「さて……と」  
 身長測定が終わると、進藤医師はまた、すず那を診察室の中央に立たせ、自分も机の前の椅子  
に座る。それから手元の書類を繰って、何かしらぶつぶつと呟いていた。  
 その間、すず那は相変わらず上から下まで素っ裸で、研修医や学生たちの舐めるような視線にじ  
っと耐えて立ちつくしていた。  
(いつまで、こんな格好でいなきゃいけないの?)  
 俯いて唇を噛むすず那にはお構いなしで流れていく時間だけが、診察室の中を満たしている。  
「すず那さん?」  
「……は……い」  
 進藤医師に突然声をかけられ、恐る恐る顔をあげる。やっと開放されるのだ、と片隅で嬉しく思い  
ながら、彼女の次の言葉を待つ。  
「それじゃあ、尿検査をしますから、足を開いて立ってください」  
 相変わらず淡々と告げる進藤医師に、すず那は呆然と、言葉を繰り返す。  
「にょ、う、けん、さ……」  
「そう、おしっこを採取しますからね。取りやすいように足を 開いて立って頂戴」  
 
「あ、あの!」  
「なあに?」  
「その、ソレなら、今朝、とってきたものが……鞄の中に……」  
 すず那は、『おしっこ』と口に出すことが出来ず、それでもこんなところで尿を採取されてはたまら  
ないとばかりに、進藤医師に告げる。  
「ああ、そう。それじゃあまず、それを出して頂戴。確か、検便の方も渡されていた筈だけど……、 
便秘中ならそっちは期待できないわよねー?」  
「あ……はい……それは……」  
「そうよね。まあいいわ、ともかく出してくださいね。あと、紀藤さんは、集尿器と、採尿コップ、 
ゴム手袋、硝子製の採便棒を準備して。貴重なサンプルだから、どれもちゃんと滅菌済みのものを用意 
してね」  
 紀藤と呼ばれた女子学生は、軽やかに返事をして隣の部屋へ仕切越しに消えていく。すず那は今  
気付いたが、左右の診察室とこの部屋を遮っているのは、薄い壁一枚、それも職員が通行しやすい  
ように、扉と反対側には大きく通路がとってある上に、壁の上部も換気などの関係で大きく開いてい  
る。  
(も、もしかして……今までのやりとり、他の部屋にも全部……聞かれて……)  
 余りの恥ずかしさに、すず那は進藤医師が『何を』言ったのかに思いを馳せる余裕がない。顔を赤  
くしながら、バッグの中に入っている採尿用試験管が入った包みを取り出す。  
「はい、ありがとう。佐賀くん、それ、受け取って頂戴」  
「わかりました」  
 佐賀はまた、舐めるようにすず那を見、それからすず那が渡した包みを開き中をまじまじと取りだ  
して見ている。  
(やめて……そんなに見ないで……酷いよ……)  
 
 思わず目を背けた時、荷物を一杯抱えた女子学生の紀藤が現れた。  
「お待たせしました」  
「はい、お疲れさま」  
 進藤医師は労いの言葉をかけると、診察ベッドにそれらを順に並べていく。「集尿器、採尿コップ、  
ゴム手袋、硝子製の採便棒。はい、全部指示通りね」  
 満足そうに一つ一つ確認してから、改めてすず那を見やる。  
「はい、それじゃあさっきも言ったけど、足を開いて立って頂戴」  
「……え……だって……」  
 佐賀が手にしている包みと、進藤医師を交互に見やりすず那は戸惑った表情を伺わせる。  
「ほら早く。ああ、今朝のがあるから今は必要ないと思ったのね?」  
「……」  
 無言で頷くすず那に、進藤が告げた言葉は物言いこそ優しいけれど、容赦のない内容だった。  
「あのね、まず最初にはっきりさせておくけれど、あなたに排泄の自由はありません。突き詰めちゃう  
と、自由そのものがまあ無いと言えるんだけど……それはまたおいおいのこととして。あなたの排泄  
物も、あなた同様貴重なサンプルなの。薬の投与なんかで、排泄物にどんな影響が出るか、食事の  
変化でどんな影響が出るか、そういったこと逐一きちんと管理され、チェックされる。奉仕特待生とい  
うのはそういうものです」  
「そ……んな……」  
「例え投薬のない時期でも、排泄量や匂い、色などを確認しなくてはいけません。当然トイレの使用  
は認められていません」  
「嘘……ですよね?」  
「嘘をついても仕方ないわ。何度も言うようだけれど、奉仕特待生っていうのはそういうものです。し  
っかり自覚して頂戴ね」  
 
