「あ、雅幸さま、お帰りなさい! ご飯にしますか? それともお風呂にしますか?」  
「ただいま〜。ん〜そうだね、お腹空いたからご飯にしたいな」  
会社から戻ると、エプロン姿の恵が満面の笑みで僕を出迎える。  
ああ、この笑顔を見ると、一日の疲れが癒されるなあ………。  
 
「……で、ですね。雅幸さま……さ来週の土日って、ご予定とかありますか?」  
「ん? いや、特に無いよ。どうしたの?」  
食事中、恵が僕の顔色を伺いながら問いかけてきた。  
「実は……昼、お買い物に行きましたら、福引大会を行なってまして、こんなのが当たったのです」  
「どれどれ……ペア2組・雪山御招待券……?」  
恵が差し出すチラシを見てみると、どうやら商店街で行われる福引で、特賞が当たったらしい。  
「ふうん、面白そうだね。ただ……行ってみるのはいいけれど、もう一組ってどうしようかな?」  
などと答えながら、会社のメンバーを思い出していた。  
…が、生憎と僕の会社には2人暮らしの者で、雪山に興味があるようなのは、いない。  
「あ、それなんですけども、お料理教室の誰かをお誘いしてみたいな、と思ったんです。  
それで……よろしいでしょうか?」  
「そっか、もちろんいいよ。何せ恵が引き当てたものなんだし、僕に心当たりはいないし、さ」  
僕が天井を向いて考えていると、申し訳なさそうな顔をした恵が再び問いかけてきた。  
「は、はい! ありがとうございます! 久々のスノボです……あ〜、楽しみです!」  
「へえ。久々ってことは、恵ってスノボやるんだ」  
両手を握り合わせ、天井を見てうっとりとした表情でつぶやく恵に、  
つられて笑みを返した僕は、唐突にあることを思い出した。  
 
僕ってスノボやったこと、無かったんだけど、大丈夫かなあ……? ま、いっか。なんとかなるよ。  
 
 
「う…うわっ!!」  
バランスを崩した僕は体勢を整えなおそうと、必死になって両手を振り回した。  
だがそんな抵抗もむなしく、前のめりに倒れこみ、さらに勢いで顔面を雪に突っ込んでしまう。  
ううむ……なんとかならない、かもしれない。……一人で釣りでもしてたほうが、よかったかな?  
「あららら。雅幸さま、大丈夫ですか?」  
「う、うん…だ、大丈夫……っと…っとっと……」  
恵が心配そうな顔をしながら、助け起こそうと手を差し伸ばしてくれる。  
その手を受け取り、ゆっくりと立ち上がろうとした。が、どうしても上手くバランスが取れない。  
「ええっとですねえ。出来るだけかかとに重心を向けるように、心がけてください。  
そうしないと、今みたいに前のめりに、つんのめってしまうんですよ」  
慌てふためく僕を尻目に、恵は手を離しながらにっこりと微笑んだ。  
えっと…かかと……かかと………。  
まるで何かの呪文のように、頭の中で唱えながら、恵のアドバイスに従った。  
一応、転ばないようにはなるのだが、ずるずるとまっすぐ下にずり落ちてしまう。  
「それでですね、そのままずり落ちないようにするには、  
膝を曲げて腰から上を軽く後ろへと、寄りかからせるようにするんです。  
………そうですね、椅子に腰掛けるような感じ、と言えばいいんですかね?  
そうすればとりあえず、その場にとどまることが可能です」  
なるほど。……でもこの姿勢、膝と腰が辛いんだけど。  
「で、それが出来たなら、どちらかの膝の力を抜いてください。すると、その方向へと滑っていくはずです」  
恵の言うとおり、スルリスルリと滑り始めていく。と、その時――  
 
「わ〜っ! 誰か止めて! 助けて〜!」  
「あ、あらら大変。アイリスさん、そのまま転んでくださ〜いっ!」  
僕たちがいる場所より少し上で、女性が叫び声をあげながら、結構なスピードで滑り降りていた。  
それを見た恵は、慌てた声で女性に向かってアドバイスを送る。  
 
ザシュッ ズザザザザ……  
 
恵の声が届いたのかどうか、次の瞬間には盛大な音と雪煙をあげながら、女性は斜面を転がっていた。  
 
「あ〜。大丈夫でしたか、アイリスさん?」  
「え、ええ…な、何とか……」  
丁度、僕の進行方向に転がっていた女性――アイリスさんに声を掛ける。  
アイリスさんは、頭をフラフラ揺らしながらも返事をしてきた。……大丈夫、かな?  
「ええっとですねえ……。アイリスさん、さっきも言ったハズですよ。転ぶときは手をつくな、って」  
「う……そだっけ?」  
小首を傾げながら、恵が説教を始めだした。アイリスさんは、上目遣いに恵を見返していた。  
「そうですよ。背中から転ぶときはお尻から。前のめりには転ばないように、  
どうしても転ぶときには両手を開いて、パッドを入れていれば膝から、が基本です。  
手を突いた場合、支えきれなかった腕が、折れてしまうこともあるんですから」  
「はあい。気をつけま〜す」  
いつになく厳しい表情で説教を続ける恵と、くちびるを尖らせながら、不承不承頷くアイリスさん。  
……やれやれ、いつも聞いてる話とは、まったく逆の関係だな。  
 
