闇に染まった樹海。そしてその中にある孤城の一部屋での一時。  
 
「・・・なんだよ、そんなそっけない一言で終わらせるのかよ!」  
一人の青年が何も無い漆黒の空間へと叫ぶ。その何も無い空間に、突如一人の女性が現れる。その女性はまるで人間とは思えないほど華麗であり妖美だった。  
――実際、その女性は人間ではない、人外の存在なのであったが。  
「じゃあ貴方は私にどうしろというのですか?」  
「・・・せめて、お返しでも贈るべきじゃ・・・!」  
「断ります。下賎な者どもに一々贈っていられません。」  
彼は一瞬戸惑うが、また激昂して反論する。  
「ありがたいと思ってるんだろ!?」  
「確かにありがたいとは思っていますね。」  
彼女は青年の激しい波のような激論を、まるで関係ないとでも言うように答えた。  
「なら、いくら身分が違うといっても、言葉一つで終わらせることは無いだろう!」  
「それは先ほども言ったでしょう。一々下賎な俗世の者どもに贈るなどいられません。」  
「・・・なんでそこまでして」 「『いい加減黙りなさい。』」  
不意に、彼女の声に命令的口調と神秘的気配が混ざる。  
「貴方は私の下僕という立場。私に口出しなどするな。」「・・・ッ・・・!」  
彼女は、これ以上青年から反論が出ないことを確認すると、再び闇の中へと溶け込み、消えた。  
たったいま彼女がいたその場所には、紙だけが残っていた。  
「それを件の者に送っておきなさい。」  
彼は歯軋りしつつ、その紙を拾い、その部屋から出て行った。  
 
その紙にはこう書かれていた。  
 
【 G J 】  
 

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