朝九時にはもう二人とも裸になって、都のベッドの中でどろどろになっていた。  
 昨夜のことで巧のベッドが使用不能になり、こっそり干してあるので、今度はみっと  
もなくも対策をたてて臨んでいる。  
 その見返りを考えれば、こんなことはなんでもない。  
 マットの上にビニールと鬼ほど新聞を敷いて、廃棄処分決定の血なまぐさいシーツを  
折って被せ、そのうえに姉の白い下半身を乗せた。  
 足の間に入って太腿に舌を這わせ、膝裏から回した腕で姉の腿を抱え込んだ。  
 目の前の下肢は幾許かの性感に震え、姉の股間にうつ伏せで顔を寄せた巧にはもうそ  
れを喜ばせることしか頭になかった。  
 昨夜血の海をつくったばかりの姉の中へ、そのままでは入っていく勇気はない。よく  
はわからないが、環のように、とろとろに濡れて溶けそうになるまで愛で尽くし、いつ  
でも自分のものを受け入れられるようになるまで道を拓いていきたいと思うのだ。  
 両腕で姉を引き付け、もう濡れ始めているそこをなんども優しく吸った。  
「巧、汚……」  
 戸惑うような姉の抗議には耳を貸さず、芽のように盛り上がった肉のつぶに舌を持っ  
ていって思考そのものを封じてしまう。  
 
 ビクンと背中を反りかえらせ、巧の髪を掻きむしりながらもその手は押しつけていて、  
両足は巧の頭を柔らかく締め付け、確かな快感があることと、身体がそれを求めている  
ことを巧に伝えていた。  
 巧が両腕をさらに引き付けると、姉の腿は巧の頬をもう溶かしそうなくらいに柔らか  
く張り付いてきて、頭の中に普段の凛とした姉を思い浮かべるたびくらくらして、巧は  
このまま溺れていては男がすたるとばかりにしばらくそこへ執拗に舌を送り込み続けた。  
 与えて同時に貪ることが容易なのは、はっきりそこに気持ちがあるからだ。  
「だめ、だめ、……巧、だめだから、嫌っ」  
 都は言葉を切れ切れにこぼすたび巧を取り込もうとするように、きつく股間を引き締  
めてくる。呼吸路をなんとか確保しながら、巧は肉の亀裂を強くなぞり、そのたび姉が  
身体を跳ねさせてなにごとか口走るのに向け、  
「ぜんぜんだめじゃない」  
「ぜんぜん嫌じゃない」  
 と、姉に快楽を認めるよう追い立てていった。  
 早く気持ちよくなって元を取ってくれと思う。昨夜の巧の身体の中でのたくっていた  
ような快楽は、後ろでした時しかまだ姉にはもたらされていない。  
 巧はしつこく姉の肉の内外を舐めて吸い、固めた舌先でえぐった。中からあふれ続け  
る液体で顔がふやけてしまいそうだが、本当に姉が柔らかくなるまで、続ける。  
 冷たかった部屋の空気は甘く濁り、姉の白い肌は紅潮してまさに『食べごろ』と言っ  
てよかった。だが、姉はまだ昇りつめていない。  
 
 ここだけはちっぽけなプライドにこだわってみる。今が姉の身体を支配するほんの第  
一歩だ。すでに手にした心より、今は身体を手に入れた証が欲しい。  
 自分の行為のいかがわしさと卑しさを(これでいいのだ)と決めてしまうのは、とて  
も気持ちがよかった。たまらなくいやらしい女の身体を、狂ったように貪らない男なん  
て、世界には必要ないのだ。  
 今や姉からは硬さがまったく感じられない。  
「や、巧、来て……、近くに来て、ぁ……近く、お願……」  
 姉の懇願に似た声に胸を熱くしながら、舌を姉のよく反応するところに執拗に送る。  
今、痙攣するように姉が手足を突っ張っていくのがわかった。巧はそれを焦らすことな  
く、与えられるだけ惜しみなく感覚を与えていくだけだ。  
 都は、おかしくなりそうな快感の渦に身体をくねらせながら、すがりつく対象を求め  
ていた。だから巧は、ほんの少しだけ待って欲しいと、姉が昇りつめて脱力したところ  
へ自分のものをあてがってゆっくりと、滞りなく腰を押し込んでいった。  
「はッ…………」  
 息を詰まらせるようにして姉がその圧迫感に耐えている姿に、謝りたくなるのをこら  
え、昨夜に増して狭く熱く感じる肉の穴の中へ自らのすべてをゆだねるように埋め込ん  
だ。  
 巧は奥底に突き当たったのを確認して、高揚と快感にしびれる身体を姉の上に下ろし  
た。その精神的な充足感は本当にはたまらないったらない。そうして、待たせてしまっ  
た姉に思う存分抱きしめさせてやる。自らも、姉にこの気持ちを伝えるために気持ちを  
込めて抱き込んでいく。  
 
