「メリー クリスマース。」
ミニスカサンタの登場で、灰色がかった休憩室の重い空気も、晴れやかな明るい空気に変わった。
暗く落ち込んでいた 福地 一頼の心にも、ひとすじの陽の光が差し込む様に、その時だけは雲が晴れる想いがした。
先程まで愚痴を溢していた先輩の鈴木の顔にも、自然と笑みが溢れる。
「おお、いいねそのサンタ服。良く似合ってるよ、真理亜ちゃん。」
真理亜はその場で、クルッとターンし、今しがた鈴木に誉められたサンタ服をお披露目する。
「お店の中もクリスマスの飾り付けしたんだし、せっかくだから、サンタ服着てもいいか店長に聞いたらOKだって。借り物だから、ちょっとサイズが小さいんだけど。」
真理亜は袖を引っ張って、一回り小さい服を見せるのだが。一頼の視線はどうしても、袖の短さよりもスカート丈の短さに行ってしまう。
「良く似合ってますよ真理亜さん、お客さんもきっと喜びますよ。」
と、一頼は有りのままの感想を述べたが。
「客じゃなく、お前が喜んでるんだろ。」
と鈴木に切り返され、思わず苦笑いしてしまう。
つられて笑う真理亜の笑顔。その明るさは、一頼の失恋の痛みを、しばしの間忘れさせた。
福地 一頼 は、このレストランでアルバイトをする高校二年生。基本的には皿洗いだが、人手が足りない時はウエイターやレジ打ち、簡単な盛り付けなど、バイトの仕事は一通り何でもこなせるので、上からは重宝がられていた。
鈴木 真理亜 は、一頼より2つ年上の短大生。歳は上だが、この店でのアルバイト歴は、一頼が一年半有るのに対して真理亜まだ三ヶ月しか無く、店では後輩ということになる。
この店には鈴木という苗字が二人いるので、単に鈴木と言った場合は昔からいるフリーターの男を指し。必然的に新入りの彼女は、真理亜と名前で呼ばれる様になっていた。
「さあて、仕事すっか。
クリスマスに仕事ってのが、どうにもだりいなあ。」
と、心底気だるげに立ち上がる鈴木に対し、真理亜の声は明るく軽やかだ。
「そうですか? お店のツリーもキレイだし、楽しいじゃないですか。」
わざわざサンタの衣装を用意する程なのだから、真理亜にとってクリスマスは、やはり楽しいイベントなのだろう、と一頼は思った。
一人で鈴木のぼやきに付き合っていたら、一頼自身更に落ち込んでいただろう。真理亜の前向きな明るさに、救われる部分は大きい一頼だった。
「街中を歩けば、何処もカップルばかりというのがどうもね。
大体クリスマスってのは、元々ゲルマン人の冬至の祭だったんだろ? カップルがイチャつく日じゃねぇっつうの。」
鈴木のいう通りクリスマスは、冬の弱まった太陽の復活を願う冬至節の祭と、一度死んで復活したというキリストの伝説が結びついたものだが。鈴木の批判は、そんな宗教的なものでは無く、単なるカップルへのやっかみに他ならない。
そんな鈴木に、穏やかな口調で真理亜はいう。
「寒いからこそ、温もりを求めるんじゃないんですか? 心まで冷えきってしまったら、人は生きては行けませんから。」
その通りだと一頼は思った。鈴木の言い分にも真理亜の意見にも共感できたが、それ故に二人の会話に加わる事はできなかった。
ほんの一週間前に失恋を経験した一頼には、その話題はあまりに重く、言葉にすれば凍えかけた心は悲鳴を上げてしまう事を、一頼自身分かっていたからだ。
それでも、真理亜の言葉は一頼にとって救いだった。すべてを否定的に捉えてしまう今の一頼であったが、世の中そう悲観したものでは無いと思わせる温かさが、真理亜の言葉には宿っていた。
