すぐに舐められると思った。
あるいはまた指で触られるか。
だけどケンジはそうしなかった。
身体を起こした状態で、私のお尻の向こうに座りこんでいる。
びっちり縛られた私の脚は大きく開いたままだ。
もう、閉じる力は残っていない。
大事な部分が完全にさらけ出されていた。
さっきからずっと見られてたわけだし、触ったり舐めたり、私よりもヤツの方が余程、身体の構造も含めて詳しい筈だ。
それでも突然、羞恥が膨れ上がった。
「ちょ、ちょっと! そんなトコ、じっと見るんじゃないっ」
「そんなトコって、どんなトコ?」
「ば、ばかっ」
優しい筈の私のカレシは、超意地悪モードだ。
なんか、いいように弄ばれている。
確かに、快感に翻弄されている時は、恥ずかしいどころじゃない。
感じだすと頭の中が熱くなって、何も考えられなくなる。
興奮で羞恥心すら忘れてしまう。
でも、しばらく阿呆な会話をしていたせいで、今は興奮もそこそこ、頭もそれなりにシャンとしている。……その筈だ。
だからどうしても、これまでのことや、まさに今自分がどんな恰好しているかを意識してしまう。
あそこは、ぐちゃぐちゃだ。
できるだけ見ないようにしてるけど、見なくたってわかってる。
その恥ずかしい姿を、中でも一番恥ずかしい部分を、ヤツは嬉しそうに眺めているのだ。
「見るなって」
「マリのクリ、すげー可愛い」
「ばかばか、ばかっ」
「怒ったマリも可愛いしさ」
マジ、ムカツく。
身体が自由だったら、殴ってるかも。
でも、縛られてるし。
なんか、ヤらしい気分も抜けないし。
どうせなら、いっそのこと強引にイかせてくれりゃいいのに。
――って、タンマタンマ、私ったら何考えてるんだろ。
やっぱ壊れたか?
自分自身に不安を感じてる私に、ケンジが妙に真剣な声でいった。
「マリ……」
「な、なんだよ」
「愛してる」
こんなヤらしい恰好に縛り上げた状態で、愛の言葉を口にすなー!
そういうことは、もっとムードのあるシチュで言いやがれ。
……それに。
なんでオマエはそうなんだ?
愛を囁いたばかりのその口を小さく尖らせて――。
そうしてケンジは、私の股間に顔を埋めてきた。
「ちょ、おま、ばかっ!」
なんか前にも似たような展開があったような。
成長しないケンジが馬鹿なのか、それとも私が阿呆なのか。
恥ずかしくて残念で、腹立たしくて悔しくて。
「愛してる」なんていわれた直後だ。これが普通のキスならば、そりゃ私だって悪い気はしない。
だけどヤツは、すぼめた唇をわずかに開き、クリの周りを覆うように重ねてきた。
これじゃ素直に喜べない。
なんか泣きたい。
さっきそこにキスされた時は、刺激が強すぎた。
「もういい」って思った。
だけど、今度はぜんぜん、辛くない。
っていうか、心はともかく、身体はびっくりするくらい悦んでしまっていた。
ついさっき、自分のカレシの残念ぶりを思い知らされたばかりだというのに、身体の方は全然残念がっていない。
というより、「お待ちしてましたぁ〜」とばかりに、あの興奮が蘇ってくる。
すぐに「ああん」なんて声まで上げてしまい……。
どうなのよ、自分。
ちょっと、情けない。
だけど、すぐに快感が走り、気力の全てが削がれてしまい。
長い長いキスだった。
さっきみたいな、ちゅっ、みたいなヤツじゃなくて。
もっとディープな濃いヤツ。
でも、されてるのは口じゃなくて、あそこ。
周りを唇で包まれて、クリを吸われる。
そして舌が絡まって。
右に左に舌が動き、敏感な突起が倒された。
「あううっっっ」
いきなりの濃い愛撫に、忘れていた快感がいっきに弾けた。
さっきみたいなソフトな触れ方ではない。
