(ふあ……)  
 奉仕特待生として迎えた、二日目の朝。すず那は軽い尿意で目が覚めた。  
(トイレ……いかな……)  
 起きあがろうとした瞬間、自分の股間を包む物体の存在を思い出す。  
(やっぱり、ここにしなきゃ……だめ、よね……)  
 既に昨夜、二度のおむつ替えをして貰ったので、排尿すること自体には随分なれてきていた。  
だが「する」ことに馴れるのと、その心に沸き上がる羞恥心はまったく別物である。  
(う……。どうしてこんな……)  
 唇を軽く噛み締め、溜息をつきながらすず那はおむつの中に排泄する。この紙おむつは少し特  
別なようで、排尿した人間に汚れているのがちゃんと分かる仕組みになっている。だから当然、時  
間の経過とともに不快感をじんわり覚えるすず那である。  
(気持……悪い……)  
 逃げ場のない感想を漏らし、小さく溜息をついた時、看護婦の元気な声が部屋に響いた。  
「おはよう、すず那ちゃん。あらもう起きてるのねー」  
 看護婦は、何やら大きな機械をがらがらと押して、部屋に入ってくる。  
「初めまして。休み明けの深夜勤だったから昨日は挨拶出来なかったけれど、あなたの担当看護  
師で、小池と言います。小池波留香。よろしくね?」  
 スラリとした身体。長い髪をアップにした彼女は、すず那にないものばかり持っているように見え  
る。大人になったらこうなりたいと、少女達なら誰もが憧れるような……そんな人であった。  
 
「はじ、めまして。桐生すず那です……あっ、おは、おはようございます」  
 自分より強いもの、美しいもの、明らかに立場が上だと分かる存在にたいしてすず那は萎縮す  
る傾向にある。  
「あら、朝からそんなに緊張してたら、身体が持たないわよ?リラックスして、仲良くやりましょう  
ね」  
「は、はい……」  
 小池看護師が、気さくな態度をとればとるほど、すず那は緊張して頬が赤らむ。  
「さ、それじゃあ、ゆっくりお喋り出来たらいんだけれど、朝は時間がないからまた今度にしましょ  
う。検温の時間だからじっとしてね」  
 まず、すず那の口を開けさせ、体温計を銜えさせる。  
「それは舌の下に入るようにね。婦人体温計というのよ」  
 そう言いながら普通の体温計をすず那の脇に挟む。  
「で、これは皮下体温計ね。どこにでもある普通の奴だわね」  
 次にすず那の身体にかかっていた布団をめくり、おもむろにおむつカバーを外しだした。  
「ん……」  
「はい、動かない。喋らない」  
 そう窘めて、小池看護師はすず那の紙おむつをあけ足をくの字に開かせた。  
「あら、おしっこ出たのね?これは起きてからかな?それともおねしょかしら?」  
 くすっと笑って軽く陰部を持参したタオルでふく。すず那は羞恥で今にも銜えた体温計を噛み砕  
いてしまいそうな気分だった。  
 
「さ、それじゃあこれの出番。ちょっと太いから痛いかもしれないし苦しいかもしれないけど、頑張っ  
て我慢してね?」  
 そう言いながら、何やら長いコードのようなものにクリームをつけ、すず那の下半身をじっと見据  
える。  
(な、何をする……つもり……)  
 すず那の思考はそこで停止した。それが、昨日さんざん辱められた肛門へぬぷりと潜り込んだ  
からだ。  
「んー」  
 痛みに身をよじりそうになるが、動いてはいけないと言われたことを思いだし、声を軽くあげただ  
けにとどめる。そんなすず那をちらりと見て、小池看護師は淡々と説明をはじめる。  
「これはね、普通、手術の時に眠ってる患者さんの正確な体温を把握する為に使うものなの。深  
部体温というのを計るのよ。赤ちゃんなんかも体温計をここに挿して計ったりするわね。意識のあ  
る時にこれを使われるのは、奉仕特待生の子だけだと思うわ」  
 彼女がそう話しているうちに、最初に銜えさせられていた体温計が電子音を響かせる。小池看護  
師はそれを抜くと、手元の手帳に数字を書き込んでいく。  
「基礎体温、皮下体温、深部体温。毎朝必ずこの3つを計ります。深部体温は10分間継続して計  
って小さな数値の変動もほら、あの機械で記録されてプリントされる仕組みになってるの。最初に  
深部体温から測った方が、時間の節約になったかもしれないけれど、動けない状態にしておかな  
いと、すず那ちゃんは暴れてしまうって、師長さんから申し送りされていたので、許してね?明日  
からは何をされるか分かってるから、良い子で協力できるでしょ?」  
 
 さも当たり前よね、と言いたげな口調で、小池看護師はこちらを見ている。足を大きく開き、肛門  
に太く長い異物を挿入された状態で、すず那は情けなく頷くしかない。  
 その瞬間、脇に挟まれた体温計が電子音を鳴らす。手順通り数字をメモする小池看護師。すず  
那はこれで上半身は完全に自由だ。しかし、恥ずかしい姿勢のまま動くことは許されずじっとせざ  
るをえない。  
 そのうち、甘酸っぱい匂いが部屋を満たす。すず那がさっき排泄した尿の匂いだ。  
「あら、おしっこの匂いがたちのぼってきちゃったわね。くちゃくちゃい」  
 からかうように微笑むと、彼女は部屋の換気扇のスイッチを入れた。  
「排泄管理の時間までは、濡れたおむつのままでいてもらうけど、我慢してね?しょうがないよね、  
あなたは奉仕特待生なんだもの」  
 そう言って優しく髪をなぜてくれるが、すず那の心はちっとも晴れない。  
(……みんな、二言目にはそれを言うんだわ。本当のことだけれど……確かにそうなんだけれど  
……)  
 と、いつ用意して置いたのか分からないが、ストップウォッチが軽快になりだす。  
「はい、これで今朝の検温は全部おしまい。さ、抜くわよー?子供みたいなおまただから、てっき  
り、こんなの入らなくて泣き出すんじゃないかと思ったけれど……大丈夫で良かったね?えらい  
ぞ、すず那ちゃんのお尻」  
 むき出しのお尻をそう言って撫で、それからその長いチューブがずるりとすず那の肛門から引き  
抜かれた。  
 
