「ふう…」
パンツ一枚でソファーに座り、風呂あがりのビールを飲み干しながら、溜め息をつく。
悪魔の料理教室…か。昨日まで、まともに料理なんて出来なかった恵が、
あんなに美味しいオムレツを作れるなんて、まさに悪魔的、なのかもしれないな……。
もっとも、不器用なところは直っていないけれど。……でも、そこが恵の可愛いところ、なのかな?
皿を洗っているとき、いきなり生えてきた水かきが邪魔をして、皿を何枚か割りかけたのを思い出した。
「気分がいいときに水をかぶると、つい油断して『出てきて』しまうんです」
あのとき、恵は泣きそうな顔でそう言っていた。
正直言って、あの恵の表情と仕草が、またとても可愛くて、それを思い出すだけで、僕は笑みがこぼれてしまう。
「は〜あ、気持ちよかったです。……?? どうしたんですか? 一人で笑ったりして」
「ん? いや…なんでもな………」
そのとき、頭にタオルを巻きながら、風呂からあがってきた恵が、怪訝そうな顔で僕を見つめる。
僕は、なんでもない、という言葉を最後まで言えずに固まってしまった。
何故なら、バスタオル一枚しか身に纏っていない恵の、これ以上ないというくらいの艶やかな姿に見とれていたから。
「あら? 雅幸さま、どうかしましたか? 私、何か変なこと、言いましたか?」
「ん…。いや…ちょっと、ね」
ぽけっとした顔で見つめる僕に、恵がくちづけできるくらいに顔をよせながら、問い掛けてくる。
恵の言葉で我に返った僕は、思わずしどろもどろに返事をしていた。
「?? 変な雅幸さん。……よっこいしょ。…っと。ね…それはそうと、私もお酒を召し上がってよろ
しいですか?」
「あ、あれ? 珍しいね。いつもは飲もうともしないのに、自分から言い出すなんて」
僕の態度に小首を傾げながら、軽く肩をすくめたかと思うと、隣に座り込みながらにっこりと微笑みかけてくる。
その微笑みにドキリとしながらも、話題が変わったことに何故かほっとしつつ、僕は答えた。
「ええ…まあ。何だか…今日は、とても嬉しくて……飲んでみたい、気分なんです……」
ほんのりと頬を赤く染めながら、ポツリポツリと呟く。
「ふうん。なるほどね……。さ、それじゃコップ持って」
「え? あ…! す、すみません! ありがとうございます!」
なんとなく納得した僕は、ビール瓶を手に取りながら恵に言った。
恵は一瞬、言ってる意味が分からなかったようで、ぽけっとしていたが、
すぐに慌てふためきながらコップを手に取り、僕に向かってかざしてくる。……う〜ん、本当に可愛い…。
「ぷはあっ、美味しいです」
僕がお酌したビールを一息に飲み干しながら、天井を見上げつぶやく。
そのご満悦の表情を目にしたとき、僕は自分で自分を抑えることが出来なくなっていた。
「き…きゃっ!? ま、雅幸さま!? ん…んんっ……!……」
僕は気がつくと、恵をソファーに押し倒していた。恵が手にしていたコップが床に落ち、コロンと音を立てる。
割れたかどうか……なんて、そんなことは気にしてはいなかった。
突然のことに悲鳴をあげる恵のくちびるを奪い、左腕を背中に回してしっかりと抱きしめる。
「ん…ふっ……んんっ…」
「うん……ん……んっ……」
さらに思い切って、舌を恵の口の中に潜り込ませてみようとする。
抵抗があるかな? と思ったが、意外とすんなり僕の舌を受け入れ、自らの舌を絡ませてくる。
興奮してきた僕は、夢中で恵の口の中を貪り続けながら、空いている右手でそっと彼女の胸に手を当てた。
「んん? ……んっ!…んんっ…」
胸に手を当てた途端、恵は全身を軽くピクンと震わせたかと思うと、軽く悲鳴をあげる。
そんな反応が楽しくて、僕は夢中になって恵の胸を揉み続けた。
「んんっ…ふうっ…ん…っ……んっ……んんんっ…」
僕が胸を揉むのに合わせて、全身をよじらせながらくぐもった悲鳴をあげ続ける。
……もう…いいかな? そう思った僕は胸から手を離し、同時にくちびるを開放した。
「ん…っ…。ぷはあっ…はあ…はあ…」
すでに肩で息をしている恵。その目には、うっすらと涙が浮かんでいる。…少し、やりすぎたかな?
