私は天井を見ていた。  
 ただぼうっと、見上げている。  
 あまりうまく、ものを考えられない。  
 火照った身体が、どうにも怠かった。  
 イった後だから仕方ない。  
 一人エッチの後でもちょっとはそうなる。  
 さっき初めてケンジの指でイった時には、いつもよりそれが強かった。  
 でも、今度はその気怠い感じが段違いだ。  
 凄い快感だった。  
 わけわからないほど感じた。  
 細胞のひとつひとつが、全部イったみたいな気がする。  
 ゆっくりとあぶられて、最後の最後に完全燃焼したみたいな。  
 その瞬間、自分がどうなったのか、はっきりとはわからない。  
 ただ、馬鹿みたいに大声出していた。  
 真っ白な場所を漂っていたような気もする。  
 どれくらいそうしていたのかわからないけど、フワフワした感じが今も残っている。  
 身体の奧がまだ熱っぽい。  
 怠くて仕方ないけど、それさえ不思議なほど心地よい。  
 
 ぎしっと音がして、ベッドが揺れた。  
 ケンジがベッドを降りていた。  
 縛られた足や手首は痺れたみたいになっている。  
 指先の感覚が鈍くなっていて、うまく動かせない。  
 身体のあちこちに痛みもあった。  
 だけど、何故かあまり気にならない。  
 腰のすぐ横に、頭があった。  
 膝立ちになったケンジが、ベッドの横にいる。  
 ヤツはじっと私の身体を見ていた。  
   
「ちょ、ちょっとっ」  
 
 突然羞恥が膨れ上がった。  
 ――どこ見てんだよ!  
 ケンジは覗き込むように、顔を近づけている。  
 反射的に身体をひねった。  
 でも、きつく縛られ力の抜けた身体は、いやいやをするように揺れただけだ。  
 どうやったって逃げる術はなかった。  
 ケンジの顔が近づいた。  
 ちゅ、っと、小さな音がした。  
   
「ぅくっっっ!」  
 
 くちづけされた。  
 直接クリにされたわけじゃない。  
 そのちょっと上、襞が合わさってるアタリ。  
 だけど、イったばかりの身体は、超敏感になっている。  
 感電したような刺激が、走り抜けた。  
 泣きだしたいほどの衝撃だった。  
   
「ああ、もうっ、ちょっとっ! ――もうイったんだってば」  
 
 それだけでは終わらなかった。  
 舌がそこを舐めてきた。  
 直接クリは舐められていない。  
 わずかにずれた上の方を、迂回するように舌が動く。  
 でも、敏感になった今の私にとって、そうされるだけで泣きたくなるほどの刺激だった。  
 しかもその刺激は、間違いなくクリに伝わっている。  
 未だズキズキが収まっていない。  
 そこへ小さな衝撃が伝わる。  
 それだけで、重苦しい快感が、身体の奧に広がっていく。  
 ビクビクと身体が震える。  
 
「ああっっ、やめっ」  
 
 そこをそうされると、確かに快感を感じる。  
 でも、刺激が強すぎた。  
 もういい。今日はもういらない。  
 あれだけ激しくイって、すでに欲求はなかった。  
 ただ、甘い余韻にひたっていただけだ。  
 気持ちいいのが、つらい。  
 感じるけど、感じたくない。  
 許して、って感じだった。  
 
「よせって。もう終わり。舐めるんじゃない」  
 
 縛られた身体をギシギシ揺らしながら、それでもなんとか息を静め、できるだけ落ち着いた声でそういった。  
 すっと、舌が離れた。  
 よ、よかった……。  
 だが、そう思ったのも束の間、再び指で触れてきた。  
   
「馬鹿っ、やめろって!」  
「悪いけど、無理」  
 
 ――って、全然悪いとか思ってないだろ。  
 ケンジの指は直接そこに触れているわけではない。  
 襞の両側を優しく撫でている。  
 でも、そこをそうされる度に、鈍くて重い刺激が内側に伝わる。  
 ずんっと、小さな衝撃が走り、あっという間に息が荒くなる。  
   
