「お腹、痛い。…気持ち悪いよぉ」  
 
 ヒクっとしゃくりあげて、カスミは便座に、もう30分近く座り込んでいる。  
 小学校で習っていたし、生前に母が教えてくれていたため、生理に関する知識はあった。  
 しかし実際、突然に下腹部を激痛が襲い、太ももをつたう血を見ると、誰もいない家の  
中、カスミは軽くパニックに陥った。  
 カスミの母は、半年前に交通事故で亡くなってしまった。  
 今は父と2人きりで、小学5年生のカスミが家事を拙いながらも頑張って、家を切り盛り  
していた。  
 トイレに入る前につけていたアニメ番組は、5時のものだったから、父が帰ってくる  
までは時間が有る。  
 そろそろトイレから出て、夕飯の準備をしなくてはいけないけれど、腹痛と頭痛と  
吐き気と、細く流れる血に心が萎えて動けない。  
 「どうしよう…お母さん…―」  
 電話をして、父に助けを求めるのは、恥ずかしくてできない。  
 トイレの窓ガラスを、秋に入り急激に暗く寒くなっていった夕方の風が、ガタガタと  
揺らして、カスミは一人ぼっちの寂しさを強く感じた。  
 「…痛いよ。だれか」  
 
 『泣かないで。どうすればいいか、教えてあげるから』  
 
 トイレの中は、自分一人のはずなのに、幼い女の子の声がした。  
 「だ、れ…お、おばけ?」  
 しっかりしようと常に心がけているが、根は甘えたで小心者のカスミは、小さく震えて  
きょろきょろと周りを見回しながら怯えた。  
 『大丈夫、落ち着いて。洗面台の下に、生理用ナブキンがあるから、使ってみてね。  
それから…』  
 幼い声は、的確な指示をテキパキと出し、カスミを落ち着かせようとした。  
 聞き覚えのない声なのに、何故か懐かしくて安心できるような気がする。  
 「…痛み止めは、なにか食べてから飲んで、それで」  
 「あなた、誰?」  
 声に従いながらも、カスミの胸を様々な疑問が埋めていく。  
 (お母さんなの?)  
 幼い高い女の子の声が、朗らかに答える。  
 『私は、貴方の…―』  
 
 
 
 ――14年後  
 
 披露宴は、こじんまりとしたイタリアンレストランで、少人数ながらもアットホームな  
雰囲気で行われた。  
 新婦の北里カスミは、新郎の斉藤直人と共に、手にしたキャンドルで、各テーブルに  
火を灯していった。暖かな火と共に、席に着く親族や、友人や、同僚や、上司の笑顔が、  
身寄りの縁に恵まれなかった二人を優しく包む。  
 やっと壇上に戻ったカスミと直人は、皆に心から感謝のお辞儀をして、席に着いた。  
 
 白いレースのヴェールが、カスミの艶のあるボブの黒髪をふちどり、白い肌と、  
ピンク色の唇に、大きな目の彼女の顔は、清純な美しさに満ちていた。  
 身長155センチと小柄ながら、豊かな胸と、きゅっと締まったウェストが、  
シンプルな純白のウェディングドレスに引き立ち、まるで人形のようだった。  
 対して直人は、身長は175センチと、まあ少し高めで、体つきもごく普通。  
 顔はボサッとした眉毛と垂れた目が、眉毛犬っぽいと昔から皆に言われるくらいだ。  
 直人は、姿形だけでなく心も優しく美しいカスミを、平凡な自分がライバルを跳ね  
除けて、妻にすることが出来て、直人の胸は喜びで一杯だった。  
   
 (今日から2人で、新しく家族を作るんだ…)  
 
 小学一年生の時に、両親を交通事故で亡くし、祖父母に育てられてきた。  
 祖父母の下、子どもの頃は世話をされ、そして今は自分が世話をしながら、寂しさを  
胸に秘めながらも、心穏やかに生きてきた。  
 
 (やっと君と今日、結ばれることができる)  
 