「はあ…はあ…。雅幸さま……」
恵がとろんとした目で僕の名を呼ぶ。
僕は、その目にまるで吸い寄せられるように、恵を再び抱きしめ、軽くキスをした。
「んん…んっ…。恵…愛してるよ」
「えっ!?」
くちびるを離し、恵の顔を見つめながら何気なく言った。同時に、恵が目をまんまるに見開きながら軽く叫んだ。
「ど…どうしたの?」
突然のリアクションに驚いた僕は、恵をじっと見つめながら言った。何があったっていうの……?
「初めて……初めて…『愛してる』って…おっしゃって…くれましたですね……」
恵が涙をポロポロこぼしながら、それでも僕の顔をじっと見据えて答える。
そう…いえば……今まで、『大好き』と言ったことはあっても、『愛してる』とは言わなかったっけか。
でも、それにしても…。
「すごく…すごく嬉しいです、私……。今日は…その……忘れられない日に…して欲しい、です…んんっ……」
顔を真っ赤に染め上げながらつぶやく恵の表情に、すっかり参ってしまった僕は、再び恵のくちびるを奪った。
柔らかくて温かいものが、僕の口の中に潜りこんでくる。僕はそれに自らの舌を絡ませ、軽く吸い上げた。
僕は、恵と熱いくちづけを交わしながら、右手をそうっと恵の秘密の場所に伸ばす。
「んんっ…んふ…っ……。んっ…んんんっ!」
中指がそれをなぞった途端、声にならない悲鳴をあげながら、ピクンと体を震わせる。
同時に僕の口の中で、あれほど激しく絡み合っていた恵の舌が、ピンと張り詰めながら動きを止めた。
「んふ…ふっ……ふん…んんっ…っ!」
僕は恵の秘部をゆっくりと撫で上げながら、動かなくなった舌をくちびるで咥えて軽く顔を上下に動かす。
すると、さっきまでとは明らかに違った声が、僕の耳に届くようになってきた。
その声に合わせて、まるで思い出したかのように、恵の舌が再び動き始め、僕の舌に絡みついてくる。
顔を動かすのをやめた僕は、恵の舌を軽く吸いあげ始め、秘部を撫で上げる指を2本に増やした。
「ぷは…あ…っ……。雅幸さま……雅幸さま………」
「恵…愛してる…。愛してるよ……」
長い長いくちづけが終わり、恵のくちびるが僕の名を呼び続ける。
僕は、恵の呼びかけに答えながら、指をゆっくりと恵の中に潜り込ませた。
「あんっ…あっ……ああんっ!」
秘部から感じる刺激に耐えられないのか、恵が艶やかな声で喘ぎはじめる。
――もっと、もっと恵の声が聞きたい。喘いでいる姿を見たい――
そう思った僕は、さらに指を奥へと潜り込ませようとする。
ずぶ…くちゅっ……。
「あっ! はあんっ!!」
秘部から湿った音が響き渡り、それに合わせて恵が喘ぎ声を出し始める。
ぬちゅ…ちゅっ…ちゅぶっ……。
「ああっ、あっ! んっ…あんっ!!」
さらに指を出し入れし始めると、恵は上半身を振り乱しながら喘ぎだした。
上半身を激しく動かしている弾みで、恵を覆っていたバスタオルがめくれ、胸が露わになる。
僕は迷うことなく、お世辞にも大きいとは言えない、その胸に吸いついた。
「ひゃ…ひゃうっ!」
恵が上半身を仰け反らせながら、叫び声をあげだす。
調子に乗ってきた僕は、舌先を恵の胸の頂に触れるか触れないかの位置で動かし始める。
「ああん…っ…! はあああっ!」
両腕で頭を抱えながら、嬌声をあげ続ける恵。僕の心にいたずら心が芽生え、そっと恵に耳打ちした。
「ねえ、胸とアソコと、どっちが気持ちいい?」