「可愛いな……」  
「ば、ばか、ヤだっ」  
「すげー可愛い」  
「いうなっ」  
 
 やがて指は、外からそっと挟むようにして動きを止めた。  
 ずきんっと、クリが脈打つのがわかった。  
 
 あ、馬鹿それ、最初にイった時の触り方……。  
   
「ああっ、ヤだっ、もうイったってば」  
「男と違って、女は何度でもイけるんだぞ?」  
「そ、んなの、いいから。もういいっ」  
「俺は、マリが何度もイくとこを見たいんだよな」  
 
 私の抗議などおかまいなしで、ケンジは指先をゆるゆると動かす。  
 くっと、喉の奧が詰まるような衝撃だった。  
 確かに直接触られてはいない。  
 でも、先程のもどかしさはない。  
 イった後の敏感な突起には、まさにドンピシャの適度な刺激。  
 
「あぅっ……」  
「ふふ、声もすげー可愛い」  
「だ、めぇっ」  
「駄目じゃないよ。気持ちいい証拠じゃん」  
 
 ああ、もう、ホントにお腹いっぱいなんだってば。  
 何度もイきたいわけじゃない。  
 もう満足してる。  
 だから、もういいって。  
 
「クリが、半分顔のぞかせてる。可愛いよ」  
「ば、馬鹿っ、そんなこと……」  
「マリのクリ、ホントに可愛いし。普段は隠れてるのに、半分顔出してて」  
「ああっ、言うなっ」  
「一生懸命立ち上がってくるのが、けなげっていうかさ。鬼カワユス」  
「ば、馬鹿、馬鹿、馬鹿ーっ!」  
 
 なんだ、その無茶な日本語は。  
 ことばおじさんが泣いてるぞ。  
 っていうか、もう許して。  
   
「クリが勃起してる」  
「だ、黙れっ」  
「可愛いよ」  
「う、うるさいっ。そんなこといわれて喜ぶと思うかっ」  
「あ、ごめん。じゃあこうすればいい?」  
 
 ケンジの指が動いた。  
 左右から挟み付けたまま、上の方にずらされる。  
   
「いあああっっ」  
 
 そこが、熱い。  
 痛いほど張りつめている。  
 そのままの状態で、ゆるゆると上下に動かされた。  
 
 刺激が強すぎる。  
 でも、その強い刺激で、頭の中が真っ白になる。  
 顔がかーっと熱くなり、何も考えられない。  
 どくっと、身体の奧からまた、溢れてくる。  
 やだ、嘘――? また?  
   
「ごめん、強すぎたか?」  
 
 私の反応が気になったのか、指の動きが止まった。  
 でも、もう私にはわかっている。  
 ケンジにやめるつもりはない。  
 ってことは、またあれが始まってしまう。  
   
「あ、あ、あ、あ……」  
 
 指は止まっている。  
 ただ、じっと挟まれたままだ。  
 それだけで身体がびくっとなる。  
 さっきと同じ脈動が、クリにある。  
 それが、ゆっくりと大きくなっていく。  
 ――ああ駄目、もう駄目だってばっ!  
 
「マリのクリ、なんか光ってる」  
「い、やぁ……」  
「ピンク色で奇麗だぞ?」  
 
 見るな、馬鹿ぁっ。  
 もう、言い返すこともできない。  
 あそこがズキズキしてる。  
 指でずらされ、剥きだしにされていることはぼんやりとわかってる。  
 そんなことされたら、――ああ、もう、おかしい。  
   