…って、そうそう。アイリスさんは恵が通う、料理教室の先生なんだ。  
恵の話では、しょっちゅうドジを踏む恵を優しく諭してくれる先生、とのことだったけれども……。  
まあ、当たり前か。人それぞれ、得意分野があるのだし。……って、恵は人じゃあないんだけど。  
 
「で、ですね。アイリスさんの場合、重心の置き方が逆になってしまってるんですよ」  
「は? 逆?」  
厳しい表情から一転、にこやかな表情に戻った恵が、手をくるりと返しながら言った。  
その説明に、アイリスさんは目を丸くしながらつぶやいた。…いや、目を丸くしたのは僕も、だけれど。  
「そうです。かかとに重心を置くのは、体が下を向いている場合の話です。  
体が上を向いている場合、重心はつま先にしないと、ならないんですよ」  
「あ、そうなの?」  
「ええ。だってそうでしょう? 体が上を向いているのに、かかとに重心を置くと、  
斜面と板との間の角度が無くなって、安定性が悪くなるんですから」  
恵が右手を斜めにかざし、そこに左手を添えながら説明する。ああ、そう言われるとその通りか。  
 
ズザザザザッ  
 
「……っと。どうアイリス? 上手く滑れるようになった?」  
そのとき、突然背後からアイリスさんを呼ぶ声がした。  
振り返ると、そこにはアイリスさんの彼氏である、秀人さんがいた。  
彼は普通に滑れるので、超初心者の指導は恵に任せて、しばらくひとりで滑っていたのだ。  
そりゃそうだよね。僕たちを相手にしていたら、まともに滑る回数が減ってしまうだろうし――  
「………全然ダメ。料理のほうがずっと楽」  
「えーっと……それは…その…えっとお…」  
アイリスさんが肩をすくめながらつぶやくと、その言葉に思い切り恵が反応していた。  
「あらあ? 何だか違う人が反応しちゃったねえ。何があったのかなあ?」  
そんな恵の反応を見て、妖しい笑みを浮かべながらアイリスさんが詰め寄ってきた。  
……この微笑み……何だか本物の悪魔みたい……って、あ、そうだ。  
何故悪魔なのかって、料理教室の名前が『悪魔のお料理教室』だからさ。  
大体、本物の悪魔なんて、この世にいるはず無いじゃないの。  
 
「その…えーと……あーまーそのー」  
「あ。そしたらさ、初心者は初心者で練習してるから、上級者は上級者で滑ってる、ってのどう?」  
何だかアイリスさんの突っ込みに、恵の思考回路が壊れかけているみたいなので、話題を反らしてみた。  
もっとも、それが効率がいいから、とも思ったのも本当だけどね。  
「んー。指導役を代わろうかなと思って、こっちに来たんだけど、それでもいいんですか?」  
「そ、そうですねえ。さっき言ったことが頭の中に入って、実践できるようになれば、  
とりあえずは、ゲレンデの上から下まで降りてくることは、出来るようになると思いますけど……」  
ゲレンデに座り込んでいる秀人さんが、恵に問い掛けてきた。  
やっと混乱状態から覚めた恵は、くちびるに指を添えながら小首を傾げる。  
「そうなんだ。じゃあ時間を決めて、集合するってことでいい?」  
「ええ、僕は全然構いませんよ」  
秀人さんの問い掛けに、僕はそう答える。が、しかし、アイリスさんがとんでもないことを言い出した。  
「そういえばさー。御主じ…秀人と恵ちゃんって、どっちが上手いのかなあ?」  
「さあね。一緒に滑ったわけでもないし」  
立ち上がり、軽く体を動かしながら、秀人さんが答える。まったく興味無い、と言った風情で。  
「だったらさ、どっちが早いか競争したらいいじゃない。私は見てみたいな♪」  
さっき恵をいじめようとした時と同じ、悪魔の微笑を浮かべたアイリスさんが言った。  
「そうも言いますが……あまりスピードを出しすぎたら、周りの人たちに御迷惑が掛かるし……」  
恵が両手を開きながら、たしなめるように言った瞬間、その場の時間が止まった、気がする。  
 
