な想像を……例えば、ボアルを初めとする敵に陵辱されたとか……
そんな思考をかけらもしなかった……それは逆に不自然じゃないのか?
そして、今まさに、俺のものが……どんどん硬さを、増しているという、この状況ですら、
何故俺は……全裸のピンクを見ても、まだ……何も、思わない……のだろう?
それに……ピンクが、興奮の、対……象で、無い、と言……うの、なら、
今、俺は……一体、何に、対……して、こんな……
まるで全身の血液の大部分が下腹部に集中しているかのようで、そのせいなのだろうか、頭が朦朧としてきている。
興奮しているのを隠そうとしても、呼吸はふぅふぅはぁはぁと激しさを増すばかりで、
股間はどうしようもなく勃起してしまっている。
自分の痴態を目の当たりにされている屈辱に俺は歯を食いしばるが、どうしようもできない。
そんな俺を嘲るような目つきで見ていたボアルは、その視線をピンクに向けた。
「新入りくんに、お相手をしてさしあげろブヒ。
『仔豚』に『ご馳走』をふるまうブヒ。……いつものように、ね。ブヒヒッ!」
「はい、ボアル様……よろこんで」
俺の姿を見て自分も興奮したのか、頬を染めたピンクが嬉しそうな顔で、
裸を隠すこともせずゆったりと俺に歩み寄ってきた。
「
口を開けて、リーダー……あ、ううん。違ったわ、ね……
仔豚ちゃん。はい、アーンして?」
俺は豚じゃない……と言おうとしたが、彼女が俺の顎の下に触れ、軽く撫でると、
口の周りの筋肉から力が失われてしまったかのように、俺の口は勝手に開いた。
うう……俺の体には、ボアルやピンクの言う事には逆らえない、という暗示が深く染み込んでいるのだろうか。
「はい、いい仔ね。ごほうびでちゅよー」
何故か幼児言葉を使い始めた彼女は、もう片方の手で自分の胸……乳房を下から支えるように持ち上げ、
俺の顔に近付け……って、おい、まさか。
「さあ、どうぞ!」
ぎゅむぅっ、と俺の口に、乳首を押し込んできた。
「んむぐぅうっ!?」
ラッキーとか幸せとかそういう気持ちは無く、驚きと混乱ばかりで思考が埋め尽くされる。
「ん、ふっ……ほら、ちゃんと吸って! いっぱい飲まないと大きくなれないわよ!」
お前は一体何を言って……と口に出すことすらできない。
口が乳房で塞がっているだけでなく、彼女の言葉に反応するように……俺の口は彼女の乳首を吸い始めたからだ。
「んむぅぅ!?」
「はんっ、そう、そうよ。もっと……しっかりぃ!」
俺の顔はピンクの胸元に埋まるような格好になっているので、視界も塞がれていて、
彼女がどんな表情をしているのかは伺えないが、声からすると彼女は吸われることで感じているらしい。
上の前歯と下の前歯が、食い込まない程度に彼女の乳首を挟み込むと、口の中に温かくほのかに甘い液体が溢れた。
んなっ……未婚だったはずの彼女から何故これほど大量の……!?
と頭では思いつつも、俺の喉はごくごくと音を鳴らしながらその乳を飲み下す。
「んふぅっ! ぁフはぁっ……おいひっ、おいしいれしょっ……フぅっ、わたしの、ミルク。
ふぁっ、一口、飲んらら、それでもう、やみつきに……フひっ、
もう、あなたは、のみ終わゆ、まで……んブっ、くち、離せない、わよ」
よほど気持ちいいのか、彼女の息もどんどん荒くなり、鼻にかかった声は呂律が回らなくなってきたようだ。
でも、確かに……美味しい。催眠のせいか勝手に動いてしまう口や体に抵抗できず、仕方なく吸っていたが、
こんなに美味しいなら、俺の気持ちとしても、飲んでも良いかも知れない……。
などと、わずかに考えたせいか、彼女の乳を吸いたてる俺の口のペースが速くなった。
歯先で乳首を締め付けつつ、舌先で転がすように先端を刺激しながら強く吸うと、そこから噴き出す液体の量も増えてくる。
「フぅんんっ! そブ、そうよっ! ……ブぅ、一滴、残さブ、吸って、もっと、もっとすってぇ!
わらひのっ、みゆく、ぜんぶ、ぜんブ、ぜんブウウゥゥッ、飲んれぇえ!」
……ここに来て、やっと彼女の様子がおかしくなっていることに気付いたが、何が起きているのかはわからなかった。
……俺の顎の下に置かれていた彼女の手は、こんなに骨張っていただろうか。
いや、この感触は骨張っていると言うより、まるで骨そのもののような、ごつごつとした塊が当たっているような……。
……俺が顔を埋めている乳房は、大量のミルクを噴き出し続けていると言うのに、
萎むどころか、むしろどんどん膨らんでいるような気がするのは気のせいだろうか。
柔らかく弾力のある肉のボリュームは、桃色のビロードのような毛皮とあいまってなかなか肌触りが良く……
……毛皮……?
異常を感じているのに……しかも、もう既に満腹になりかけているというのに、
止めることもできず、俺の喉はぐびぐびとその乳を嚥下し続けている。
「ブゥうッ! 飲んれ!たくさん、のんれぇ……ブゴッ! たくさブのんれ、りっぱに、そだって!
たくさブゥッ、のブれ、りっぱな、りっぱな……おす、おすブたに、そらって、そだってぇぇ!
ブギヒィッ! おすブゥたに、そらって、わらひと、わらブヒと……
……交尾してぇえ!!!
こうび! こうび! こブヒ! こブヒィ! ブヒィ! ブゴブヒィ! ブゴォッ! ブヒ! ブヒィイッ!!!」
……自分からは口を離せなかったが、快楽に悶えた彼女の方が大きくよろめいて動いた。
俺の口から離れた、以前より遥かに豊満な乳房は大きく揺れ、辺りにミルクを撒き散らす。
……俺は、目の前にあるものに、驚くことすら通り越して、凍り付いていた。
今まで俺の顔を埋めていた巨大な乳房と、その下の、肥大化して大きく張り出した腹。
快楽に悶えるままにぐっしょりと濡れた下腹部からの雫は、はちきれんばかりにむっちりとした太い腿をつたって流れ、
その流れた先にある足先には本来あるべき指が無く、
代わりについた二本の硬質な何かが、床を踏むたびに硬い音を立てる。手も似たような形だ。
快楽の余韻で荒い息を吐く度に、正面に突き出した鼻がぶひぶひと音を立て、大きな耳が時折ぴくぴくと動く。
……「それ」が彼女であるとはとても思えないのだが、強いて彼女らしいところを挙げるとするならば、
髪と眼と……それから、その呼び名の通りに……
目の前の二足歩行の雌豚は、綺麗なピンク色をしていた、というくらいだろうか。