……その、なんていうか。  
 どうやらケンジは、クリフェチらしい。  
 あるいは私の反応を見て、そこばかり攻めるようになったんだろうか?  
 確かに身体の中で一番感じるのは、やっぱ「そこ」ってことになるんだけど。  
 たまに一人でする時も、最終的にはそこばっかり触りながらイくわけだし。  
 だから、ちょっとくらいフェチ入っていても、それはそれで別に嫌ではない。  
 自分でするよりアイツにされる方が興奮するし、恥ずかしいけど濡れる量も多い気がする。  
 身体もそうだけど、気分っていうか感情っていうか、やっぱ一人エッチとは全然違う。物凄く感じるし気持ちいい。  
 特に、舌で舐められるのがダメだ。あれはちょっとヤバい。  
 めっさ恥ずかしいんだけど、でも拒否できなくなる。  
 指じゃ再現できない感触も、太ももとかにかかる熱い息も、たまらない。  
 それに何より、一番恥ずかしいところを最高に恥ずかしい状態で舐められていると思うとそれだけで、……あ、ヤベ、なんか濡れそう。  
 
 ケンジは中学二年の時の同級生だ。  
 たまたま席が近かったこともあってたまに話したりしたけど、その時はただのクラスメイトだった。  
 三年でクラスが別になってからは話すこともなくなり、別の高校に進んだ後は姿も見なくなった。  
 だが、昨年の夏に、屋台が並ぶ夏祭りの神社で再会した。  
 ケンジは子どもの頃の面影をたっぷり残したまま、だけど背は随分高くなり、喋り方とかも大人になっていた。  
 携帯の番号とメルアドを交換し、それから何度か会った。  
 自分でもあまりにベタな展開に驚いたが、いつの間にか恋に変わっていた。  
 一月くらい過ぎて、ケンジの方から好きだといわれた。  
 数日後、ヤツの部屋で初めてのエッチをした。  
 裸を見られるのが恥ずかしすぎて、緊張した。  
 身体のあちこちに触られるのはくすぐったかったけど、間違いなく快感もあった。  
 キスをしながら、ヤツが胸を触ってきた。  
 頭の中が熱くなり、息が乱れた。  
 いつのまにかケンジの頭が私のお腹の上に移動し、気がつくと脚の間に顔を近づけていた。  
 嘘、マジっすか! ――そう叫んだ。ただし、心の中だけで。  
 
 はっきりいって私は、パニくっていたと思う。  
 ネットや友だちからの情報で、そういうことするのは知っていた。  
 でも、まさか自分がいきなりそんなことされるとは考えてもいなかった。  
 恥ずかしくてどうにかなりそうだった。  
 頭が爆発しそうな気がした。  
 ぼうっとしていて、だけど恥ずかしさはすでに限界を突破。  
「マジっすか」という言葉だけが頭の中で高速で繰り返される。  
 実際には多分「いや」とか「ダメ」とか「バカ」とか(私にしては)可愛らしいことを口走っていたような気がする。  
 もちろん恐怖もたっぷりあったし、なんとか拒否しなければと、必死だった。  
 でも、そこに何かが触れた途端、何も考えられなくなった。  
 全身が硬直し、その後すぐ完全に力が抜けてしまっていた。  
 はっきりと何をされたのかわかっていたわけではない。  
 ただ、舐められたのはぼんやりとわかった。  
 下から上へ柔らかな感触が移動し、そして「そこ」に触れてきた。  
 びくっと身体が震え、声が出ていた。  
 何度も同じ動きが繰り返された。  
 その度に電気が走ったみたいに、私の身体が勝手に動いた。  
 随分遅れて、「汚い」と思った。  
 だけど、もう「やめて」とすら言えなくなっていた。  
 それまでも一人で触ったことのある場所だけど、快感の質も大きさも段違いだった。  
 これまで自分でも知らなかった身体の秘密を、いとも簡単に探りあてられた気がする。  
 ……そのことは、はっきりいって嫌じゃない。  
 相手がケンジだからこうなってしまった。  
 そう思うと、なんか馬鹿みたいに嬉しくなるから不思議だ。  
 ヤツは私のそこを何度も何度も、繰り返し同じようにした。  
 時々、濡れた音が聞こえていた気もする。  
 凄いことになっていたのは間違いない。  
 やがてケンジは身体を起こすと、ゆっくりと中に入ってきた。  
 たっぷり濡れていたのもよかったんだろう。想像していた程には痛みはなかった。  
 おかげで恐れも小さく済んだ。  
 何か大事なことをひとつ成し遂げた気もしたし、何より一つになれたという満足感が大きかった。  
 ただ、身体の快感だけでいうなら、やっぱり圧倒的に気持ちよかったのは、あそこを舌で舐められた時だった。  
 特に舌先がクリに届いた瞬間の快感は、ちょっと説明できないほど切ない。  
 なんていうか、身体が「待ってました」みたいな悦び方をするのだ。  
 
