由美はまっすぐ巧の方を見ていて、巧が目を合わせると、  
「巧くん、こんなところで一体なにしてるの?」  
 開口一番、これだった。  
 なんで夏休みに制服を着ているのかとか、そんなことよりも気にしなければいけない  
のは、なぜ来たのが由美なのかだった。  
 巧は頼子の言った『最重要人物』という言葉が気になっていた。  
 だからとてつもない疑惑が湧いた。  
(ひょっとしたら……)  
 ちょっと寒気がして、目を逸らす。睨まれたと思ったのは違ったかもしれない。  
 たぶんもっとたちが悪い。どうつっかければ由美の真意がわかるのか。  
「俺を睨みに来ただけなら帰ってくださいよ」  
「おお、いきなり……」  
 頼子が茶々を入れるので、  
「あのー、そんな真横で聞いてるつもりですか?」  
「ああ、気にしないでつるけて。ろっちかが暴走したら、止めなきゃなんないからね」  
 頼子は二人の横で、わざわざどこからかスルメを出してきて食べている。当然、酒が  
ついている。  
(む、むかつく……)  
 
 それより由美である。玄関先なので、  
「とにかく、ま、上がってください。汚いとこだけど」  
「ちょっとぉ……、私の部屋よ?」  
 巧の言葉に頼子が膨れていると、  
「お邪魔します」  
 由美は仏頂面で巧と頼子の間を抜けると、さっさと部屋に入って、座卓を前にしてちょ  
こんと座った。  
 頼子に突かれて、巧はしょうがなくその対面に座る。  
 目の前にした由美の顔は、少しやつれているような気がする。  
 由美はすぐに口を開いて、  
「もう一度聞くけど。──こんなところで一体なにしてるの?」  
 言い逃れのしようがないので、  
「現実逃避してるんです」  
 と巧はやけくそ気味で、  
「その感じだと、頼子さんからもう聞いてるんですね? 俺、まだ帰るわけにはいかな  
いんですよ」  
 思っていたことをそっくりそのまま伝える。本当にそれしかなくて、  
「逃げられないのはわかってます。でも今二人に会ったらもっとどうにかなっちゃいま  
すよ、俺。こんなこと言うのすげー情けないけど、でも──」  
 こう言うしかない。  
 
「マジ、カンベンしてください」  
 由美が視線を外した。外したまま、  
「自分がこんなに弱いなんて知らなかった──とかって思ってるでしょ」  
「思ってます」  
「巧くんはまだ環ちゃんのこと好き?」  
「まだもなにも、ずっと好きです」  
「じゃあ──ねえ、もし環ちゃんと都ちゃんが逆だったらどうだったかな」  
「逆?」  
「環ちゃんが巧くんのお姉さんで、都ちゃんがその友達だったら」  
 由美が投げかけたそれはある意味で、究極の問いかけだったかもしれない。巧にとっ  
て、果して答えられる問いだろうか、また、答えていい問いだろうかと思う。  
「酷いこと、聞きますね……」  
「ぶっちゃけそういう話でしょ?」  
「由美さんってやっぱ、鬼」  
 それに応えたのかどうか、由美は薄く笑って挑戦的に巧を見た。  
 かろうじて巧が見返すと、そのまま睨み合いになる。  
(ちくしょう、目を回してしまえ)  
 と人さし指を目の前でぐるぐる回してやったら由美に噛み付かれた。  
「噛まれちゃった……」  
 と頼子に訴えると、頼子は腹を抱えて笑い転げた。それを見咎めて、  
 