「周りの人お? いったいどこにいるのお?」  
「ええっと……そ、そのお………」  
大げさに辺りを見渡す仕草をしながら、アイリスさんが言った。たちまち口ごもる恵。  
そう、この雪山、雪が少ないせいなのか、ほとんど人がいないのだ。  
僕たち以外の人で、まともに滑っているのは……あ、数え切れそうだから止めよう。  
ここの向こう側にもゲレンデがある。多分、皆そこに行ってるんだろう。そう思うことにした。  
でないと、何だかここで働いている人が、気の毒になってくるし……。  
「もしかしてさあ。恵ちゃん、勝つ自信無いのかなあ? それならそれで構わないけどね♪」  
「ま、まあまあ。別にそんなのに拘っても仕方ないでしょ?」  
挑発するようなアイリスさんを、秀人さんがたしなめる。ただ何故だか、悪意を感じないんだよね。  
何だか…純粋に、『知りたい』って無邪気に言っているような……何だか不思議な人だ。  
だから、僕はじっと静観していたんだけど……。  
「分かりました。それなら、致し方ありませんですね」  
ふうーっと長い息を吐きながら、恵がひとこと。口調は丁寧だが、内に秘める何かを感じるような…。  
こんな恵を見たのって、出会ってから初めてかもしれない。  
「あ? ちょ、ちょっと恵さん? ………たっく、アイリスも変なこと言うんじゃないよ」  
リフトに向かう恵を見て、秀人さんが慌てたように後を追う。  
「じゃあさあ、ここに早く戻ってきたほうが勝ち、ってことでいいよね〜!」  
秀人さんに向かって手を振りながら、アイリスさんが無邪気に叫んだ。…やれやれ、どうなるんだか。  
 
「さって、と」  
「あ、あれ? 練習、どうしたんですか?」  
二人の姿が見えなくなった途端、アイリスさんが板を外し始める。驚いた僕は思わず問いかけていた。  
「ん。面倒だからいいよ。これで、二人が競争している間は休めるし、戻ってきたらお昼だもん」  
悪びれる風でも無く、後ろにある時計を指差しながら、アイリスさんが答える。  
振り返ると、時刻は11時50分を示していた。確かにその通りだが……。  
けろりとした表情のアイリスさんを見て、本当に彼女は悪魔なのではないかと思い始めていた。  
「あれえ? 休まないの?」  
「え、ええ。僕はとりあえず、忘れないように続けます」  
如何にも意外、という表情のアイリスさん。僕は僕、だしね。  
それに、いつになるか分からないけれど、恵と一緒に滑ってみたい――そんな風に思い出してきたから。  
「そ。頑張ってね」  
アイリスさんは、まったく興味無しといった仕草で、ひらひらと手を振りながら、近くの椅子に座った。  
……ふと思ったけれど、スノボに興味無かったのなら、何で恵の申し出を了解したんだろ?  
 
「あ、来た来た!」  
――5分後、アイリスさんが上を指差して叫ぶ。確かに小さい人影が二つ、こちらに向かっている。  
よくあんなので、二人だって分かるよね。視力いくつなんだろ?  
……それはそうと……二人とも、凄い速さで降りてくるなあ。大丈夫なんだろうか?  
 
「そら頑張れ! 御主人サマ!」  
………普段から、そう呼んでいるのか。ま、人それぞれだし関係無いけど。  
そういえば、恵も僕のことを『雅幸さま』と呼ぶからね。  
にしても……やっと二人だと認識できたけど……二人の差はほとんど無い。……凄いもんだ。  
さすがに僕も練習を中止して、事の成り行きを見守ることにした。  
 
「って、えっ!?」  
「あっ!?」  
思わず、二人揃って叫んでしまう。何故なら、恵が突然空中に向かって飛び跳ねたから、だ。  
おかげで、秀人さんが先行する形になった。が、何があったんだ恵!?  
だが、驚くのはその後だった。恵は空中で一回転したかと思うと、綺麗に着地。  
その途端、恵の滑走スピードが増し、ぐんぐん秀人さんに追いついてきた。  
「御主人サ……秀人! 恵さんすぐ後ろにいるよ!」  
アイリスさんが、警告の叫び声をあげる。……今さら言い直しても、もう遅いけど。  
 