スピードはそんなに速くないけど、しっかりとクリが圧迫されている。
何度も左右に倒すみたいに舐められ、それから上下に動かされる。
舌先で先端をなぞられたかと思うと、今度は全体を転がすみたいに震わされる。
すぐに、かーっと顔が熱くなった。
頭の中にも、あっと間に熱が広がっていく。
あそこはすでにたっぷり濡れている。なのに、さらにどくどくと奧から溢れてくる。
「ああ、ああ、ああ……」
私の声、大きい。
さっきよりも、もっと。
なんかもう、我慢とか、そういうの無理。
恥ずかしいとか、いやらしいとか、どうでもよくなる。
だって、こんなに気持ちいい。
身体が、悦んでいる。
本当は、して欲しかった。
そうやって、いやらしくされるの気持ちいい。
「ああっ、ああっ、ああっ」
声を上げる度に、快感が増えていく。
ケンジの舌が気持ちいい。
舐められて、昇っていく。
ゆっくりだけど、もう私は知ってる。
そうやってもどかしさが溜まっていくのも、イくための序章だってことを。
やがて快感が突然大きくなって、そこから先は割とすぐだってことを。
「マリ、好きだ」
「う、んっ」
ケンジの舌が離れた瞬間、身体が勝手にびくんとなった。
そして、どうしようもない欲求が押し寄せてきた。
駄目、続けて!
「マリのここが好きだ」
そういって、ケンジはすぐに、ちゅるっとクリを吸う。
だから返事は、悲鳴に近い喘ぎ声にしかならなかった。
何かを持っていかれるような、ヤバい快感。
苦しくはない。
だけど、おかしくなる。
一瞬バチっと、目の前に小さな光が走るみたいな気がする。
再び、ケンジの口が離れた。
「マリのクリが大好きだ」
「あうっ」
返事を待たずに、クリを吸われる。
縛られたまま、腰が跳ねる。
そしてまた、吸われる。
イく時の快感にも似た、鋭い刺激が駆け抜ける。
一瞬、気が遠くなる。
そして、唇が離れる。
それも、いい。
吸われて、解放される時の刺激。
そしてまた吸われる悦び。
強くて、鋭くて、それがどんどん積み重なっていく。
「ああっ、ああっ」
ああ、そんなにされたら――。
大きな快感がはじけそうな予感が、膨らんでいく。
それ続けられたら、確実にイく。
まだだけど、でも、近づいてる。
ああ、それ……。
気持ち、いい。
でも。
ケンジの口がまた離れた。
「気持ちよくなってるか?」
聞くなよ、わかってるくせに。
こんなに濡れてて。
こんなに声出てて。
全身がひくひくしてて。
ああ、もう、イきたい。
イきたくなってる……。
再びそこをなぞられた。
舌だ。
いつものように、撫で上げるみたいな舐め方。
ぞくぞくするような快感が、クリからお腹に走り抜ける。
たっぷり舐められ吸われたクリは、もう何をされても信じられないほどの快感として受け止めるみたいだ。
そして――。
下から舐め上げられるのを何度か繰り返され、突然それがやってきた。
ひとまわり、大きな快感。
頂上にいたる激しい流れ。
しかも、前より強く舐められている。
はっきりとした感触が後から後から重なって、ぐいぐい大きくなる。
「ああっ、もう、だ、めっ」
速い。
もう限界に近づいている。
絶頂へと続く快楽の奔流が、熱く太く育っていく。
ああ、もう。
届きそう。
前より凄い。
もう、無理。
イっちゃう。
ああっ、イく、私、イっちゃうよ。
駄目、ホントにイっ……あああああ。
そして。
舌が、離れていた。
刺激が無くなっていた。
わけわからなかった。
「あぁっ、やめちゃ駄目っ!!」
身体はびくびくしている。
あそこもずきずきしている。
何度も何度も、腰が動いた。
だけど、ホントにぎりぎりのところで、まただ。
まだ、イってないのに。
つらい。つらすぎる。