 同じ年の25歳の2人は、今時の若者には珍しく、色々とあった為か、いまだに互いに  
異性の身体を知らない。  
 テーブルの下で、直人がそっと手を伸ばし、カスミの手に触れると、カスミは前の  
招待客たちに視線を向けたまま、その手を握り返し、指輪をはめた2人の手は、けして  
離れることの無いようにと、強く握り合わされた。  
 
 
 
 「お疲れ様。」  
 
 カスミがねぎらいの言葉をかけながら、てきぱきと翌日の新婚旅行に向け、荷物を  
まとめていく。  
 「そんなに頑張らなくても大丈夫だから。…こっちにおいでよ」  
空港に近い為とったホテルの一室で、直人はベッドに腰掛けてカスミに手招きをした。  
 「…うん」  
 かすかに頬を赤らめたカスミが、直人の隣に腰掛ける。  
 直人はカスミを抱きしめて、彼女の耳まで赤くなった頬に口付けた。  
 「あっ。…あの、私…シャワー浴びてきてもいいかな?…汗かいちゃって、 ――緊張  
しちゃって」  
 カスミが身をよじり、直人の腕の中から逃げ出す。  
 「…まだ、ダメかな?」  
 初心者の直人が、緊張の面持ちで告げると、カスミは首を振った。  
 「嫌じゃない。…わ、私、初めてだから、綺麗な身体で直人さんと、結ばれたいの。」  
 こんな風に、けなげに今まで処女を守ってきてくれたカスミが、とても愛しくて、  
直人は思わず、そのまま彼女に襲い掛かりたくなったけれど、なんとか我慢した。  
 「じゃあ、俺も綺麗な身体だから、カスミが気に入ってくれるように、次にシャワー  
浴びよう」  
 にっこりとカスミが笑うと、恥ずかしそうに浴室へと姿を消す。  
 「…あ〜もう、可愛いすぎる!!」  
 直人は一人、ベッドでごろごろと転がり、のたうちまわった。  
   
 
 直人が浴室から出てくると、部屋の明かりはすべて消され、真っ暗だった。  
 「ちょっ、電気、電気…」  
 「つ、点けないで!ごめんなさい。…恥ずかしいの」  
 カスミの姿が見られないのは残念だけど、これから幾らでも機会はあると思い、直人は  
彼女の希望通りに、電気を点けずに、あちこちに身体をぶつけながら、手探りで  
ベッドまでたどり着いた。  
 そっと気配のする方に身を寄せて手を伸ばすと、触れたのは生身の肌で…  
 
 (は、ハダカだ!)  
 
 もっと直人が触れようとすると、カスミがみの虫のように、シーツを巻きつける。  
 大胆な自分を恥じているのか、掴んだカスミの肩は体温が上がって、汗ばんでいた。  
 「わ、私…直人さんが大好き。―優しくしてね」  
 直人の鼻先にあるカスミの髪から、洗い立てのシャンプーの花の香りがする。  
 カスミが直人に強くしがみつくと、ボリュームのある大きな胸が直人の胸に  
押し付けられて、股間の熱が高まり、いっそうペニスは硬くなった。  
 「カスミ…―大事にするから」  
 直人がシーツを剥ぎ取り、カスミの裸身が露わになる   
 ――が、暗すぎて、カスミの足の間が今ひとつよく分からない。  
 直人自身初心者の為、どうしようかと迷っていると…  
 