「え…ええっ!?」
僕の質問に、恵は目に見えて動揺しだしていた。
「ねえ…どっち?」
「そ…そんな………あ……あ…あんっ…」
右手を恵の秘部で動かし、軽く耳たぶを舐め上げながら、再度質問する。
恵は身をよじらせながら、顔を真っ赤にさせて喘いでいる。……何だか、今日はいじめたい、かも。
「ん〜? それじゃ分からないよ? ……それとも、どっちもやめたほうがいいのかな?」
「……あんっ。い…いや……や…やめないで…くだ…さい…」
右手を抜いた僕の声に、ビクンと体を震わせたかと思うと、消え入るような声でつぶやく。
……もう少し、焦らしたほうがいいかな? そんなことを考えながら、おもむろにパンツを脱ぎ捨てる。
同時に、はちきれんばかりに膨らみ、先走り液で先端を濡らしていたモノが露わになった。
「…そりゃあそうだよね。こんなにいやらしく濡れているんじゃ、途中で止めれる筈、無いものね」
「あ! ああんっ! ……雅幸さ…まあっ!! …そんな……そんな…」
僕の下半身の状態を恵に悟られる前に、再び秘部に指を潜り込ませる。
明らかに感じているようで、ガクガクと恵の下半身は震えだした。
だが、口からは否定の言葉がこぼれようとしている。……これは…いじめるべき、だよね。
「あれ? 嘘だと思ってる? だったら、自分で確かめてみるかい?」
「……あふっ…。あっ! ああ! ああんっ!! ダ…ダメッ!!」
僕は自分の指を引き抜き、代わりに恵の右手を掴み上げ、秘部へと誘導する。
思わず両足を閉じようとする恵だが、僕が両足の間にいるため、それもままならない。
「ダメも何も……さ。動かせば動かすほど、アソコからくちゅくちゅ音がするのは、何でかなあ?」
「ああ! ああっ! あんっ! 雅幸…さま…っ……」
小首を傾げながら恵に問い掛ける。恵は自分の指で悶えながら、僕の名を呼ぶ。…もう、ひと押し、かな?
「あんっ!」
「ほうらっ……。………あ」
恵の指を引き抜いた。僕は恵に自身の秘部の濡れ具合を、その目で確認してもらおうとして思わず固ま
ってしまった。
なぜなら、秘部から溢れる蜜の量を物語るように、彼女の右手から水かきが出ていたから…。
「えっと……気持ち…よかった…って…こと…だよね?」
「……………」
予想外の展開に僕自身、戸惑っていた。掴んでいる恵の右手と顔を交互に見比べながら、しどろもどろ
につぶやく。
一方の恵は顔を真っ赤に染め上げながら、そっぽを向いていた。
「…………………す」
「…は?」
しばらくの間、二人の間では沈黙が続いていたが、恵が口を動かして何事かつぶやく。
以前として、その顔は真っ赤に染まっている。聞き取ることが出来なかった僕は、顔をよせて聞き返した。
「……………ひどい……です…。…こんな…こんなこと…する…なんて……」
「えっと…その……ごめ…ん…」
ぽそぽそとつぶやく恵に、僕は素直に謝った。それきり、何も言えずに僕はしばらく固まっていた。
「……雅幸さま…」
「は、はい」
どれくらいそうしていたか、おもむろに恵が顔をあげる。僕は思わず反射的に返事をしていた。
「あ、あの…その……でも…気持ち……よかった…です…」
「…え?」
「それで…その……雅幸さまの……アレを……私に…いただけま……ぐ…ん……んっ…」
再びぽそぽそとつぶやきながら、恵が僕の背中に両腕を回してくる。