「あ、あ、あ、あ……」  
「痛かったら痛いっていえよ?」  
 
 次の瞬間、そこを挟んだ指の力がほんの少しだけ強くなった。  
 たったそれだけのことで、私は喉をのけぞらせ、大声をあげていた。  
 それくらい鋭い快感だった。  
 そして、それが来た。  
 クリを中心に渦巻く切ない熱が、急に大きくなった気がした。  
 ああ、嘘、もう……。  
 さっきはたっぷり焦らされて、ゆっくり昇っていった。  
 なのに今度は、あっという間に昇り始めている。  
 それはもしかしたら、イった後の私に、まだたっぷりと興奮が残っていたせいなのか。  
 あるいは、とにかくイくことで、この昂ぶりを終わらせたいという無意識の働きなのだろうか。  
 それともただ、身体がさらなる快感を受け入れるようになった、とか?  
 もしかして、身体がイくことを覚えた?  
 2回もイって、もうお腹いっぱいの筈だった。  
 無理やりされて快感はあっても、ちょっとつらいと感じた。  
 なのにこのままでは、またイきたくなってしまう。  
 ああ、やだ、私の身体、おかしくなってる……。  
 
 2本の指が、クリの両脇を押さえている。  
 内側に挟むようにされ、そのままそっと押しつけられる。  
 ずるっと、擦れる。  
 無理やり押しだされる感触もある。  
 そうされると、一瞬気が遠くなる。  
 すぐにでもイってしまいそうな鋭い快感が、全身に走り抜ける。  
 勝手に声が出て、身体がびくびくと痙攣する。  
   
「マリのクリ、好きだ」  
「あぁっっ」  
 
 ケンジは何か言う度に、少しだけ指を動かす。  
 だから、どうしても喘ぎ声を上げてしまう。  
 ……まるで、返事するみたいに。  
 
「マリクリ、可愛い」  
「あぁっ、な、にっ、や、だっ」  
「マリクリ、マジで好きだ」  
「いやっ、い、やぁっ」  
 
 一瞬、何いわれたのかもわからなかった。  
 またすぐに指の動きが止まった。  
 ケンジが優しく囁いた。  
   
「マリクリ……」  
「……え? あ、あっ、馬鹿っ」  
 
 今度は指が動かなかった。  
 泣きたいほどの切なさを感じた。  
 快感が、欲しかった。  
 動かして、欲しい……。  
 とっくの昔に、私はおかしくなっていた。  
   
「マリクリぃ〜」  
 
 ヤツはどこか甘えたような猫なで声を出している。  
 まるで名前を呼ぶように。  
 ――変な呼び方、するなっ。  
 っていうか、勝手に名前つけるんじゃないっ。  
 馬鹿だ。真性のアホがここにいる。  
 だけど、そのアホがまた指をちょっと動かしただけで、強烈な快感と興奮が走り抜けた。  
 
「あぁっ、い、やぁっ」  
「マリクリぃ〜、返事はぁ?」  
「あっ、あっ、そんなとこ、返事するわけ、ないっ……」  
「オマエが答えればいいんだって。マリのクリなんだから、今どんな感じかも、どうされたいかも全部わかってるだろ?」  
 
 ああ、ケンジ、すげー意地悪だ。  
 でも、ちょっと指が動いただけで、何も考えられなくなる。  
 今度は少し強くされた。  
 しごくように、押しだすように。  
 それからまたちょっと、動きが小さくなる。  
 でも、すぐにまた強く挟まれる。  
 その繰り返しだ。  
 
「あ、あ、いやっ、もうっ――」  
   
 ぐっと押し上げられる感覚があった。  
 小さな快感の爆発が連なり、大きな奔流になっていく。  
 意思とは関係ない。  
 それが始まったら、身体が勝手に頂上を目指してしまう。  
 ああ、いや、イきたくなってる……。  
 ああ、また? また、イっちゃうわけ?  
 おかしい、身体がおかしい。  
 どうにかなってしまう。  
 身体だけじゃない。  
 頭も、心も、全部変になる。  
   
「マリクリ、気持ちいい?」  
「あ、あああっ、ああっ」  
「マリクリ、感じてる?」  
「いや、いやぁっっっ」  
 
 まるで質問に答えるみたいに、声が出る。  
 ケンジの指が、頭の中までヤらしくする。  
 ――私、マリクリじゃないっ。  
 そう思うけど、でも、マジでおかしくなってる。  
 もっと。  
 駄目になる。  
 ああ、もう、また……。  
 イきたいっっ!  
 

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