衝撃が走った。  
 勝手に腰が動き、口からヘンな声が出た。  
 いきなり、一番敏感なところに触られていた。  
   
「ああっ」  
 
 また、同じことをされた。  
 そこをそうされると、身体がびくんとなる。  
 この位置からは、ケンジの顔しか見えない。  
 だから、何をどうされているのか、はっきりとはわからない。  
 でも、その感触から指だということはわかる。  
 最初にたっぷり濡れている入り口付近に触られる。  
 そしてすぐに、クリを刺激される。  
   
「あうっ」  
 
 なんか、簡単に声出ちゃうんですけど。  
 恨めしくて切なくて、ケンジを睨みつけた。  
 一瞬目があい、私の方から逸らした。  
 駄目だ。気迫負けした……。  
 っていうか、どうしても開いてしまう両脚や、きつく縛られたロープがヤらしすぎる。  
 それに、脚の間に見えるヤツの顔も、恥ずかしくて見てらんない。  
   
「俺さ……」と、ケンジは真面目な声でいった。「ここがどうしても気になるんだよね……」  
 
 次の瞬間、またクリに衝撃が走った。  
 身体が跳ね、声が漏れる。  
 大きく喘ぐと、再びそこを撫でられる。  
   
「あっ、いやっ」  
「ホントに嫌なのか?」  
 
 トントンと、まるでノックするみたいにタッチされる。  
 私はそれに答えるみたいに、あっあっと喘ぎ声を上げてしまう。  
   
「おお、返事するぞ」  
「ば、ばかっ」  
 
 またトントンとノックされる。  
 私の身体が意思と無関係に蠢き、熱い声で応える。  
 ノックは段々と速くなっていく。  
   
「あっあっ、いやっ」  
「気持ちよさそうなんだけど」  
「だ、だめっ」  
 
 もちろん、たまらなく気持ちいい。  
 欲しかった感覚をいきなり与えられ、怖いくらいの衝撃だった。  
 でも、その衝撃を全部吸収して、身体が快感に震えている。  
 腰が動くのが止まらない。  
 声も止まらない。  
 おかしくなっちゃうよ? っていうか、なってるよ?  
 ケンジは本当にそれでいいわけ?  
 
 クリへのタッチがまた少し速くなる。  
 音楽の速度標語でいうなら、アンダンテからモデラートへ。  
 歩くような速さから、中くらいの速度へ。  
 
「あ、あ、あ、あっ」  
 
 軽いタッチがもどかしい。  
 もっとしっかり触られたい。  
 でも、今の私は超敏感モードだ。  
 快感が波のように、クリから全身に伝わる。  
 もどかしさはそのまま、それでも徐々に昇っていく。  
 このまま続けられたら、絶対におかしくなる。  
 もしかしたらイっちゃうかもしれない。  
 
 ケンジの指、なんか今日は凄い。  
 それとも、私がホントはMだってことなのか。  
 縛られて、超恥ずかしい恰好で、軽くクリ触られてるだけなのに。  
 ただ、興奮が高まれば高まるほど、もどかしさも大きくなる。  
 ケンジの愛撫は優しい。優しくてヤらしい。  
 でも本当は、もう少し強くても無問題。  
 いいから、もうちょっと、もっと、その……。  
 
 顔が熱い。  
 息が荒い。  
 私は超恥ずい恰好で、ぐちゃぐちゃのあそこを触られてる。  
 でも、でもでも、それでも言えない。  
「クリはアレグロ(軽快に)でよろしく」なんて。  
 ソフトなタッチでも、もう少し速ければ。  
 多分。イっちゃう。  
 もどかしさの先に、激しい快感が待っている。  
 今はまだ随分先にあるけれど、間違いなくたどり着く。  
 だから。  
   
「ケンジ……」  
 
 恥ずかしい。  
 でも、我慢できない。  
 自分でもよくわからないまま、何かせがむようなことを口走りそうになった。  
 でも……。  
 指の動きが変わった。  
 ノックが終わり、そっと押さえつけられる。  
   
「ああっ」  
 
 遠くに頂上を予感していた快感の質が変わった。  
 ひどく切ないもどかしさが、クリを中心に渦巻いている。  
   
「ふふ、固くなってる」  
「ばっ、ばかっっっ!」  
 
 だから、そういうこと口にするなー。  
 顔から火が出そうだ。  
 でも、すぐにそれどころではなくなった。  
 これまでとは別の衝撃が走った。  
 
 似たようなことは、ちょっとだけ自分でもしたことがある。  
 だから、どうされたのかはすぐにわかった。  
 クリを指で挟まれている。  
 ただ、今は自分の指じゃない。  
 力の加減も触り方も微妙に違う。  
 その違いが、逆に苦しいほどの快感だった。  
 わかっているのか偶然か、ケンジの指が私を追いつめようとしていた。  
   
「あうっ」  
   
 挟む力が、少しだけきつくなった。  
 しかしすぐに指が離れた。  
   
「お、逃げるなよ」  
   
 身体は縛られている。逃げることなんてできない。  
 わずかに遅れて、私はケンジの言葉の意味を理解した。  
 すぐにまたクリを挟まれる。  
 激しい快感が駆け抜けた。  
   
