身体が熱かった。  
 なんか、凄くしたくなってる……。  
 っていうか、してるし。  
 気がついたらあそこ触っていて、しかもどんどん濡れてきている。  
 クリが疼いてる。  
 指で挟むと、途端に身体がビクってなった。  
 頭の中で、ヤツにぎゅーっと抱きしめられているところや、キスされているところを思い描こうとした。  
 だけどそれは、上手くいかなかった。  
 それよりも、こないだみたいに足を縛られ、舐められる想像ばかり浮かんでくる。  
 ケンジの舌の感触を思い出そうとしてしまう。  
 ――うっく。  
 ぬるっと、指が滑った。  
 中に固くて丸い感触がある。  
 外側の皮を挟んで動かすと、なんか凄い快感だ。  
 ……困った。  
 指の動きが、いつもよりやらしい。  
 ケンジのやり方を、真似している。  
 両側からクリを挟んで、じっとそのまま止めておく。  
 そうやって、欲求が高まっていくのを待つ。  
 ああ、ずきずきする。  
 もどかしい。  
 じれったい。  
 指、動かしたい……。  
   
「んっ」  
 
 はあ……。  
 ちょっとだけ動かした。  
 ちょっとだけでも、気持ちいい。  
 気持ちよくて、またすぐに動かしたくなる。  
 歯止めが効かなくなっていた。  
 以前より、感じやすくなっているみたいな気もするし。  
 少しだけ、また動かす。  
 あっ……。  
 なんか、すげー気持ちいいんですけど。  
 ケンジっ。  
 舐めて。  
 イメージの中で、舐められる。  
 舌が、凄く気持ちいい。  
 ああ、それ。  
 こないだされた、根元の方。  
 下から指で、ケンジの舌が、あ、あ、あ。  
 駄目、そんなに速くされたら、すぐにイっちゃうから。  
 もっと感じていたい。  
 だから、……そう、ゆっくり。  
 息が熱い。  
 私、すっごくヤらしくなってる。  
 ケンジの舌の感触を思い出すと、どうしても指が速くなる。  
 気持ちのいい場所を探ってしまう。  
 舐めて。触って。吸って。  
 いつの間にか、他のことを考えられなくなっていた。  
 
 頭の中を、熱いベールが覆っていく。  
 そのうちアレが来そうな予感がある。  
 突然ぶわっと快感が大きくなって、イきたくて仕方なくなる感じ。  
 そうなったら自分では止められない。  
 指が勝手に動いて、すぐにイっちゃうだろう。  
 興奮はどんどん大きくなっている。  
 欲求も膨らんでいる。  
 でも、指、止めなきゃ。  
 ケンジは、そうしたから。  
 ああ、でも、すぐにまたちょっと動かしたんだっけ。  
 だから私も、少し動かす。  
 それだけで、鋭い快感が走る。  
 ――ああ、ああっ。  
 私の指は気持ち良さと連動している。  
 自分の意思と無関係に止まったり動いたりはしない。  
 自分で止めようと思わない限り、動き続ける。  
 感じるポイントを外さずに快感を得ようとする。  
 わかりやすくて簡単だ。  
 でも、その簡単さが逆にもどかしかった。  
 凄く感じているのに、何かが違う。  
 ああっ。なんか、おかしい。  
 したいのに、したくない。  
 イきたいのに、イきたくない。  
 激しく興奮しているのに、何かノリが悪い。  
 たっぷり感じているにもかかわらず、違う快感を求めていた。  
 激しく興奮すればするほど、別の欲求が生まれる。  
 一人エッチじゃ物足りなかった。  
 自分のコントロールを超えた快感。一人ではできないやり方。  
 それが欲しい。  
 自分のペースじゃなくて、おかしくされたい。  
 それが私の望みだった。  
 
