深い深い闇の中で『コネクター』達は討論にあけくれていた。  
『契約』は本当に最も効率の良い方法なのか。他に方法は無いのだろうか。  
喧々囂々の討論の末に彼等は一つの結論に達した。  
『試してみよう。』と。彼等は6つの派閥に別れ、人間達との関係を模索した。  
一つは今までどおり『契約』という形でオーラ(=生体エネルギー)を吸収する『契約型コネクター』  
一つは道具を使用した人間のエネルギーのみを吸収する『道具型コネクター』  
一つは人間の体に融合しエネルギーを吸収する『寄生型コネクター』  
一つは建物などに寄生し中の人間のエネルギーを吸収する『要塞型コネクター』  
一つは人を『喰らう』事でエネルギーを吸収する『捕食型コネクター』  
一つは『個人』ではなく『組織』と『契約』する『組織型コネクター』  
彼等は、生存という目的の為に世界中へと散らばっていった。  
 
今回はとある『道具型コネクター』に注目してみよう。  
名前は『未来予定帳』………能力は…『かかれた事が現実になる』………  
 
「これは『未来予定帳』です。これに書かれた事は現実になります……か。  
 …………馬鹿らしい。」  
そう言いながらも、彼はそのノートから目を離せなかった。  
 
ルール  
1・エネルギー保存則を破る事は出来ない  
2・過去を変える事は不可能。(対象は未来のみ)  
3・あまりにも起こりえない状況を作り出すことは出来ない。(死んだ人間が生き返る、集団で記憶を失ってしまうなど)  
4・もし〜だったら○○が起こるというのは有り。但し未来予知は不可能。  
5・予知に細かい時間を書いたとしても『ずれる』可能性有り。予定は余裕を持って。  
6・予定を立てるたびに、貴方のエネルギーを頂きます。(エネルギーが無い場合は、能力は発動しません。またエネルギーは休めば回復します)  
 
何故か日本語で書かれているそれを読みながら俺は頭を抱えていた。  
あまりにも抽象的な能力だ。だが頭の中に『何処までできる』と言うのがわかってしまうのだ。  
馬鹿らしいとも思ったが、まあネタならネタだと一つの文を書いてみた。  
『今日、自分のテーブルの上で振ったサイコロの目が全て6になる。』  
ばらばらと8個のサイコロを振った。全ての面で6が出ている。  
「ははは………。凄い偶然だな……。」  
笑いながら彼はテストを続けた。  
「本物だ!この疲れも……起きた結果も!!」  
そう言って彼はベッドの上にバタリと倒れこむ。  
「………使える……使えるぞこれは………。」  
疲労と言う問題を差し置いてもこのノートは使える。  
起きうる現象しか起きないと言うのも、逆にあまりにも不可解な事は起きないと言う事で怪しまれる心配が無いということだ。  
「この予定帳で人が殺せるのかな??」  
そう思って、彼は予定帳に文字を走らせた。  
 
「皆様に、大変悲しいお知らせがあります…………。  
 ××さんが、昨日交通事故で亡くなられました………。」  
静粛に言う校長先生。その生徒の中で○○がギブスをつけて俯いていた。  
『本物だ!』俺は心の中で叫んだ。あのノートは本物だ。  
「………皆様も携帯電話の使用には十分ご注意ください………。」  
××が死んだって、俺の良心のはこれっぽっちも傷まなかった。  
俺をいじめていた、いじめグループのサブリーダーの××が死んでも良心は欠片も痛まない。  
だが、○○が怪我をしたというのはちょっと悲しかった。  
別段知り合いというわけじゃない。有名な女子というわけでも目立つ女子というわけでもない。  
交通事故は××と○○がすれ違いそうになったときに起きたそうだ。  
○○は××が死ぬ瞬間を目の前で見たそうだ。  
「……下手をすれば○○さんが死んでいたと言う事か………。」  
そう考えると、でかい事件を起こす事は躊躇われる。  
下手をすれば自分も巻き込まれるからだ。今回の事件だって××を殺すために○○も殺す必要は無い。  
 
俺はその後、宝くじやLOTOを買ってみた。『予定帳』の能力で全部大当たりだ。  
その後、やって来た『親戚』共にはへきへきしたが、まあ宴会でも開いて終わりにする。  
『余った』お金は別荘を買って、余生をのんびり過ごす事にした………。  
と言うのは嘘で、株に回したり、貯金したりで色々と収入元には事欠かない。  
そして、俺は『復讐』の為の『準備』を開始した。  
目標はいじめグループのリーダーだった■■。アイツだけは絶望と『ほんのちょっと』の希望の中で『復讐』してやる。  
『ほんのちょっと』の希望にすがって……死ね。  
 