(自由……排泄の自由がない……そんな……じゃあ……どうやって……)  
 聞くに聞けない葛藤が、すず那の小さな身体を苛んだ。軽く身震いしたすず那を見て、進藤医師は笑  
いかける。  
「あら、おしっこ?丁度良いわね。さ、足を開いて。消毒するわよ」  
 違うとも言えず、言われるまますず那は足を開いた。支えるように佐賀という研修医が、すず那の後ろ  
にさりげなく回る。  
 冷たい刺激が、すず那の股間をはい回る。手袋をした進藤医師は、執拗とも思えるくらい念入りに、尿  
道とその周囲をピンセットにつままれた白い脱脂綿で拭き清めていく。  
「あ……あぁ……」  
 冷たさと刺激で、すず那は本当に尿意に襲われる。再度身震いすると、頭の上から佐賀が「ふっ」っと  
笑った声が微かに聞こえた。  
(な、なんで笑われないといけないの?私、この人嫌い……いや、信じられない……大嫌い!)  
「あらあら、そんなに震えちゃって。もう消毒はお終い。それじゃあ集尿器あてるから、ここにしてちょ 
うだいね」  
 硬いプラスチックの感触が、すず那の股間を覆い尽くす。  
(う……あ……本当にここで……しないと……?)  
 高まっていた欲求は変わらないのだが、緊張したすず那は、どうやって自分が排尿していたかが分か  
らなくなる。すず那の動揺に気付いているのかいないのか、進藤医師は学生たちに説明をしている。  
「実際にあなたたちが、採尿の手技をすることは無いけれど、患者さんや看護師に指示を出さなくてはい  
けないから、よく手順を覚えて頂戴ね。初期尿は尿道の雑菌を流す為に一旦外へ出します。採取するの  
は中間尿と言われるものです。必要な量を満たしたら、あとは普通にトイレに全て流します。……あら?  
出ないの、すず那ちゃん?」  
 
「う……で……できま……ん」  
 しゃくりあげながら、そう言った時、いきなり後ろから佐賀の手がすず那のお腹を強く押した。  
「あ……ああ……何、何するんですか……?」  
 慌てて手で遮ろうとするが、逆の手がすず那の手を上に持ち上げる。  
「折角、消毒して頂いたのに、手で触ったら不潔になる」  
「そ、そうじゃあ……あああ……なくて……」  
 すず那に返事を返しながら、佐賀の手は変わらずお腹を刺激する。  
「あら、ありがとう佐賀くん。さすが期待のホープね。ちゃんと状況が読めていて対処も的確。私の  
教え子だけあるわ」  
 進藤医師は、すず那から見れば見当違いなことを褒めているように思えて仕方がない。  
 素っ裸で両腕をつり上げられ、お腹を揉まれ、股間には女医が掲げる集尿器を当てられ、何も  
かもが初めて尽くしのすず那には殆ど拷問と思える状況だった。  
「やだ……やめて……あ……あぁ……ひあ……やだああ、押さないで、やめて……うああ……」  
 殆ど泣き叫ぶように、そう訴えた時。  
『ジョロジョロジョロ』  
 そんな音を立てて、尿道から液体が噴き出す。  
(や……止めないと……だめ……みんな見てる……)  
 しかし、一度出始めた尿をとどめることなど出来るものではない。羞恥を伴ったせいで、限界まで  
我慢してしまったすず那なら尚更だ。  
「さ、もう良いわね。検尿コップ、検尿コップ」  
 進藤医師は、驚くべき手際の良さで、すず那の股間にある集尿器と検尿コップを入れ替える。さっ  
きまでは覆われた状態だったすず那の股間だが、コップに変わったことで、放尿が後ろに立つ佐賀  
以外、全員に丸見えの状態である。  
「ああああ、見ないでください、お願い、見ないで……」  
「何言ってるの?見られるのが奉仕特待生の役割なのに」  
「だって……だって……」  
「佐賀、ちゃんと記録はとってあるから、あとでじっくり見れるぞ」  
「ああ、ありがとう」  
 よく見れば、学生か研修生の一人であろう男子が、ビデオカメラを構えてすず那を撮影している。  
 
