「第一部 猿編」
桃太郎が猿美にとる態度が他の姉妹たちへのそれに比べてぞんざいなのは、彼は猿美が正直苦手だったからなの
でした。猿美も他の姉妹に負けず劣らない美少女でしたが、桃太郎にとっては何かと攻撃的な態度をとってくるこ
の少女が疎ましく感じられるのでした。姉妹の中では猿美だけが同い年ということもあるのかも知れません。相手
を妙に意識してしまい、好意というよりはライバル心に近いものをどうしても抱いてしまうのです。
しかし、桃太郎とのやり取りの中では下品な面ばかりが目立ってしまっていますが、猿美は他人の前ではもっと
大人しく、白皙の美少女として通っているのです。どうしたことか桃太郎に対しての言動だけが必要以上に挑発的
になってしまい、そのことがますます桃太郎にとっては苦手に感じる原因となるのでした。
そんな、桃太郎にとっては目障りな猿美は、あれ以来毎日のように朝から桃太郎の家にやってきてはうるさく桃
太郎を働かせるのでした。
「いい? これからは自分で食べていかなきゃいけないんだから、畑を耕したり、魚を採ったりしないといけな
いわよ」
と言って朝から晩まで桃太郎に労働を強います。それがニート気質の桃太郎には非常にしんどく、余計なお世話
に感じられるのです。猿美の言うことは正論なのでした。でも、ダメ人間の桃太郎は正論が大嫌いなのでした。
その日は、まだ太陽が昇りきらないくらい朝早くから畑で鍬を振るい、桃太郎と猿美は昼下がりにはいささか疲
労困憊し、休憩を取っていました。身体を動かしたので汗をびっしょりにかいていました。
「つ、疲れたな・・・猿美」
「はぁはぁ、あ、あんたは男だけど、女のあたしも同じだけ働いてるのよ・・・」
相変わらず猿美はいちいち桃太郎には生意気なことを言うのでした。
そして、少しでも涼を取ろうと、猿美は着物の胸元を大きく開き、汗を拭ってからぱたぱたと扇ぎました。
猿美の奴、意外と胸大きいんだな・・・、と桃太郎が思った刹那、陰茎がむっくりと立ち上がりました。猿美が
桃太郎を働かせることを理由に他の姉妹が来ることを禁止してしまったため、桃太郎は欲望が溜まっていました。
ここ数週間は犬子、雉江と蓄積する間もないほど吐き出し続けていた後ですから、尚更今の状態を辛く感じるので
す。こうして見ると、外見だけ見れば猿美も美少女だし、とりあえずこの女で欲情を発散してしまおう、と性犯罪
者そのものの思考で桃太郎は思いました。猿美を性の仲間に入れてしまえばまた残りの姉妹を呼びやすくなるだろ
う、という打算もあるあたり、筋金入りの鬼畜です。
「・・・猿美」
桃太郎はゆっくりと休憩中の美少女に近づきます。
「なによ、桃太・・・えっ!?」
彼は猿美を地面に押し倒しました。
「何をするの、桃太郎・・・」
「猿美、おまえを抱く」
「本気なの・・・」
猿美は驚きのあまり目を見開いていましたが、桃太郎が想像していたような抵抗は一切ありませんでした。この暴
力的な少女は力の限り暴れるとばかり彼は思っていたのです。しかし、実際には拍子抜けするほど彼女は大人しく桃
太郎に組み敷かれているのでした。
「なんで、抵抗しないんだよ」
「抵抗したらやめるの?」
「いや、やめない」
猿美の瞳は波間に太陽の光が乱反射するように揺れていました。
「どうしてあたしを抱くの?」
「おまえを抱きたいからだ」
「あたしだから抱きたいの? それとも、女なら誰でもいいの?」
桃太郎は言葉に詰まりました。桃太郎は直情的な単細胞でしたので、目先の快楽しか考えていません。まさか犯そ
うとした相手からこんな問答を仕掛けられるとは夢にも思っていなかったのでした。正直、よく分からなかったので
すが、本能でなんとなくこう言えば大人しく犯されてくれそうだと思う答えを言うことにしました。
「おまえだからだよ、猿美」