ザシュッ ズザザザザッ  
 
「……あ、ははは」  
僕は開いた口が塞がらなかった。結局、恵は最後の最後で秀人さんを追い越したのだ。  
「ふ〜う。完敗ですね、まったく」  
「いやあ、秀人さんもかなり速かったですよ」  
ゲレンデにへたり込みながら、秀人さんが言った。その表情はさばさばしている。  
板を外しながら、恵が秀人さんに微笑み返した。息ひとつ乱してないのはさすがと言うべきか。  
「で、でもさ。何でいきなり空中に飛び跳ねたの? 大丈夫だった?」  
我に返った僕は、恵に問い掛けた。一応、ケロリとしてるから大丈夫だろうけど……。  
「ああ、あれですか。……ちょっと向きを忘れてまして」  
「は? 向き?」  
舌をぺろりと出して答える恵に、僕ではなくアイリスさんが聞き返した。でも…どういう意味?  
「えっとですね……実はずっとグウフィーで来てたんですよ。  
で、丁度段差があったから、向きを入れ替えたわけでして」  
「はあ〜!? グウフィーでアレだったの!?」  
今度は秀人さんが問い返し、呆然とした表情で恵を見つめている。……で、グウフィーって何?  
「グウフィーってのは逆足のこと、ですよ。………それにしても…グウフィーで……あれだけって……」  
秀人さんが力無く答え、その場に寝っ転がる。……よく分からないけど、凄いのだろうか?  
 
 
結局、その後はアイリスさんの思惑通り、休憩時間となった。  
で、午後からまた滑って……僕は転んで、夕食を摂って、  
露天風呂に入ったんだけど……混浴で無かったのが少し残念だったかもしれないけど、  
体のことを気遣うなら、それはそれでよかったのかもしれない。  
 
「ふ〜うっ、疲れた〜」  
ベッドに横になり、思わず口をついて出る言葉。何だか久しぶりに運動をした気がするし。  
「あの…雅幸さま……」  
「えっと、さ。今日は僕、スノボで足腰ガクガクだから、止めとこ。ね?」  
浴衣姿の恵が、潤んだ瞳で僕の寝ているベッドに腰掛けてきた。  
ただならぬ気配を感じた僕は、慌てて恵を制しようとした。…情けないけど、これが事実だし。  
「そうですね。最初のころは余計に力が入るので、負担が掛かるのでしょう。  
一度慣れてしまえば、足腰がガクガクになることなんて、ないですよ」  
「ふうん、僕もそんな風になれるのかな?」  
「大丈夫ですよ。誰だって、最初は初めてなんですから。  
…それじゃ、早く体がほぐれるように、マッサージでもいたしましょうか?」  
「い、いやいいよ。恵もゆっくりしてればいいんだし」  
「御遠慮することなんてありませんよ。私の我侭を聞いていただいたのですから、そのお礼、です」  
「あ、そ、そう? じゃ、お言葉に甘えようかな?」  
「はい、分かりました。それでは、そのまま力を抜いて、楽にしていてください……」  
 
「ああっ、気持ちいいよ、恵」  
「そうですか。やはり、少し張ってますね。このままにしておくと、明日は動けなくなりましたよ」  
あまりの心地よさに、吐息が漏れる。それを聞いた恵は、軽くたしなめるように言った。  
「げげ、そうなの? やっぱりマッサージ頼んで正解だったかな? ありがとう、恵」  
「まあっ、雅幸さまたら、お上手ですねえ。……それでは…」  
僕が礼を言うと、恵は満面の笑みを浮かべながら答える。が、その手が突然、僕のパンツに伸びる。  
「ちょ! ちょっと何するの!? 今日はしないって……ぐ…ん……んんっ…」  
不意を突かれた僕は、思わず抗議の声をあげようとしたが、途中で止まってしまった。  
恵が、自らのくちびるで、僕のくちびるを塞いだからだ。  
「ん…んんっ……ぷは…あっ……。雅幸さまが動けないだけ、ですよね?  
だったら……だったら私が動けばいいだけ、ですよ」  
「め…恵……んっ…」  
くちびるを離した恵が僕を見つめ、にっこりと微笑みながら言った。  
後ろ手に、僕のモノをさわさわと撫で回しながら――  
欲望に抗うことが出来なかった僕は、肯定の意を込めてそっと恵にくちづけをしていた。  
 
「……それでは…早速……ん…んふっ……ん…んんんっ……」  
恵が軽く舌を伸ばし、モノの先端を舐めあげると、見る見るうちに僕のモノは、立ち上がり天を向く。  
「………っと…ん…んふ…んっ……ん…」  
「あ…ああっ…め、恵……ああっ」  
さらに、指先でちょんちょんとモノを突ついて、硬くなったことを確認すると、  
満足そうな笑みを浮かべた恵は、おもむろにモノを頬張った。  
立て続けに襲い掛かる刺激に下半身が震え、堪えきれずに甘えた声が漏れてしまう。  
恵がゆっくりと口を離し、代わりに右手でモノを握り締め、上下にしごきあげる。  
するとそのたびに、恵の唾液とそれ以外の、粘り気を帯びた液体で濡れているモノは、  
くちゅくちゅと淫猥な音を立て続ける。僕の腰は無意識のうちに、動き出していた。  
「くふっ……気持ち…イイですか?」  
「あ、ああ……さ、最高だよ…恵……」  
そんな僕の反応を見て、恵がひとことつぶやく。  
まるで、心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚えた僕は、喘ぎながらつぶやくのが精一杯だった。  
「雅幸さま……それはよかったです……ん…れろ…れろれろっ」  
「くううっ…め…恵い……」  
僕の反応を見て、満足そうな笑みを浮かべた恵は、再び舌を伸ばし、  
モノの先端から溢れ出している液体を、美味しそうに舐めすくっていた。  
 