「ああああっ」  
 
 一気に快感が破裂する。  
 腰がガクガクした。  
 その動きで、また一瞬指がクリから離れる。  
   
「だから、逃げるなって」  
「ああっ、ああっ」  
 
 また挟まれる。  
 それ、超ヤバい。  
 苦しい。苦しいくらいに、気持ちいい。  
 クリがつままれている。  
 力の加減を覚えたのか、ケンジの指が離れなくなった。  
 そして、しごくみたいにされた。  
 衝撃が走った。  
 衝撃は一度ではなかった。  
 激しい快感が、連続で炸裂する。  
 突然、無理やり押し上げられた。  
 目の奧が熱くなった。  
   
 あ、……イっちゃう。  
 指の動きは止まらなかった。  
 しっかりと同じ速度で、快感の衝撃が連なっていく。  
 身体がぶるぶると震え始めた。  
   
「あああああああっ」  
 
 喉をのけぞらせ、身体の奧から声が押しだされる。  
 すぐに快感がはじけて、頂きを超えた。  
 イくっ。  
 ケンジの指はおかまいなしに、同じ動きを繰り返す。  
 そのリズムで、衝撃が押し寄せてくる。  
 不自由な態勢で縛られた身体が、それでも激しく動く。  
 頭の中の熱が全身に広がり、さらにクリから新たな快感が走る。  
 気がつくと、すでにケンジは指の動きを止めていた。  
 ただ放そうとはせず、挟んだ状態で押さえられている。  
 ドクンドクンと、そこが脈打ち、その度に衝撃が走った。  
 イってる。――まだ終わらない。  
 私は全身を震わせながら、なかなか収まろうとしない快感の波に漂い続けた。  
 
 全身に気怠い快感が満ちていた。  
 痙攣は収まったけど、まだたっぷりと余韻が残っている。  
 イっちゃったんだ。……ケンジの指で。  
 ちょっと激しくされた。  
 それだけで、簡単にたどりついた。  
 なんで今までイけなかったのか不思議なくらいだ。  
 熱い息を感じた。  
 薄く目を開いて、驚いた。  
   
「や、やだ……」  
   
 ケンジと目があった。  
 縛られたまま大きく開いた私の脚の間、すぐ近くにヤツの顔があった。  
 あそこに、そっと触れてきた。  
   
「あうっ」  
 
 鋭い刺激に腰がうねる。  
 痛いようなくすぐったいような、鋭い感覚に、私は身をよじった。  
   
「マリ……」  
 
 名前を呼ばれた次の瞬間、また触れられた。  
 ちょんと、クリをつつかれた。  
 
「くぅっ……」  
「マリ、イった?」  
 
 すっかり忘れてたけど、とんでもなくヤらしい恰好で縛られている。  
 こんな姿勢でイっちゃったことに、突然羞恥がこみあげる。  
 それをじっと見ていたケンジも、恨めしい。  
 私は黙ったまま、肯定も否定もせず、目を閉じた。  
 
 
 次の瞬間、ぬらっとした感触がクリに生まれた。  
 
「あ」  
 
 そっと触れてきたものが、はっきりとした動きに変わる。  
 舌で舐められていた。  
 濡れて柔らかな舌とはいえ、イったばかりのクリは超敏感だ。  
 なんか、逃げ出したくなるような感覚に、私はもがいた。  
 でも、縛られてるから、結局逃げ場はない。  
 しかも、両方の太ももを掴まれた。  
 ふくらはぎと太ももは、ロープで縛られてぴったり隙間なくくっついている。  
 その間に、ケンジの手がぐにっと入り込む。  
 腿の内側の方から両手で押し広げられ、股は大きく開かれたままの状態だ。  
   
「やっ、ばか、駄目っ」  
 
 悲鳴に近い声で抗うと、舌の感触が消えた。  
   
「マリ、イった?」  
「あ、う、……うん。だから、あの、……もういい」  
「でも、俺まだ、満足してない」  
 
 あ、……しまった。そうか。  
 申し訳なかった。君のことすっかり忘れてたよ、ケンジ。  
 こんな恰好で、こういうこと言うのもどうかとは思う。  
 でも、他に言い方思いつかないし。  
   
「いいよ、……入れて」  
「あ、でも……」  
 
 ケンジは何か遠慮してるみたいだった。  
 でも、私の方はちゃんとイけて身体的には満足だ。  
 快感の余韻も、まだたっぷり残っている。  
 ケンジが入っている時の感触や、熱い息を耳元で聞くのも幸せだ。  
 だから、ヘンタイプレイの姿勢はそのままでも、かまわないと思った。  
 
「好きなようにして、いいんすよ。これじゃ抵抗できないし」  
 
 そういって、私はにまっと笑ってやった。  
 ケンジはどこか照れたような笑いを浮かべていた。  
   
「そっか、そうだな。俺としたことが、うっかりしてた。今日は徹底的にやるって決めたんだよ」  
「……や、やだ。怖いなぁ」  
 
 確かにちょっと怖い。  
 怖いけど、まあ、いいよ。  
 存分に楽しみたまえ、ケンジくん。  
 ――そんな風に思った私は、すぐに後悔した。  
 どうやら私は、ケンジを甘くみていたらしかった。  
   
「じゃあ、今度イく時は、ちゃんと教えろよな」  
 
 厳しい口調で、私のカレシはそう宣言したのだ。  
 そして甘い接吻を、自分のカノジョに、正確にはカノジョのクリにしたのだった。  
 

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