「な……!」  
 藻掻くすず那のウエストを、佐賀が押さえつける。  
「動いたらダメですよ」  
「だ、だって……」  
「手技の一々全部、あなたは記録されるんです。諦めなさい」  
 進藤医師の代わりに、佐賀がすず那の耳元にそう囁く。  
「いや……もう許して……」  
 いつの間にかまた、コップは集尿器に持ち帰られている。コップと違って下に落ちるまで距離があ  
るぶん、とても大きな音が響く。  
(恥ずかしい……恥ずかしいよお……)  
 しょろっ……という微かな音とともに、水音は止まった。  
「はい、お疲れさま。誰かこれ、検査室に持っていって。すぐ次も行きますからって伝えてね」  
「分かりました」  
 脱力したすず那には、誰が何を言っていてもまるで耳に届かない。つり上げられた腕が痺れてき  
て、藻掻くと、やっと両手を開放される。  
「ふあ……あぁ……」  
 座り込みそうになるすず那だが、まだ全てが終わったわけではなかった。  
「さ、次は検便をするわ。旧式な方法だけど、排便そのものがないんだからしょうがないわよね」  
(け、ん……べん?)  
 音が漢字に変換されず、すず那は首を傾げる。  
「さ、すず那ちゃん、検便するわよ?」  
 軽く頬を叩かれて、すず那はようやく正気を取り戻した。  
「あ……え……何を……」  
「だから、検便よ。ほらそこに手をついてお尻をこっちに向けて」  
 進藤医師はそう言って、診察ベッドを指さす。  
「で、でき……」  
「また、出来ないって言うの?そろそろ覚えなくちゃ。出来ないは通用しないの。あなたは奉仕特待生  
なんだから」  
 しばし躊躇して立ちつくすすず那。今日、何度こうして立ちつくしただろう。心のどこかでぼんやりと  
そんなことを思う。  
 
 一人欠けているとはいえ、大勢の目が、相変わらずすず那をじっと見ている。目を伏せおずおずと、 
片手をベッドに突く。それからもう片方の手もベッドの上に置く。  
「うーん、ちょっと低いわね。背が小さいからしょうがないんだけど。お尻を突きだしてみて?」  
 要求されたポーズに戸惑い、びくっと肩を震わせる。誰も何も言わない。少しずつ、少しずつすず那  
は上体をベッドに伏せ、腰を高く尽きだした格好を取る。  
「これでもまだ低いわねー。あ、ちゃんとビデオとってね。視聴覚教材として編集し直すんだから」  
(ま、まだ撮ってるの?嘘……)  
 途端に腰が逃げる。すると厚い手が、すず那の小さいお尻を軽くぶった。  
「あっ!」  
「じっとして」  
 それは佐賀の声で、手の主も佐賀だったようだ。新たな羞恥心を掻き立てられ、なおもすず那は  
身もだえする。すかさずそこにまた、手が振り下ろされる。さっきより幾分力がこもっていた。  
「痛い!!」  
「じっとして、と言ったでしょう?」  
 佐賀は冷淡な声で、再度すず那の尻を打つ。  
「や、やめ……やめ……て」  
 喘ぎながらすず那が懇願する。  
「佐賀くん、程々にしてねー。編集難しいし。折檻はまあ、必要な時には必要だろうけど……弾みで  
患者さんまでぶったら洒落にならないわよ?」  
 進藤医師がそうからかうと、佐賀はしれっとした返事をする。  
「この子が健康だからするんです。患者さんになんてしませんよ。聞き分けのない健康な子供には  
懲らしめも必要です。彼女は自分が奉仕特待生だってこと、まだちゃんと理解してないみたいですし」  
「はいはい。それから『小さい頃は自分もそう躾られました』って続くんでしょう?君の家が厳しかった  
のは分かった、分かった。で、この踏み台、片足ずつ置けばちょっと不安定だけど、高さはいいと思うか  
ら手伝って」  
 