「雅幸さま……それでは…よろしいですか?」  
「ああ、いいよ…恵……あ…ああっ……」  
浴衣の前をはだけた姿の恵が、僕の上に馬乗りになりながら、問い掛けてきた。  
腰掛けたその先には、完全に勃ちあがった僕のモノがあり、先端が恵の割れ目と擦れあい、  
ピクピクと震えるそれは、まるで恵の中に入るのを今か今かと、待ち構えているようにも見える。  
僕は恵の両手を握り締め、軽く頷いた。  
と、ゆっくりと恵が腰を落としていく。すると、ずぶずぶと音を立てて、僕のモノは恵の中へと消えていく。  
同時に感じる快感に、目の前が真っ白になるような錯覚を覚えながら、喘ぎ声が漏れる。  
「はあ…雅幸さま……気持ちイイ…気持ち…イイです……」  
「恵…恵……僕も…気持ちイイよ……あ…ああ、あああっ!!」  
恵がうわごとのようにつぶやきながら、腰を上下に揺さぶる。  
すでに恵の舌技に興奮しきっていた僕は、たちまち恵の中へと思いの丈をぶちまけていた。  
「あ……熱いのが…雅幸さまの熱いのが……私の中に入り込んできます……」  
「恵……」  
天を仰ぎながら声をあげる恵。恍惚とした表情で、腰を動かし続けたまま――  
僕はモノから伝わる刺激に、歯がガチガチ震えながら、愛しい人の名前をつぶやいていた。  
 
「さて…本番はこれから、です」  
「え? め…めぐ……みいっ!?」  
ゆっくりと腰を抜いた恵は、妖しく微笑みながら、確かにそう言った。  
一瞬、言ってる意味が分からずに、聞き返そうとした僕だが、最後まで言うことは出来なかった。  
恵がおもむろに、僕のすぼまりへと指を潜らせたから、だ。  
たちまち、下半身が別の生き物のように、ビクンビクンと震えだす。  
さらに、一度果てて勢いが収まりかけていたモノが、再び勃ちあがり、存在を主張していた。  
「雅幸さま……どうですか? もう、お嫌になりましたか?」  
「…い…いや……あ…ああっ! あっ! ああんっ!」  
指をずぶずぶと奥の方まで潜らせながら、恵が僕のほうを見つめて問い掛けてくる。  
後ろから感じる快感に、完全に溺れている僕は、首を振りながら女性のような喘ぎ声を漏らしていた。  
「アッ! アアッ! あんっ!!」  
恵の指が、僕の中の何かに触れる。すると、言葉では表現しきれない快感が僕を襲う。  
強いて言うならば……絶頂に達する寸前の刺激が、ひたすら続いているような感じと言えばいいのか。  
ともかく僕は、凄まじいまでの快感の嵐に、涙まであふれだしていた。  
「はあ…はあっ……はっ…はあ…めぐみ……めぐ…み……あっ…ああっ! あああっ!!」  
肩で息をしていると、涙でにじむ視界の隅で、恵が僕のモノを握り締めているのが見えた。  
さらに、口を開きモノを咥えこもうとして――そこで僕の意識は、完全に途切れていた。  
 
「ん……ここ…は………あっ」  
「あ。目を覚ましましたか、雅幸さま?」  
次に意識が戻ったとき、視界に飛び込んできたのは、恵の優しい笑顔だった。  
どうやら、膝枕をされていたようだったが、今ひとつ状況が飲み込めなかった僕は、  
いつもと違う天井の模様を見て、ここが自宅ではないことを思い出していた。  
「えっと……あ、そうか。そういえば…雪山に来てるんだっけか……あ」  
体を起こして、窓のほうを見やった僕は、感嘆の声が漏れだす。  
窓の向こうでは、しんしんと雪が降っていたからだ。  
「ええ。冬の神様がたくさんたくさん、雪を降らしてくれています。明日はスノボ日和ですよっ」  
「そう…だね。僕もどうにか…頑張るよ。恵に、少しでも追いつけるように、ね」  
嬉しそうにはしゃぐ恵に、僕は答えた。どうせなら一人で滑るより、一緒に滑るほうが楽しいし。  
「うふふっ、楽しみにしてますよ。……あ、そうだ」  
「何? どうしたの?」  
僕の言葉に優しく頷いた恵は、何かを思い出したかのように立ち上がった。  
今気づいたが、お互い一糸纏わぬ姿だった。もっとも、今さら照れることも無いんだけど。  
「雅幸さま……少し遅くなりましたが…バレンタインデーのチョコです。召し上がってくださいね」  
隣の部屋から戻ってきた恵は、その手に小さな箱を持っていた。  
わずかに、窓から差し込む光によって映し出される恵の姿は、  
どこか幻想的なものを思い起こさせ、僕の心臓は大きく鳴り響いていた。  
「ああっ、そうか……って、これも料理教室で作ったのかい?」  
そんな風習があったことを、すっかり忘れていた僕は――何せ、今まで貰ったこと無かったし――  
思い切り場違いな感想を述べていた。だが、恵は軽く首を横に振りながら答えた。  
「いえ…私がアイリスさんに無理を言って、頼んだものなのです」  
 