 欲情した身体は、快感を欲しがっている。  
 だけど今日はこれ以上せずに、このままエッチな気分でいよう。  
 それも凄くヤらしくて、ドキドキする。  
 胸の奧に熱がある。  
 ヤツは起きているだろうか?  
 そんなに時間はたってない。多分まだ起きてる筈だ。  
 上半身を起こして腕を伸ばし、携帯を掴んだ。  
 エッチな気分のまま、ヤツに電話する。  
 その考えに、熱い興奮が湧いてくる。  
 ――だけど、何て言おう?  
 また今度エッチしたい、……とか?  
 そこまであからさまに言っていいんだろうか?  
 ストレートすぎないだろうか? 引かれたりしないだろうか?  
 脳内シミュレーションはいつだって上手くいかない。  
 ――出たトコ勝負だ。  
 携帯の発信ボタンを押した。  
 ちょっと勇気はいったけど、バンジージャンプに比べたらどうってことない。  
 ……バンジーなんてしたことないけれども。  
 
 コール3回で出なかったら切るつもりだった。  
 呼び出し音を聴いた途端、メールにしとけばよかったと後悔した。  
 だけど、3回目のコールが鳴り終わる直前、ヤツが電話に出た。  
 
「ああ、マリ。……起きてた?」  
「あ、うん。お風呂上がって髪乾かして、ベッド入ったとこ」  
 
 まあ、嘘ではないけど。  
 でも、何をどう話せばいい?  
 頭の中が熱い。  
 ――あー、やだ。焦るし。  
   
「悪ぃ。別に明日でもよかったんだけどさ」  
「こっちもまだ寝てなかったし」  
「今度の土曜オマエと会うつもりだったんだけど、坂井なんかと出かけることになっちまって」  
「あ、そうなんだ……」  
 
 こちらの逡巡をよそに、ヤツはいたって平静な声だった。  
 って、電話しろっていったの、そういう理由?  
 ――何かムカつく。  
 土曜に私と会うつもりだったぁ? そんな話聞いてないぞ? 約束した覚えもないし。  
 ヤツが勝手にそう決めてて、勝手に変更したってこと? だったら、そんなこといわなきゃいいのに。  
 ――さっきまでのエッチな気分、どうしてくれんのさ?  
 
 ちなみに坂井というのはケンジの友だちだ。名前は聞いているけど、私は会ったことがない。  
 
「でさ、オマエも来る?」  
「え?」  
「だから、スケート。嫌じゃなければ」  
「え、あ、別に嫌じゃないけど」  
 
 結局その後、私もスケートに行くことになった。  
 っていうか、電話かける前とのギャップに、気分がついていけないっすよ。  
 こちらの事情などおかまいなしに、会話は普通に続いた。  
 ケンジはいつも通りで、私も表面上はそんな感じだった。  
 なんていうか、セクシャルでもスイートでもない会話?  
 私から「エッチしたい」なんていったら、一気に100メートルは引かれそうな空気だ。  
 っていうか、そんなことを告げる1ミリの隙間も、0.1秒のタイミングもなかった。  
 やっぱ脳内シミュは意味がない。  
 ――無駄に会話の計画立てなくてよかったよ。  
 自分自身のいきあたりばったりに微かな満足を感じた時、ケンジがぼそっと言った。  
 
「ところで、マリクリはどうしてる?」  
 
 やっぱコイツは、世界を破滅に導くKYの大王だ。  
 隙間もタイミングも一切関係ない。ヘンタイ性欲魔神、いきなりの降臨だった。  
 
「なっ……」  
 
 何か言い返そうとして、でもすぐ声を出してしまったことを後悔した。  
 激しい羞恥に、顔がカーっと熱くなった。  
   
「マリクリと話したいんだけど?」  
「はあっ?」  
「……マリクリぃ、起きてますかぁ?」  
 
 突然、甘い声でケンジが囁く。  
 電話をかける前までの興奮が微かに思い出された。  
 でも……。  
   
「ば、馬鹿、ちょっとっ……」  
 
 声が上ずっているのがわかった。  
 顔が熱い。  
 全身が火照っている。  
 興奮は消えたわけではないみたいだった。  
 身体の奧の見えない場所に、押し込まれていただけだったらしい。  
 