クリスマスイブは、このレストランがもっとも賑わう日であり、最大の掻き入れ時であった。その為、いつもの人数では人手が足りず、一頼も臨時で出勤する事になった。
もっとも、一頼にとっては寧ろその方が都合良く、仕事に忙殺されていた方が、余計な事を考えずに済むので有難かった。
クリスマスに正月、一頼は冬休みに彼女と過ごすプランを目一杯立てて楽しみにしていた。
苦労して人気アーティストの大晦日ライブのチケットを手に入れ、喜び勇んで彼女に渡しに行った矢先の突然の破局。チケットは彼女の手に渡される事無く、二枚とも一頼のリュックの中に眠っていた。
ネットで転売すれば、高値が付くのは分かっていたが、今更金を手にしたところで一頼の心の空白は埋まらないのを、彼自身理解していた。
彼女と過ごす筈のクリスマスイブ。福地家のクリスマスは、食卓にチキンとケーキが並ぶだけの簡素なもねだから、自室に籠って落ち込んでいた事だろう。
他のアルバイトたちは、イブに臨時出勤など真っ平御免とことごとく断ったが、一頼だけは快く引き受けた。
そのお陰で、思いがけず真理亜のサンタクロース姿を見られのは、どん底の一頼の、細やかな幸運だった。
皿洗いに食材の用意にと、一頼は雑務に追わていたが、ふと視線を上げればそこに真理亜がいる。
真っ赤なサンタ服は、他のウエイトレスより遥かに目立つのだから、気になるのは当然の事だが。つい真理亜の働く姿に見とれてしまう。
客のいるフロアーから厨房を見られる店の造りの為、一頼からも真理亜の働く姿は見る事ができた。
きびきびと料理を運び、明るく接客する真理亜は、見ていてすがすがしい。そんな真理亜を見ていると、前向きに仕事しようという意欲が沸いてくる。
チャリン
と、スプーンの落ちる音で一頼は我に帰る。
意欲が沸くなどと思いながら、つい真理亜に見とれてしまっていた事に気がついた。
落としたのが食器でなく、スプーンだったのは幸運だった。すぐに拾おうとしゃがみ込んだが、調理台の下に入り込んでしまっていた。
仕方なく床に這いつくばって、スプーンに手を伸ばす。
と、一頼の視界隅に飛び込んで来たのは、ミニスカートのサンタクロース。
店内は暖房が利いているとはいえ12月も下旬だが、ストッキングを穿いていない素肌の脚が、一頼のすぐ側を通り過ぎる。
サイズが小さめという、丈の短いミニスカートからは、太過ぎず細過ぎず、血色の良い健康的な太ももがのぞいている。
女性的な柔らかなラインの、きめ細やかな素肌の美しい太ももに、一頼の視線は釘付けになった。
ミニスカートのサンタクロースも、一頼の存在に気づいていないのか、お尻をこちらに向けて無防備に前屈みになる。
一頼も思わず床に顔を擦り付けて、喰い入る様に覗き込んでしまう。
白
ホワイトクリスマスだ
一頼にとって思いもよらぬ幸運だった。
パンチラだけでもラッキーなのに、しかもの真理亜のサンタ服純白パンチラだから感動ものだ。
と、
一頼はそんな風に想う自分が微笑ましかった。
失恋のショックも、ミニスカサンタのパンチラ一つで忘れてしまうのが滑稽で、自分で自分を笑ってしまう。
男の性というやつか。だがいつまでも落ち込んでいてもしょうがない。他の女性に興味がわくなら、自分もいつかは失恋から立ち直れると、そう思った。
「そろそろ休憩だな。福地、先に休憩入っていいぞ。」
一頼は一瞬ビクリとしたが、鈴木は一頼になど興味無いという風に忙しく働いていた。
「それじゃお先に。」
と会釈して、一頼は休憩室へと退却した。
椅子に腰を下ろし、ほっと一息付く。
仕事中にスカートを覗いていたのがバレたかと、一瞬冷やりとしたが、誰にも気付かれなかった様だ。