「あ……ふぁ……やぁ……」  
 思わず声を漏らし……自分の声に驚いてすず那は顔を赤らめた。  
「あれれ、えっちな声だしてどうしたの?こんなのただの検査でしょ?」  
「や……えっちな声なんて……出してない……です」  
「そうなの?そうとは思えないけど……まあいいわ。おしめ当て直すからじっとしていてね」  
 空気に濡れて冷えた紙おむつが、すず那の股間を改めて覆う。思わずまた、おかしな声を出し  
そうになる。だが、からかわれるのが嫌で、すでに癖になってしまった唇を噛むというしぐさでじっ  
と耐えた。  
(気持ち悪い……冷たい……はず……かしい)  
 複雑な思いを味わいながら、なすがままになる。選択肢はないのだから当然ではあるが……。  
「さ、いいわ。それじゃあ起きて顔を洗って身支度を整えてしまってね」  
 そう言いながら、彼女の目はさっきまですず那の中に入っていた、チューブの先を真剣なおもも  
ちで見ている。  
(な……何をして……?)  
 声に出してそれを確認する間はなかった。さっさとそれを拭いてしまった彼女は、何やら手帳に  
記録して、にこりと微笑んだかと思うと部屋から消えてしまったからだ。  
(なんだった……んだろう?)  
 呆然としながら、気を取り直しすず那は言われた通り身支度を整え始めた。  
 
 
 身支度を整え、朝食を終える。濡れて冷えたおむつを当てているのが気持ち悪く、何度もみじろ  
ぎをしながらの食事だった。  
 当然のように、上から取り入れれば下から出さねばならない。排泄欲にかられる自分の身体を  
恨めしく思いながら、その日二度目の尿を、紙おむつの中に放出した。  
「ん…あぁ……」  
 思わず声が漏れ、慌てて周囲を見回す。勿論、そこにはすず那しかいない。部屋の隅に監視カ  
メラがあるらしいことには気付いていたが、これほどささやかな声までは拾われている筈がない。  
(あれに……全部映ってるんだわ。昨日のことも……今朝の……アレも……)  
 目を背けて溜息をつく。と、それが合図のようにまた、小池看護師が部屋にやってきた。  
「はい、お待たせ。それじゃあおしめを変えますよ。おしっこは夕べから何回したかな?」  
「……2回、です」  
「はい。2回ね。おしめ交換の度にこれから、何度お漏らししたか聞かれるからね?ちゃんと覚え  
て答えてね」  
「お、おも……ら……し……」  
「何を動揺してるの?おトイレ意外のところでおしっこやうんちをするのは、みんなお漏らしでしょ?」  
「そ、そんな……」  
 
「はいはい。先を続けますね?それで、うんちは出てないわよね?したくなったりもしなかった?」  
「……ない……です」  
「さっきの、肛門に体温計挿された時も?」  
「……はい」  
「そう……」  
 ふっと、微笑み、また手帳に書き込みをしている。すず那に横になるように指示すると、引き出  
しから新しいおむつカバーと紙おむつを取り出した。それからすず那のおむつカバーを丁寧には  
ずす。  
「さっきのを空気にさらしちゃったから、カバー外すだけでおしっこの匂いがいっぱい香っちゃうわ  
ねー」  
 相変わらず、からかうような口振りだ。だが佐賀に言われている時と違い、なぜか小池のことを  
嫌だとか嫌いだとかは思えないすず那である。  
 津村師長ほどではないが、小池看護師も手際よくすず那の股間を拭い新しいカバーを敷き、紙  
おむつをあてる。  
「本当は、天花粉をつけてあげたいところだけどね。余計なものがまざるのはサンプルとして問題  
ありなの。だから我慢してね」  
 特にすず那の返事は期待していないようだが、歌うようにそう言葉を紡いで彼女はぽんぽんと、  
軽くすずなのお腹を叩く。  
 
「うんちの出ない困ったお腹さん。すず那ちゃんのお尻からうんちを出してくださーい」  
「や、やめてください、そ、そんなこと……いわ……言わない……で……」  
「あら、何を恥ずかしがってるの?このままうんちが出ないと、とても大変な病気になっちゃうのよ?  
場合によっては死んじゃうんだから」  
 めっ、と言いながらすず那のことを軽く睨み、それからやっとすず那を開放する。  
「えっとねー、学校が始まるのはまだ数日あとだし……。回診の方はあなたに関係ないし……うん、  
今のところ、午前中は自由にしていていいわ。なんならお散歩してらっしゃい。ご用が出来たら、  
院内放送で呼び出してくれるように頼んでおいてあげる」  
 じゃあ、また明日ね。と小池看護師はすず那の髪をなで、部屋をてきぱきと後にしていった。  
(自由に……って、散歩って……この格好で?)  
 すず那は、自分の下半身を覆うおむつを見る。後にでかでかと「奉仕特待生 桐生すず那」と  
アップリケされたそのおむつカバーは、本人が望んでいなくても間違いなく人目を引くだろう。  
「……部屋で……本でも読んでよう……」  
 制服を着て出歩ける日まで、散歩はお預けにしようと羞恥心に赤くなりながら思うすず那だっ  
た……。  
 

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