 
「ん? 恵ちゃん、どうしたの? また居残りしたいの?」  
「い、いえ……実は、お願いがあって……」  
料理教室が終わり、私は後片付けを始めているアイリスさんに、思い切って話しかけた。  
「なあにかな、改まって? 言っておくけど、告白してもムダだからね。私は女性に興味が無いし」  
「あの………そ、そうではなくて、手作りチョコの作り方を…教えて欲しいな、と思いまして……」  
思いも寄らなかった言葉に、かあっと顔が熱くなるのを感じる。だが、どうにか伝えたいことは伝えた。  
「ああっ、そうか……そういやあ、それはしなかったっけねえ……」  
「もしかして……忘れていたのですか?」  
片目を閉じ、頭をポリポリとかきながら、アイリスさんはつぶやいた。  
「いや、覚えていたよ」  
「だ…だったら、何故……」  
私の質問に、あっさりと答えるアイリスさん。思わず私は再び質問を投げかけていた。  
「ん〜。女性限定の集まりならそれでもいいんだけど、何せここ、独り者の男まで混じってっから、  
そんな状況で手作りチョコの作り方教えても、ただの嫌がらせになっちゃうじゃないの」  
「あ…た…確かに……」  
アイリスさんの答えに、彼らには失礼だけど、なんとなく納得しちゃった。  
「でしょ? でも、ま、せっかく恵ちゃんもやる気になってるようだし、  
個人的になら教えてあげちゃっても、いいよ」  
「ええ!? ほ、本当ですか!? あ、ありがとうございます!!」  
肩をすくめながら、微笑みかけるアイリスさんに、私は思い切りお辞儀をしていた――  
 
 
「………そういうわけで、丁度いい機会だからって、今回わざわざ御一緒してくれたわけなんです。  
秀人さんがスノボが得意でなかったら、別の機会になっていたでしょうけれど」  
「そうなんだ……どうもありがとう、恵。恵…僕もずっと、恵を愛しているよ」  
恵の説明で、昼間浮かんだ疑問――アイリスさんが何故ここに来たのか――が、ようやく理解できた。  
手作りチョコの作り方を教えるために……ねえ。ホント、凄くいい人だね、彼女。  
そんなことを考えながら、恵からチョコを受け取った僕は、そのまま恵を抱きしめた。  
「……雅幸さま……ありがとうございます……」  
恵は声を震わせながら、そっと僕の背中に手を回してくる。  
そのまま僕は、恵のくちびるを奪っていた。そうさ、ずっと愛しているからね。心の中でそう思いながら。  
 
 
 
 
「あうっ…ア……アイリスう……」  
「ふふっ、可愛い御主人サマ♪ でも、これじゃダメね。全然お仕置きにならないじゃないの」  
チロチロと僕のモノを舐めすさりながら、アイリスが言った。  
もっとも、困るどころか、思い切り嬉しそうなんだけど。  
「…ア…アイリス……もっと…もっと続けて……」  
「ダ・メ♪ 言ったでしょ、これは恵ちゃんに負けた、お仕置きなんだから」  
僕は震える声で、アイリスに懇願した。だが、あっさりと一蹴されてしまう。  
そう。昼間、アイリスの料理教室の生徒とスノボで競争をしたんだけど、負けてしまったんだ。  
どうやらそれが、アイリスの逆鱗に触れたようで、僕は夜中に叩き起こされた――と。  
で、いつもと違うのは…僕の両手首がベッドの梁に縛り付けられてたこと、なんだけど。  
「そ…そんな……だって、彼女の腕前って普通じゃないし…あぐうっ!」  
「言い訳無用。負けたのは事実でしょ? しかも恵ちゃん、全力じゃなかったらしいし」  
抗議をしようとする僕だが、モノに歯を立てられてしまい、言葉が中断してしまう。  
さらに、アイリスがとどめの一撃。……そうさ、反対の足で滑ってて互角だったんだからね。  
「で…でも……。ぐ…ぐうううっ……」  
でも何で、こんなお仕置きを受けなきゃならないの?  
と言おうとしたが、出来なかった。何せ、アイリスはいきなり猿轡を僕に噛ませたから、だ。  
「さあってと。小さい御主人サマは元気いっぱいみたいだし、私も頑張ろっと」  
「ぐうう…ぐううう……」  
満足そうに笑みを浮かべたアイリスは、モノに向かって話しかけながら、僕に馬乗りになった。  
 