 『カスミ。電気点けないと、直人さんも真っ暗で、困っちゃうよ。』  
 
 子供の声が、暗い部屋の中に響く。  
 
 「えっ?」  
 『2人とも、初心者だから、ちゃんと相手を見ながらした方がいいいと思う』  
 「あっ!なんでもない。なんでもないから。」  
 『ほら、早く電気点けて』  
 直人がベッドサイドにあるはずのスイッチに手をやると、部屋はほのかにオレンジ色の  
ライトが点いて、明るくなった。  
 カスミが青ざめた顔で、急いでシーツに隠れようとする。  
 「さっきの声、何?」  
 「あ、あれは……」  
 『初めまして、直人さん。私カスミの…』  
 「だめぇえええ!」  
 カスミが股間を両手でしっかりと押さえて、懸命に身悶えする。  
 『…カ、スミ。自己紹介…できな、い、よぉ。くっ、苦しいってば』  
 「しなくていいから、黙っててよ!直人さんに嫌われちゃう!!」  
 「…カスミ、一体その声なんなんだ?隠さなくていいから、もう俺たち夫婦なんだから、  
話してくれよ。」  
 「嫌いになる!私のこと…ヘンだって、嫌いになっちゃう…」  
 何度も嫌われるとつぶやきながら、カスミはシーツに潜り込んで、震えながらすすり  
泣いた。  
 
 『カスミ。チェンジ。』  
 
 もう一度、子供の声が聞こえると、シーツの中のカスミは、震えが止まり動かなく  
なった。  
 「ちょっ、なんだ!なんなんだ一体!」  
 シーツを剥ぎ取ると、カスミの閉じられていた目が、ぱちりと開かれた。  
 子供のような澄んだ瞳で、初めて直人を見たような不思議な表情をして、じっと彼を  
見つめる。  
 (顔も身体も同じだけど、これは違う。カスミじゃない!)  
 直人は戸惑いながらも、このカスミから目が離せなかった。  
 「そんなに見つめられると、恥ずかしいなぁ。…私、カスミのアソコなの。よろしくね」  
 「へ?」  
 「ここ。ここだよ。」  
 カスミが、白い柔らかな巨乳を丸出しにした全裸のままで、直人の腕を掴み、自分の  
うっすらと毛の生えたあそこへと導いていく。  
 初めて触れるカスミの、女性のソコは、熱く湿っていて、花びらのような肉襞が、大事な  
穴を隠していた。  
 「……。って、ここって。」  
 
 「だから、私はカスミのここなの。よろしくお願いします」  
 にっこりと『アソコの』カスミが笑って、ぺこりと頭を下げた。  
 
 「カスミ、恥ずかしくてふざけてる?」  
 「違うよ。私はカスミのアソコだもん!最近ずっと眠ってて、カスミとお話して  
なかったから久しぶりに目が覚めて、私も驚いてるの」  
 大きな胸をプルプルと揺らしながら、拗ねたように唇を尖らせて、『あそこの』  
カスミが犬のように四つん這いになって、直人に詰め寄る。  
 (ちょっと、いや、かなりエッチなポーズなんだけど…)  
 驚きに萎えていた直人のペニスが、力を取り戻す。  
 「カスミを大事にして上げてね。とってもイイコなの!」  
 天真爛漫な笑顔で、直人の両手をとり『あそこの』カスミが、カスミの良さを延々と  
語る。  
 「…でね。カスミがお友達と一緒に、迷子の猫を探してあげてね、壁の隙間に嵌って  
動けなくなってたそのコを、見つけてあげたの」  
 「いや、え〜と、その話はカスミから聞いたことがあるけど、…カスミに代わって  
もらえないかな。彼女の口から、君のこと聞きたいんだけど。」  
 「…カスミ、今私が急に出てきちゃったせいで、貴方に嫌われちゃうって、ションボリ  
してるの。お願い!約束して、カスミのこと嫌いにならないで!」  
 真剣な眼差しで『アソコの』カスミが、直人の手をぎゅっと強く握る。  
 「…まず話がしたいんだ。カスミ、出てきて話してくれないか――驚いてるけど、そんな  
簡単に嫌いにならないよ」  
 直人からもカスミの手を強く握り返すと、彼女の目は一旦閉じられ、再び不安げに  
開かれた。  
 