 巧の腕の中で、健気にも足をいっぱいに広げて巧の分厚い侵入に応え、巧の下半身を  
喜ばせている年上の女性は、小さな嗚咽をもらしていた。  
「姉ちゃん……泣かないで、頼むから」  
 姉の感極まった様を見せられるたび、巧は切なくなる。その切なさが苦しいまでの股  
間の快楽とないまぜになって、限り無い陶酔感を生んでいるのは疑いがなかった。  
 だからよけいに、この身体が二度と離れないのではないかという怖れにも似た甘さに  
巧はハマりきれないのだ。  
 巧にとっては、姉が『いつか出ていく人』であることに変わりはない。そのうえで今  
は自分の愛しむ心のままにかわいがってやることに欲望を感じて、それを肯定した。そ  
れ以外に巧が巧である方法がないことは由美が教えてくれた。  
 巧が姉の身体をかわいがれなければ、姉の今の幸福は成り立たない。  
 姉の心は、巧には少し重かった。  
 快感に酔ってくれるまで、巧は姉を離せない。今だけは姉の気の済むようにと思い、  
うごめく姉の膣内の感触をじっと堪能しながら時を待った。  
   
 §  
   
 姉の激情がおさまるまでその髪を優しく撫でていた巧は、自らの欲望に立ち返って身  
体を起こし、  
「もうしばらく痛いの、我慢してよね」  
 
 と姉の意識を、繋がったままの自分達に呼び戻した。  
 間違いなく痛みが続くだろう姉の苦しみを、できれば今日一日で終わらせてやりたい  
と思う。快感を得ることなく巧の欲望を受け止めるだけのひたむきな姿も、それはそれ  
で巧の心のどこかを震わせるのだが、本当に欲しいものはその先にある。  
 舌で姉の口の中をとろかしてから、巧は腰の動きを始めた。  
 力を入れたり抜いたりしながら、自分からも痛みを軽減しようと動く都の姿がとても  
愛おしかった。それは巧の欲望をさらに刺激することになり、肉棒の強張りを高めて姉  
を痛がらせることは間違いないのだが、しかたがない。  
(絶対、気持ちよくなるよ……)  
 自分に言い聞かせるように、巧は姉が痛がるところを積極的にえぐった。  
 なにか、麻痺しているのかこなれてきているのか、痛がるところと痛がらないところ  
がある。  
「んっ……」  
 と姉が息を吐くたびに身体を傾け、巧は姉の身体をいろんな形に折り曲げていった。  
 処女の名残のようなものを探して、横向きにした姉の片方の太腿を抱え、垂直に姉の  
内側をえぐっていたら、たまらなくなってきた。  
「姉ちゃん、いくよ……」  
 遠慮しないでイくときにはイこうと心掛け、欲望のままに腰を振り、送り込んでその  
まま激しく注いでいった。荒い息をついて頬に唇を寄せると、都はなんとも言えない嬉  
しそうな恥ずかしげな表情で、そんな巧を見上げる。  
 