「答えられないの?」  
 と由美が膨れているので、頼子が身を乗り出してきて、  
「いっそくっつけ、くっついて話せっ」  
 と座卓を蹴って脇へどかし、巧と由美両方の首根っこをひっ掴んで顔を突き合わせよ  
うとする。  
 キスでもしてしまいそうな勢いだったので、巧は慌てて両手で由美の肩を押さえた。  
 頼子に振り回されながら、巧も由美も相手を見ていた。  
「ギプス、取れたんだね」  
 由美が巧の目を見たままで言う。  
 そういえば、あれから初めて右手を使った。  
「これでやっと環さんを両手で抱きしめられます」  
「都ちゃんは、抱きしめないんだ……」  
「いいから抱きしめあえっつーの」  
 頼子が二人の後頭部を掴んでサンドイッチにした。もはや存在自体が酔っ払いである。  
 たぶん最初で最後になる巧と由美の『接触事故』。ただ強く押し付けられただけの相  
手の唇に心を奪われることはなく、お互いに背を向けた。  
 そのまま背中合わせにもたれあって、話をすることになってしまった。  
 巧はなんとなくそうするのがいいと思ったのだが、由美はどうだったのだろうか。  
 話のきっかけを探していた。  
 あの時の事を謝ってしまえば、巧にはあえて話すことがない。  
 
 由美と頼子の間で話されたこと、由美が持ってきているはずの『事情』が、解決の糸  
口になるのなら、聞きたいと思う。  
 じゃあ、謝ろう、と思った時、  
「一人じゃ解決できないことを一人で解決しようとしたら、そうなるんだよ」  
 由美がぽつりとそう言った。  
「巧くんの心は、受け止めきれなかったのね。全部私のせいだね……」  
 ゆっくりと、由美が話し始めた。  
 いつのまにか頼子がつけたらしいラジカセからドロドロ妙な音楽が聞こえてくるのを  
聞くともなく聞きながら、結局自分からは話し出せなくて、そのことを気にしていた。  
   
 *  
   
 あれはほんのきっかけに過ぎなかった。  
 一番大切にしていたものでからかわれた、そのことで火がついてしまったのは、タイ  
ミングの良すぎる偶然だったのだから。  
 あのときに限って言えば、由美は、都の真似事をする巧から逃げ出しただけだった。  
 都に告白しに行ったのに、逆に都から巧への想いを告白されてしまったあの夜、由美  
は環に全てを吐き出し、同時に環から巧の言葉をひとつ聞かされた。それが、頭の中に  
あった。  
 場合によっては環と二人で都を養おうと、巧がそう言ったというのだ。  
 
 由美も最初のうちは、にわかには信じられない奇妙な発言だと思った。  
 都を追い詰めたのが本当に環と巧だったとして、都が本当に辛かったのだとしても、  
その苦しみは本人だけが背負うものだ。他人にはどうすることもできない。自分でなん  
とかするしかない。  
 だからその言葉には巧の純粋さが現れているものの、都の事を本当に思いやれている  
わけではないことにも、由美は気付いた。  
 由美はずっと考えていた。  
 都は本当の母親を亡くした後ずっと、巧の前で母親をやっていたわけだ。仕事の忙し  
い父の透にはどうやってもできないことを、すべて背負っていたはずだ。  
 だが、巧が母親を卒業した時に、都は母親をやめた。はるかはともかく、少なくとも  
巧の母親はやめた。肩の荷を下ろして、自分を見つめ直すいい機会になったことだろう。  
 そして、かわいい弟にとって自分はどういう存在になってやるべきなのか、考える。  
 都の努力によって巧はちゃんと育ったのかもしれない。  
 でも都は姉として育ってこなかった。母親をやめた時、自分が巧の姉だとわかる前に、  
圧倒的に目の前に存在する巧の魅力に捕らわれてしまった。  
 そういうことなんじゃないだろうか。  
   
 自分で気付く前に、たぶん都は巧の虜になっていた。  
 そして由美は、そこに割り込んでいくことは絶対に不可能だと気付かされる。  
 思いつめる都の姿を見続けることで、この先も自分の想いがつのっていくのを予感す  
る。決着をつけるためには、都を幸福にするしかない。  
 