「分かりました」  
 手を突いていたすず那の身体がふわっと持ち上げられる。ウエストに手をかけ、軽々と持ち上げら  
れてしまったようだ。すぐさま元に戻されるが、足の位置は明らかに高くなっていて、股間からむこう  
がわの景色が逆さまに見えてしまう。  
「あ……あし、あしを……」  
「うん?」  
「と、閉じさせて……」  
 恥ずかしくてそうお願いしたすず那だが……。  
「ダメよ。検便するんだから。お尻の穴が見えなくちゃ意味ないでしょう。じっとしてないとまた、佐賀君  
にお仕置きされちゃうわよ?」  
 股間越しに見える進藤医師の顔がそう窘める。すず那は思わず目を瞑った。  
「さ、お喋りはこのくらいにしておきましょうか。硝子の棒を刺して、お尻の穴からウンチを少し掻き出し  
ます。じっとしてないと、折れちゃって大変なことになるから、我慢してね?」  
「……う……」  
「返事は?」  
 そう言って、佐賀がまた、すず那のお尻に軽い一打をうち下ろす。  
「ああ、わか、分かりました。じっとしてます……だからもう……ぶたないで、ください……」  
 屈辱で顔を赤らめつつ、すず那はやっとそう返事をする。  
「さ、口で息をして」  
 指示された通り、はあ、と大きく息を吐く。  
『ズニュっ』  
 そんな感触で、肛門から細長いものが突き立てられた。  
「あ……おし、おしりが……」  
「痛い?ちょっと我慢してね」  
 ぐにぐに、ずにゅずにゅ、直腸内を違和感が行ったり来たりする。出血してはもともこもないのだか  
ら、かなり柔らかい動きなのだが、経験のないすず那にそんなことが分かる筈もない。  
(お、お尻…そんなにかき回さないで……いや……)  
「ひっ、ひぃ……やあああ、ん……ぐぅ……うあ……」  
 何かを探っているような動きが一旦止む。そうしてずるっと引き出され、違和感が少し収まる。  
 
「うーん、腸液しかついてないわねえ。詰まってるのはもうちょっと奥かなあ?とはいえ、この子の肛  
門じゃ、まだ肛門鏡は挿入できないだろうし……。しょうがない、採便棒、新しいのを頂戴。もう1サイ  
ズ上のがあったわよね」  
「あ、はい……。でもこの子にはちょっと……」  
「うーん、大丈夫よ。今の刺激でほら、肛門はぽっかり開いてるもの。あの程度なら問題ないわ」  
「分かりました。ではこれ」  
「ありがとう」  
 ピリピリ、ペリペリ、包装を破く音がする。そうして今度は予告もなく、さっきより明らかに太いものが、すず那の肛門に侵入してきた。  
「うあぁぁ……」  
 うめいたきり、声が出なくなる。侵入物は明らかにさっきより、奥へ奥へ角度を変えて入り込み、す  
ず那は段々膝に力が入らなくなってくる。  
「うーん……幽門部はたぶん、このへんよね……ここを……」  
「ひぃ!」  
「あー、ちょっと痛いかな、ごめんね。我慢よ、我慢。普通、たかが検便でこんな大騒ぎにはならない  
んだけどねえ。あ、なんか障害物。これが便かな?どれどれ?」  
 くい、くい、ぐるぐる。肛門越しにすず那にはその動きが伝わってきて、ぞわぞわと寒気が背筋を走る。  
「あ、ああ、いや……先生……いや……いやだあ……」  
 ついに気持ち悪さに我慢出来なくなって、すず那は泣き出してしまう。涙が診察ベッドの上にかぶせら  
れた白いシーツの上にぽたぽたと落ちて行った。  
「うん、これで大丈夫そうね。さ、抜くよー。もうすぐ終わるからねえ」  
 さっきよりずっと慎重に採便棒は引き抜かれていく。  
「はい、抜けた」  
 しかし、すず那の肛門付近にある違和感はまるで無くならない。  
 
「ふ……うぅ……」  
「先生、肛門がひくひく煽動してますね。今ので排泄衝動が沸いたんじゃないですか?」  
「あら、本当ね。でも、ここで排便はまずいわ。不潔になるもの。病室まで行かないと」  
「ですよね」  
 薄目を開けると、進藤医師と佐賀が、すず那の肛門をねぶるように見ているのが分かる。すず那は  
慌ててまた目を閉じた。  
(う……うんちなんて……)  
「あの、で、出ません。し、刺激が強くて……びっくりして……だから……」  
(したいけど、こんな人たちの前でなんて絶対したくない)  
 すず那はそう思って、意識して肛門をきゅっと締めた。  
「あらそう?じゃあ、そろそろ午後の診察が始まるし、病棟に行きましょうか」  
 進藤医師は、すず那が立ち上がることを許すとそう言って、てきぱきと研修医・学生たちに何か指示  
を与えている。  
 
 
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