イきたい。
イきたいっ。
ああ、もう、もうっ。
「気持ちいいか?」
ケンジの声がした。
それだけで涙が出そうになった。
「う、うん、……だからっ」
「イきたい?」
「ああっ、うんっ、うんっっ」
そしてまた、舌が戻ってきた。
下から上へ。
回すように。
軽く吸われた。
キスするみたいに。
「あうあああっ」
快感は一切消えていなかった。
身体の中に、爆発寸前の快楽が貯えられている。
まるで身体全体がクリになったみたいに。
クリへの刺激、その感覚が全身に満ちている。
――ああ、また。
また昇る。
もうすぐ。
そしてまた、舌の動きが止まった。
「あああああああああ」
でも、今度は舌が離れていかない。
クリに押し当てられたままだ。
しかも、さっき最高におかしくなったところ。
下の方、――何故か深く感じる部分に、舌先がもぐりこんでいた。
でも、動きはない。
ただじっと、押しつけるようにされている。
「あああおっっ、そ、れっ」
ぎしぎしと音をたてて、全身が揺れる。
身体はもうイく寸前だ。
クリがずきずきと疼いている。
その超敏感な突起を持ち上げるみたいに、舌が押し当てられている。
弾ける間際の巨大な快感と欲求が、その内側に溜め込まれている。
そしてさらに大きく膨らむ。
「嫌ぁああっ、もうっ、イきそうっ。だから、だからっ」
もう駄目っ。
イきたいイきたいイきたいホントにイきたいっっっっっ。
舌が、それ、ホントに、ああ、嫌、そこは、それ、おかしく、駄目。
そしてまた。
クリにあてがわれた舌が、僅かに動いた。
「ぅぁあああっ、もうっ」
目の奧に火花が散るような模様が見えた。
感覚の爆発があった。
お腹の奧でも快感が破裂していた。
いっきに高まる熱が、お腹から胸を走り抜け、頭の中ででたらめな方向に弾けた。
クリが脈打っている。
その脈で、新しい快感が爆発する。
爆発は前の快感に重なり、さらに大きく弾ける。
そしてその快感が弾け続けるクリを、ゆっくりと押し上げるように舌が動いた。
舌の動きはごく僅かだった。
それでも、クリ自体の興奮と脈動で、たっぷりと溜め込まれていたものが限界を突破した。
「ああイっちゃうっ、……イくっ、イくイくイくーっ!」
あ、あ、凄い、気持ち、ああいや、いや、いいいいっ。
舌、ケンジ、の、舌ぁ、あ、あ、あああ、ゆっくり、ああ、いやああ。
い、や、いや、ああイくっ。
イ、く、イ、ってる、イってるっ。
そこ、ああ、舌、動く度に、ああ凄、い凄いま、だ、いや、まだっ。
おかし、い、いや、いや、いやぁっ。
ああっ、それ、ヤバ、い、クリ、舌で、ああっっっっっ。
い、い、い、い。
ま、だ、イって。
ああっ、終わら、ないっ。
どうか、なっちゃうっ。
ああ、まだ、イって、る――。
どうし、て、ああっ、どう、して、クリが、こん、なの、もう、ああもう、もう駄目、それは、もう駄目ぇっっっ!
イってるのに、それでもまだもどかしかった。
クリに押しつけられた舌の動きは、相変わらずゆっくりだ。
だが、根元の方から持ち上げるように舌が動くと、いったんは弱くなり始めた脈動が再び強くなる。
規則的な脈動のひとつひとつが快感となって、さらなる高みへと押し上げられる。
頂きはひとつではなかった。
何度もそこを超え、その度にまた高く昇って次の頂きを超えていく。
白や赤の稲妻みたいな模様が、何度も光るのが見えた。
全身が硬直し、同時に四方八方に拡散しながら、ふわふわと浮き上がる。
怖いほどの快感が次々と炸裂し、意識が弾け飛んだ。
一瞬のことなのか、どれくらいの時間のことなのかはよくわからない。
私は凄く高いところを次々と超え、あるいは深いところへ落ち続けた。
(つづく)