その顔に我慢できなくなった僕は、思い切り彼女を抱きしめながら、くちびるを奪う。
潜り込ませた僕の舌に恵の舌が絡みついてくる。僕は恵の口中を堪能するのに、しばし夢中になっていた。
「ん…んふう…ん……んっんっ…」
「……恵…大好きだよ……愛してる…」
くちびるを離すとともに、恵の口から甘い吐息が漏れ出す。
そんな彼女を目の前にして、僕の口から自然と言葉が出てきた。
「雅幸さま……私も…私も雅幸さまを…愛してます……んんっ」
目を潤ませながら恵は答える。僕はそんな恵の頭を優しく撫でまわしながら、軽くくちづけを交わした。
僕の背中に回っていた恵の腕がゆっくりと離れていく。僕は恵からくちびるを離し、そっと上半身を起こした。
「いい…かい?」
「は……はい…」
恵の秘部にモノを押し当てながら、じっと彼女の目を見る。恵は、やや緊張した面持ちでコクリと頷く。
かくいう僕も、今までとは違った緊張感を覚え、胸の鼓動が高まっていた。
「……んっ…」
ぬぷっという音とともに、モノの先端を恵の中に潜り込ませた。それだけで、全身を痺れるような刺激
が襲い掛かる。
ひと息に、奥までモノを突き立てたい衝動を必死に堪え、ゆっくりと腰を動かしていく。
「………んんっ…」
「く…ううっ…」
一瞬、恵がピクンと体をすくめたかと思うと、モノの締めつけが増した。突然の快感に声が漏れ出す。
だが恵の目に、ひとすじの涙が浮かんでいるのを見た僕は、腰の動きを止めざるを得なかった。
「……大…丈夫…?」
「ええ…平、気です……もっと…もっと奥まで……」
僕の問い掛けに、恵は声を震わせながら答える。
その健気な表情に、僕は惹かれるように腰の動きを再開し始めた。
「入った…入ったよ……恵…」
「雅幸さま……私…私、嬉しいです…雅幸さま……」
モノがすべて恵の中に姿を消すとともに、僕はうわ言のようにつぶやいた。
恵は震える声で、それでもはっきりと僕に聞こえるように言いながら、両腕を僕の首に回してきた。
「でも…大丈夫……?」
「…はい……。だって…雅幸さまを……感じられるのですもの……」
涙が溢れる恵に、僕は再び問い掛けた。
だが、恵は微笑みを浮かべながら答え、ゆっくりと僕の頬にキスをする。
僕は再び、恵を思い切り抱きしめていた。
「温かいです…雅幸さま……私…私、幸せです…」
「ああ…恵……僕も幸せだよ…」
そのまましばらく抱き合っていると、恵がポツリとつぶやく。僕は恵の目を見つめ返しながら答えた。
「お願いです…もっと…もっと雅幸さまを……感じさせてください………」
「う…うん……。でも、痛かったら痛いって言うんだよ」
恵のその言葉に、心臓の鼓動が高まるのが分かる。僕は右手を恵の頬に添えながら言った。
コクリと頷きながら微笑む恵を見て、僕はゆっくりと腰を動かし始めた。
「はあ…あん……雅幸さま………」
「恵…恵……くっ」
恵が僕の名を呼ぶ。僕もまた、愛する恵の名を呼び返す。その状態でも、僕はひたすら腰を動かし続けていた。
結合部からは、にちゃくちゃっという湿った音が聞こえ、その音に興奮してさらに腰の動きを早めていった。
最初の頃こそ恵を気遣いながら、ゆっくりと腰を動かしていた僕だったが、
モノから伝わる刺激に、そんな余裕はどこかに吹き飛んでいた。それぐらい、恵の中は心地良かった。
「恵…恵……僕…僕もう……」
「キテ…キテください……恵の…恵の中で…キテくださあいっ!」
