「明けまして」  
「きんがしんねん、がしょ〜!!」  
スッコケた。そりゃもう見事に。こけましておめでとうござい。  
「違うっ!」  
「え?新年のあいさつってこうでしょ?」  
「いや完全なる間違いってわけでもないがな、流れを読め、流れを!」  
「はーい。」  
俺はお約束を外されるのはイヤだ。だれかさんにちょっとしたトラウマももらったしな。  
まったくどんな生活してきたんだコヤツは。これくらい常識だろ?コモンセンスだろ?ハヤテだろ?  
「いやー、大先輩のゆーびんの精さんに教えてもらったもんだからさ〜。こないだお昼ご飯たかったとき。」  
「セコッ!」  
「いーじゃん、彼女けっこうお金持ちだし。…そーいえばそのとき『民営化がぁぁぁ…ゆうちょの不透明ヘソクリがあぁぁぁぁぁぁ……』とかわめいてたけど、何だったのかな?」  
「…いや、そっとしといてやれ。」  
 
§\§  
 
今日のメリーは黄色の振袖。姉の小さい頃のを送ってもらった。元々和風ないでたちなんで中々によく似合う。  
…それでも肩からショルダーホンを離さないのは、精としてのプライド故か。  
側面にミニ門松取りつけて正月をアピールしているが、そのセンスはちょっとどうかと思う。  
「さーて。正月だし事務所も休みだ。ひとつ正月らしい遊びをするとしよう。」  
「えーと、お正月らしい…っていうと帯を引っ張ってぐるぐる回って  
『あ〜れ〜お代官さま〜』ごっこ、とか?」  
「…なぜにそういう知識は豊富かな。まあそれも面白そうではあるが、今回はコレ、  
カルタ取りだ。」  
「四人合唱」  
「それはカルテット。」  
語源らしいけど。  
「じょーだんじょーだん!カルタぐらい知ってるよ〜。」  
「ホントだろうな。…二人しかいないからタイムアタックでいこう。メリー先に取るか?」  
「おっけー。負けないわよ〜!」  
ぐいっと腕まくり。…ショルダーホンが邪魔でまくれない。しぶしぶ傍らにとすんと置くメリー。  
『ショルダーホンとしてのプライド<気合』の不等式が成立した瞬間だ。  
 
「いくぞー。『そ』んなこと、おれがしるか!」  
「ん〜…あ、はいっ!」  
だこんっ!  
 
「…次『ひ』とーつ、ひいきはぜったいせず」  
「えーと…あった!」  
どごんっ!  
 
「…『わ』かさってなんだ?ふりむか」  
「これっ!」  
ずどんっ!  
 
「…『お』つかれさん」  
「…それだっ!」  
どすんっ!  
「おてつき。それは『お』んどぅるるらぎったんでぃすか、だ。」  
「何で同じ平仮名が二枚もあんのよ!?」  
「知らん。それよりな…」  
「?」  
「…いいかげんショルダーホンたたきつけて取るのやめてくれ。床が抜ける。」  
すでにメリーがたたきつけた床からは、ぷしゅうううぅ、とヤバそうな煙だか水蒸気だかが  
噴き出している。  
「あれ、カルタってこうやるんじゃなかったっけ?テレビじゃ見つけたらバシッて…」  
嗚呼、予感適中。  
「………悪いがその認識は致命的に間違ってるぞ。手でやりんしゃい手で。」  
「はーい。」  
 
§\§  
 
その後も追羽根をショルダーホンの強烈スマッシュで顔面にぶつけられたり、年賀まわりを  
メリーさん能力でやろうとするメリーを必至で引き止めたり、年賀状配達に例の郵便の精さんが  
やってきて郵政癒着の裏舞台とその甘い汁について延々とグチをメリーともども聞かされたり、  
そんなこんなで強烈に疲れる俺たちの正月は過ぎていくのだった。  
 
とべ・こんちぬえど?  
 

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