 姉は幸せそうな女の顔をしていた。  
「ん……」  
 自分の中で小さくなる巧を、手に入れた勲章のように思っているかもしれない。もち  
ろんそんなことはお互い様であり、巧は役得以外のなにものでもない極楽の中にいる。  
 巧がまた姉の身体をくるっと回すと、  
「最初からそんなに、痛くないの。でもまだちょっと……」  
 都はそう赤くなりながら自分の身体のことを説明し、少しだけ辛そうにする。  
 巧に気を遣っているだけじゃなく、これが、いずれ通らなければならない道だとわかっ  
ている顔なのだ。堪えられない瞬間だ。  
 巧は乱れた髪を一度整えてやって、また姉の身体にいやらしく目を向ける。硬さを取  
り戻すまでの間、うつぶせた汗ばむ背中に夢中で吸い付いた。  
 姉の背中が特別弱いのは疑う余地がない。前に回した両手のひらで胸を揉み上げなが  
ら背筋を唇でなぞっただけで、もうシーツを掴んで肩を突っ張らせた。  
「姉ちゃん、背中本当に弱いよな」  
 そう言いながら舌で背骨をぬるぬると舐め上げていくと、首筋から耳まで真っ赤にな  
りながら「意地悪っ」と二度巧をなじり、シーツを掴んだ手をどんどん脇に引き付けて  
きて、頭を左右に振って堪えている。  
 片手を胸から抜いて、そんな姉をまたえぐり抜くべく下半身を誘導した。  
 先端をぴったりあてがった瞬間に、姉が背中のあまりの性感の強さに暴れるので、ぬ  
るっと勢いよく突き込んでしまった。  
 
 今度は巧が快感に打ち震える。  
 身体をのけ反らせていた姉は、一瞬に穴の中を埋め尽くした巧をぎちぎちと締め付け  
て絞った。  
「ま、待った、くぁ……」  
 意識が飛びそうな刺激を受け、巧は姉をぐちゅっと突き上げた。  
「んっ」  
 と都が受け止めながら足を心持ち拡げる。うつ伏せの股間からにじみ出るものは、こ  
とごとくもう血ではなく、感じている女の喜びの証だった。  
 そんな姉を横に勢いをつけて引き倒し、裏返しに自分の身体の上に乗せた。仰向けの  
ままで、姉は巧に後ろから入れられている形だ。  
   
「こうやってきっちりとくっつくとさ、本当に繋がってるって気がする」  
 巧は姉の手と足を自分に合わせて乗せ、両手の指は握りあわせた。  
「ついでに姉ちゃんのお尻の形がよくわかって最高」  
「や……」  
 都がそれを聞いて逃れようとするのは許さない。固く握ったまま姉に続けて囁きかけ  
る。  
「たまんないんだよ、これ。俺を幸せにしてくれる形。それと──」  
 自分の上で恥ずかしさに震える姉をこのまま虜にしようと、  
「俺を気持ちよくしてくれる、ここ」  
 と、腰を軽く上下させて姉の中を擦ってみた。  
 
「姉ちゃんの身体は女としての魅力を全部持ってるんだよ?」  
 その瞬間に姉の中が収縮して、巧は悲鳴を上げそうになる。仕返しに、少し意地悪な  
話をした。  
「言っちゃうとさ。……環さんも、そうなんだよ」  
 都は沈黙で応えた。  
 巧の続きの言葉を待っている。  
 巧は姉の首筋にちゅっと軽くくちづけると、  
「環さんも、姉ちゃんも、全然タイプが違うからとても比べられないけど、最高にいい  
女だと思う」  
 巧は、環の前ではとても言えないと思いながら、言葉を続けた。  
「いまさら、なんで俺なんかに、なんてしらじらしいことは言わないけど。本当に二人  
ともたまんないよ、俺。一日中抱いてたいもん、一日中」  
 腰をずらして姉から抜き、降ろしてから改めて姉の上になって見下ろし、  
「入れるよ」  
 と、返事を待つでもなくまたぬるぬると姉の中に入っていった。  
 都は目を閉じて息を吐きながら、それを受け入れていく。  
 痛みは収まっているようだった。巧の方も今は落ち着いていて、余裕を持って姉の中  
を往復し始めた。それを、身体の下でただ感じ取っているというのはどんな感じがする  
ものなのだろう。  
 