気が遠くなるような快感が僕を襲い、思わずかすれた声をあげてしまう。
僕の声を聞いた恵は、声を裏返しながら叫んでいた。その両足はがっしりと僕の腰に絡みついている。
さらに叫び声と同時に、恵の中で締めつけが増した。
「くう…恵……恵ぃ…イッちゃう…イッちゃうう!」
僕はその締めつけに耐えることができずに、叫び声とともに恵の中で果てていた。
「はあ…あ! 雅幸さま! 雅幸さまの熱いのが中に! 中に入ってきますぅ!!」
「あが……ぐ…ううっ!」
僕が絶頂に達したかと思うと、恵もまた全身を震わせながら絶叫していた。
同時に、今までに無いくらいの強さでモノが締めつけられ、その刺激に僕は思わず声をあげながら悶えていた。
「愛してるよ…恵」
絶頂に達した直後の脱力感の中、僕は恵を抱きしめながら呼びかけた。
「雅幸さま……ありがとう…ございます……」
恵が僕を見上げながら答える。その可愛い顔には、涙のあとが幾筋も流れていた。
それを見た僕は、思わず声をあげて笑ってしまう。
「ど…どうしたんですか? 突然?」
「いや…涙のあとで、せっかくの可愛い顔が台無しだ、と思って、さ」
怪訝そうな顔でじっと見つめる、恵の頬を擦りながら僕は答えた。だが、
「まあっ。雅幸さまだって人のこと、言えませんよっ」
「…え? ……あ…ああっ」
頬を軽く膨らませ、僕の頬を擦り返しながら恵が言った。水かきの膜が柔らかくて気持ちいい。
でも…人のことが言えない? その言葉が気になった僕は起き上がって、鏡の前に立ち…言葉を失った。
そう、僕自身の顔も、涙のあとでぐしゃぐしゃになっていたのだ。…いったい…いつの間に?
「仕方……無いですね。二人とも、これじゃベッドに入れませんから、……もう一度、お風呂に入りな
おしませんか?」
「うん…いいよ。今度は……一緒に…いい?」
恵が後ろから、そっと僕に抱きつきながら、言った。
僕は恵の手を取り、振り向きながら問い掛けた。恵は何も言わず、ただコクンと頷く。
その顔がとても可愛くて、僕は思わず恵を抱きしめながら、再度くちづけを交わしていた。
「んふ……んっ………。あ、あら?」
「……っと。大丈夫?」
長い長いくちづけが終わり、ゆっくりと体を離す。と、突然恵の体がよろめく。とっさに僕は恵を支えていた。
「あ、す、すみません。ちょっと…膝が……」
「ん。それじゃ……しょっと」
恵は僕に詫びの言葉を述べる。ふと見ると、軽く膝が震えていた。そんな恵を見て、僕はそっと彼女を抱き上げた。
「き、きゃっ!? あ、あの……?」
「歩けないんでしょ? だったら…こうすればいいじゃない」
目を丸くさせ、軽く悲鳴をあげる恵に、僕は答える。恵は顔を真っ赤に染め上げ、軽くうつむいていた。
シャワーで軽く体を洗いっこしてから、二人で一緒に湯船に入る。
湯船からお湯が溢れ出したのを見て、多少勿体無いと思いつつ、向かいあわせに座る恵に言った。
「よい…しょっと。二人だと…ちょっと狭い…かな?」
「私は…大丈夫です。………雅幸さまを、そばに感じられますから…」
僕の問いに恵はにっこり微笑みながら答え、しばし逡巡したかと思うとゆっくりと体を寄せてきた。
「でも…少し、ぬるいかもしれませんね…。雅幸さまは…大丈夫ですか?」
「ん? 僕は大丈夫だよ。恵の…ここが熱いみたいだし、ね」
恵がしゃがんだ姿勢のまま、目の前まで来たかと思うと小首を傾げながら、僕に問い掛けてくる。