「聞こえてないのかなあ?」  
「だからぁっ、私はマリクリじゃないっ」  
「じゃあ、起こせよ」  
「……え?」  
「マリクリ〜、起きろ〜」  
 
 馬鹿が電話越しに呼びかけてくる。  
 ムードとか、さりげなさとか一切なかった。  
 はっきりいって、大馬鹿プレイだ。  
 なのに私は、ドキドキしちゃっている。  
 頭が熱くて、ぼうっとなる。  
 ――起きろだなんて、……どうしろっていうのさ。  
 どう答えていいかわからず、ちょっとふざけて返した。  
   
「返事がない。ただの屍のようだ」  
「マリクリぃ〜」  
「……だからあっ」  
「寝てるのか?」  
「……知らない」  
「触ってみ?」  
 
 って、今、何言われた?  
 わけわかんないし。  
 ドキドキが激しくなる。  
 ヤバい。――絶対無理。  
 そんなエッチな提案に従うわけ……、え? あったか、自分!!  
 何か左手がそろそろと下半身へ伸びていってる。  
 ――嘘だろー、マジっすか。  
 右手は携帯を耳に押しつけてる。  
 微かに、ケンジの息の音が聞こえた気がした。  
 そのことが後押しとなって、指が下着の縁をくぐった。  
 すぐにそこに届いた。  
 
「あっ、あのっ、……触った」  
 
 ――ああ、私、何してんだろ?  
 絶対にどうかしてる。  
 っていうか、完全におかしくなってる。  
 大丈夫か、私? いや、駄目です、馬鹿です、大馬鹿ですとも。  
 
 私の口から熱い息が勝手に漏れる。  
 ――ああ、携帯の電波は、こんな気配まで伝えてしまうですか。  
 電話の向こうからも、微かだが興奮が伝わってくる。  
 ケンジの声が、いつもと違っていた。  
 
「マリクリ……」  
「あ、……うん」  
 
 うっひゃあ〜! とうとう返事までしちまった。  
 って、やっぱ私、絶対にどうかなってるわ。  
 多分、この前の土曜日に、何かが変わったんだと思う。  
 性欲魔神のまき散らすウイルスに感染したのかも。  
 
「どうだ? マリクリ起きてる?」  
 
 や、やだ……。  
 初めてわかった。  
 気がつくの遅すぎだと思うけど、クリ・フェチ野郎のいわんとしてること。  
 そこはさっきたっぷり触ったせいで、敏感になっている。  
 おまけに、たっぷりと溢れたもので、下着まで濡れている。  
 私の指は、クリの状態を確かめるように、下の方へ潜り込んでいく。  
 ――ああ、自分が自分じゃないみたい。  
 指が勝手に動き、そして鋭い快感が走った。  
 
「あっ」  
「ふふ、感じた?」  
「ば、馬鹿っ」  
「マリクリは起きてるか?」  
「……わかんない」  
「じゃあ、ちょっとさすって、起こしてみ?」  
 
 ああ馬鹿、ケンジ、ヤらしすぎ……。  
 ヤらしくて、興奮する。  
 どうしよう……。  
 恥ずかしいのに、でも、したくなってる。  
   
「あ、んんっ」  
 
 クリを下から撫でていた。  
 ソフトに、でも、しっかり触れている。  
 気持ちいい……。  
   
「マリクリ……」  
「んんっ」  
「起きたら、教えろよ」  
「あ、あ、やっ……」  
 
 なんか、ケンジにされてるみたいな感じだった。  
 ケンジが何かいう度に、私の指が動く。  
 ヤツの指示通りに動いてる。  
 快感が走り抜け、またどくどくと溢れてくる。  
 クリがずきずきと疼いていた。  
 撫で上げると、その度に身体の奧が痺れたみたいになる。  
 すぐに固く凝っていくのがわかった。  
 

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