 「…―ごめんなさい。直人さんに、隠し事してて。直人さんと付き合い始めてからは、  
アソコが話をすることなんて、無くなってたの。だから…」  
 「いつから、アソコが話をするようになったんだ?」  
 「…私が小学5年生で、初めて生理が来た日に…母を亡くしたばかりで、家に一人で  
パニックになって泣いていたら、大丈夫って話しかけてきたの」  
 「カスミのお母さんが、亡くなってから…」  
 「一人じゃないよ。どうすればいいか教えてあげるから、泣かないでって」  
 「……」  
 「それから、私が困ってる時や、大変な時に声が聞こえるようになったの。最初は、  
母の死が悲しすぎて、自分がおかしくなったのかと思ったけど。でも、私以外に  
アソコの声を聞いたのは、貴方が初めてよ。」  
 
 「カスミのお父さんは、知ってたの?」  
 
 カスミは、俯いたまま力なく首を振る。  
 今日の結婚式の喜びは、吹き飛んでしまったように、カスミは悄然としていた。  
 「言えなかった。不安だったけど、父は男手一つで、頑張って私を育ててくれたし、  
心配をかけたくなかった。…それに、誰かに話して気持ち悪いって言われたら、  
どうしようって怖くて。――あそこはいつも話をするわけじゃなかったし。」  
 「それで、最近は話をしなくなっていたんだね。」  
 「うん。…あの、…実は、直人さんとお付き合いするか迷ってたら、直人さんはいい人  
だから、カスミは信じなさいって言われて、お付き合いを始めたの。でも、それから急に  
あまり話さなくなったから、消えたのかと思っていたんだけど――」  
 直人は、どうして自分がオススメされたのか謎だったが、あそこの一言がきっかけで、  
社内でも人気のあったカスミと、恋人になれたのかと思うと複雑だった。  
 「…亡くなったお母さんが、君を心配してあそこになったとか…」  
 「私もそうだったら、いいなってずっと思ってるけど……聞いても、違うよって言うの」  
 直人自身、小学生の時に両親を亡くしていた。いつも寂しくて、幽霊でいいから両親が  
出てきてくれないかと、思っていたこともあった。  
 今は、さすがに大人になったし、老いた祖父母に悪い気がして、それほど両親を慕う  
気持ちも薄れたが…  
 
 『もお。2人ともお喋りの時間は、おしまいにしようよ。さっきの続き、続き!』  
 
 『アソコ』のカスミがまた話し出すが、こんな状況下ではとても初夜は迎えづらい。  
 もしセックスしている時に、直人のペニスのサイズに注文をつけたり、右の胸を揉み、  
愛撫すべしとか指導されるのは、ごめんだった。  
 たとえ童貞でなくとも、介添え人付のセックスは、露出趣味のない直人には、厳しい  
ものがある。カスミも顔が引きつって、とても甘いムードとはいかなかった。  
 
 『ねぇねぇ、しようよ、しようよ。それで、2人で家族を作るの』  
 
 2人の気も知らず、『アソコ』のカスミは、2人を何とか結び付けようとしている。  
 「あのさ、そんなに喋られると、こう……いい感じになれないんだ」  
 『……ごめんね。私、お喋りしすぎちゃったね。――うん。静かにするから、さっきの  
続きをしてね!』  
 「あ〜。……うん。お願いするよ」  
 直人は、なんとか気を取り直して、カスミの肩を掴むが、いつまた『アソコ』の  
カスミがお喋りを始めるのか、気が気じゃなかった。  
   
 カスミは顔が強張っていたが、このままではいけないと思ったのか、直人に意を決した  
様子で話しかけてきた。  
 
 「…私、違う部屋を取るから。それで、…それで、明日これからの事、話しましょう。」  
 
 「そんな!俺は、俺、気にしないよ。ここで、一緒に眠ろう!…何もしないから、  
せっかく今日一緒になれたんだから。」  
 「何かしても、いいの。直人さんが、気持ち悪くなければ…」  
 「カスミ…」  
 オレンジ色の室内灯のぼんやりとした光に照らされ、カスミのシーツに隠された身体の  
ラインがくっきりと見える。  
 
