某都立高校。  
男女共学のこの高校は、暴力やイジメなどほとんど見うけられなく、  
皆明るく楽しく真面目に、ちょっとはふざけながらも学生らしく青春を謳歌している。  
ただ、皆は知っている。  
1年生は聞き知って。そして2、3年生は自らの体験を持って。  
 
この高校が2年程前、どうしようもなく荒れていたということを。  
そしてよりによってたった1人の1年生の、しかも女子のために浄化されたことを。  
 
「琴葉ー、帰ろー」  
「……うん」  
ボーイッシュなショートカット少女、後藤恵に声をかけられる少女  
水無瀬琴葉。17歳の高校2年生。  
背は恵と同じくらい女子の中では高いほうであるが、お下げ髪と淑やかな物腰から  
もろ体育会系の恵とは対照的だねと、級友からはよくからかわれている。  
しかしそれはあくまで外見上の話。  
この琴葉が、優しげというイメージしか捉えられない琴葉が、  
入学早々、荒みまくっていたこの高校をまたたくまに鎮圧した張本人なのだから。  
 
「……恵を、放してください」  
「ダメ! 逃げて琴葉! あんたまで……!」  
 
経済的事情から自宅の近くのこの高校を選ばなくてはいけなかった琴葉。  
女子空手道で全国に名が知れていた恵は、スカウトの全てを蹴って琴葉についてきてくれた。  
その恵でさえも、男子の力、数の力には及ばず、地面に押さえつけられている。  
有名な後藤恵を押さえつけて、ますます調子付いた不良たちが、一斉に琴葉に襲いかかる。  
……が、彼ら誰一人たりとも琴葉に触れることすら叶わず、次々と倒されていったのだ。  
 
琴葉と恵は、幼い頃から一緒に空手道場に通っていた幼馴染。  
その腕前は全国屈指と謳われる恵にやや劣る程度の差しかない。  
にもかかわらず一切の公式試合に出場せず、恵のマネージャーとして影から尽くしてきた。  
その理由を琴葉は、恵と師範――であり恵の父でもある――のみに告白していた。  
 
琴葉は、読心術者に範疇される、いわゆる超能力者だったのだ。  
自分の意思で超能力を開放し、半径20m以内の相手の思考を全て読み取ることができる。  
もちろん、その意思が強ければ強いほど、また自分に向けられていれば、  
それだけ大きく読み取ることができるのだ。  
それが、琴葉が公式試合に一切出ず、恵の影として尽くしてきた理由である。  
無論読心術があるとはいえ、一瞬がモノを言う戦いにおいて、瞬時に使いこなせなければ  
意味がない。  
しかし頭の回転も早く、体術のほうも鍛え上げてきた琴葉にはそれができるのだ。  
 
その琴葉をしても、不良男子十数人は無理だと思い、逃げろと叫んだ恵。  
しかし琴葉の強さは、恵の想像をも遥かに超えていた。  
ほんの数分で、高校を牛耳っていた不良グループは、  
新入生女子1人に叩きふせられていたのだから。  
その後琴葉の活躍によって、校内が鎮圧されたのは、たいして時間がかからなかった。  
 
そして今日も青春を謳歌する生徒達。  
しかし、彼に彼女らに、恵に、そして琴葉に迫っていた悪意。  
空手道の達人にして読心術者の琴葉ですら、まだそれに気づくことはなかった。  
 

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