 黒くて細い糸を辿って、由美は巧と都をつなごうとした。  
 それは厳しい方法だ。  
 巧は明らかに、自己の中に確かにある都への欲望を、環に対する想いだけで強力に抑  
圧し、あの手この手で迫る都の度重なる攻撃を躱し続けていた。  
 その巧の誠実さと行動力に由美は頭の下がる思いだったが、それを逆利用するしかな  
かった。そうして環を、おあずけになっていた巧から奪ってみせた。  
 巧は、プライドなんてチープな外来語では表せない、まさに誇りを持って戦い抜き、  
力尽きたのだ。  
 自分達は四人で一つの関係を形作っている。  
 由美は、常に都の背中を見つめていた。その都は、巧の背中を。またその巧は環の背  
中を。コンピュータの周辺機器のように繋がっていた。  
   
 *  
   
 由美が苦労して冷静に話を続けるのを、巧は他人事のように聞いていた。  
 頼子がいそいそとラジカセのCDを取り換え、新しい缶ビールを開けた。  
(話に合わせてBGMを変えてやがる……)  
 放っておけばいいのだが、頼子の選曲は見事なもので、それで食べていけるのではな  
いかとくだらないことを巧は思った。  
 
「デイジーチェーン接続っていうの、知ってる?」  
「機械はあんまり」  
「パソコンになにかプリンターとか外付けするときに数珠つなぎにする方法。それがす  
ごく私たちの関係に似てるなって思って、ずっと考えてた。もちろん、それはパソコン  
本体と繋がってないとなんの意味もないんだけど、環ちゃんから巧くんに、巧くんから  
都ちゃんに、都ちゃんから私に、それでその長さには上限というのがあってね、繋ぎ過  
ぎると、うまく動かなくなるの。やっぱり無理があるのね。──滅茶苦茶だけどね、そ  
う考えたときに、こうも思った。絶壁で足場を失って、私達はやっぱり数珠つなぎで、  
ザイルの一番先端に私がぶらさがってる。三人もぶらさがってたら、そりゃ墜落するよ  
ね。そういうときには良くある話だけど、一番下の人が自分でザイルを切って他の人を  
助けるのよ」  
 そんなことを聞かされても、巧には言葉がない。背中に直接響いている由美の声から、  
ただ気持ちを逸らさないようにしている。  
 言いたいことはわかる気がする。だが。  
「普通に考えたら、四人のうち二人が結ばれたらあとの二人は不幸になるのよ? 二人  
がどのみち不幸になるなら、都ちゃんをそこに入れたくなかった。私のわがままで、先  
頭の環ちゃんと尻尾の私をつないでショートさせてやればなにか変わるんじゃないかと  
思った」  
 由美が不意に身体を起こして、バランスを崩して後ろに倒れる巧にのしかかった。  
「ちょ、由美さんどうしたの──」  
 
 由美は逆さまの巧の頭を抱きかかえると、泣き出していた。  
「全部、私が環ちゃんに教えたの。明日帰るって約束したのに帰って来なかったでしょ?  
しかもその後でまた明日帰るって言われたでしょ? それ以前に、環ちゃんを無理矢理  
連れ出した。無理矢理、いっしょに、……それで巧くん、行き場がなくなって、都ちゃ  
んのこと、拒みきれなかったでしょ?」  
「由美さん、やめた方が……」  
 正確には巧は、自分の方から動いたのだから、そこのところは違う。  
 巧は半ば無意識に由美の言葉を止めようとしたが、どうしようもなくて、続けて聞い  
ていた。頼子は目を閉じている。  
「巧くん、二人とも引き受けなさい」  
(唐突に何を言うか、チャッカマンめ)  
「巧くん、環ちゃんに言ったでしょ? そうすればいいんだって思ったの。だから──  
巧くんが変わってくれればよかったのに」  
「俺になにを期待してんのよ……」  
「全部放り出すつもりなの?」  
 身体を引き起こして、由美は見下ろしている。  
 巧は、まんざら冗談でもないつもりで言った。  
「卒業したら……姉ちゃんと二人で、どっか地の果てで寂しく暮らすかね」  
「真面目に言ってるの、それ」  
 由美は、戸惑った。  
 