■■は苛立っていた。あのいつもいじめていた奴の最近の幸運に。  
宝くじに当たり、大金を手に入れて別荘まで買ってのんびりブルジョワ生活をしている『奴』に。  
滅茶苦茶にしてやる。『奴』の生活を。  
両親には『友達の所に遊びに行く』と言って、仲間数人を呼び寄せる。  
足がつくとまずいから、バスやタクシーは使わない。自転車で移動して『奴』の別荘の近くの茂みに隠しておく。  
別荘への鍵はないので仕方ないから窓を割ってと思ったら空いてました(笑)。  
中に入ると、結構な広さで『奴』はいなかった。  
…冷蔵庫に空けてある羊羹があったから、思い切って皆で食べることにした。  
「やっぱり、ブルジョワの食べる物って違うわね。」  
ウィスキーボンボンを口に入れて、私は更に冷蔵庫の中を探す。  
他にも色んなお菓子を食いまくってやる。ふん、金に任せているからこんな罰が……  
罰が……あたる………あたる……頭が急にぼやけてきて、私の意識は急に眠りについた。  
 
目が覚めたら、私は狭い部屋に閉じ込められていた。  
「…………目が覚めたか」  
そう言って声が聞こえた『奴』の声だ。  
「一体何が起きたの?」  
「『偶然』『全員』『睡眠薬入りの』『ウィスキーボンボン』を『食べた』」  
『奴』がそう言って、私の方に向き直る。  
「『入ってきたのは』『5人』『偶然』『この屋敷に隠されていた』『カメラ』に『気づく事無く』『疑いもなく』『冷蔵庫内』の『お菓子』を食べつくした』」  
「ねえ、他の皆は?」  
「『ちょっと』『人工池』を『作ろうと』『思ったので』『穴を掘っておいて』『その下に埋めた』」  
その言葉に■■はビクッ!と体を震わせた。  
4人とも殺された。そう言っているのだ。  
「一体何をするつもりなの??」  
その言葉に『奴』は只一言、それだけが人間の言葉のように『復讐』と答えた。  
 
■■はポーダブルテレビでニュースを見ている。自分達が『友人の家に行く』と言っていなくなった事。  
自転車は鍵を外され、全くこの別荘とは違う所に乗り捨てられていた事。  
そして、この事から何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いなどとほざいていた。  
友人達も事情聴取を受けているが、なんら進展が無い事が告げられていた。  
 
「あーーーーっはははははははははははははははははははははは!」  
俺は大画面テレビでニュースを見ながら大声で笑っていた。  
「最高だ! 最高だよ!」  
そう言ってびっしりと書かれた予定帳を見る。  
『■■は『俺』をいじめる為にここにくる。来る人数は5人。他の人間はちくられると不味いので知らせない。こっそりと行く為に自転車を使って『俺』の別荘まで来る。  
この時、他の人間と出会うことはないし、監視カメラにも写らないルートを通ってくる。  
自転車はこっそりと『茂み』に隠しておくが、偶然通りかかった『チャリンコ泥棒』に盗まれて別の場所まで乗り捨てられる。  
■■達は、冷蔵庫の中の睡眠薬入りのウィスキーボンボンを全員食べて寝てしまう。  
■■以外の4人は朝のうちに人工池の穴の下に埋められる。この時、誰にも見られない。  
隣の家の爺さんが『朝からせいが出ますなあ』と気軽に声をかけてくる。  
その後、チャリンコ泥棒は歩いている時に事故死する。  
■■がこの家にいる事は、誰も気づかない。』  
要約するとそう書いてある。3ヶ月間かけて作った文章だ。  
まさか『被害者』が『誘拐犯』の家まで来て捕まったなんて三文芝居は誰も想像しないだろう。  
 