 「気持ち悪くなかったら…―わ、私を抱いて下さい。」  
 
 カスミが身に着けていたシーツをはがし、直人の眼前にまぶしいばかりに美しい裸身が、  
晒される。カスミの白い身体は再び汗ばみながらも、緊張で震えていた。  
 アソコは約束どおり口を開かず、新婚の二人の部屋は、底に熱い興奮や緊張や恐れを  
秘めながらも、沈黙がおちていた。  
 「カスミ。無理をしなくていいんだ。」  
 「無理なんて!私、心から好きになった人に処女をあげたくて、今日まで大事にしてきたの。」  
 カスミは、今日という日まで、25年の間、大事に貞操を守ってきたのだ。  
 愛する人と1つになりたいという気持ちは、秘密がばれて嫌われるかもしれないという恐れ  
と共に、強く彼女の胸のうちにあった。  
 (…直人さんに、嫌われたくない。――好きだから、大好きだから。)  
 カスミの目から、涙がこぼれ落ちた。  
 
 「…カスミ!」  
 
 直人がしっかりと、カスミを抱きしめる。  
 カスミは、直人の背中に腕を回し、力一杯抱き返した。  
 「こんなヘンな身体で、ごめんなさい。今まで言えなくて……ごめんなさい。」  
 「大丈夫だから。俺は君が好きだ。それに、アソコは俺たちを結びつけてくれたんだろ?  
じゃあきっと、悪者なんかじゃない。今もこうして静かにしてくれているし…」  
 震えて小さい声になるカスミの髪を、直人は優しく撫でた。  
 直人の胸に、頭をもたせかけていたカスミが、上を向く。  
 2人の唇が自然に重なり合い、柔らかい唇の感触に互いに陶酔する。  
おずおずと伸ばした舌を絡め合い、互いの口の中を探っていった。息が止まりそうに  
なるまで、カスミと直人は深く口づけをかわす。  
 
 
 唇が離れた時は、互いにせわしなく息を乱していた。  
 カスミの紅く濡れた唇が、小さく動く。  
 
 「…来て」  
   
 向き合って抱き合い、再び軽く唇を重ねる。  
 直人の手が、そっとカスミの胸元へとすすみ、その柔らかい乳房に優しく触れ、  
手の平で包み込んだ。  
 
 「っ!……ぁあ」  
 
 カスミが息を呑み、細い喉をのけぞらせて喘ぐ。  
 直人の指先が、ピンク色の乳首を軽く押すと、期待と緊張に尖ったソレは、乳輪を  
せばめて、愛撫をせがむようにますます堅くしこった。  
 「…ふ、…ん―あっ!……ん」  
 直人の両手が大きな胸を、タプタプと揺らして、乳首を指先でさすりあげる。  
 甘い鳴き声をあげて、カスミがだらりと下ろした手に、直人の固いモノが当たった。  
 「!!」  
 おっかなびっくりで伸ばしたカスミの手の平が、直人のペニスを握り締める。  
 「……。」  
 俯いて顔を赤くしたカスミは、そのまま手でペニスを上下にしごいた。  
 「っ、ほ、本で読んで…、きもち、いい?」  
 荒い息を吐きながらも、カスミは手の動きを止めない。  
 カスミ自身が胸への愛撫で感じすぎるたびに、細い指で作った輪が、ペニスをぎゅっと  
強く握り締めて、身体を震わせる。  
 「カスミ、カスミ好きだ…大好きだ」  
 「私、も、…あ!…そんなにしたら」  
 直人の指が、きゅっと乳首を引っ張る。乳首は濃いピンク色へと変化して、いやらしく  
形を変えて伸びた。  
 「もぅ、も…」  
 カスミがしきりに内股を擦り合わせて、もじもじとする。  
 直人が片方の手を伸ばして、カスミの股間に触れた。  
 薄い茂みを掻き分けて割れ目に指を這わせると、直人の指先に膨らんだ豆のような  
コリッとしたものが当たった。  
 