それにしても、一人休憩室に居るとつい、サンタクロースからの、ちょっとエッチなプレゼントの事を思い出してしまう・・・。
真っ赤なサンタ服からのぞく、純白の下着に包まれた、女らしい丸みをおびたヒップライン。
鏡を見なくても、顔がニヤけているであろう事は、一頼自身にも分かっていた。
そんな折、ガチャリと部屋のドアが開く。
「お疲れ〜。」
明るい声と共に入って来たのは、足取りも軽やかなサンタクロースだった。
一頼は慌てふためいているのを悟られまいと、必死に平静を取り繕う。
「お疲れ様です。」
軽くおじぎをする一頼の、テーブルを挟むで向かい側の椅子に、真理亜は腰を下ろした。
「イブは忙しいって聞いていたけど凄いね、予想以上だよ。」
さっきの件に関しては、真理亜はまったく気づいていない様子だ。
たが、こうして真正面に座られると、必然的に顔を合わせる事になってしまう。
いつも交代で休憩を取っているので、こうして真理亜と一緒に休憩するのは、一頼は始めてだった。
仕事の前などに話をすることは良くあったが、こうして二人だけで面と向かって話をするのは始めてだ。
嬉しさも後ろめたさもあったが、気恥ずかしさが先に立ち、どんな顔をすれば良いのか正直困っていた。
真理亜の方は、今まであまり一頼と話す時間が無かったが、少しゆっくり話せる時間ができて楽しみだった。
「福地君、この服似合ってると思う?」
真理亜は、自分が気に入った衣装を、仕事前に一頼が誉めてくれたのが嬉しくて、ついまた聞いてしてしまった。
一頼は、仕事中に真理亜の事をジロジロ見ていたのを、気づかれたのではないかとドキドキしながら答えた。
「とっても似合ってますよ。」
自分のセンスを理解してくれる人が居るのが、真理亜には嬉しかった。
「やっぱり、今日はカップル多いね。羨ましいよ。」
気が緩んだのか、つい真理亜の本音が溢れる。
しかし、それは一頼にはとても意外な一言であった。
「真理亜さん、彼氏いないんですか?」
一頼の問いかけも、真理亜にとっては、まったく予想外のものだった。
「えっ! 私!?
私なんて全然ダメだよ。全然モテないから。」
真理亜は、激しく手を振り全力で否定する。
嘘をついている様には見えないのだが、一頼にはどうにも信じられない。
「真理亜さんみたいなキレイなひと、男は放って置かないと思うけど。」
一頼も気が緩んだのか、『キレイなひと』と、うっかり本音を言ってしまった。
「私なんか、ホント全然モテないから。
いつもフラれてばっかで・・・
恥ずかしい話、19にもなって恋愛経験ゼロ。キスすらした事ないんだよ。」
真理亜はガックリ、とうつ向いて肩を落とす。
「フラれて、フラれて・・・
去年の12月も高校の同級生に告って、あっけなく玉砕。去年のクリスマスは、マジで超凹んでたなー。」
と、顔を上げた真理亜は、一頼に向けて、笑顔を作って見せる。
「まあ、一年も立てば、さすがに立ち直るけどね。」
真理亜の明るさに、ずいぶんと励まされた一頼だったが、その明るさの裏にそんな過去があった事に、一頼はただ驚かされるばかりだった。
今も一頼を見詰める真理亜の笑顔は、太陽の様に明るく温かいと、一頼には想えた。
「でも、福地君はいいよね、かわいい彼女がいるんだもん。羨ましいぞ色男。」
真理亜の一言に、忘れようとしていた痛みが、再び一頼の胸を締め付ける。
「実は、ボクも一週間前に振られちゃいまして。」
できれば、今は触れずにそっとして置いて欲しいと、一頼は思ったが。真理亜に悪気は無い事は、彼にも良く分かっていた。
「えっ!ウソ?!