「大丈夫?」  
 一度動きを止めて、念のため聞いてみると、  
「たぶんしびれてる……痛くないから、巧がいいようにして?」  
「もう好きにやってるし、姉ちゃんはなにも感じない?」  
「巧とこうしてるだけで、気持ちいいから」  
 姉の顔からはおよそ不満のようなものは感じられなかった。  
「なんか、すごく不思議な感じ。あんな大きいのがおなかの中で動いてるのに、形がわ  
かっちゃうくらいなのに、どうしてだろうね、好き放題やられてるはずなのに、ううん、  
巧だから、私になにをしてもいいからなんだと思う」  
 都は濁りのない微笑みを浮かべ、  
「巧は私の全部だから」  
 と言った。  
 心の底ではやっぱりこれが聞きたかったのだと、巧は思い知った。  
 本当にこの女が姉だなんて、もったいない話だった。今はどう思っているかと聞かれ  
たら、そんなことはどうでもいいと、答えられる。  
 腰を動かしながら、舌を絡ませあったり、胸の先端を指で転がしたり、思い付くまま  
に姉の身体中を楽しむ。律動に合わせて胸がゆるゆると波打ち、なんともいえず心地よ  
さげに見上げて腕をのばしてくる姉に、今度は唇をきつく吸って応え、愛しさを染み込  
ませるように奥の奥に突き上げておいてから、じっと沸き上がるものが昇ってくるのを  
待った。だが待つまでもない。すぐに、うねうねと締め付けている膣内の動きだけで巧  
は脳を掻きむしられるような悦楽に狂わされ、やがて最高に高いところまで弾け飛ばさ  
れるように、姉の中に吹き上げた。都は、おそらく半ば本能的に、両足を巧の腰の巻き  
付け、巧の射精の瞬間を感じ取ったようだった。二人きつく抱きしめあって、巧はその  
瞬間にゼロ距離での歓喜のすべてを味わった。  
 
 §  
   
 二度出された巧のもので、都はさすがに中の感触の変化を感じ取っていた。  
 都合三度巧のものを身体の奥で受け止めた事実と感動は、何ものにも替えがたい。ふ  
と最後の瞬間のぴりっとした違和感に思いを馳せた。  
 中で気持ちよくなるってどういうのだろうとずっと問い続け、もしかしたら、とそれ  
に期待を寄せる。  
 環がうらやましかったが、今はどうだろう。  
 少しバツが悪そうに、でもとても気持ちよさそうに自分の上で身体を弛緩させている  
弟を、都は、思わず腰に回していた足をこそこそと降ろしながら、優しく抱きしめた。  
 最高に恥ずかしかったが、自分の身体に最高の賛辞を送ってくれたエッチな弟のため  
に、説明をしてみた。  
 もう何度かしてみたら、その行為で気持ちよくなれるかもしれない。  
 今は少し痛みがぶりかえしているが、もう通過儀礼のごとき苦痛からは逃れることが  
できたと都は確信している。  
 都の言葉に、巧がどんな顔をしたか。  
 
 これこそが自分が手に入れた最高の宝物なのかもしれないと思わせるほどの、弟の本  
気で嬉しそうな照れ笑いを、永遠に記憶に残しておくのだと目を見開く。それから薄く  
閉じ、弟の息づかいを間近に感じながら、もう一度大きくなってくれないかなと、はし  
たなく弟の下半身をあやしてみた。  
 まんざらでもない手ごたえがあって、さっきの都の告白の成果もあったのか、巧はし  
ばらくへたっていたが、おもむろに上体を起こし、都の身体への執着を再び証明してみ  
せた。  
   
 もう一度巧のものを身体の奥に受けてそれから、学校に持っていくはずだった弁当を  
ダイニングで広げて二人で食べた。  
 若さと一言で言ってすむのか疑問に思えるほど、巧は都にとって悦ばしい存在となり、  
結局さらに午後にも巧は都の中に一回注ぎ込んで、ついにそこでギブアップした。  
 
 

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