悪戯心が芽生え始めた僕は、恵の秘部に指を軽く添えながら答えた。
「あ、あんっ…ま…雅幸さま…んっ……」
「恵……ん…んんっ…」
ピクンと体を震わせ、僕の名を呼ぶ恵。僕は、そっと彼女の肩に手を回しながら、くちびるを奪う。
恵の手が背中に回るのを感じながら、しばし舌を絡み合わせていた。
「んふ…んふ……ん…うん…んっ………。はあ…んっ……雅幸さま……。あんっ!」
くちびるを離すとともに、恵の口から甘い吐息が漏れる。その目はとろんとして焦点が定まっていない。
僕は恵の頬にキスをしながら、中指を秘部へと潜り込ませる。
その途端、恵は全身をビクンと震わせ、その口から喘ぎ声を漏らした。
「ふふっ。ここなら…エッチな汁が溢れてもわからないもんね。だからここに誘ったんでしょ?」
そんな恵の仕草に再び興奮してきた僕は、指を恵の秘部に出し入れしながら耳元でささやいた。
「そ…そんな! あ…はああっ……あん…っ……」
一瞬、我に返った表情を見せる恵だが、秘部から伝わる刺激には勝てないようで、
すぐに恍惚とした表情になり、喘ぎ声を出し始めた。
僕は逆に、恵の喘ぎ声に操られるように、ひたすら恵の秘部を指で愛撫していた。
「雅幸さま……私…私…もう……もう……ああんっ!」
恵が涙目で僕に訴えかけてくる。
その顔にたまらなくなってきた僕は、指を一気に引き抜き、同時にモノを恵の秘部に押し当てた。
「恵…いくよ……んっ…」
「はあ…あんっ! ま…雅幸さま! 雅幸さまあっ!!」
返事を待たずに、僕はモノを恵の中に潜り込ませた。
恵は嬌声をあげながら、僕に回していた腕に力を込める。僕は夢中になって、腰を動かし始めていた。
腰を動かすのに夢中になったあまり、その勢いで恵の体が完全に水中に没していたのにも、まったく気がつかなかった。
「!」
突然、すぼまりから感じる刺激。どうやら…恵が指を潜り込ませたみたいだけれど………。
菊門を犯されるのこと自体は慣れてはいる。何せ、逆に毎日せがんでいるくらいなのだから。
でも今日の刺激は、今までとは比較にならないくらい、強いものだった。
「あう…ぐ……ううっ…め…めぐ…みぃ……」
恵の指が、どんどん奥へと入り込んでくる。すぼまりから脳に直接響き渡るようなこの刺激――!
おかげで全身から力は抜け、声も絶え絶えになってしまう。
「はあうっ!!」
指がある一点を刺激したとき、今までにないくらいの大きな悲鳴が口から漏れ出す。
「あ…あ……、アアアッ……」
恵の指は、まるでそこが到着点、とでも言うみたいに挿入がピタリと止まった。
その代わり、指の先端だけが内部でうごめき、その刺激にどうしても抗うことが出来ずに、
ただひたすらに、悲鳴とも喘ぎともいえる声が次々と口から溢れだしていた。
すでに脳は、下半身から伝わる刺激に完全に溺れ、麻痺しきっている。
もう…もうどうなってもいい…! このまま…このままずっと!
「ああ……雅幸さま……ん…んんっ…」
恵が僕に呼びかけたかと思うと、突然後頭部を押さえつけながら、くちびるを奪ってくる。
もはや抗う術を持たない僕は、くちびるの隙間から入り込んでくる恵の舌にも、ただ蹂躙されるのみだった。
……? 脳の片隅で警告が走る。最初は、それが何を意味するのかは分からなかった。
………? あれ? そういえば……息が…出来ない? おかしい。鼻から思い切り吸い込めば……痛い!