だって、この前お店に来た時は、あんなに仲良さそうだったじゃない。」
うつ向いて、一頼は答える。
「あの次の日ですよ、突然別れようといわれて。
あいつ、それからボクの友達と付き合い始めたみたいで・・・。」
一頼は、ここで真理亜の様に、もう立ち直ったと笑顔を作ろうとした。
しかし、失恋の痛手は一頼が考えているよりも深く、真理亜に笑顔を見せる事などできずに、ただうつ向いている事しかできなかった。
「うわっ。 友達に彼女盗られちゃったのか、そいつはキツイなぁー。」
真理亜がどんな顔で話しているのか、うつ向いたままの一頼には分からない。
「大丈夫、福地君ならきっとすぐに新しい彼女見つかるよ。」
真理亜は明るく一頼を元気付け様とするが、今の一頼には、その明るさが逆に辛く感じられた。
「まあ、恋愛経験ゼロの私が言ったんじゃ、説得力無いか。
それに、こういう時って、慰められると、余計凹むんだよね。」
一頼の手を、一回り小さな真理亜の白い手が掴む。
驚く一頼の手ををグイグイと引っ張り、無理矢理椅子から立ち上がらせると、そのまま部屋の外に連れ出そうとする。
「ちょっと、真理亜さんどうしたんですか!?」
「いいから、付いて来て。」
そう言って真理亜が来たのは、クリスマスの飾りや季節ものの登りなどをしまっている、物置として使われている部屋だった。
「ここなら、仕事中は誰も来ないから。」
そう言って、真理亜は一頼を、部屋の一番奥へと連れて行く。
「してあげる」
真理亜の言葉に一頼は当惑する。
「ま、真理亜さん、ふざけないでくださいよ。」
一頼の目に映る、真理亜の顔はふざけてなどいなかった。真剣な眼差しが、一頼の瞳をじっと見詰めている。
「私からの、クリスマスプレゼントだから。
私じゃ嫌かな?」
真理亜自身、驚く程大胆な行動だった。
失恋の痛みに耐える一頼に、掛ける言葉の一つも無い自分を歯がゆく思い。どうにも成らない強い感情が真理亜を突き動かしていた。
失恋の孤独感は、真理亜も痛い程知っている。今、彼女の前に居る福地一頼も、その失恋の痛みに苦しんでいる。そんな一頼を放って置く事は、真理亜にはできなかった。
まるで身体を引き裂かれ、奪い取られる様な喪失感。光を見失い、暗闇の中に一人置き去りにされる絶望感。失恋の直後は、誰でもそんな孤独感にさいなまれる
真理亜は、そんな一頼に、一人ではないと伝えたかった。言葉では伝わらない想いを、自分の温もりを、一頼に伝えたかった。
「そんな、真理亜さんが嫌な訳ありません。
でも・・・。」
一頼自身、真理亜に好意を抱いていた。それは拒む理由には成らなかったが、ただ安っぽい同情をかけられるのは嫌だった。
そんなものは自分が惨めになるだけだから、一頼はそれを躊躇った。
だが、真理亜の瞳の奥には、それとは違う、もっと誠実な光が宿っていた。
「なら、いいよね。
お互い、恋人いないフリーなんだし。
時間無いから急いで。」
真理亜の言葉に促され、一頼は思い切ってベルトの金具を外した。
性的な期待感よりも、陰部を晒け出す事が恥ずかしいと感じた。
露になった一頼のペニスに、真理亜は顔を近付け、唇で愛撫を始める。
一頼のお辞儀したペニスを指で支え、真理亜は亀頭の先から愛撫を始める。
目を閉じて、唇で一頼の感触を確かめながら、少しずつ口を動かす。
キスの経験すらない真理亜には、無論フェラチオの経験など無かったが、本能に任せ、言葉に成らない想いを、唇に乗せて愛撫する。
一頼も、真理亜の唇の感触をペニスに感じていた。
目を閉じたまま、ゆっくり動かす唇から、真理亜の想いは快感となって伝わってくる。
羞恥心よりも性欲の方が先に立ち、一頼の股間は、徐々に硬くそそり勃って行く。
真理亜も、知識として勃起という言葉は知っていたが、次第に大きくなる一頼のペニスに戸惑いを覚えた。
亀頭はどんどん膨れ上がり、陰茎は太く硬直して行く。最早指で支える必要は無く、逞しく天に向かってそそり勃とうとしていた。
わずかの内に倍以上の大きさになったペニスに驚愕しながらも、真理亜は、一頼が自分を求めている事を強く感じていた。
かつては、男に振られた経験しか無かった真理亜だが。今、一頼は、こうして真理亜を求めている。
真理亜もまた、そんな一頼を求めた。
真理亜は、一頼の男としての象徴を、その口の中に受け入れて行く。
一頼のペニスは、完全に勃起しようとしていた。
その肥大した亀頭は、真理亜の口の中へ含まれて行く。