「はあ…ああっ、気持ちイイ…気持ちイイよ……小さい御主人サマ………」  
「ぐう…ぐううっ………」  
自らの胸を揉みしだきながら、アイリスはうつろな目でつぶやく。  
モノから伝わる刺激に耐えられず、喘ぎ声を漏らそうとするが、くぐもった声しか出せない。  
「何が言いたいのかなあ? もしかして私の胸、触りたくなってきたあ?」  
「……ぐ…ぐうっ」  
と、アイリスが腰を動かしながら、問い掛けてきた。  
もしかしたら、解放してくれるのかも……そう思った僕は、何度も首を縦に振った。  
「そ……でもね、これじゃお仕置きにならないでしょ?  
……でもま、特別サービスで目の前で動かしてあげるっ♪ …は……ああんっ」  
「くう…ううっ……」  
だがしかし、その考えは甘かったようで、戒めは解かれず、アイリスが体をこちらにもたげてきた。  
おかげで僕の目の前で、アイリスの胸がゆさゆさと揺れる。  
ある意味、さっきよりも辛くなってきた僕は、必死に目を瞑ろうとしたが、  
それでも揺れる胸を眺めていたいという欲望には勝てず、じっと見つめ続けていた。  
 
「んふっ…んんっ……凄い…凄い気持ちイイ……御主人サマは、気持ちイイ?」  
「…ぐう…うっ」  
耳元にそっと顔を寄せ、アイリスがつぶやく。  
ようやく、ようやく『小さい』が頭に付かず、僕に話しかけてきた――などと思いつつ、首を縦に振る。  
いや、実際凄く気持ちイイんだし。  
「そうなんだ……でさ、この前だったか、レンタルビデオで見たんだけどさ、  
こんな情景があったんだよねっ……あんっ…」  
「むご? むごむご! むごおっ!」  
相変わらず腰は動かしたままで、上半身をゆっくりと起こし、アイリスはつぶやいた。  
…そ、それってまさか!? 嫌な予感を覚えた僕は必死に頭を振り、声にならない悲鳴をあげた。  
「あの時……彼女はおもむろにアイスピックを取り出し、男の胸にザクッと……」  
「ぐぐっ! むぐっ! むぐぐっ!!」  
まるで、あのときの俳優そっくりな目で僕を見下ろすアイリス。…まさか…まさか本気なの!?  
「でもね…私はそんな野暮なことはしない。……だって、それきりじゃ、つまらないじゃない。  
ね、御主人サマ……初めて出会ったときのこと、覚えてる?」  
「! んぐ…ぐぐぐっ!」  
だが、僕の考えを読んでいたのか、コロリと表情を変えたアイリスは、優しく僕に問い掛けてきた。  
初めて出会ったとき……忘れようとしても忘れられないよ。何せ、あの時は……え? まさか?  
そう思った直後、後ろの穴から伝わる刺激。  
…そう、あの時も身動きが取れなかった僕の後ろの処女を、尻尾で奪われたんだっけか。  
と、言うか、あの時に初めてだったのは、後ろだけでは無かったんだけど。  
「ふふっ…覚えていてくれたみたいね。うっれしい…愛してるよ、御主人サマ……ん…んん……」  
「ん…ぐ…ん…んんんんっ……」  
僕の顔色を見て肯定の意と受け取ったのか、嬉しそうに微笑むアイリスは、  
猿轡を外したかと思うと、上半身をもたれかかせ、僕の両頬を抱えながらくちびるを重ねてくる。  
まさに、魂を奪い去るかのような情熱的なくちづけに、僕はただ身を委ねていた。  
 
「あ、ああ…アイリス……女神サマ……。僕も…僕も愛してるよ……」  
長い長いくちづけが終わり、うつろな目でつぶやく僕。…本当に、魂奪われてたりして。  
って、ある意味本当に、奪われてはいるんだけど。  
「は…ああ、あんっ! ああっ! イイッ! イッちゃう! イッちゃううっ!!」  
「女神サマ! 僕も、僕も…もう! もうダメ! イッちゃう! イッちゃうよっ!! く、ううっ!!」  
アイリスの腰つきが激しさを増し、それに伴って声も段々大きくなってきた。  
僕もまた、下半身と耳から伝わる刺激に抗えず、叫び声とともにアイリスの中で果ててしまった。  
「あ…ああああんっ!!」  
「く……ぐうっ…」  
その直後、アイリスは羽根をピンと張り詰めさせ、絶頂に達したようだった。  
同時に、アイリスの締めつけが強さを増した。まるで、モノからすべての精を吸い尽くさんばかりに。  
 
