サンタクロースを信じるか?
その質問に俺は、二つの答えを用意している。
ツレとの馬鹿話の中では、「ンなもん、信じてるわけねーがな」とまた、簡潔に否定する。
もちろんこれ、オレの本心。
オレも高校2年生、もう子供じゃないし。
そして、もう一つの答えだけど。
「ねぇ、タカちゃんはもう、サンタさんへのお願いは書いた?」
オレの、たった一人の肉親、佳枝(よしえ)姉さん。
小さい頃に両親が死んでしまってから、母親代わりとしてずっとオレの面倒を見てくれている。
歳にしても、大学一年生で、俺と二つしか離れていないのだが。
長い黒髪、優しげなまなざしの美人。ほっそりとしたスレンダーな四肢なのに、オッパイだけは大きい。
もちろん学校でもモテまくりなのだが、本人はそんな他の男達のアプローチに見向きもしない。
そんな佳枝姉さんは、オレのことをずっと子供扱いしてる。
いい加減オレも大人なんで、いろいろと文句も言いたいんだけど、いざ姉さんの顔を見てしまうと、そのあたりが上手く言えなくて困ってしまう。
優しい、聖母のような微笑みを浮かべる姉さんに、
「オレ、サンタなんて信じてないからね」
とかいうと、
「・・・・・・・・・・・・ぐす」
この世の終わりみたいな悲しい表情で、しまいには泣き出してしまう始末。
姉さんの中では、オレはいつまでも純真な弟のままらしい。
基本的に、姉さんを困らせたり、泣かせたりするのはオレも辛いので、こんな時は慌ててフォローする。
「・・・ゴメン、冗談だよ。もちろん信じてるに決まってるじゃないか。
今年もいい子にしてたからさ、サンタさんのプレゼントが楽しみだなぁ」
などと、学校の悪友共が聞いたら腹を抱えて笑い出すセリフで、姉さんを宥めるのだ。
でも、こんなふうに、姉さんのブラコン気味の過保護に付き合うのも、それなりの楽しみがある。
「・・・・・・うふふ、タカちゃんたら、可愛い寝顔」
クリスマスイブの夜、寝室で寝たふりをするオレの元に、プレゼントを置きに来る姉さん。
その際、急に目を覚ましたオレに、自分がプレゼントをあげていることがばれてしまわないように、と、サンタのコスプレで。
「それにしても、このサンタ服、もうきつくなっちゃった。来年のために、新調しちゃおうかしら」
どこから手に入れたのか知らないが、へそ出しミニスカサンタの姉さんは、ますます大きくなるバストが服に合わなくなってきたらしく、ずいぶんと窮屈そうだ。
オレは、薄目でこの姉さんのサンタ姿を眺めながら、
(いや、ゼヒ来年も、そのピチピチのエロサンタコスを拝ませてください!)
その為なら、来年もサンタを信じていることにしたままでイイよな、と考えるのだった。