 巧は環の事を好きだと言ったのに。また自分は巧に無理をさせるのか。それに、巧が  
もし責任感だけでそうするというのなら、許すことは出来ない。  
「どのみちこれじゃまともに生きていけない」  
「そんなことをして欲しいんじゃない、巧くんに、現実を受け入れて欲しいの!」  
「俺は今、弱ってる。信号さえ見えなくなって頼子さんの世話になってる」  
「そのことじゃないって」  
 久しぶりに頼子が口を挟んだ。  
「彼女はね、君に心を開けって言ってるだけよ」  
「わかるもんか」  
 巧が頼子につっかかると、  
「君のショックはよくわかってるわよ、確かに衝撃が強すぎて、目の前の出来事から全  
力で逃げ出そうとして、そのせいでおかしくなったのよ。君が逃げ出したのは、君自身  
の気持ちを認めたくなかったからでしょう?」  
 と頼子はベッドの上でリラックスしたまま、平然としていた。  
「自分のしたことなら認めてるじゃん」  
「あくまで気がつかないふりをするなら言ってやるわよ」  
 今度は由美が巧を引っ張り戻して、言った。  
「巧くんは、都ちゃんが好きだったのよ、たぶん都ちゃんよりもずっと前からね」  
   
「そんなことは、……ない」  
 
 そんなことはない。由美の言葉を聞いた瞬間には間違いなく言い切れた。  
 だが、言うのをためらってしまった。もう一度聞かれたら、自分はどう答えるだろう。  
 一時間後に聞かれたら。  
 急に得体のしれない恐怖のようなものがこみ上げてきた。  
 絶対に認めない。認めたら終わりなのだ。そんな感情はない。  
 ないことになっている。実際、ない。  
「俺は、できることなら今でも環さんといっしょに生きていきたいんです」  
 これは嘘偽りなく本当のことだ。  
 好きに未来設計をしてみなさいと、課題でも出されたらあっという間に作成できてし  
まうだろう。姉に対してそんなことはできない。  
 その不可能さが、血縁的な制約のみに依っているとでもいうのか。  
 だが、姉のあの顔を見たときの衝撃を、たぶんそれ抜きでは説明しきれない。  
(由美さんは確信してるのか)  
 すでに知らないところで由美と会っていた頼子が言っていることなのかもしれない。  
「じゃあどうして都ちゃんと寂しく暮らすなんてこと言うの?」  
「環さんの顔見てなにか言うなんてもう、できないです」  
「弱気ねえ」  
 とこれは頼子だ。巧はじろっと睨み、  
「顔向け出来ないって、言ってるのっ! それに、マジで姉ちゃんのことは責任取らな  
きゃならないでしょ?」  
 
「それをどうして環ちゃんにできないのかなっ」  
 奇妙に、いつもの由美のような弾んだ声に巧は引かれた。  
「それを由美さんが言うんですか?」  
「言うよ? 折角不幸になる人を二人から一人に減らす魔法を使ったのに、ドブに捨て  
ようとする人がいるんだもん」  
「そんな。使った人だけ幸せになれない悲しい魔法は、駄目です……それじゃ魔法とは  
いえない」  
「じゃあ、私も引き取ってくれる?」  
「くれません。子猫じゃないんだから」  
「似たようなもんじゃない」  
 と、これは頼子だ。巧はむきになって睨み、  
「……もう頼子さん口挟むの禁止。つーか、スワローズのメガホンなんかで言うな」  
「なんでよ」  
「真面目な話をおもしろおかしくする必要なんて、ありません」  
「真面目に話すからいけないのよ」  
「うるせぇー!」  
「ねえ」  
 と由美が頬杖をつき、例の挑戦的な目になって言った。  
「もし都ちゃんがドアの外で、今の会話全部聞いてるって言ったらどうする?」  
「…………」  
 