突然、鼻腔から脳へと今までとは違った刺激――快感ではなく、痛み、だ――が突き抜ける。
酸素が…酸素が欲しい! 脳が命令をくだす。
それに合わせ、四肢を動かそうとする。だが……力がどうしても入ら…ない。
悲しいかな、脳は酸素を求める一方で、下腹部から感じる快感を貪欲に求めている。
そんな状況で、四肢がまともに動くはずがなかった。だが、そんな葛藤も長くは続かなかった。
段々、段々と息苦しさも快感へと摩り替わってきた、のだから。もう…もう何も考えなくて……いい、んだ………。
僕の意識は遥か彼方、虚無の中へと堕ちていく―――
「…………ま……」
深遠の闇の中、どこか遠くから声が聞こえる。だが、反応する気は無かった。
このまま心地良い絶望を味わっていたかった、から。
「………さ…ま……」
再び声が聞こえる。今度は前よりも大きく。だが、何を言っているのかよく聞き取れない。
いいんだ。あんな声を相手にすることは、無い。
「………さま…!」
女性の…声? なのか。まったく…うるさいな……僕はこの闇を味わいたいんだってば。
「……雅幸さま!」
今度ははっきりと、僕を呼ぶ声がする。……この声は………恵!? 同時に闇が晴れ、目の前が一気に明るくなった。
「雅幸さま! 雅幸さま! ……よかったです……私…私……」
目が覚めると、そこはベッドの上だった。恵が僕の手を取り、喜びの声をあげている。
その目から、涙があとからあとからあふれ、目は腫れあがっている。
「…えっと……いったい…何がどうなってるの? あれ? 確かお風呂に入って……え?」
頭がぼ〜っとして、何も考えることが出来ない。僕は混乱した頭で恵に尋ねた。
「そ…それが……その…」
恵が言うには、水中で僕とくちづけを交わしてしばらくしていると、突然僕の力が抜け、ぐったりとしてしまったらしい。
おかしいと思って目を開けると、どうやら僕は水中で完全に白目を剥いていたようで、
大慌てで風呂からあがって僕をここまで運んだ、とのことだった。
………段々思い出してきた。水中で恵とくちづけして、息が出来なくなってきたんだっけか。
それでも下腹部から感じる快感が混じってきて、段々力が抜けて……か。
「そう…だったんですね……。人間って、水中では息が出来なかったんですね。初めて……知りました」
ぐずぐずと涙声で語りながら、両手で目を擦り続ける恵。僕は恵の頭をぽんぽんと軽く撫でながら思った。
そう…か。河童は水中でも息が出来るんだ。だから息が出来ない状態、を知らないのか。
日本各地でよくある河童伝説で、水に引きずり込むってのは、意外とじゃれてるだけ、なのかもしれないな。
「でも…本当に、本当に申し訳ありませんでした。
……雅幸さまに、雅幸さまに、もしものことがあったら…私…私これからどうしたらいいのか……」
僕の沈黙を怒りと感じたのか、最後はほぼ叫び声になっていた。
アレ? そういえばこんなこと、前にもあったっけか。
何となくデジャブを覚えた僕は、下手な慰めの言葉は効果が無いと思い、恵を抱きしめながらポツリとつぶやいた。
「恵…愛してるよ」
「雅幸さま……。こんな…こんな私ですが……見捨てないでくださいね……」
涙にまみれた顔をあげ、僕の顔を見据えて懇願してくる。その目には安堵の色が浮かんでいる。
恵の顔を見て安心した僕は、返事の代わりにそっとくちびるを奪った。
くちびるを奪いながら、僕は思った。今度から、お風呂のお湯は少なめにしておこう、と―――