まったくもって、この男だけは死んだら必ずや地獄に落ちるのでした。
「そう」
猿美はそっと目を瞑りました。
「・・・だったらあたしのこと、あんたの好きにしていいわ」
猿美はこんなにしおらしい少女だっただろうか、と桃太郎は首をひねりました。何かがおかしい。ですが、「ヤり
てぇ!」といういたって即物的な発想しか持ち合わせていない彼には猿美の気持ちは理解しかねるのでした。とは言
え、人格破綻者の彼でも、なんとなくこの少女が可愛いな、という気持ちだけはかろうじて持つことができました。
猿美の頬は赤らみ、身体は微かに震えています。桃太郎がそっと触れると、とても良い反応が返ってくるのでした。
あれ? と桃太郎は思いました。この女には中だしはしていないし、精液を口にさせたこともないはずです。なのに、
なぜそういった時と同じ徴候が出ているのでしょう。
なんにせよ好都合と思って、普段の勝気な素振りを潜めて、今や料理されるのを待つばかりの鯉のように横たわる
美少女に、彼は手を伸ばしました。桃太郎が繊細に少女の乳房や秘部を中心にソフトな接触を加えていくと、たちま
ち猿美の身体は快感にとろけていきます。彼が少女の秘部に舌を伸ばし、女体の中で最も敏感な肉の芽を愛撫すると
少女の身体は痙攣し、悶えるのです。少女はわずかに目を開けました。酔っているかのような目で桃太郎を見ます。
その目には、微かに甘えの成分があるように見えました。これが数日前に桃太郎の急所を蹴り、彼の尻を叩いて強制
労働に駆り立てているのと同じ人物なのでしょうか? 今や彼女の一挙手一投足は桃太郎の支配下にあるように思え
るのです。
桃太郎は、今がその時と見定めて欲情の槍を猿美の秘部にあてがいました。
「いくぞ」
と言うと、猿美は弱々しく頷きます。桃太郎が腰を押し込むと彼の槍は猿美を鋭く深遠まで貫きました。
桃太郎は腰を繰り返し押し込み、猿美を攻め立てます。猿美はすでに身も心も陥落していたのですが、それでも容
赦なく攻め立てられ征服されることに、ある種の性的な喜びを覚えていたのかも知れません。桃太郎は膣の奥の奥、
心の中にまで突き込むように攻め込むと、疾走中のトンネルの向こうに光る出口を感じました。
「もう・・・すぐ」
猿美が頷いた瞬間に、ふたりは同時にトンネルを抜け、この世ならざる快楽の世界の扉を開きました。
溜まっていた欲情をたっぷりと猿美の中に吐き出して、気だるく甘い時間が流れました。しかし、これから精液の
中の催淫成分が女体を侵し、桃太郎の本当の情欲の時間が始まるはずでした。少なくとも、彼は今までの経験からそ
う思い込んでいたのですが、猿美は一度の交わりが終わると黙ってすぐに着物を着なおしてしまいました。
「桃太郎・・・、悪いけど、今日は疲れてしまったから帰るね。仕事の途中で申し訳ないけど」
「いや、それは構わないが・・・」
猿美は穏やかに微笑みました。それは、幸せとともに葛藤を抱えたようなわずかな陰のある笑顔でした。ですが、
もう一回くらいヤりたかったな、ということしか考えていない最低男の桃太郎はそんなことには気づきもしません。
ただ、精液を注いでもいないのに彼を求め、精液を与えた後には肉欲を抑えてしまった猿美は不思議な女だな、と
は思いました。他の女とはまるで逆ではないか、と思います。
そう言えば、と桃太郎は思いました。まだ彼が幼い頃、数奇な出生の運命から村の悪童にいじめられたことがあり
ました。そんな時、棒きれを持っていじめっ子を追い回したのはその勇敢な少女だったのでした。あの頃は、まだ彼
と猿美は大の親友でした。その思い出にどんな意味があるのか桃太郎には理解できませんでしたが、ただ、ふと思い
出したのは間違いありませんでした。
第一部 犬猿雉編終了 第二部鬼退治につづく・・・かもしれない