真理亜の口の中は温かく、彼女の体温が心地良かったた。
真理亜の温もりを感じ、遂に完全に勃起した一頼のペニスは、更に激しく真理亜の愛を求めている。
口の中で、真理亜も一頼の温もりを感じていた。
勃起したペニスは、口の動きだけでは愛撫しきれないサイズになっている。真理亜は頭全体を振り、亀頭全体から竿にかけてを、唇で愛撫する。
その動きは、より強い快感となって、一頼に伝わって行く。
そして、真理亜自身も、唇に感じるフェラチオの感触に、快感を覚え始めてていた。唇で感じる、一頼の温もり。真理亜はそれを激しく求めていた。
孤独に震え、一人で居ることに怯えていたのは、一頼ではなく、真理亜自身だった。
表向きは明るく振る舞っていても、過去の失恋を未だに引きずっている真理亜だから。同じ失恋の痛みに耐える一頼に、自分自身の姿を垣間見た、だから放っては置け無かった。
何よりも、人の温もりを求めていたのは、真理亜自身に他ならなかった。
真理亜は、そんな自分の弱さを分かっていた。
いつもは、そんな自分を変えたくて、努めて明るく振る舞ってきたが。今は、今だけは、弱い自分も受け入れる事ができた。
貪る様に、真理亜は一頼のペニスを求める。一頼の温もりを求めて、ペニスをその唇で愛撫する。例え恋人同士でないとしても、今だけは、一頼を愛したい、愛されたいと、強く想った。
せつない願いを込めた真理亜のフェラチオは、強い快感と共に、一頼の心に響いた。
真理亜の体温が感じられる、温かなフェラチオ。空っぽになっていた一頼の心は、熱い想いで満たされて行く。一頼も、また、真理亜の温もりを激しく求めていた。
真理亜と一頼。二人は二人共、お互いにお互いを求め合っていた。
真理亜の唇が、一頼のペニスに絡み付く。ねっとりと、濡れた唇が這う感触は、至上の快楽となって、一頼に伝わる。
一頼の真理亜への想いは、激しい射精感を伴って高まって行く。その想いが最高潮に達した時、熱い想いはスペルマと共に奔る。
真理亜の口の中に、一頼のペニスから温かい何かが溢れてくる。
一頼の精液。
真理亜は奔る一頼の精液を、その口で感じていた。
真理亜は目を閉じたまま、一頼の精液を味わう。口の中全体に広げて、その温もりを感じ取っていた。
私のフェラチオで射精した一頼の精液。そう想うと、堪らなく愛おしく感じられた。
真理亜は目を開き、口のなかのスペルマを集めると、手の平にそれを吐きだした。真理亜の唇から、だらりと白濁した精液が溢れ落ちる。
「これが福地君の精液。」
真理亜は、目に見える物として一頼の精液を目にした。例え一時でも、一頼との繋りがあった事が嬉しかった。
「ホワイトクリスマスだ。
エッチなクリスマスになっちゃったね。」
と、真理亜は笑顔を作って一頼に見せた。
「真理亜さん、あの、ボク・・・。」
何とか自分の気持を伝え様とする一頼を、真理亜の言葉が遮った。
「さあ、もう戻ろう。
休憩時間終わりだよ。」
くるりと背を向けて、真理亜は部屋を後にする。
一頼もズボンのベルトを締め直し、慌てて真理亜の後を追った。
閉店後の店内はガランとしていた。
灯りを消した店内は、酷く物悲しい。祭の後は、何故こんなに寂しくなるのだろうと、真理亜は思った。
サンタの衣装も着替え、いつもの鈴木真理亜に戻る。
「それじゃ、お先に失礼します。」
接客担当の真理亜は、閉店したら仕事は終り。だが皿洗いの一頼には、まだもう少し仕事が残っている。真理亜は、一頼の背中だけ見て、そのまま裏口へと走り去った。
余りにも酷い振られかたをすると、再び恋をする勇気は無くなってしまう。臆病な鈴木真理亜に戻ってしまった彼女には、一頼に声をかける事はできなかった。
「待って真理亜さん。」
背中越しに聞こえる一頼の声。
「今日は、どうもありがとう。」
しかし、真理亜は振り向く事が恐かった。
「私も、恋人気分が味わえて嬉しかったよ。」
そのまま立ち去ろうとする真理亜を一頼は必死で追いかけた。
「これボクからのクリスマスプレゼント。大晦日にあるライブのチケットだけど、予定空いてる?
真理亜さんと、一緒に行きたいんだ。ダメかな?」
福地一頼は、自分の事などただのバイト仲間としか思っていないと、真理亜はそう思い込んでいた。まさか一頼からデートを申し込まれるとは、真理亜には信じられない出来事だった。
「うん、私も福地君と一緒に行きたいな。」
一頼の差し出したチケットを、真理亜はそっと受けとった。
それは、真理亜にとって、何よりも嬉しいプレゼントであった。