 
「ごめんね御主人サマ、痛かったでしょ?」  
「痛かったって言うよりも…女神サマの胸を触れなかったのが、辛かった、かな?」  
僕の手首を擦りながらアイリスが言う。僕はアイリスの頭をくしゃくしゃと撫でながら答えた。  
そうさ、何せ僕だけの大事な、そして気まぐれな女神サマ、だものね。  
「ふふっ。甘えん坊な御主人サマ♪ ホント、かっわいいっ。………あ」  
「? どうしたの女神サマ? ………あ」  
アイリスは、僕の頬っぺたを突つきながら言うが、ぱっと顔をあげる。  
不思議に思った僕は、アイリスが見ている方向を見て、同じ声をあげていた。  
そこには窓があり、うっすらと外の様子が見え、しんしんと雪が降っているのが見えたからだ。  
 
「綺麗……まるで、雪の精霊たちが踊っているみたい……」  
「ははっ、女神サマがそういうことを言うんだ」  
二人でベッドに腰掛け、じっと降り積もる雪を眺めていると、アイリスがポツリとつぶやいた。  
「なっ……。私が言ったら似合わないとでも言いたいのかい?」  
「い、いや、そうでなくて……むぐ…ん…んんっ……ん?」  
ちょっと拗ねたような表情を見せるアイリスに、説明しようとしたが、  
突然くちびるを塞がれてしまい、最後まで言えなかった。  
アイリスの舌が、僕の口中に入り込んできて……甘い?  
「ふふっ。バレンタインデーの贈り物、さ。一週間遅れの上に、余り物、だけどな」  
「あ…余り物?」  
怪訝そうな顔をしている僕に、アイリスが微笑みながら言う。  
最後の言葉の意味が分からなくて、再び聞き返した。  
 
「ああ、恵ちゃんがね。雅幸クンに、贈りたいとか言ってさ。さっき作ってたんだけど、そのあ・ま・り」  
「ふうん。…どうもありがとう」  
どこか腑に落ちないところもあるけれど、貰ったものは貰ったものだし、僕は素直に礼を言った。が、  
「………ホントは、贈りたくは無かったんだけど……」  
「え? そ、それって……」  
アイリスの言葉に、思わず口の中で転がしていたチョコを、落っことしそうになってしまう。  
まさか…これが元で、契約が切れてしまうのか、それとも……やっぱり僕のことはどうでもよかった、のか?  
「……あ。か、勘違いするなよ。………バレンタインデーは愛を語る日、何て言うけどさ、  
……それがイヤなんだ。だって…私は毎日でも御主人サマを愛しているって言いたいもの…ん…んんっ」  
多少慌てた表情で、理由を説明するアイリス。  
その言葉にたまらなくなった僕は、気がつくとアイリスのくちびるを奪っていた。  
「……んっ。……そう…だよね。僕も女神サマを……ずっとずっと、愛しているって言い続けたいよ」  
くちびるを離し、アイリスに言った。するとアイリスは、無言で顔を真っ赤に染めあげ、うつむいた。  
と、うしろを振り返ると、彼女の尻尾が嬉しそうに振れているのが見えた。  
 
「あ、そうだ。もしかして、明日もスノボやるの?」  
「もちろんだよ。だって、こんなに降っているのなら、やりがいがあるじゃない。…え? な、な?」  
しばらく二人でもたれ合っていると、アイリスがぱっと顔をあげながら言った。  
僕は降りしきる雪を見つめながら答えるが、いきなりアイリスに押し倒された。  
「そっか…だったら……だったら、明日は立てなくなるぐらい、ヤレばいい、のか」  
「ちょ、ちょっとアイリス!?」  
僕を押し倒したまま、アイリスは独り言をつぶやく。この豹変の仕方に、僕の頭は混乱をきたしていた。  
「足腰がガクガクになるくらいだったら、私たちと同じレベルになるだろう?  
……それなら、ずっと一緒にいれるから、な」  
平然とした顔で、そら恐ろしいことをつぶやくアイリス。その目は…本気だ。  
「ま、待ってよ! それっていったい……ん…んんっ」  
何回する気なんだよ! と言おうとしたが、  
例によってアイリスにくちびるを塞がれ、その言葉が口から出てくることは、無かった。  
 
おしまい。  
 

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