 「んっ!」  
 
 一瞬、カスミの呼吸が止まり、強張らせた身体をビクビクと震わせる。  
 肉の花弁に触れた指を、じわりじわりと染み出てきた、ヌルヌルとした液体が汚す。  
 慎ましやかに膣口を閉じながらも、花弁は男を受け入れる蜜を更に吐き出した。  
 カスミの身体から、急激に力が抜けていく。  
 「カスミ、イったの?」  
 「……」  
 伏せた睫毛を上げ、カスミの潤んだ目が、その問いに答える。  
 心も身体も愛しくて、直人が再びぎゅっと抱きしめると、カスミは嬉しそうに、  
微笑んだ。  
 
 「カスミ。…アソコを舐めさせて」  
 
 直人が顔を、カスミの下半身に寄せながら囁く。  
 「そ、それは…」  
 カスミが迷うように、足をぴったりと閉じ合わせる。  
 「約束したよ。もう隠し事は無しだって。大丈夫。アソコもお喋りしてないだろ?」  
 「う…ん」  
 直人がカスミの太ももに手をかけ、ゆっくりと両足を開いて、足の付け根を晒させる。  
 …クチュ。  
 先ほどの余韻のためか、カスミの蜜が開かれた足の間で滴り落ちる。  
 「や!やっぱり、見ちゃ…」  
 羞恥で身体を紅く染めたカスミが、急いで足を閉じようとした。  
 
 直人が力を入れて、そうはさせまいと、カスミのアソコに顔を近づけ、そっとキスを  
した。  
 「可愛い。こんな事するの、俺が初めてだね。…大丈夫。アソコに顔とかついてないよ」  
 「ゃあ、…ば、ばか…」  
 消え入るような小さな声で、カスミが悪態をつく。  
 そんなカスミが、とても…  
 (愛しい。全部、俺の、俺だけのものにしてしまいたい。)  
 直人の心の中に、例えこれから何があろうとも、カスミを絶対に守ってやろうという  
決意が、今までになく溢れる。  
 こんな風に誰かを大事に思えば、ただの平凡な一人の男である自分でも、無限に力が  
湧き上がってくるようだった。  
 
 「…カスミ、全部好きだ。ずっとこれからは、一緒だ」  
 
 何度も何度も、カスミのアソコにキスをして、舐めまわした。  
 小指を一本だけ濡れた膣の入口に這わせると、ぬるりと飲み込まれていく。  
 その指をゆっくりと動かし、中の強張りをほぐす。  
 次に、人差し指、中指。  
増やされる指を、キュウキュウと締付けながら、カスミの膣の中は滑りを増して、  
直人と一つになる瞬間を迎えようとしていた。  
 
 「…っ!わ、たし、…直人さん、すき…―だ、から、わたし…を、全部、みて」  
 
 「カスミ!」  
 
 「…もう、1つに、…なりたい…」  
 
 直人はもうそれ以上我慢できずに、カスミの入口に亀頭をあてがう。  
 …ぬちゅ。  
 反った亀頭が滑り、カスミのクリトリスに触れて、彼女の身体が電気が走ったように、  
ビクビクと震え、挿入を促すように腰を直人に押し付けてきた。  
 ゆっくりとペニスが狭い道を穿ち、自分の形に馴染ませるように、推し進めていく。  
 
 「は!…ぁ…―っ!」  
 
 カスミが苦しげに、口だけで息をする。  
 眉間にしわがより、きつく閉じた目尻にうっすらと涙が浮かんだ。  
 (い、痛い…アソコが、拡がって、お腹が痛い…)    
 そっとカスミが目を開けると、直人は目を閉じ、アソコの狭さが苦しいのか、先程の  
自分のように眉間にしわをよせていた。  
 (あ、…直人さんも、苦しい…の?身体が緊張してるから?)  
 「カスミ、もう少し力抜いて、深呼吸してみよう。ちょっと…きつくて。」  
 「う、うん。」  
 直人を身体の中に収めたまま、カスミはゆっくりと何度か深呼吸をする。  
 再び上を向くと、重なる直人まで、目を閉じたまま深呼吸を繰り返していた。  
何だかソレがおかしくて、カスミの身体から力がすっと抜け、直人を根元まで迎え  
入れる事がやっと出来た。  
 