事件が起きて4日目、警察がうちまで来た。  
「事件があった日、貴方は何をしていました?」  
「えーと……たしか買出しに出かけていました。」  
少し大きめのソファーに座りながら刑事さんが根掘り葉掘り言葉を聞いてくる。  
「……すいませんが、この家には地下室と屋根裏がありましたよね。見せていただけませんか?」  
「ええと………。」  
俺は少し口ごもる。  
「見せられない事情があるのですか?」  
「……わかりました。どうぞ。」  
屋根裏にはエロ本の棚があった。地下室には壊れた椅子とカラオケセットがあった。  
「この椅子は?」  
「自分で作ったんですよ……でも乗った瞬間にバキッって……はははははははは……」  
「………もうちょっとしっかりした材料を使った方が良いですよ。」  
そう言って刑事さんは部屋をざーと調べると、何事も無かった様に部屋を出た。  
 
パトカーの中。  
「……何も知らないみたいでしたね。」  
「だな。」  
これっぽっちも疑っていなかった。疑う理由が無かった。  
 
俺は刑事さんが帰ってからしばらくして、ソファーを持ち上げた。  
そこには口枷をつけられた■■がいた。目には涙が浮かんでいる。  
「言った筈だ。お前は俺以外の誰にも見つからない。  
 警察だろうと、探偵だろうと、俺とお前の繋がりを見つけることは不可能だ。」  
そう言って俺は■■を地下室まで運ぶ。  
「言っておこう今、貴様に味方する『正義の心』など……お前に味方にしようとする『正義の心』など………  
『運命』の前には無意味だ! 今、確かにあるこの『運命』からはな!」  
 
「いやっいやっいやあああああっ」  
地下室の中、■■の声が響き渡る。  
体中にガムテープが巻きついており、走ろうにも走れないでいる。  
「逃げ切れれば勝ちなんだろうけどさあ………逃げる前に捕まってちゃ意味が無いよな。」  
このガムテープの罠は俺があらかじめ用意していた。ひっかかるかは3割ぐらいだろうが……。  
それで十分。『予定帳』の力は3割を100%に変える。  
そのまま■■の足を掴むと、手錠を両手両足につけて逃げられないようにした上で、ガムテープを無理矢理剥がす。  
「ひぃっ」  
涙目のまま■■は逃げようとするが、手枷足枷をされてはそれもままならない。  
「お前も殺す。ただ殺すだけじゃない。うんと苦しみながら死ね。」  
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」  
恥も外聞も捨てて■■は泣く。だが防音加工してある地下室からの声はあまりにも小さい。  
「五月蝿い」  
腹に蹴りを入れる。それだけで■■は泣き止んだ。  
「うっひっく…………。助けて……誰か助けてよぉ……」  
「い・や・だ・ね」  
さらに『俺』は■■の股間に指を入れる。  
「ひぃぃぃぅ!」  
「ぶち壊してやるよ。お前も、お前の『運命』も。」  
「いやあああああああああああああっ!」  
泣き声が地下室に響き渡る。その泣き声は彼女が死ぬまで止む事は無かった。  
 
……その後、■■との決着をつけた俺は、予定帳の能力を使って順調に暮らしている。  
俺は優しい女性を妻として温かい家庭を作っている。  
ちょっと嫉妬深いのがたまに傷だがな。  
あの5人は永遠に行方不明のまま、何らかの事件に巻き込まれたと言う事になって時効が来た。  
息子も元気に育っている。順風満帆な生活に俺は満足している。  
そうだ。この『予定帳』は息子にやろう。きっと上手く使ってくれるだろうな……ははははははははは……  
 
……私の名前は『未来予定帳』……。私に書かれた事は全て現実になる。  
だが、私の能力はそれだけではない。『書かれていなくても』ある程度の現実の操作が可能なのだ。  
最も自分の力だけで動きつづければそれは『死』を意味する。  
それでは意味が無い。なので私が自身の判断で動くのは、自身の危機のみだ。  
私はまず、『偶然』誰かに拾われて使われると設定した。  
とある少年が私を拾って使った。その少年は気前良く私を使った。私も気前良くそれに答えた。  
少年は恨みを持った女性を殺す為に私を使ったが、そんな事はどうでもいい。  
だが、私はここで重大な問題にぶち当たった。  
彼が死んだ後、誰が私を使ってくれるだろうか?  
彼がしばらく使っててくれた(今でも時々使ってる)のでエネルギーに問題は無い。  
私は、彼に幸せな家庭を作らせると、子供を生ませて、彼が『偶然』子供に私を渡すように考えさせた。  
これで良い。後はこの子が私使うように仕向けるだけだ。  
何、こんな面白い玩具を子供が放っておくはずが無い。  
ふふふ……我々は人無しでは生きていけない。ならば人を操り生かす事に何故躊躇う必要がある?  
 
                   (完)  
 

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