なあ、お前ら。可愛い女の子と一つ屋根の下で暮らしたいとは思わないか?
うんうん、思うよな。でもよ、意外と大変なんだぜ。
よりによって、その子が妹とかだと。
ハイハイ!初めまして!俺、祐介!
至って普通の高校三年生・・・のはずが、何の因果か両親が別居中・・・・
お袋は家出するし、親父は家に居着かないわでもう離婚秒読み!ヘイ!何てこったぃ!
で、そんな俺の唯一の同居人を今から起こしに行くよ!
部屋の前に立ったら深呼吸。にっこりスマイルを作ったら元気にドアをオープン!
「ちぃちゃん!オハヨウ!」
「グァー!いてー!いてー!」
「そのまま死んじゃえ!ばかたれ!」
痛い。すんごい痛いよ。目覚し時計が顔に当たった位痛い。
うぐぐ・・・ちぃちゃん。あんまりだぁぁぁ・・・・
「ノックぐらいしてって何時も言ってるのに!お兄ちゃんのトリ頭!」
ぬぅ、言いたい放題だ・・・しからば。
ベットに近づくと、包まっている中味ごと布団を持ち上げる。
「ひゃっ、ちょ、わっ・・・」
そのまま回転。これぞ秘技真空地獄車である。
「に"ゃぁぁぁ!コワイよ〜!」
フハハハ、俺の力を思い知るがいい。
「ごっ、ごめっ、ごめんなざいぃ〜!」
うむ、素直でよろしい。下ろしてしんぜよう。
「ひぅ・・・えっぐ・・・お兄ちゃんのあほぉ・・・」
ん?もう一回かな?
「ぁあ〜・・・まだ頭がぐるぐるするよぉ・・・」
頭を抑えながら階段を下りてきた彼女は、俺のと同じ校章の付いた制服を着ている。
こいつが、千香。高校1年になる俺の妹でござい。
「俺も顔が大変に痛いぞ。」
嫌みでなくて本当に痛い。バンソーコー張っておこう・・・
「あ、私が張ってあげるよ。貸して。」
流石にやり過ぎたと思っているようだな。うむ。全くもってやり過ぎだ。
「えっと、どのへんかな・・・・ここ?」
頬の真ん中辺りを指で突付かれる。違う、もっと上。
「上・・・この辺?」
違う違う。も少し下。
「んん〜、じゃあここ!」
そうそう、そこ・・・・
「当たってるけど痛てぇぇぇ!」
「ああ!ごめん!」
「くそ〜・・・ワザとだ〜、確信犯だぁ〜。」
「ちっ、違うよ!ワザとじゃないよ!」
本当カヨ〜。仕返しじゃねーのかよ〜。
「うぅ・・・じゃあちょっと右向いてよ!」
何だよ。まだ何かやろうかってのか・・・
「じっとしててよ・・・?」
そう言って俺の頭を両手でホールドする。と、ゆっくり顔を近づけて俺のほっぺにキス。
そのままペロペロと下を這わせてきた。これは、何か、クルなぁ・・・・
「あむ・・・ふ・・・ぅぅ・・」
千香の息遣い、肩まである髪、そして何とも言えない舌の感触。
イカン、頭がクラクラしてきた・・・
「・・・っはぁ」
幸い『治療』はそこまでで終了した。
「えへへ・・・まだ痛い?」
「うん?いや、まあ、もういい。」
何か、間抜けだな。俺。
『いただきまーす』
ようやく朝飯ですよ。ヤレヤレ・・・
「ん〜、卵焼きおいしい〜。」
「まあな。俺がちぃちゃんの為に愛情を込めてだなぁ・・・・」
「ありがと〜♪じゃあお兄ちゃんの分も食べても怒らないよねっ。」
うんうん、いいのだ、妹よ。卵焼きの一つや二つや三つ・・・(ry
「そういえばさ、お兄ちゃん・・・大学どうするの?」
「大学?ん〜・・・・まだ何も考えてにゃーよ。」
「あ、そっか・・・」
明らかに千香の表情が暗くなる。全く、昔から単純なヤツだ。
「さぁて!学校行きますかね!」
「え。待って待って!私まだ食べてないよ!」
「これも修行のウチよ。さらばじゃ!」
恨めしそうな声を聞きながら玄関を出る。
あ〜あ、今日も空が青いねぇ。学校行きたくなくなるねぇ。
ダラダラ歩いていると後ろから千香が走って追ってくる。うむ、追いついたらまたからかってやろう。フハハ。
今日も良い一日である。