幼馴染みは言いました。
「結婚してください」
私はそれに答えました。
「いやです」
彼は一瞬呆然となって、それから私に詰め寄りました。
「俺に不満な点があるのか? 教えてくれ」
私は答えました。
「私はもう八十歳なのよ。こんなおばあちゃんになってしまってからそんなこと言わないでください」
「年齢なんて関係ない! ようやく俺は本当の気持ちに気付いたんだ。遅くなってしまったけど」
「遅すぎです。半世紀早く気付いていてくれたら私も応えたかもしれないのに」
「……もう駄目なのか? いっしょにはいられないのか?」
「……あなたは何を言っているんですか?」
少しもわかってない彼に、私は言いました。
「これまでもずっと近くにいたではありませんか。結婚しなくてもこれからもそれは変わりませんよ」
残り少ない時間かもしれませんがこれからもよろしくお願いします、と私は小さく頭を下げました。