 初めてのエッチ以来、ケンジは必ずそこを舐める。  
 まずは指先でたっぷり触られる。  
 その後、脚を割って顔を押し込んでくる。  
 ヤツがそうするのを私は本気で拒否ったことがない。  
 恥ずかしいのは今も変わらないけれど、何度かしてるせいで、多少余裕がある。  
 本当に嫌だったらノーということもできる。  
 だけど、いつだって恥ずかしさよりも、あの切ない感じへの期待が勝ってしまう。  
 というより、そこをそうされると思っただけで、身体の方が勝手に待ってしまう。  
 だから、ケンジにそこをそうされるのは、本当のところ何も困っていない。  
 問題なのは、いつでも途中で終わってしまうことの方だ。  
 
 私の指は、どこをどうするとどう感じるかをよく知っている。  
 一人の時なら、遠慮なくクリを押さえたり、左右に震わせたりすることができる。  
 そうやって、イくまで続けることができる。  
 ケンジの舌は、もっとソフトだ。  
 荒々しく舐める時でも、感触それ自体は柔らかい。  
 そのかわり、全体を包み込むようにされたりする。  
 最近ではすぼめた唇で軽く吸ったりもされる。  
 そんな風にされると、私はワケわからなくなるほど感じる。  
 その快感がさらなる欲求に火をつける。  
 快感と欲情が恥ずかしさと一緒にぐいぐい昇っていく。  
 一人エッチのずっと上の方まで、連れていかれる感じがする。  
 でも、イったことはない。  
 もう少しでイくという寸前で、ヤツは舐めるのをやめる。  
 そして入ってくる。  
 すでに痛みはない。緩やかな快感もある。  
 特に、ゆっくりと奧まで入った状態で動かされると、どこがどうなのかわからぬまま快感が膨らむ。  
 もしかしたら、その状態でもいつかイくようになるのかもしれない。  
 でも、今はまだ精神的な満足の方が大きい。  
 快感が少ないのが物足りないというワケじゃない。  
 どうしてもイかないとダメというもんじゃないだろう。  
 ただ、普段はそう思えるという話だ。  
 たっぷりクリを攻められ快感が大きくなってくると、私は普段の私じゃなくなる。  
 っていうか、身体が勝手に求めてしまう。  
 ケンジは私が初めてじゃない。  
 去年までに二人の女とつきあったといっていた。  
 つきあったってことは、エッチもしたってことだろう。  
 だったら、それなりに経験を積んでいる筈だ。  
 なのに、私がもう少しでイきそうなのに気付かないのか、途中でやめて本番に突入する。  
 私の方も息は乱れっぱなしだし、声もかなり出ている。  
 だけど、イくところまではいかない。  
 私がイくことができずにいるのはわかっている筈だ。  
 それともわかっていないんだろうか?  
 もしかして、自分勝手なのか、あるいは下手なのか。  
 クリ・フェチなのはかまわない。  
 でも、そこをそうされると、私はイきたくなってしまう。  
 イきたくて、おかしくなる。  
 もちろん、そんなことは恥ずかしくていえない。  
 もう少しだけ長く舐め続けられたら。  
 もう少しだけ強く震わされたら。  
 もっと速く舌を動かされたら。  
 もっと。止めないで。そのまま。続けて欲しくなる。  
 クリを、イくまでして欲しい。  
 そんなふうに、いやらしいことをいわせたいんだろうか?  
 最近の私は、おかしくなっている。  
 今も想像しただけで、濡れている。  
 濡れてるだけじゃない。  
 指先が、パンツの中に潜ってる。  
 クリが膨らんでいるのがわかる。  
 この指が、ケンジの指ならいいのに。  
 それともヤツは気付いているんだろうか?  
 気付きながら、私が我慢できなくなるのを待っている?  
 だったら、いってくれればいいのに。  
 
「マリはもっと、クリを舐められたい?」  
 
 そう聞かれたら、私は「うん」と頷いてしまうだろう。  
 明日、また多分ヤツとエッチする。  
 ケンジはイかせてくれるだろうか?  
 聞かれることになるだろうか?  
 それとも、我慢できなくなった私が、もっととせがむことになるんだろうか?  
 

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