「こ、これって……!?」
あたしは、お兄ちゃんの部屋で見つけてしまった、いけない本にびっくりしちゃいました。
だって、あたしは純情可憐な女の子です! こんな、あの、その……男の人のアソコを
女の人のアソコに、あんなことをしちゃったり、口でアソコをああしちゃったり、後ろからア
ソコをこんなことしちゃったりするようなことを描いてある漫画なんて、初めてです! ホン
トだよ。嘘じゃないからね。
だから、とってもとってもびっくりしちゃいました。
ホントは、こんなものを見つけるつもりは全然なかったんです。ただ、お兄ちゃんに漫画
でも借りようかと思って、部屋にきたら、お兄ちゃんがいなくて、それで勝手に借りていっちゃ
おうって思って部屋を探しただけなんだよ。
それなのに、こんな本を見つけちゃうなんて……。
「お兄ちゃんって、エッチだ」
あたしは、ちょっとショック。
あたしのお兄ちゃんは、いわゆる世間でいうところの、オタクって人です。でもでも、とって
もやさしいお兄ちゃんだし、オタクって言っても毎日お風呂にちゃんと入ってるし、太っても
いないし、とってもいいお兄ちゃんなんだよ。
それに、漫画やアニメが人よりちょっとだけ好きなだけだし、そんなこというとお兄ちゃんに
いつも漫画を借りているあたしもオタクになっちゃうもん。
だから、あたしだけはお兄ちゃんをオタクって思ってないんだ。ホントだよ。
それなのに、こんないけない本を持っているなんて、とってもとってもショックです。やっぱ
り、お兄ちゃんはオタクさんなのかなぁ?
それで漫画の中では、男の人と女の人がキスしながら、なんかすごいことをしちゃってます。
「うわ……。こんなことしちゃうんだ」
なんだか、胸がドキドキしちゃいます。漫画に描かれているキスは、あたしが知っている
チュ?っていうキスなんかじゃありません。その、なんというか、すっごく濃厚なやつ。
うわ、こんな風にするんだ。ドキドキ……
「って、こんなの読んじゃダメー!!」
ダメだよ、ダメダメ! こんなの読んだらいけない子になっちゃいます!
あたしは本を閉じちゃいました。こんな本は、元のところに戻して、あたしは見なかったこと
にするんです。いえ、あたしは何も見てません! そうなんだよ。ホントだよ。
「もう。お兄ちゃんはエッチなんだから……!?」
その本を元のところに戻そうとした、あたしは目を見張りました。だってだって、その本の表
紙に大きく書かれているタイトルは――。
『いけない妹。お兄ちゃん大好き?』
え? え? ええぇー!!?
これって、どういうこと? ま、まさかお兄ちゃんって、そういう人だったの? うわ、どうしよ。
あたしは、心の準備がって……そうじゃなくって! ダメだよ、ダメダメ!
どうしたら良いのかわからなくて、混乱しちゃったあたしの耳に、階段がミシミシって鳴る音
が聞こえた。
誰かが2階に上がってくる?
ど、ど、ど、どうしよ!? お母さんもお父さんも、めったに2階に上がってこないし、そうす
ると、お兄ちゃん?
あうあうあうぅ〜。と、とにかく逃げなくっちゃ!!
ガチャっとノブが回って、お兄ちゃんが部屋に入ってきた。
お兄ちゃんは部屋に散らばった本を踏み越えて椅子に座ると、パソコンを起ち上げる。
その光景を見つめるあたしは、なぜかあのいけない本を抱いたまま、クローゼットの中に
隠れていたの。
どうして、こんなところに隠れちゃったの、あたし?(涙)