むかし昔、あるところに美しいお母さんがいました。
お母さんは七姉妹持ちで、そのむすめ達を大変可愛がっておりました。
ある日、お母さんは食べるものを取りに森へいく前に、全員を残らず呼び寄せてこう言い聞かせました。
「良いかいむすめ達、母さんは森へ行くからね、お前たちはよくよくオオカミに気をつけるんだよ。
オオカミがおうちへ入って来ようものなら、お前たちをみんな食べてしまいますよ。
でもオオカミの悪党は、よく姿を変えてくるけど、声はしゃがれているし、脚は真っ黒だからね、お前たちにも直ぐ見分けがすきますよ」
むすめ達は声をそろえて、
「お母さん、みんな気をつけますからね、心配しないで行ってらっしゃい」
と答えたのでお母さんは安心して出かけました。
いくらも経たないうちに、戸を叩く者がありました。
「開けておくれむすめ達、お母さんですよ、皆にお土産を持ってきましたよ」
と呼ぶ声がしましたがその声はしゃがれていました。
「開けてやらないよ、お前はお母さんじゃない、お母さんの声はきれいな声だよ。
お前の声はしゃがれてる。お前はオオカミだ」
そうするとオオカミはどこからか白墨を調達し、それを食べて声を奇麗にしました。
そして再び戸をとんとん叩きます。
「開けておくれむすめ達、お母さんですよ、皆にお土産を持ってきましたよ」
と呼び立てました。
けれどオオカミはまっ黒な前足を窓板にかけていたので、それを見たむすめ達は、
「開けてやらないよ、お前はお母さんじゃない、お母さんの脚は真っ白だ。お前はオオカミだわ」
そうするとオオカミは何処からか小麦粉を手に入れ、手足にすり込みました。
「開けておくれむすめ達、お母さんが帰ってきましたよ、皆にお土産を持ってきましたよ」
これで三度目ですね。むすめ達は、
「お前がお母さんはハッキリ分かるように、まずお前の脚を見せてごらん」
と言いました。オオカミは窓板に前脚をかけました。
むすめ達はその脚の白いのを見て、その声の言ったことはみんな本当だろうと思って戸を開けました。
ところがのっそりと入ってきたのはオオカミでした。
むすめ達は大慌てで身を隠そうとしました。
長女はテーブルの下へ、
次女は寝床の中へ、
三女は置きストーブの中へ、
四女はお台所へ、
五女はたんすの中へ、
六女は洗濯ダライの中へ、
末むすめは壁時計の振り子の箱の中へ跳び込みました。
オオカミはむすめ達を探します。
まずテーブルの下に隠れて震えている長女が見つかりました。
その震えている小さいお尻を鷲づかみ、赤黒くいきり立ち、ヌラヌラとぬめっている“尾”を無造作に挿し込みました。
長女は鳴きました。
長女は叫びました。
ですがオオカミは意に介さず“尾”を振り続けました。
感極まったオオカミは、長女の中で“尾”を一際大きく大きく振り、引き抜いた後次の獲物を探し、
見つけたむすめ達を同じ様に、順繰りに“食べて”しまいました。
ただ、時計の中に隠れた、一番小さい末むすめだけは見つけられませんでした。
末むすめは振り子の箱の戸の隙間から姉達が次々とオオカミに“食べられる”のを覗き見ていました。
オオカミは姉達を一通り“食べ”終えてもまだ物足りない様子で、気を失っている長女に再び“尾”を差し込みました。
オオカミの欲望には底がなく、何巡もしているうちに姉達に変化が起こりました。
最初は痛々しい泣き声を上げていたのに、その声が甘えたものになりました。
自らオオカミにしがみつき、様々な粘液でドロドロに濡れたオオカミの“尾”に自ら体をこすりつけ自分の番をねだるようになりました。
オオカミは満足するまで姉達を“食べる”と、姉達を抱えて出て行きました。
それからいくたも経たないうちに、お母さんが帰ってきました。
お母さんの目に入った家の様子と着たら、戸は開けっ放し、テーブルや椅子はひっくり返り、洗濯ダライはバラバラに壊され、布団や枕は寝床から引きずり出されているのです。
お母さんはむすめ達を捜しましたが誰も見つかりません。
順々にむすめ達の名前を呼んでも誰も返事をしません。
最後に末むすめの名前を呼ぶと、
「お母さん、あたし、時計の中に入ってるの」
と湿った声がしました。
振り子の箱を開けると、中の末むすめは、自分の体をまさぐりながら、悲しそうな熱っぽいような、それでいてどこか甘えたような声で鳴いていました。
お母さんは慌ててやめさせ外に出してやりました。
その末むすめの話によると、オオカミが来て、他のむすめ達をみんな“食べて”しまい、それを見ていたら自分も何故か体がうずき、変な気持ちになってしまったということです。
むすめ達の可哀想な話を聞いてお母さんの悲しむ様子は、皆さん、お分かりになりますね。
やっとの事でお母さんは泣き止んで外に出ました。
末むすめもちょこちょことついてきました。
お母さんはむすめ達を探しました。
何日も何ヶ月も探し、ついに泉の側の草原の大きな木下で、枝を震わせるほどの大いびきをかいて寝ているオオカミを見つけました。
そのそばにはオオカミに散々“喰い”散らかされ、逃げられないようつながれたむすめ達が、大きくなった腹を抱えて泣いていました。
お母さんはオオカミを起こさないようにむすめ達をいましめから解き放ち、大きなお腹から“オオカミ”をかき出し、踏み潰しました。
その後持ってきていた裁縫道具を取り出し、お母さんは末むすめに姉達を連れて隠れるように言いました。
お母さんはこの恐ろしいだけのけだものの、欲望の元の尾を切り開き、その中へ尖った石ころを詰め縫い合わせました。
それが目にも止まらない早業だったので、オオカミはてんで気が付きませんでしたが、寝たいだけ眠ったオオカミがむっくりと起きてしまいました。
たっぷりと寝て“腹が減った”オオカミはさっそくいつもの様にむすめ達を“食べよう”としましたが、そこにいたのはお母さんだけで、むすめ達の影も形もありません。
怒ったオオカミはとりあえず欲望を晴らせれば何でもいいとお母さんを組み伏せ、赤く腫れ上がった“尾”をお母さんの中に無理矢理挿し込みました。
ただ狭く、固く締め上げるだけのむすめ達と違い、お母さんの中はオオカミの“尾”を柔らかく包み込み、吸い付き、こねる様にうごめきます。
これもなかなか良いものだとお母さんの中で何度も“尾”を振り、その欲望を発しようした途端、
!!!!!!
オオカミは“尾”を襲う激しい痛みに吠えました。
その焼けるように熱い痛みは、お母さんが“尾”に詰めた石ころが内側の肉に刺さり、えぐったためでした。
オオカミは“尾”を冷やそうと泉に浸かろうと這いずっていきました。
そのへっぴり腰のオオカミをお母さんは泉へと蹴り込みました。
力の入らない脚では泳ぐ事も体勢を立て直すことも出来ず、オオカミはむごたらしく、溺れて死んでしまいました。
むすめ達が、これを見てかけ出してきました。
「オオカミは死んだ、オオカミが死んだ」
むすめ達は、割れるような声を張り上げて、うれしさのあまり、お母さんと一緒に泉のまわりを踊りまわりました。
おしまい。