 「―全部、入ったね。」  
 「うん。直人さんが、全部私の中に、入っちゃった。」  
 2人とも頬を紅潮させ、うっすらと汗ばんでいる。  
 
 額をこつんと当てて、笑顔で1つになった感触をじっくりと2人で味わう。  
 それは苦痛を伴っているけれど、カスミにも直人にとっても、なにより幸福な時間だった。  
 
 「動くとすぐに出そうだな。…あっ!ごめん!俺、ゴムつけるの忘れた」  
 「いいの。…記念すべき最初なんだもん。―大好き」  
 カスミの言葉を合図にするように、ゆっくりと直人が腰を動かし始める。  
 緊張で滑りが少ないためか、ヒダヒダがペニスを全体的にきつく締め上げる。  
 少しでもカスミが楽になればと、揺れるカスミの大きな胸を優しく掴んで、乳首を  
ペロペロと嘗め回し、甘噛みした。  
 「あ!…ふ…―ん、んっ」  
 まだ痛むのか、苦しげに眉を寄せながらも、胸の愛撫に感じて、甘い泣き声が漏れ始める。  
 「ん、ん…そんなに、吸っちゃ、や…あ」  
 懸命にカスミが背中に縋りつき、直人の腰の動きが激しくなる。  
 「や、や、…たっ。もう、拡がっちゃうっ」  
 生理的な現象で、カスミの苦痛に係わらず、アソコからは出し入れの度にクチュクチュ  
と水音がする。  
 
 「ごめん。もう!」  
 
 直人がこれでもかと、カスミの奥にペニスを突き上げる。  
 カスミの襞が、痛みと、強い恥骨が当たる衝撃に、ペニスをぎゅっと絞った。  
 熱い精液が、処女地をビュクビュクと汚していき、カスミが悲鳴をあげる。  
 「痛、…―っ!」  
 「うっ!」   
 直人は腰を深くすりつけ、たっぷりとカスミの膣の中に、吐き出した。  
 
 ぐったりとしたカスミの上で、更に精根尽きたように直人がぐったりとしていた。  
 「重いよな。…最後、痛がってたのに、ごめん。」  
 横に転がると、背後からカスミを裸で汗まみれのまま、抱きしめた。  
 「へ、平気。私、…直人さんと1つになっちゃった」  
 抱きしめる直人の腕を、下からほっそりとしたカスミの腕が抱く。  
 カスミの項に、汗で髪が張り付く。  
 「汗でべたべたして、気持ち悪い?」  
 「ううん。もう少し、こうしていたい。」  
 どちらかといえば、潔癖な傾向のある2人だったけれど、愛し合った後の互いの  
身体の熱や吐息がくすぐったくて、気持ちよかった。  
 
 力を失ったペニスが、カスミの中から抜け落ちる。  
 「んっ…」  
 カスミが身体を震わせ、互いの腕を解いて下を見ると、シーツを精液と処女の証の  
赤い血が、うっすらと汚していた。  
 「血が…染み抜きしたほうが、いいかな?」  
 「俺も手伝うよ。でも、もう少しだけ」  
 向き合ってカスミと直人は、再び飽きずに抱き合う。  
 軽く唇を重ね、そのまま……力尽きて2人、眠りについてしまった。  
 
 
 夢の中なのか、世界が白い霧に包まれている。  
 直人がぼんやり目を開けると、隣のカスミの髪を誰かが撫でているようだった。  
 「だ、れだ?」  
 次第に直人の視界が、はっきりとしてくる。  
 目に映ったのは、カスミに少し似た長い黒髪の美しい女性と、アルバムで昔見せて  
もらった幼い頃のカスミによく似た可愛い少女だった。  
 