 たっぷり30秒ほど固まって、  
「……まじで?」  
 巧はたっぷり動揺していた。  
「ねえ、どんな気分?」  
 由美が畳み掛けてくる。  
「巧くん、さっき都ちゃんとどうするって言ったっけ?」  
 答えずに、巧は立ち上がった。手が震えている。ゆっくりと、熊でもいるみたいに慎  
重にドアに近付く。  
 開いた。  
 微かに街道を走る車の音が聞こえてくる。外の熱気が入ってくるだけで、そこにはな  
にも見えなかった。つまり姉はいない。  
「…………」  
「ごめんねえ〜。都ちゃんと環ちゃんは来るときしっかり巻いてきたから」  
「巻いたって……もしかして、失敗してたら二人ともここに……」  
「それでもよかったんだけど」  
(冗談じゃ……)  
 ふらふらと部屋に戻り、  
「まあ、飲め」  
 と頼子に勧められるのに、逆らう気力もなくし、ばったり仰向けに倒れた。  
 由美が覗き込んできた。  
 
「その今の気持ちが、巧くんの本当の気持ち」  
「由美さん、こんなときに仕返ししないでください」  
「これでチャラにしてあげる」  
「そりゃどうも」  
 姉と環の代わりを頼子がやっている以外、今だけ少し昔に戻ったような、不思議な日  
常感があった。この感慨はなんだろう。  
「どっちかが嘘なんて考えちゃダメ」  
 言いながら由美は立ち上がって、頼子に、お邪魔しました、と頭を下げた。  
「感じたことは全部信じるのよ? 私ね、二人でいるときの巧くんと都ちゃんを見て、  
すぐわかったの。この二人の間には家族だけしか作れない絆と、もう一つそれ以上に強  
いつながりがあるって。たぶんそれは都ちゃんの思い入れがそれだけ強かったからなん  
だろうけど、でもその間に入って行けた環ちゃんって本当にすごいコだったんだなあっ  
て思ったのよ。だから──」  
 そして玄関に降り、靴をゆっくり履きながら、たぶんとても心配そうに、  
「環ちゃんにも会いに行ってあげてね? 巧くんのこと聞いて、一番傷付いてるの環ちゃ  
んだから。それと──」  
 最後に振り返って、巧を見た。わだかまりは感じられない。  
「都ちゃんが好きだって、認めなさい。そしたら巧くんの現実は戻ってくると思うから。  
ちなみに、指のサイズは都ちゃんが9号で環ちゃんが10号だからね」  
 そう言い残して、由美は出ていった。  
 
 静かになった部屋で、巧は、  
「あのー、頼子さん、あの人最後になんかろくでもないこと言いませんでしたか」  
「まあ、飲め」  
「頼子さんは飲み過ぎです」  
「な、私がいてよかったろ?」  
「なし崩しに緊張感を壊されて、なんだかいつのまにかわかりあったような気になって  
いるだけじゃないですか」  
 頼子も他人事ながら、いつも以上に晴れやかな顔をしている。  
 決してなにかが解決したわけではない。でも、日常に立ち戻るきっかけのようなもの  
はつかめたのかもしれない。巧は、頼子の突き出すビールを受け取って口にしながら、  
(合意があればいいってもんじゃない)  
 そんな往生際の悪いことを考えていたが、気分はそんなに悪くなかった。  
 そのせいで、勧められるままに深酒をし、なにもわからなくなりそうなくらいに酔い  
しれた。  
 いつこの部屋を出るのか、それにはあまりこだわらないことにしようと巧は思った。  
 そのまま、泥のように眠る。  
   
 *  
   
 そうだからといって、こんなことにそう簡単に順応できるわけではなかった。  
 
 誰の悪戯なのか、それはどうでもいいことだ。  
 巧はどこかの綺麗な部屋で目を覚ました。  
 ガラス張りのバスルームが視界に入り、布団を重く押さえるもののせいで身体もろく  
に動かせなかった。  
 姉と環の二人が服のままで両側に寝ている。巧だけが布団の中で、二人はまるで上に  
『寝かされている』かのようだ。  
 とにかく、ラブホテルの巨大なベッドの上で、三人で横になっていた。  
(こ、こんなご対面はいやだ……)  
 二人を起こさないようにどうやってベッドから出るか、そのことを必死に考えるが、  
無理な話だった。  
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル