「ふ、ふたりともぉ……ま、待って……」  
 
息苦しさに胸を抑えながら私、遠野白雪は暗い夜の墓地を走る。  
冬の夜中、辺りは暗く人の気配もない。  
更に普段から運動しない私は、一緒に来ていた友人二人に取り残されてしまっていた。  
 
こんなとこに来るんじゃなかった。  
 
今更ながらに後悔している。  
 
 
何故こんなとこに来ているのかというと、端的に言えば、友人が『近所の墓地、出るらしいよ』と言ったのが始まり。  
出るらしいよ、というのはもちろん幽霊云々のことで、ホラーやオカルト好きの友人が噂を聞き付けたらしい。  
私はあまり好きじゃない、というより苦手だったが、小学校以来の友人の誘いを断れず付いて来てしまった。  
高校生にもなって肝試しとは、とその時少し呆れたことを覚えている。  
 
早速墓地に入った私たち三人は、初め余裕の表情で奥へ奥へと進んでいたが、森の中という立地もあってガサゴソという音や人影のような物を見ては逃げ回り、走るのが遅い私が取り残された。  
「はぁ、はぁ……速すぎるよ……」  
で、この状況というわけ。  
結構自慢だった私の長い黒髪は乱れ視界を遮り、厚着の服の中は恐怖と暑さで嫌な汗をかいている。  
私は休憩も兼ねて歩くことにした。  
「ふ、二人とも、はやすぎ」  
とりあえず愚痴っておく。  
そうでもしないと気が参ってしまいそうだった。  
声が木々の中に吸い込まれていくような感じすらする。  
「ていうか、来たいって言ったのあんたなんだから率先して逃げないでよ」  
暑いので上着の一番上のボタンを外した。  
「それにしても、ホント、気味悪い」  
夜風の音が、どうもおどろおどろしい。  
早く立ち去りたいな。  
そう思い、もう一度走り始めようとした。  
 
「あ〜あ……。―――きゃっ!」  
で、転んでしまった。  
走り難い靴だったことも災いしたようだ。むしろ似たような靴で全力で走れる友人が変なのである。  
「いったぁ……」  
とにかく立たないと、そう思って右足を寄せようとする―――が、動かない。  
「な、なんで?」  
左足は動くようなので、どうにか立ち上がり後ろ足、つまり右足を振り返った。  
「ひっ―――!!」  
思わず息を飲む。  
右の足首に人の手みたいなのが絡み付いていた。  
 
しかもその手、地面から生えているように見える。  
「ぬ、ぬ、抜けないぃ」  
何度か引っ張っても一向に抜けそうにない。  
手の生えている地面が隆起してくるだけだ。  
(しかもなんか、長くなってない?)  
先ほどより長く腕―――というべきなのだろうか―――まで見えるほどに生えている。  
(まさか、ゾンビ……)  
この後頭がボコッと出てきてゾンビが這いだしてくる、といった恐ろしい妄想までよぎる。  
だが、事態はまた別の展開へと進んでいた。  
 
(ひ、左足も掴まれてる)  
左足も二つの手にがっしりと固定された。  
ここで重要なのは今現在三本の腕がある、ということである。  
(一人……じゃない?)  
少なくとも二人、もしくは腕だけ何本もあるようだ。  
そう思っていたら、予想を裏切らず辺りの土から続々と腕が生えてきた。  
「そ、そんな」  
腕は足元ににじりよってくる。  
(動けるの?)  
あり得ない現象に私は動転した。  
無我夢中で足を引っ張る。  
その間にも腕は足に絡み付き、ゆっくり私のふくらはぎを登ってくる。  
(いやっ、いやぁぁぁあああ)  
怖くて声が出ない。  
おぞましい腕の感触に思わず震える。  
でもどうすることもできない。  
 
「えっ? あっ……」  
しかもバランスを崩して倒れてしまった。  
立ち上がろうとしても、既に遅い。  
手首も固定されてしまった。  
手足の両方から腕が這上がってくる。  
「やっ、やだ」  
体をよじっても何も解決しない。  
とうとう、腕が太股の上部までやってきた。  
どこか感触を楽しむようにすりすりと腕や手の平を擦りつけてくる。  
(気持ちわるい)  
 
足元に気をとられている内に、腕に絡み付いた腕は胸元まで来ていた。  
服の上からさするように胸元を撫でてくる。  
(ち、痴漢みたいにぃ……)  
そう思うと本当に腕は痴漢のように手足を撫でているようで、ゾクリとした。  
痴漢に触られた時のような悪寒が全身を駆け巡る。  
「くっ……やめ……てよ」  
腕に言ったって聞くわけがないのだが、その時はそこまで頭が回っていなかった。  
ただ拒絶の意思だけでもと、口を動かす。  
それしかできることがなかったのだ。  
「ん、くぅ」  
まるで腕に意思があるかのように、右側の腕だけ胸を揉むような動きに変わった。  
やんわりと、いやらしいまでに優しい。  
「なんで、こんな」  
 
足の方も既に臀部まで到達している、というより臀部の辺りの地面から生えてきたのだろう。お尻を触り始めた。  
(なんで、こんな動きが卑猥なのよ!)  
悪態をついても意味はないが、つかないではいられないほどに腕はねっとりとした動きなのだ。  
まるで此方の反応を楽しんでいるかのように。  
「うぅ……。え、うそ……」  
腕が服の中に侵入を開始しはじめた。  
スカートの中、上着は胸元からそれぞれもぞもぞと中に入ってくる。  
「いやあああああぁぁ」  
さっきより肌と腕とを隔てる生地が薄くなった分生々しい感触が脳に刻まれる。  
胸の一つ一つに腕が三本以上まとわりつき、揉んだり、撫でたり、摘んだりとやりたい放題。  
下半身も下着ごしにスジをなぞるように指が往復している。  
「やめ……てぇ」  
腰を捻ったりしてみるが、やはり無駄。  
 
そして悲しいことに腕の責めに、感じはじめていた。  
 
腕はさらに侵攻を続け、とうとうシャツの裾から素肌へと触れた。  
「ひぃぃぃううぅ」  
そして口元まで登ってきたもの、秘処へと触れているものすらいる。  
「やぁ、やらぁ」  
口に指を突っ込まれ口内をいじられる。  
胸を直接揉みしだかれる。  
乳首を摘まれる。  
お尻を撫でられる。  
背中、秘処をなぞられる。  
これら全てが同時にくるのだ、抵抗させてくれない。  
(やだやだやだやだやだやだやだやだ……)  
“心の中で否定してても、ここは正直だよ”と言わんばかりにニチャニチャと秘処をいじくりまわされる。  
 
「んふぅ」  
そして遂に秘処の中まで指が入ってきた。  
「はぁっ―――」  
容易に指を飲み込む自分が憎い。  
感触を味わうように私の中で動く指。  
「ひゃ、やらぁ、らめぇ」  
口の中に指を突っ込まれたまま喋るのでどうにもならない。  
声が漏れでてしまう。  
「はふ、あっ、やあぁ」  
身体中を擽られる。  
最早、私がどうこうできる状態ではなかった。  
 
「んっ、んっ、んん」  
はしたなくおっぱいの先を起たせアソコを濡らす私の身体に、彼らは容赦などしなかった。  
私のおっぱいは服の中で彼らの思うがままに形を歪ませ、もぞもぞと服が動く様子が視覚から私を犯す。  
また私は彼らの思うがままにあえぎ声をあげた。  
両足もだらしなく広げられ、いつでも受け入れられるようになっている。  
アソコは指をくわえてひくついている。  
(もう、だめ)  
冷静な思考などもはやなかった。  
あるのは悪あがきのように拒絶を繰り返す心と既に快楽を受け入れている身体だけ。  
次々と悦楽の証を分泌させる私の秘処。卑猥に歪む胸。  
こんな気持ちの悪い物体に身体をいじくりまわされているのに、なんという醜態だろう。  
「あっ、あ、あ、あ、やぁん」  
くちゅりという水音が憎らしい。  
もう、限界だった。  
「や、あ、あぁぁぁぁああああああああ!!」  
身体が跳ねる。  
手足が痙攣したように震える。  
(イッちゃった……)  
こんな腕に絶頂を感じさせられた、自分が嫌になる。  
くて、と身体から力が抜けた。  
 
「……ふぇ?」  
だが、終わらなかった。  
「いや、ぁん、やめてぇ」  
続く陵辱。  
様々な腕に代わる代わるおっぱいを揉まれ、秘処を掻きまわさたれた私は、二度目のアクメと共に意識を失った。  
 
 
* * * * * * * * * * * * * * *  
 
「……ユキ、ユキ」  
「ねぇ、白雪ってば」  
気がついたら私は友人に起こされていた。  
「え、あ……」  
「もう、途中でいなくなるから心配したよ」  
どうやら携帯の着信音を頼りに探してくれたらしい。  
辺りは静けさを取り戻し、地面も平らである。  
あれはなんだったのだろう。  
「わ、私は」  
「幽霊でも見て、気を失っちゃった?」  
 
もっと恐ろしいものの片鱗を、私は味わった気がする。  
 
〜fin〜  
 

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