 「誰…おばけ」  
 『もう!違うよ!私たちは…』  
 『カスミ。直人さん、驚かせてごめんなさい。』  
 「あの…彼女は俺の大切な人です。貴方たちは誰なんですか?もし、彼女に何かしよう  
っていうんなら…俺が許しません。彼女を守ります!」  
 直人は早口でまくし立てると、眠ったままのカスミを引き寄せて、守るように  
抱きしめた。  
 
 『私は、北里 薫。カスミの母です。…そして、この子は、カスミの押さえつけていた  
カスミ自身の子供の心です。』  
 
 「へっ?」  
 毒気を抜かれたように、直人がポカンとしていると、彼女は更に驚くことを告げた。  
 
 『私たちが、あの、カスミのしゃべるアソコです。本当に、貴方とあの子には、…  
ごめんなさい!』  
 
 深く彼女が頭を下げると、小さなカスミもぴょこんと頭を下げる。  
 『自分を押さえつけて頑張っていた、小さなあの子が心配で、どうしても見守って  
いたくて…』  
 カスミの母の大きな目が、涙に曇る。  
 『あの子の悩みの種になって、本当に貴方たちに悪いことをしてしまった』  
 
 「でも。でもカスミは、貴方たちがいて、助けになったって言ってました!」  
 
 悲しげな二人が見ていられなくて、直人は口走ってしまう。  
 (カスミが悩んでたのも、事実だけど、でも!)  
 『…ありがとう。』  
 『お兄ちゃん、ありがとう。』  
 2人が再び、深く頭を下げた。  
 「だって、今日俺たち家族になったんだから。貴方たちも大事な家族です。だから、  
彼女にも言ってあげて下さい。いつも見ていたって。」   
 『ありがとう。でも…』  
 「カスミ、起きろ。お母さんだぞ。『アソコ』は小さい君と、お母さんだったんだ」  
 カスミの頭がグラグラ揺れる。しかし、不思議とカスミは目覚めなかった。  
 
 『ありがとう。カスミは本当に、素敵な男の人と結ばれることが出来て幸せね。でも  
もう、私は行かなくちゃいけないんです』  
   
 カスミの母は、にっこりと微笑むと、両手を上に差し伸べた。  
 ゆっくりと、2人が淡い光に包まれる。  
その身体は徐々にうっすらと透けてきて、突然消えた。  
 
 優しい声が、部屋の中に漂う。  
 
 『直人さんには、本当にどんなにお礼を言っても足りないくらい。…直人さん、姿は  
見えないけど、いつも貴方のご両親は、貴方を見守っているわ。』  
 『お兄ちゃんのお父さんとお母さんは、すごく優しい人たちだね。だから私、カスミを  
任せられるって、思ったの!』  
 
 「…父さんと母さんが…」  
 『さようなら。2人の幸せをいつも、祈っているわ』  
 『元気でね〜バイバ〜イ!』  
 
 そして、部屋には…―カスミと直人だけになった。  
 
 
 「う、ん…」  
 どんなに揺らしても目覚めなかったカスミが、目を開けてニッコリと微笑む。  
 「なんだか、いい夢を見た気がする…」  
 直人はたまらず、カスミをぎゅっと力強く抱きしめた。  
 
 「君のお母さんが、…」  
 
 「何?不思議ね。夢でお母さんが出てきて、直人さんと仲良くねって言ったの」  
 「それは…―うん。俺の今見たこと、話すよ。おかしいって思わないでくれよ」  
 「何でも話してね。私も何でも話すから。」  
 うっとりと瞼を閉じて、カスミが囁く。  
 彼女を抱きしめる直人の腕の力は強くなり、声は感情の昂ぶりに震えた。  
 
 「君は一人じゃない。いつも見守っている人達がいるよ。」  
 
 「うん。貴方もね。」  
 
 (そう。俺も、…―)  
 (俺も、父さんと母さんが見守っていてくれる…)  
 
 カスミの細い腕が、自分を抱き返す。  
 そんな事がとても嬉しくて、閉じた直人の目に涙がにじんだ。  
 
 
 
(おしまい)  
 
 

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